潔癖症な黒幕のガイドなんて御免です

潔癖症な黒幕のガイドなんて御免です【22話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「潔癖症な黒幕のガイドなんて御免です」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【潔癖症な黒幕のガイドなんて御免です】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「潔癖症な黒幕のガイドなんて御免です」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

22話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 運命の5分間

しばらくの間、私たちは無言で睨み合っていたが、やがてクロードは忌々しげに舌打ちをすると、ようやく私の手から指を離して身を引いた。

……とはいえ、彼がこの場を立ち去ったわけではない。

彼はそこらに転がっていたパイプ椅子を引き寄せると、乱暴に腰を下ろした。しかも、私の検査の様子がもっともよく見える、真正面の席に。その距離は、彼がその気になれば二歩で私に触れられるほどに近かった。

「…………」

検査室に集まっていた大勢の見物人たちも、固唾をのんで私の後ろ姿を見守っていたが、彼ほど熱を帯びた視線で私だけを見つめ続けている者はいなかった。席に着いた瞬間から、彼の双眸は私に完全にロックオンされていた。まるで私の肉を削ぎ落とし、ステーキにして平らげてしまいたいとでも言うような、凄まじい眼光。私はたまらず、そっと目を伏せた。

「そ、それでは……バレンタイン嬢。こちらに手を置いていただけますか?」

検査官は、恐ろしい形相をしたクロードの方をちらりと見ることすらできず、おずおずとした手つきで再びテーブルの上の球体を指さした。

私は大きく深呼吸をした。

(大丈夫。落ち着いて)

センターには何千人ものエスパーが所属している。私がこれまでガイディングをしたのは、その中のたった一人――目の前にいるクロードだけだ。いくらなんでも、彼が世界で一番私との適合率が高いエスパーだなんて、そんな都合の良い偶然があるはずがない。確率的に考えれば、分があるのは完全に私の方だった。

私は震える手を伸ばし、ガラスの球体へそっと載せた。

数十人が固まる検査室は、その瞬間、水を打ったような静けさに包まれた。周囲の者たちも、クロードが私をキーホルダーのように四六時中連れ歩いているという噂くらいは耳にしていたはずだ。けれど、その理由が私を「未登録ガイド」として囲い込むためだとは夢にも思っていないだろう。一般職員であっても、センターに入所する前には必ず厳格な適性検査を受けることになっているのだから。

しかし、クロードが人前でここまで露骨な執着を見せている以上、野次馬たちの間にも「これほど執念を燃やすなら、本当に彼女がクロードの運命のガイドなのかもしれない」と邪推する空気が流れ始めていた。

そして、運命の結果がモニターに弾き出される――はずだった。

「……え?」

「うーん、波長が……まったく反応していませんね」

検査官が困惑した声を漏らした。

それだけではない。検査器の横にあるモニターへ映し出されているガイディング波形は、先ほどから死んだようにぴくりとも動いていなかった。

……あ、そうだった。

私は、ただ肌を触れ合わせただけではガイディングを発動できないのだ。

最近はクロードが望むたびに何度もガイディングをしていたから、「そもそもガイディングが発生しない場合」という大前提が、すっかり頭から抜け落ちていた。

「こ、これは……困りましたね」

動揺した私の視線は、自然と正面の男へ向いた。

クロードはまったく表情を変えず、腕を組んだまま悠然と座っていた。まるで、この展開を最初からすべて見越していたかのように。

その瞬間、彼が賭けの条件として不敵に口にした言葉が、鮮明に脳裏によみがえった。

『ただし、それ以外のどんな場合でも私の勝ちだ』

そういうことだったのか。

「ああ……『それ以外のどんな場合』には、この状況も当然含まれていたんだ……」

クロードは、私がガイディングを行うための特殊なスイッチをすでに知っていた。条件の細かいメカニズムまでは分からなくても、この形式的な場では私がガイディングを発生させられないと確信していたのだ。

そもそもガイディングが成立しなければ、適合率の測定自体ができない。つまり、自分より適合率の高いエスパーが存在するかどうかさえ、証明する術がないということだ。

結局、この賭けは最初から――私と彼の本当の適合率が何パーセントであろうと、クロードが絶対に勝つように仕組まれていたのだ。

気付いた瞬間、かっと頭に血が上った。

ローズ、この大馬鹿者。またあの男に油断させられていた。どれだけ譲歩しているように見せかけても、クロードが欲しいものを手に入れる場面で抜かるはずがないのに。

『あいつは骨の髄まで策略家よ。絶対に何か企んでいるはずだから』

アジル先輩が必死に私に告げた忠告が、いまさら耳の奥でリフレインする。でも、気づいたところで腹が立つものは腹が立つ。

『私が勝ったら、お前と契約する』

続いて、あの不吉で生々しい警告が頭の中で何度も再生された。本当に最悪だ。このまま何も測定できないまま検査が終わってしまえば、私はセンターの連中から「ガイドでもないくせに大騒ぎだけ起こした哀れな虚言癖の一般職」として笑いものになる。そしてクロードは約束通り、私を噛み、舐め、気の済むまで味見したあと、逆らう余地もなく契約を結ぶに違いない。

つまり私は、すでに退路を断たれていた。

何でもいい。とにかく、一度はガイディングの波形を立ち上げるしかなかった。

「あなた、ちょっと来てください!」

私が最後の手段として選んだのは、最前列で様子を窺っていた見物人のエスパーを一人、強引に引っ張ってくることだった。

「え?」

ガイディングを起動できない私を指さして友人とひそひそ話していたその男性エスパーは、突然腕を掴まれ、当然のように目を丸くした。

「な、何ですか!?」

「少しだけ手を貸してください!」

私は半ば狂乱しながら、片手で彼の手を握り、もう片方の手を検査用の球体へ押し付けた。

「ほら、見てください! もし私が本当にガイドなら、うまくできなくても、とっくに結果が出ているはずなんです……!」

「もし本当にガイドだと証明されたら、あなたに無料で5回ガイディングしてあげますから!」

威勢よく捲し立ててみたものの、モニターに映る波形は相変わらず微動だにしなかった。焦り、息を荒くした私は、思わずクロードの方を見た。

違う。こんなはずじゃない。

険しい表情のまま、一言も発さずに私を見つめ続けているクロードと視線がぶつかる。

「う、うぅ……」

私は心臓を冷たい手で掴まれたように震え、慌てて目を逸らした。どうしよう。どうすればいいの。最近、クロードが私に強要してガイディングを受けるとき、いつもどうやって発動させていたっけ。

焦る頭で必死に過去の記憶をたどり、その手順をなぞってみることにした。

とりあえず財布でも掴むような無機質な感覚で、適当に握っていた他人の手を握り直した。相手の指の間に自分の指を滑り込ませ、指を絡めるように深く手をつなぐ。

そして親指で、そのエスパーの手の甲を、くすぐるように優しくなぞった。

相手のエスパーに特別な感情があったわけではない。ただ、藁にもすがる思いで、クロードが私の手を握るときによくしていた“癖”を真似しただけだった。彼はガイディングを受ける気などなさそうな態度を見せている時でも、こうすると時々ガイディングが成功したのだ。そうなると彼は呆れたように笑いながらも、つないだ手を引き寄せて私の手の甲に口づけを落とし――。

手の甲を優しくなぞり続けると、筋肉質な男性エスパーの大きな手が、驚いたようにぴくりと跳ねた。しかし、それでもガイディングの光は発動しなかった。

それに、クロードはまだ何かしていたはずだ。

思い出して、ローズ・バレンタイン。何でもいいから思い出して。まずは手を引き寄せて、それから……。

必死に記憶の糸をたぐることに集中していた私は、自分の頭上に、不吉なほど長く大きな影が落ちてきていることに全く気づいていなかった。

「ひっ、ひぃっ!」

「きゃっ!」

つないでいた手が、暴力的な力で引き剥がされた。いつの間にか至近距離まで近づいていたクロードが、私の腕を強引に掴み取っていたのだ。相手のエスパーは手首を押さえたまま、恐怖に顔を青ざめさせて後ずさった。

「きゃあっ!」

「クロード様!」

あっという間に、彼は周囲に控えていた治安隊のエスパーたちに包囲された。だがクロードは、牙を剥く彼らのことなど視界にすら入れていなかった。彼の燃えるような赤い瞳が捉えていたのは、ただ一人、私だけだった。

「私に合わせてやろうと思ってるのか……」

ギリッ、と骨のきしむような音がした。

クロードが忌々しげに奥歯を食いしばる音に、私は本能的な恐怖を覚えて身をすくめた。な、何よ、その今にも歯が砕けそうな凄まじい音は……。

怯える私の前に、彼はどかりと腰を下ろした。

そして、自分の第二の皮膚同然である黒い革手袋を、ゆっくりと、すべて外した。重度の潔癖症のせいで、プライベートルームで独りでいる時以外は決して外さなかった、あの手袋を、衆人環視の中で。

(まさか……素手で私の首を絞めるつもりじゃないでしょうね?)

彼がこれから何を起こすのか見当もつかず、私は完全に硬直した。

彼は手袋を外した大きな両手で、私の右手をそっと包み込んだ。ついさっきまで、名も知らぬ別のエスパーと触れ合っていた、その手を。けれど先ほどのエスパーにしたように乱暴に握るのではなく、私の手の甲を壊れ物を扱うように優しく包み込む。

――えっ?

「ど、どうしたんですか……?」

「……」

彼は何も答えず、そのまま私の手を自分の顔の高さまで引き寄せた。

そして次の瞬間――。

私の手のひらに、そっと自身の唇を重ねた。

伏せられた長い、美しいまつげ。その下で静かに閉じられた双眸。手のひらに触れる唇の、驚くほど柔らかく熱い感触に、心臓が跳ねて息が止まりそうになる。指先がひんやりとしびれ、私は思わず指をきゅっと丸めた。

彼は私の手を両手で包み込んだまま、まるで神に祈りを捧げる敬虔な信徒のように、深く、深く頭を垂れていた。あの現実離れした美貌を持つ、誰もが畏怖する男が、大勢の野次馬の前で私の手に口づけを捧げている。

その絵画のような光景に、頭がクラクラした。なんだか、ものすごく背徳的なものを見せられている気分だ。

「ひゃっ!」

びくん、と座っていた椅子から飛び上がりそうになった。

――彼が突然、熱い舌を伸ばして、私の手のひらをゆっくりとなぞったのだ。

外から見れば、彼の両手に私の手がすっぽり収まっているだけで、周囲の人々には「彼が私の手に深く口づけをしている」ようにしか見えなかっただろう。だが、当事者である私が平然としていられるわけがなかった。熱い舌が、くすぐるように私の手のひらの肉厚な部分を愛撫していくのだから。

ぬるりとした熱が手のひらをゆっくりと這い、指と指の間を執拗になぞるかと思えば、柔らかな肉を軽く歯で甘噛みしてきた。どれだけ手を引き抜こうともがいても、彼にホールドされた手はピクリとも動かない。私はいたたまれず、お尻をもぞもぞと落ち着きなく動かした。

「な、何なの、これ……」

「……」

けれど、何より耐えられなかったのは、彼の視線だった。いつの間にか薄く開けられた瞳が、底知れないほど深い悦楽と独占欲を孕んだ眼差しで、真っ直ぐに私を射抜いていた。

どくん、どくん、と心臓が波打つ。ほんの数分前、彼を恐れていた時とはまったく違う意味で、全身の血が沸騰しそうだった。

すべての動きが、まるでスローモーションのように感じられる。周りの人には決して見えなくても、私にははっきりと見えていた。私の手のひらに深く顔を埋めた彼が、真っ赤な舌をゆっくりと覗かせ、尖った舌先で手のひらをくすぐるようになぞったかと思えば、今度は舌の広い面でねっとりと舐め上げてくる。熱く濡れた肉塊が、私の手のひらから指の付け根まで、吸い付くように動いていた。

動き自体は極めて緩慢なのに、その行為が持つ意味だけがあまりにも露骨で、淫らだった。血の一滴も流れていないような冷たく禁欲的な仮面をかぶったまま、彼はまるで渇ききった獣のように、貪欲に私を“味見”している。白昼堂々、大勢の人々の前で。

まるで、手だけで濃厚な情事を交わしているかのような錯覚に陥る。……本当に、この男はどうかしている。

心の中でそう悲鳴を上げた、その時だった。

ピピッ、ピピッ、ピピッ――!

それまで完全に沈黙を守っていた検査器のモニターの波形が、突然、狂ったように激しく上下に動き始めた。私は手のひらを蹂躙される官能的な感触に気を取られ、ガイディングが始まっていたことにすら気づいていなかったのだ。

気づいた頃には、彼に握られた私の手のひらから、膨大な量の純粋なガイディングエネルギーが、絶え間なく彼の中へと流れ込んでいた。

「あいつら一体何をしてるんだ……?」と呆れ顔で見守っていた検査室中の人々も、その劇的な変化に当然ながら激しく動揺し、騒ぎ立てた。

「えっ、今、ガイディングが成立したのか!?」

「じゃあ……あのガイドはクロード様と刻印を結んだってこと? さっき別のエスパーと手をつなぎ合っていた時は、波形はピクリともしなかったのに!」

「でも、クロード様と手をつないでからも、しばらくは反応してなかったよな」

「検査機器の故障じゃないのか!?」

「……こんな不可解なケース、前例があるか?」

人は水に入れば当然濡れる。それと同じように、ガイドとエスパーが接触すれば自動的にガイディングが成立する――その事実は、この世界の人々にとっては絶対的な自然の摂理であり、常識だった。

ところが、その絶対的な常識を根底から覆す存在として、私が現れた。触れただけではガイディングができない――だから普段は一般人とまったく見分けがつかない、突然変異のバグのようなガイド。それが私という存在だった。

数秒の後、ガイディングはプツリと途切れ、モニターに映る波形も再び静まり返った。それでも私の正体がもたらした混乱は収まらず、検査室のざわめきは波紋のように大きくなっていく。

そんな喧騒の中、私の手をねっとりと握りしめていたクロードが、ふいにその手を離した。

ギギッ、と椅子を引く耳障りな音を立てて、彼は向かいの席から立ち上がる。その表情は、先ほどまでの熱が嘘のように、ひどく冷え切っていた。

「……あ、あの!」

思わず声をかけながら、私もつられて立ち上がる。けれど彼は冷たく私に背を向け、そのまま何事もなかったかのように元の席へと戻っていった。周囲の騒ぎなど一瞥もくれず、静かに腰を下ろした彼は――一見すると、いつもの冷静で高慢な態度を崩していないように見えたが。

強くこわばった顎のラインと、引き絞られた首筋の筋肉を見れば、一目で分かった。彼は今、体内で煮えくり返るような怒りを、理性の力で必死に押し殺しているのだ。

私は彼の冷たい体温がかすかに残る自分の右手を、意味もなくそっと握りしめた。

(つまり……助けてくれたの?)

クロードは、何もしないで私を放っておくだけでも、あの賭けには簡単に勝てたはずだった。私がガイディングを起動できずに終われば、自動的に不成立で彼の勝利になるのだから。それなのに彼は、わざわざリスクを冒してまで私がガイディングできるように導き、正式な検査を受けられるよう手助けしてくれたのだ。

信じがたいことだったが、彼は本当に私との「賭けの約束」を遵守してくれた。今のこの状況が、彼にとって決して愉快なものであるはずがないのに。

「……どうして?」

これも全部、私の想像を絶するような何か別の企みがあるというのだろうか。

「いえ、その……。今のガイディングは一体どうやって行われたのですか、バレンタイン様!」

慌てて駆け寄ってきた検査官が、ノートを片手に興奮気味に尋ねた。

「私にも、よく分からないんです……」

私は力なく答えた。モニターに映る波形は、何事もなかったかのように再びフラットな直線を刻んでいる。それを見つめながら困惑していた検査官は、おそるおそる声を潜めて口を開いた。

「バレンタイン様、お気を悪くなさらないでください。これはあくまで確認のためにお聞きするのですが……」

「はい?」

「まさか……クロード様と、すでに『刻印』を結ばれているのではありませんか?」

私は思わず息を呑み、何か言おうと口を震わせた。そして顔を真っ赤にしながら、猛烈な勢いで首を横に振った。

「い、いえ! 刻印なんて、絶対にしていません!」

「そうですよね。クロード様も、接触してすぐにガイディングが成立したわけではありませんでしたし……。これは学術的にもまったく前例のない特異現象です。十分に研究する価値がありそうですね……」

「…………」

「それでは、適合率の正式な検査結果が出るまで、約5分ほどお待ちください」

ドクン、ドクン。

心臓が喉元までせり上がってきそうだった。

苦しくなるほど激しく脈打つ胸を、私は手でぎゅっと押さえた。そんなことをしても気休めにもならないと分かっていたが、不安で頭がおかしくなりそうだった。

あと5分。たった300秒で、あの賭けの勝敗が決まる。

だけど、今の私は、本当に彼に勝ちたいのだろうか。もし本当に彼を上回る適合率のエスパーが現れて私が勝てば、彼とは二度と関わらずに済む。

――それは、本当に私が心から望んでいた結末だったのだろうか。

何一つ、自分の本当の気持ちに確信が持てない自分が、ひどく情けなかった。

 



 

 

 

  • クロードの思惑と賭けの罠

    触れるだけではガイディングを発動できない主人公は、測定不能(不成立)のままクロードの勝利となる「賭けの罠」に嵌められたと気づき、焦って別の方と手をつなぐも起動に失敗したこと。

  • 衆人環視での官能的な「味見」と起動

    激怒したクロードが割って入り、大勢の前で主人公の手のひらを舐め上げるように淫らに味わったことで特殊なスイッチが入り、沈黙していたガイディング波形が爆発的に起動したこと。

  • 約束の遵守と葛藤の5分間

    クロードは怒りを抑えつつも主人公が検査を受けられるよう手助けして去り、適合率の結果が出るまでの5分間、主人公は本当に彼と離れたいのか自分の本心が分からず激しく葛藤したこと。

 

 

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