最強の王様、二度目の人生は何をする？【１８４話】ネタバレ

ヴィリオンとアルディールが城に戻ったあと、私はツインホーンに再び加わって戦争を⼿伝うことに固執していた⺟と⽗をもう一度説得した。

私は彼らが戦いが最も激しい⻄岸の近くに⾏くことを思い留まらせようとしたが、彼らはそれに反対する。

私を苛⽴たせたのは、私も彼らのせいにすることができなかったということだ。

彼らにとって、この大地は彼らの家であり、それを護ることは⾃然なことなのだから。

それは私も同じだった。

ディカゼンは私の家族がいた場所であり、ヴリトラと戦うことにした理由の⼤きな要因でもある。

鎧を脱いで、椅子に沈み、深呼吸をする。

「くそ〜・・・」

「彼らと⼝論するのは、別れるのに最善の⽅法ではありませんでしたね」

「なぜ両親が私のアドバイスに⽿を貸さないのか理解できません。何も悪いことは言っていないはずなのに」

「あなたは彼らに遠隔地に⾏って隠れたままでいるように⾔った」

「そんな風には言ってない」

「けれど、そう意味でしょ？」

「・・・私は彼らに安全を保ってもらいたいだけです」

シルビーはテーブルから⾶び降りて私の椅⼦の肘掛けに乗った。

「彼らが⾃分たちの安全をもっと⼼配していたら、あなたの両親は戦争に参加することを気にかけなかったでしょう」

「まあ、私はこの戦争よりも家族の安全を⼼配しています。彼らが少なくともエレナーを置き去りにしていることに感謝していますが、それは彼らが命を危険にさらして出かける必要があるという意味ではありません」

私の絆がうなずく。

「分かっています」

「私が彼らの息⼦として、彼らのことを⼼配していることを知ってくれることを願っていま
す・・・」

シルビーは私の腕に慰めの⾜を置く。

「それよりも、いつからそんなに理解できるようになったのですか？」

「私はいつも知っていたと思いますが、それを説明する⽤語を思いつくことはできませんでした。結局のところ、私たちは考えを共有しています」

「すべての考えを？」

私は唖然と尋ねた。

「うーん・・・」

「しかし、あなたは私が直接あなたに話しかけたときだけ答えました。そして、あなたが私の⼼に直接話しかけない限り、私はあなたの考えを聞いていません」

「私にとって、あなたの⼼に話すことは、⼤声で話すことによく似ています。私はいくつかの考えを隠しておくことを学びましたから」

シルビーは笑顔でそう言った。

私の⽬は恐怖で⼤きくなる。

「じゃあ、もしかして？」

「テシアに関しては、あなたの絶え間ない感情的な混乱について知っているかって？もちろん」

彼⼥はニヤリと笑った。

思わず、私は呻き声を出してしまう。

「⼼配しないでください。私は⽣まれてからあなたの束の間の考えをすべて聞いてきました。私は少し後まで理解し始めませんでしたが、私は何年にもわたってそれに慣れてきました」

「全然、慰めになってない・・・」

シルビーの笑顔は、彼⼥が明るい⻩⾊の⽬で私を⾒つめていると薄れていった。

「私たちはすぐに戦うつもりです。祖⽗は私を訓練している間、私がまだアスラのレベルに達するにはほど遠いと⾔いました。これは、私がこの戦争であなたと⼀緒に戦うことができる間、私は無敵ではないことを意味します。⽣き続けるための最良の⽅法は、お互いに頼ることです」

「もちろんさ、シルブ」

「私が私の⼈⽣で信頼できるのは、アーサー、あなただけだと感じています」

シルビーは肘掛けから⾶び降りて私の座席に⾶び乗って、彼⼥の頭を私の膝の上に置いた。

彼⼥が⼈⽣に対して何らかの恐怖を表明したのはこれが初めてだ。

危険な状況に何度も遭遇したにもかかわらず、彼⼥はいつも強くて恐れを知らなかったが、今ではこの戦争に対する彼⼥の不安を感じる。

シルビーの柔らかい頭を優しく撫でた。

「とにかくどうやってそんなに賢くなったの？エフェオトゥスから戻って以来、あなたは⼤きな成⻑を遂げてきたようです」

「私は常に学習してきました。ただ単にあなたの頭の上に載っていたわけではありません」

色々と彼女に質問したいことはあったが、私は待つことを決心する。

いずれ彼女から話してくれると信じて。

彼⼥の話し⽅が変わったにもかかわらず、彼⼥の声にはまだ未熟な感覚が見られる。

彼⼥はもっと成熟することを余儀なくされているように感じた。

けれど、確かなことが１つだけ。

それは、彼⼥が⾃分がアスラであることに気づいたこと。

シルビーの呼吸が遅くなり、よりリズミカルになると、私は頭を椅⼦に寄りかかり、考えを整理しながら部屋の平らな天井を⾒つめた。

ヴィリオンと他の⼈々はこれを知らないが、ウィンドサムが私に⾔ったことが真実なら、私たちの岸に近づく船の⼤群には、アスラの⾎が流れる魔道⼠が含まれるでしょう。

しかも、何世紀も前から。

彼らがどれくらい進化しているのか、そしてヴリトラ一族がこの戦争に勝利した場合、彼らがディカゼンの人々に何をするのか想像できない。

おそらくこの場所は、アグロナがエフェオトゥスを征服するために使⽤する兵⼠の繁殖地になるでしょうが。

「アーサー」

掠れたバリトンの声が私を思いとどまらせた。

「誰かの部屋に⼊るとき、ドアをノックするという習慣がないのですか？」

「その様子だと、何か思い詰めているようだな」

アルディールは静かに向かいのソファに腰を下ろす。

「アルディール卿、なぜあなたはここにいるのですか？私はあなたが評議会にいると思っていました」

「私があなたから必要としているものがあるからです」

彼の輝く紫⾊の⽬の鋭い視線は私に向けられていた。

「それは何ですか？」

アルディールがため息をつくまで、緊張した沈黙が生まれた。

「・・・あなたの助けです。インドラス卿は、この戦争の過程を通してあなたの判断に頼るように私に⾔いました。そして、あなたの先ほどのスピーチで、私はその理由を理解していると思います」

「インドラス卿が私の判断に頼るいうのは？」

「インドラス卿は、この戦争へのあなたの貢献は単なる剣であることに限定されるべきではないことに気づきました。あなたが現場で必要になることもありますが、発⽣するすべての戦闘にあなたを送り出すことはあなたを疲れさせるだけです。あなたが必要とされない時、あなたは評議会の私の側にいて、私たちと戦略を⽴て、私たちにあなたの意⾒を与えてくれるでしょう」

「あなたは１６歳の少年が評議会と⼈⽣を変える決定をすることを望みますか？」

私は嘲笑した。

「あなたが若いという事実を除けば、あなたは普通の⼦供ではありません。この⽬はただの装飾だとは思わないでください。私たちが初めて会ったとき、あなたについて何かがおかしいと思っていましたが、私がどれだけ気づいたかは、インドラス卿の⾔葉によってのみでした」

「あなたを助けることの⾒返りに、私が得る何かがありますか？」

頭を⼿に置いて尋ねる。

アルディールの⽬は細くなった。

「私は誠意を持ってあなたの助けを求めてきましたが、あなたが協⼒することは私たちの両⽅の利益になります。この戦争に負けるということは、死ぬか、奴隷になるか、さらに悪いことを意味しますから。あなただけでなく、あなたの愛する⼈たちのためにも」

「ですが、評議会が私のアドバイスを喜んで聞いてくれるのか分かりません。ヴィリオンは⽿を傾けるかもしれませんが、他のみんなは・・・」

「それについて⼼配しないでください。あなたは会議に参加するだけではありません。他にも計画があります」

「計画と聞くと、ちょっと不吉に聞こえますね」

「この包囲の防御が成功すれば、私たちのアスラ軍は、ディカゼン軍の助けを借りて、アグロナと彼の弱体化した軍隊の⾯倒を⾒ることができるでしょう」

「この戦争はまだ終わっていません」

アルディールの言葉に、私はため息をついた。

「ええ、しかしこの戦いは新しい時代の始まりとなるでしょう。ディカゼンが勝利し、私たちと⼀緒にアスラと戦うと、アグロナと彼の⼀族の裏切り者と雑種が倒れ、誰もが新しい⼤陸にアクセスできるようになるのですから」

アルディールは、いつもの穏やかな態度にもかかわらず、希望に満ち、ほとんど興奮しているように聞こえた。

「あなたはアグロナに誰かを殺されたのですか？」

「私たちの多くは、あの戦いで愛する⼈を失いました。いや、それは虐殺と表現したほうがいいでしょう・・・。アーサー・レイウィン、あなたに沢山のことを求めますが、⾮常に上手くいくはずです」

⽩髪のアスラが⽴ち上がり、象⽛のローブのしわを滑らかにする。

「一つ気になることを聞いても？」

「何ですか？」

彼は肩越しに振り返って答えた。

「今⽇私たちに加わることができなかった残りの２つのランス。２年前に彼らがあなたの下で働いているとあなたが⾔ったのは知っていますが、あなたは彼らを殺していませんよね？」

アルディールは⾸を横に振った。

「私でさえ、気まぐれでランスを殺すほど愚かではありません。政治使節は交代できますが、ランスの⼒は、アーティファクトとの互換性が特に⾼い場合でも、開発に数年かかる場合がありますから。この後の会議でこの２つについて取り上げる予定でしたが、この件についてご意⾒をお聞かせください」

彼が２つのランスを使って計画していたことを明らかにしたとき、私は熱⼼にうなずいた。

そして、ニヤリと笑う。

「悪くはありませんが、私にはもっと良い考えがあります」