最強の王様、二度目の人生は何をする？【１３９話】ネタバレ

「へへ・・・、へへへ・・・」

私は唇をすぼめて、口の中に含まれた笑いを封じ込めようとしていた。

「乾杯、愛しい我が妻よ。まもなく終わりに近づいている狂気のために」

前かがみになってゴブレットを持ち上げる。

「乾杯」

妻は微笑んで、私と乾杯を交わした。

最高級の肘掛け椅子にもたれ掛かり、小さな家と同じくらいの費用がかかる果実酒を口の中で楽しむ。

私は笑わずにはいられなかった。

「考えてみてください、グランデラ。この後、私たちはもはやこの⼤陸の底の⽳に閉じ込められることはありません。ドワーフは、もはや奴隷になって⼈間のために武器を鍛造する道具である必要はありません。私たちは、この未発達の⼤陸を彼と⼀緒に新しい時代に導く種族になるでしょう」

「彼はそれほどに強力なのですか？あの「存在」と直接コミュニケーションをとったのはあなただけ。彼はどのような感じでしたか？」

妻が頭を腕に寄りかかってくる。

「彼は私が今まで想像したようなものではなかった。私は若い頃、マナビーストと戦うことに時間を費やしてきた。伝統に固執する古いドワーフとは異なり、私は⾃分が作った武器に誇りを持っていません。私がこれまでに完成させた唯⼀の武器は、私が⾃分で作ったものです。戦斧を使って、何百ものマナビーストを殺しました。それにもかかわらず、彼を見た瞬間、私は呼吸ができませんでした。まるで⼩さな針で各⽑⽳を刺されているかのように全⾝が刺されている間、私の頭はハンマーで叩かれているように感じたのです。何度も死を覚悟した・・・」

両手を見下ろすと、彼らが震えているのが分かる。

「彼の目標の為に、彼は私を必要としていませんでした。それでも彼はチャンスを与えてくれたのです。我妻よ、彼は私たちを選んでくださった」

「私はあなたを信じています、私の愛する夫。そして、彼がこの⼤陸を⽀配したとき、彼が再び私たちに約束したのは何でしたか？」

妻の大きな手が私の腰に巻きつく。

「彼は私たちが望むことができる全てのものを私たちに約束しました。莫⼤な富、理解を超えた魔法の能⼒、私たちに奉仕する多くの⼈々、そして何よりも、それらすべてを楽しむ永遠の命。この不⾃由な私の体が私を邪魔することはもうありません」

「それは素晴らしいことです、私の愛する人よ。評議会にいることはあなたの可能性を最⼤限に妨げていますから」

彼女は私の腹をこすりながら私を宥める。

「その通りだ！私たち３⼈の王はお互いに冗談を⾔ってる。この世代の３⼈の王がすべて、魔術師としての才能と可能性を⽋いていることを！他の２⼈とは異なり、私はかつて偉⼤な魔術師だった。王になるまでにオレンジ⾊のコアステージだったので、この哀れな状態に私を残した事件がなかったら、私はもっと⾼いステージに急上昇したでしょう！」

私が妻に決して⾔わなかった事件。

それは、私が農⺠の⼥の⼦と関係を持っていたという「事件」

その夜を思い出しながら、無意識のうちに唇を舐める。

あの事件が前王にバレたせいで、私は自由を失ったのだから。

もちろん、私は自分の⼩さな秘密を隠すために彼女を殺したのだが。

「あなた、落ち着いて！ドワーフは皆あなたを尊敬しているし、あなたはそれを知っている」

妻は優しく叱り、私の苦い思い出を拭ってくれる。

「尊敬？私が持っている２つのランスのおかげで、彼らは皆、私に恨みをもって従っています！」

民たちが私を何と呼んでいるかは知っている。

『なぜあんなに弱いドワーフが私たちを導いているのですか？』

『彼は幸運に恵まれただけ。彼は王冠に値しない』

妻は太い指で私の顎髭を撫で、ガウンを脱ぎ捨てる。

痩せた⼥性を欲しがる⼈間とエルフの男性の好みが分からなかった。

真の⼥性はこのような筋⾁を持っている必要があるのだから。

私たちがキスをしようとした瞬間。

バン！

部屋のドアが開き、外に駐留していた警備兵が私たちを⾒つめているのを目撃する。

「何をしている！ノックもなしに入ってくるなんて・・・」

⽊の板のように、警備兵は前かがみになり、何も⾔わずに地⾯に崩れ落ちる。

彼は心臓を貫かれて死んでいた。

「ご挨拶を、グレイサンダーズ」

冷たい男の声が私の耳を満たす。

「私が誰なのか知っているのか！？」

私はそう叫ぶが、目の前の存在に対して、私の魂の非常に深い場所で恐れていた。

「それは重要ではありません。私が処理する必要があるのはあなた方２⼈だけです」

私の眉間を狙う攻撃は、ランスの魔法で遮られた。

「オ、オルフレッド！何をしていた！？」

後退りしながら、私は自分のランスに対して叱責する。

「お詫びします、陛下。彼がどうやって乗り込んだのかは分かりませんが、マイカにも通知しております。侵入者は逃しません」

彼が私たちに素っ気ないお辞儀をしたときでさえ、彼の⽬は決して影のある姿を離れなかった。

マイカは私の指揮下の２番⽬のランス。

彼⼥はオルフレッドほど従順ではないが、魔術師としての彼⼥の能力は私が彼⼥に寛容になるのに⼗分だった。

「わ、分かった。だから、今すぐにその侵入者を倒せ！できれば生かしたままだ！」

妻に私が激しく震えているのが⾒えないことを願い、その姿に指を向けた。

「私はグレイサンダーズの頭だけを求めています。不必要な流⾎は私の望みではありません」

彼が話したとき、私は思わず壁に背を向ける。

ランスがいるにもかかわらず、不安を取り除けない。

「残念ながら、私が求めているのはあなたの頭です」

オルフレッドはシューッという⾳を⽴て、⼿⾜を炎で包んだ。

明るい炎が、侵入者の特徴を明らかにする。

彼は年配で、⻑く⽩い髪がポニーテールにしっかりと結ばれ、液体のように流れ落ちていた。

彼の両⽬は閉じられ、輝く紫⾊に輝いた額の３番⽬の瞬きしない⽬をさらに強調する。

【マグマ騎⼠団】

オルフレッドが呪⽂を唱えたとき、マグマで作られた５⼈の兵⼠が侵⼊者の下から即座に召喚された。

しかし、年配の男性が⼿を伸ばすと、侵⼊者の腕がかすかに光っただけで粉々に砕ける。

オルフレッドは何度も兵士を召喚するが、彼らが現れるたびに、一瞬で破壊されていくのが分かった。

彼は⻭を⾷いしばって唱える。

[地獄の鎧]

オルフレッドが侵⼊者に近づくと、彼の体は真っ⾚な炎に包み込まれた。

「はは！行けオルフレッド！早く奴を殺せ！」

狂った笑顔を浮かべながら、私は応援する。

オルフレッドの最初の打撃は侵⼊者の顔に直撃し、衝撃波で彼の後ろの壁を完全に破壊しら。

侵入者の顔が血まみれになっていることを期待しい、私の拳は興奮で握りしめていた。

埃の雲が薄れていくと、目の前の光景にショックで⼝が開いた。

侵⼊者の顔は無傷で、オルフレッドの腕は２つに折れ、拳は⾎まみれだった。

骨が指関節から飛び出ているのが見える。

「あなたの⼒はこの⼤陸の将来に役⽴つかもしれませんが、今はただの邪魔者でしかない」

侵入者はそう言いながら、一瞬でオルフレッドの胸元に近づき、彼の輝くサーベルの先端が私のランスの胸の中心にそっと触れた。

「破壊」

⽕属性で最も⾼い防御呪⽂の１つにランク付けされた地獄の鎧は、粉々に砕け散った。

オルフレッドは部屋を横切り、壁に激突する。

私はその光景をぼんやりと見つめるしか出来なかった。

妻も同様だった。

「こんにちは、王様と⼥王様。マイカは遅れてすみません！」

埃の雲の中からお馴染みの声が鳴り響く。

「マ、マイカ！急いでその男を処分しろ！」

私は妻を抱きしめて叫ぶ。

マイカはドワーフの間では異質な存在だった。

彼⼥はドワーフの⼥性を魅⼒的にするような通常の特徴を持っていない。

彼⼥の特徴は、弱い⼈間の⼦供であるかのように⾒せ、わずかに尖った⽿は、彼⼥が本当にドワーフであったことの唯⼀の兆候。

貧弱な外⾒にもかかわらず、重⼒操作における彼⼥の能⼒は絶大だった。

彼⼥のサイズの３倍以上の巨⼤なメイスを振るうことで、特定の半径内のあらゆるものの重量を⾃由に制御することができる。

「マイカの世界へようこそ。死んでください！」

彼⼥が巨⼤なモーニングスターを簡単に振ったとき、彼女は笑っていた。

重⼒の増加によって床が割れる。

自分の命が危険にさらされていても、彼女に対して嫉妬⼼が芽⽣えた。

あれが私が望んでいた力なのだから。

「どうしてこんなに簡単に動けるの？あなたの体の重さは４トン以上です！」

マイカはゆっくりと後退し、彼から慎重に距離を保つ。

「それがあなたの限界ですか？」

男はそう尋ねた。

「限界？マイカには限界がありません！」

マイカは飛び上がりながら叫ぶ。

彼女の武器にさらにマナを吹き込むと、重⼒の歪みのために周囲の空間にわずかな波紋が⾒られた。

「これでも食らえ！」

彼⼥のメイスは、この城全体を地⾯に倒すことができると思う⼒で振り下ろしたが、侵⼊者はそれに応じて１本の指を持ち上げるだけで、彼女の全力攻撃を簡単に⽌めた。

絶望の波が襲う。

マイカは侵入者に勝てないと知る。

ここで死ぬことはできない。

逃げなければ。

侵入者はマイカを刃で貫き、彼女は白目を剥いて床に倒れた。

その役に⽴たないガキは、私に逃げるのに⼗分な時間を与えることさえできなかった

侵⼊者は私の妻と私に光る刃を向けてくる。

グランデラは彼を威嚇するように指さし、叫んだ。

「私の夫はまもなく、全能の神、ヴリトラのアスラの新しい右翼になりま・・・」

「黙れ！」

彼⼥が話し終わる前に私は彼⼥の顔を殴る。

「アスラ。この世界には神は存在せず、アスラだけが存在します」

彼はゆっくりと私たちに近づきながら訂正した。

「お、お願いします。あなた様の憐れみを持って、私を助けてください」

ひざまずいて物乞いをしていると、⾜の間に暖かさが増していくのを感じた。

「あなたは⽣きたいのですか？」

「は、はい！お願いします！何でもしますから！」

目の前の状況から逃れようと、私は必死だった。

「アゴラはまともな駒も用意出来ないのだな」

彼の声は軽蔑に満ちていた。

「どうか、私は彼に会ったことがありません。彼は私に声をかけただけで、私が従わなかったら私の妻と私の⼈々を殺すと脅しました。お願いします。これはすべて私の意志に反していました」

私は嘆願し、額が⾃分の尿の暖かい⽔たまりに触れたとき、⼿と膝でひれ伏した。

「結構。あなたが持っている２つのランスを誓いから解放しなさい」

「か、解放ですか？」

「ええ。何か問題が？」

「いいえ、もちろん従います！」

いつも⾸にかけていたアーティファクトを外し、マナサインを染み込ませる。

誓いを⽴てると、⼝の隅から⾎が滴り落ちた。

私は⽗から、誓いを決して取り消さないように、そして決して取り消されるべきではない、と指⽰されている。

しかし、私の⼈⽣はここで危機に瀕していた。

オルフレッドとマイカの両⽅がかすかに⾚く光り、アーティファクトの拘束が解除されたことを⽰している。

「か、解放しました！」

「ああ。彼らはこのような貧しいマスターを持っていたのは残念でしたが、彼らは次の戦争で役⽴つ作品になるでしょう」

彼は2つのランスを⾒てうなずく。

「こ、これで良いのですよね？」

懇願に満ちた自分の声を聞くのが嫌だった。

「私はあなたを⼿放すと⾔いましたか？」

⾒上げると、彼の表情に変化が。

初めて⼩さな笑みが浮かんでいた。

声を出そうとするが出ない。

⾔葉も・・・、⾳も・・・、息も・・・。

下を⾒下ろすと、喉に隙間のある⽳が⾒え、顎がたるんでいる。

視界が薄れると、侵⼊者から視線を外し、妻をちらっと⾒た。

彼⼥は私のために必死に⼿を伸ばしたとき、彼女の胸にも穴が開いた。

すべてが暗くなった。

冷たい⼿が私の魂を掴み、私を体から引き離すのを感じる。

「チェスを始めましょう」

侵⼊者の最後の⾔葉は、私の意識が地獄のどのレベルに流れ込んだとしても、遠くから響き渡った。