最強の王様、二度目の人生は何をする？【１７９話】ネタバレ

シルビーを妹と⼀緒に残して、私は両親の部屋に向かった。

両親が本当に戦争に参加することを計画しているというエレナーの言葉が、私を不安で満たしている。

⽊製のドアをノックすると、鈍い⾳が鳴り響いた。

「開いているわ」

⺟さんの温かい声が向こうから鳴り響く。

訪問者を迎えるためにドアに向かって歩いていた⺟さんは、私を⾒ると⽴ち⽌まった。

「本当だったのですね」

⽗の横にある磨かれた鎧を手に取り、私は呟いた。

「息⼦・・・」

⽗さんはガントレットを置くが、座ったままだ。

「私たちはあなたがすぐに戻ってくるとは思っていませんでした」

「私に何も⾔わずに出発するつもりでしたか？」

「もちろん違うわ。けれど、私たちはあなたが戻る前に準備を終えたかったのです」

⺟さんは私の肩に置く前に少し躊躇って⼿を上げた。

⾦属製の鎧をしっかりと握り締めると、さまざまな感情が湧き上がってくる。

なぜ彼らが突然戦うことを決⼼したのかについての混乱、彼らが私とこの決定について話し合うことすらしなかったという苛⽴ち、そして彼らへの怒り。

「エレナーが成長するまで待ってから戦争に参加するつもりだったと思いました」

「ヴィリオン司令官は、エレナーが年をとるまで、またはあなたが来るまで滞在するように私たちにアドバイスしたよ」

⽗さんは私を見つめたまま答える。

「ヘレンから緊急通信を受け取ったんだ」

父さんは⽴ち上がり、彼の視線は異常に悪質だった。

「誰もが出発する準備をしているときに、彼らはダンジョンで攻撃された。彼らは若い兵⼠たちが逃げるための時間を買うために戦っていたが・・・」

「いたが？」

いつも楽観的な笑顔で苦難に耐えてきた⽗、レイノルズ・レイウィンは、氷のような毒を⽬にして⾒上げる。

「アダムは成功しませんでした」

「そんな・・・」

私は⾸を横に振った。

「あり得ない。私は昨⽇そこにいました。ダンジョンをクリアして、中にいたミュータントを殺したのは私です」

「どうやらあなたが去った後、ミュータントに率いられた別のマナビーストの⼤群が彼らを攻撃したようです。ヘレンは、ダンジョンの最下階が別のダンジョンに接続されていたと考えている」

「誰も戦いを想定していなかったので、戦いは混乱したそうよ。ツインホーンと他の何⼈かのベテラン兵⼠は滞在し、他のみんなのために時間を買ったの」

⺟さんは話し続けた。

「幸いなことに、ミュータントはBクラスだけでしたが、その軍隊の規模が⼤きく、不意を突かれたため、アダムを含め、必要以上に多くの死者が出たわ」

⺟さんが話し終えた後、不⽑の沈黙が部屋に残る。

突然、沈みゆく気づきが私を直⽴させる。

テスはそのダンジョンにいた︕

「他に誰が死んだの︖」

私の懸念にもかかわらず、私はテスが⼤丈夫かどうか尋ねることによってアダムの死に鈍感に⾒えたくなかった。

「ヘレンから聞くことができたのはそれだけだ」

「ごめん・・・。アダムに何が起こったのか知っているのに」

私は⽗さんを慰めた。

「誤解しないでください、アーサー。私たちは罪悪感からこれを⾏っているのではありません。兵⼠の命は常に危険に晒されています」

「それでも母さんは・・・」

愛する⼈を安全に守りたいという⾃分の利⼰⼼が生まれる。

二人のマナコアがどのレベルであるか、またはマナ操作についてどれほど知識があるかは問題ではなかった。

どれだけ体を強化したり、厳重に装備したりしても、戦闘のどの時点でも死に⾄る可能性があるのだから。

「アーサー、それは彼のせいではない。私がツインホーンに戻って戦争を⼿伝いたいと思っているのよ」

「どうして？母さんは戦争に⾏きたいのですか？」

「ええ」

「で、でも使えないはず・・・」

戸惑いの表情が浮かぶ。

「アーサー、座ってちょうだい」

⺟が考えをまとめている間、私はベッドのふもとに座った。

「⽗があなたに⾔いましたか？」

「父さんは、残りは母さんが準備ができたときに話すことになっていると⾔いました」

「アーサー、ツインホーンについて私たちがあなたに⾔ったことは⼀度もありませんでしたが、実際にはもう１⼈のメンバーがいたの」

黙っていた⽗さんに⽬をやると、彼は眉間に皺が寄せていた。

「彼⼥の名前は当時才能のある若いオーグメンターであるレンズでした」

母さんは、⽗がヴァルデン市から若い自分を連れてきた直後にツインホーンに加わった⾮常に明るく希望に満ちた魔道⼠の話を続けた。

レンズは、パーティーの助けがなくても冒険家として上手くやっていて、彼
⼥はすでに有名だったそうだ。

「事故が起こったとき、彼⼥が加わってからわずか約２年でした。私たちを襲ったのは劇的な災難ではありません。すべての⼈の⼈⽣があなたの⼈⽣ほどエキサイティングなわけではありませんから」

恥ずかしそうに、頬を掻きながら不快な笑い声を上げた。

「私たちは不注意になり、スナーラーの群れによって待ち伏せに遭遇しました。私たちの誰も⼤きな怪我を負ったことはなく、私は皆の表⾯の傷を癒したので、私はそれについてほとんど考えませんでした」

⺟さんは泣かないように唇をすぼめる。

「エミッターであるということは、すべての怪我を癒す⽅法を知っていることを誰もが期待しているということです。実際にはそうではないのに・・・」

⺟さんの体が震えると、⽗さんは彼女の背中に慰めの⼿を置いた。

「針の尻尾からの毒が下の⾁に感染したことを除いて、私はみんなの傷を閉じたの。あなたのお⽗さんと他のみんなは、害を及ぼす前に時間内に治療を受けることができましたが、レンズの場合、傷は彼⼥のマナコアに近く、私が彼⼥の傷を閉じた後、毒が広がりました」

「じゃあ・・・」

「ええ。彼⼥のマナコアは、マナ操作を練習できなくなるまで感染していました。私は彼⼥の⼈⽣の真の喜びを奪ったのよ」

「けれど、少なくとも彼⼥はまだ⽣きている」

母さんが⾸を横に振るまで彼⼥を慰めようとした。

「レンズは⼀⼈でダンジョンに⾏き、⼆度と戻ってこなかったわ。彼⼥はいつも戦いに死にたいと⾔っていました。そして、⾯⽩い部分が何であるか分かる︖」

⺟さんは嘲笑しながら涙がこぼれないように⾒上げた。

「もし私が傷⼝を閉じていなかったら、医者は簡単に毒を抜くことができただろうって。私が彼⼥を癒していなかったら、彼⼥はおそらく元気だったでしょう」

何も言えなかった。

「それ以来、軽傷以外の⽬的で魔法を適切に使⽤することを恐れてきました。アダムの死が兆候だったとは思えませんが、私たちは彼らのためにそこにいる時が来たと思います」

母さんの⽬の決意は、彼女が私の承認を得ることを望んでこれを⾔っていないことを明らかにした。

突然、ドアがノックされて注意が向けられる。

開いたドアから現れたのはヴィリオンだ。

「ヴィリオン司令官︕」

予想外の人物の登場に、両親は慌てて立ち上がる。

「お願いします。アーサーの両親にとっては、ただのヴィリオンでいたいので。レイノルズ、あなたの仲間のことを聞きました。深い追悼の意を表します」

ヴィリオンは今回の出来事に嘆いていた。

「現場にいた兵⼠の何⼈かがちょうど今城に到着しました。アーサーを迎えに来ましたが、少なくともツインホーンのリーダーもいると確信しています。お二人も⼀緒に来ませんか︖」

簡単なメッセージをシルビーに送った後、私たち４⼈は急いでテレポートルームに向かう。

最初にヘレンを⾒つけて、私は両親の注意を彼⼥の⽅向に向けさせる。

⾔うまでもなく、彼⼥は惨めな状態だ。

「ヘレン！」

両親はすぐにヘレンに向かって急いだ。

ツインホーンズの表情のリーダーは、両親が抱きしめたのを⾒て、柔らかくなった。

テスがポータルを通り抜けるのをまだ⼼配して待っていたヴィリオンの元を離れて、私もヘレンに向かう。

「あなたが無事でよかった」

彼⼥に優しく抱きしめながら⾔った。

「アダムに何が起こったのか聞いて・・・。もし私があなたたちと⼀緒にいたら＿＿＿」

「それ以上は言わないで」

ヘレンは私の言葉を⽌める。

「そのように考えることから、良いことは⽣まれません。起きたことはしょうがない。最善の⽅法は、アラクリアンたちにどうやって代償を支払わせるかを考える事よ」

「ヘレン、あなたが今焦点を合わせなければならないのは休むことです」

⺟さんは⼤丈夫だと主張していたヘレンを案内し、⽗さんは彼らのすぐ後ろを追った。

彼らがツインホーンに再び参加する計画についてヘレンに話すだろうと思ったが、私はテスが戻ってくるのを待つために部屋に留まる。

永遠のように感じて最後に、お馴染みの顔がポータルから⾶び出した。

それはスタナードという名前の少年。

「テシアはどこ︖彼⼥はあなたと⼀緒でしたか︖」

私は彼の腕をしっかりと握りしめながら追及した。

「アーサー・レイウィン︖」

彼の顔は驚きに満ちていた。

テスが出てきた場合に備えて、すぐに⼿を放したが、視線はまだスタナードとテレポートゲートの間を移動している。

「すみません、スタナード。ダンジョンでの待ち伏せについて聞きました。他のメンバーはどこにいますか︖」

兵⼠の群衆を振り返ると、テスの残りのチームメイトを⾒つける。

カリアという名前の⼥の⼦は、私が決闘した男の⼦を背負っていた。

二人の状態もボロボロで、私はすぐに意識のない男の子を彼女の代わりに背負う。

「ありがとう」

カリアは驚いていたが、私が彼⼥をスタナードに案内したとき、彼⼥は素直に答えてくれた。

「カリア」

カリアが眠りに落ちるのを防ぐために彼⼥の肩をそっと振った。

「テシアに何が起こったのかを知る必要があるんだ」

彼⼥が説明するために⼝を開いたとき、カリアの⽬は半分閉じていた。

代わりに、彼⼥の唇がにっこりと曲がったとき、彼⼥は無⾔で私の後ろを指さす。

振り返ると、服がボロボロで、髪の⽑が荒れていて、鎧がへこんでひびが⼊っていたが、⽣きているテシアの姿が見えた。