優しいあなたを守る方法【９６話】ネタバレ

自制って何なのだろう？

わずか数時間で、ディトリアンは自分の決心が不可能であることに気づいた。

お互いに狂ったように愛する夫婦が結婚一ヶ月で初夜を迎え、数時間後、再び夫婦の寝室に入る。

寝室には立った二人だけ。

その誘惑をどう振り切ればいい？

レティシアを抱いていただけなのに口の中がカラカラに乾いていた。

彼女の厚い唇は暗闇の中でも際立っている。

彼女の目つきが何かを求めているように彼を見上げた。

「ディトリアン・・・」

自制力なんて犬の餌にでもしてくれ。

二人は誰が先と言うまでもなく口づけをした。

病気のように自分を呼ぶレティシアを見て、ディトリアンは思う。

彼女ともっとくっついていたい。

新婚生活を楽しみたい。

王位なんて投げたい。

誰の邪魔も受けずにレティシアと二人きりで一ヶ月だけでもいいから一緒に過ごしたい！

おかげで、一週間で首都全体に二人に対するピンク色の噂が広がった。

噂を聞いたレティシアはネズミの穴に隠れたい気持ちに。

ほんの一瞬、ディトリアンのように自制すべきだとも思った。

けれどやはり、あの夫にあの妻なので諦めて新婚を満喫することに。

そんなレティシアを見るディトリアンは幸せでおかしくなりそうだった。

新婚を楽しみながらも、レティシアはやるべきことはした。

ディトリアンが政務を執っている間、図書館の古書を探していたのだ。

何とか呪いを解く手がかりを見つけなければならない。

時々、翼たちの近況も確認した。

エリクサーに聞けばいつでも分かる。

女神の力も役立った。

翼の安危を感じることもできる。

なのに３羽の力は日増しに強くなっていった。

最初心配していたことが顔負けするほどに。

一体何が起こっているのか分からないが、安心した。

「もうすぐ会えるはず」

数日前、シグムンドが夢に出てきた。

ディトリアンと初夜を過ごしたその日に。

まだ力が完全ではないように形はぼやけていた。

しかし、彼が明るく笑っているのは分かる。

「幸せを掴んだことをおめでとう、レティシア。望んでいたすべての夢を叶える日は遠くないね。これからも今のようにしてくれ。そうすれば、すぐに輝かしい幸せが君を訪れるだろうから」

「今よりもっと輝かしい幸せですか？」

今でも十分幸せなのに、そんなことが可能なのだろうか？

シグムンドは明るく笑う。

「これくらいで満足しようとしているの？断言する。もうすぐ君を訪ねる幸せは、今までとは比べ物にならないほど大きいよ」

シグムンドの笑みが濃くなる。

「君がそんなに切望していた人に会うのに、これよりもっと大きな喜びがどこにあるだろうか」

夢の余韻はとても長かった。

目覚めた後も心臓がドキドキしている。

しきりに目頭が熱くなった。

長い恋しさがついに満たされる気分。

「一体、誰が私を訪ねてきてくれるの？」

悩んでいたレティシアは、それなりの答えを見つけた。

今、彼女が一番待っているのは翼の知らせだ。

「もうすぐ帝国から人が来るみたい」

念の為エリクサーに確認してみたら、やはりだった。

数日待てば彼らに会えるという答えが返ってきたのだ。

その後は気楽に新婚を楽しむことに。

「妃殿下、殿下が人を送りました。今、政務会議が終わったそうです。もう宮殿に戻りましょう」

女官たちが目をキラキラ輝かせている。

みんな王と王妃の新婚生活に感情移入していた。

二人がくっついている度に、まるで自分たちが恋愛中であるかのように嬉しそうだ。

「分かりました。これで席を立つようにしましょう」

レティシアは笑いながら席を立つ。

最初は人々の視線が恥ずかしかったが、次第に慣れてきた。

皆が喜んでくれる姿に密かに意欲が沸いたりもする。

このようにディトリアンの安定した結婚生活を望んでいたんだと、改めて実感したりもした。

「お二人の姿に私たちは皆ワクワクしています。王宮に毎日春風が吹いているようです！」

「今でも楽しいのに、赤ちゃんが訪ねてきたらどんなに嬉しいでしょうか？」

「ああ、まだお二人とも新婚ですよね。新婚は長いほどいいと聞きました。甘い新婚を楽しんでくださいね、王妃様」

王と王妃の仲があまりにも良いため、自然に子供の話も出る。

ゼノス王室の血は貴重でなおさらだ。

傍系の血統も珍しく、王族はディトリアンだけ。

レティシアはニッコリ笑ってばかりいた。

初夜から今まで、いつも避妊をしている。

子供を誰よりも切に願ったが、当分は諦めることにした。

呪いが残っているのに、子供を欲しがるのは彼女の欲なのだから。

（シグムンド様がいつか輝かしい幸せが訪れると仰ったのだから。子供はその後よ）

絢爛たる幸福。

もしかしたら呪いの解決を予知するのかもしれない。

呪いさえ解決できれば、これ以上妊娠を先送りする必要はない。

（ディトリアンと私の子供）

早くも心臓がドキドキした。

シグムンドが予知した「煌びやかな幸せ」が真っ直ぐに彼女を訪ねてきたことは想像すらできないまま。