こんにちは、ちゃむです。
「憑依者の特典」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
155話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 引き裂かれた運命
「アイ、これは……!」
状況を察したテシリドが私を振り返った。その目には明らかな危機感が宿っていた。
私は叫んだ。
「逃げなきゃ、テリ!」
こちらの戦力は、エキスパート最上位クラスのプレイヤーが二人。しかも今の私は防御スキルも治癒スキルも使えない。今すぐ半径10kmの魔界化領域の外へ出て、空間転移石で脱出するのが最善だった。
しかし、私の両手を縛った世界は、両足まで容赦なく奪おうとしていた。
[〈システム〉警告。『冷気重畳』の影響により、身体が凍結し始めます。]
「ひっ……!」
一瞬で身体の動きが鈍くなった。足首に重い足枷をはめられたような感覚が走る。
[〈システム〉警告。『万年氷の牢獄』が構築されます。]
ドドドドドッ!
「後ろだ……!」
轟音とともに四方から巨大な氷の壁がせり上がり、私たちを包囲した。開けているのは正面だけ。だが、その先には凄まじい密度のブレスを放とうとしているレヴィアタンが待ち構えていた。
[〈システム〉警告。『低次元重畳』の影響により、氷属性攻撃への耐性が大幅に低下します。]
「うっ……!」
まるで極寒の冷凍庫に放り込まれたような寒気が全身を襲う。ここまで来れば嫌でも理解せざるを得なかった。世界そのものが、私とテシリドを殺そうとしているのだと。
「……はぁ」
頭が冷え切ったおかげか、逆に思考はどこか恐ろしいほど冴えわたっていた。
魔界序列183位――超巨大な魔物、レヴィアタン。その怪物が数分かけて溜め込んだブレスの威力は、いったいどれほどのものなのだろうか。
神聖力を失った今の私は、ただの第七段階相当の上級プレイヤーに過ぎない。銀の城塞もない。圧倒的な力もない。つまり――今この状況でSS級ボスの放つ一撃を防ぐ方法は……。
ない。
状況は、絶望的だった。
それでも――。
〈アイレット!〉
「アイ!」
気づけば、私の体はすでに動いていた。私は歯を食いしばりながら、海辺へ向かって全力で駆け出した。そしてテシリドよりもはるか前へ出て、その場に立ち塞がる。迫り来る死のブレスを、先に受け止めるために。
[『魂を裁く天秤』が危険だと叫んでいます!]
[『世界を築く賢者』が逃げろと叫んでいます!]
[『天機を漏らす監察官』が嘆いています。]
全身がはち切れそうなほど息を吸い込んだレヴィアタンは、顎が裂けるほど大きく口を開いた。
[〈システム〉警告。レヴィアタンが『絶対零度の吐息』を放ちます。]
私はインベントリからセーフェンスを取り出し、残っているすべての力を注ぎ込んだ。真正面から押し寄せる死の奔流を、両目を見開いて見据える。
耐える。何があっても耐えてみせる。
[『世界を築く賢者』が極度の緊張のあまり息を止めています。]
[『魂を裁く天秤』が『世界を築く賢者』の首根っこをつかみ、何とかしろと怒鳴っています。]
そして――ついに。
ゴオオオオオッ!
温度という概念すら貫き、魂まで砕いてしまいそうな冷気の奔流が押し寄せた。
「……っ、ぐっ」
歯の隙間から苦鳴が漏れる。全身を守っているはずのオーラを突き破り、骨の髄まで凍らせるような冷気。皮膚が焼けるように痛み、感覚そのものが壊れていく。
そのときだった。
かすみ始めた視界の正面に、一つの人影が割り込んできた。
誰のものかなど、考えるまでもなかった。その広く、頼もしい背中は――。
「テリ!」
彼は私の前へ飛び出し、レヴィアタンのブレスを真正面から受け止めていた。
今すぐ彼を引き寄せ、自分の後ろへ下がらせたかった。だが、彼はすでに私の手の届かない場所にいた。そして私自身も、一歩たりとも前へ進めなかった。
ゴゴゴゴゴゴォン!
ブレスは途切れることなく降り注ぎ続ける。鼓膜を引き裂くような轟音の中で、身体が青白い死に少しずつ侵食されていくのを感じた。治癒の力が使えない以上、結末は明らかだった。
〈アイレット! このままでは……!〉
――このままでは、もうもたない。二人とも、このままでは氷の欠片となって砕け散るしかない。
[『世界を築く賢者』があなたを救う方法を見つけました。]
[『世界を築く賢者』があなたを救う方法を見つけました。]
[『世界を築く賢者』があなたを救う方法を見つけました。]
私の頭の中でも、必死に活路を探していた。どうすればいい? どうすれば生き残れる? いったい、どうすれば――。
「……アイ」
轟音を切り裂くように響いた声が、私の意識を現実へと引き戻した。
私は顔を上げた。今までずっと私に背中を向けていたテシリド。彼は振り返り、肩越しに私へ手を差し伸べた。こんな絶体絶命の状況だというのに、その横顔にはかすかな笑みさえ浮かんでいる。
まるで、これが最後の瞬間だとでも言うように。
「これから君が目にするものを――」
「……」
「驚かないでくれ」
「……何を?」
決意を秘めた表情のまま、テシリドは再び正面へ向き直った。だがその瞬間、私の頭の中は彼への強い不信感と焦燥でいっぱいになった。
――まさか、自分を犠牲にするつもりなの?
ついさっき、この時間軸で長く生きたいと言ったばかりなのに。もうそんな考えをしているの?
燃え上がる視界に合わせるように、頭の中まで熱くなった。そんなこと、黙って見ていられるわけがない。
私は空へ向かって顔を上げ、叫んだ。
「ダンジョン!」
私たちを救えるかもしれない唯一の存在へ向けて。
「ダンジョンシンクを起こしてください! お願い!」
その祈りは天へ届いた。
[〈システム〉『世界を築く賢者』が、多数の神性と物語補正を交換します。]
[〈システム〉警告。『正体不明のイベントダンジョン』とのダンジョンシンクが発生します。]
次の瞬間、足元に深淵のような巨大な穴が出現した。凄まじい重力に引き寄せられ、私の身体はその闇の中へと吸い込まれていく。
ところが、決定的な問題が発生した。
「アイ!」
「テリ!」
引き離されたのは、私だけだった。
テシリドへ向かって必死に手を伸ばしたが、指先は虚空を切るばかりで届かない。
[〈システム〉『正体不明のイベントダンジョン(定員:1名)』が閉鎖されます。]
突然、そのダンジョンには「定員1名」という無慈悲な制限が設けられた。賢者が膨大な神性を費やしたにもかかわらず、世界のルールは私一人だけを救うことしか許さなかったのだ。
血の気が引いたまま、私は顔を上げた。閉じていく入口の向こうで、レヴィアタンの絶対零度のブレスがテシリドを飲み込もうとしているのが見えた。
だめ――!
「テリィィィ!」
それが最後だった。
ヒュルルルルッ――!
入口が閉じると同時に、周囲は完全な闇に包まれた。そして――
[〈システム〉『世界を築く賢者』の過剰な介入に、あなたの肉体が耐えられません。]
そのメッセージを最後に、私の意識は暗転した。
・
・
・
レヴィアタンの狂気じみた肺活量も、ついに限界を迎えた。
青き死の吐息が吹き荒れた後、周囲の景色は一変していた。一帯の生命はすべて絶滅し、地形そのものが溶け落ちて巨大なクレーターが穿たれている。海水が流れ込まないのは、そこにあるすべてが完全に凍りついていたからだ。
焦土と化した大地には冷たい雪が降り積もり、空からは結晶のような白い氷片がフラクタル模様を描きながら舞い落ちていた。
「……」
長年望み続けた滅亡が、ついにこの地で実現した。それなのに、テシリド・アルジェントは少しも喜べなかった。ただ茫然と立ち尽くし、ほんの少し前に起きた出来事を繰り返し思い返していた。久しく感じたことのない、胸をえぐるような喪失感。心臓が重く沈む。彼は微動だにせず、その場に立ち尽くしていた。
そのとき――彼の頭上に巨大な影が落ちる。
〈グオオオオッ!〉
じっと立ち尽くす彼へ向かって、レヴィアタンの巨大な顎が襲いかかる。
喰らわれる、その寸前――。
ザザザザッ!
聖剣の残像を帯びた無数の光が四方へ広がった。幾重にも分かれたオーラブレード。それらは主の意志に従い、空へと舞い上がる。そして全方向からレヴィアタンを包囲し、一斉に襲いかかった。
〈ギャアアアアッ!〉
生まれてこの方、一度たりとも破られたことのなかった鱗がガラスのように砕け散る。青い血を大地へまき散らしながら、レヴィアタンは身をよじった。
「……」
そんな惨状の中でも、テシリドは指一本動かさなかった。十本のオーラブレードを操っていたのは、ただひたすら彼の精神力だけだった。それが可能だったのは、彼がすでにオーラマスターの境地へ到達していたからに他ならない。
彼はゆっくりと左手を持ち上げた。ブレスで溶け落ちた白い衣の隙間から前腕がのぞく。茨の鉄条のように聖痕を取り巻いていた封印具も、かなりの部分が消え去っていた。
アイレット・ローデラインをかばってブレスを受け止めたことが、「死を覚悟した自己犠牲」とシステムに判断されたらしい。
「はっ……」
すべてを覚悟し、楽な道を選ぼうとしていた自分に与えられた報酬がこれとは。それも、彼女が目の前から消えてしまった後になって。
彼は自嘲気味に幻滅を飲み込み、再び耐えることを選んだ。もう少しだけ踏みとどまろうと決めたのだ。
〈グルルルルル……!〉
意識を取り戻したレヴィアタンが、裂けた瞳でテシリドをにらみつけた。圧倒的な殺気と威圧感が襲いかかる。レヴィアタンは再び口を大きく開き、その内部に二度目のブレスのためのエネルギーを集め始めた。
「まずはお前から始末するか」
テシリドは虚空へと手を差し入れた。カプセル収納アイテムを使い、アイレットの亜空間倉庫へアクセスした彼は、そこから回復ポーションを取り出した。
一気に飲み干すと、身体にあった細かな傷がたちまち消えていく。最高の状態へ回復した直後、彼の神形が高く宙へと舞い上がった。
その瞬間、レヴィアタンが蒼いブレスを吐き出し、オーラブレードが純白の軌跡を描きながら激突する。
ドォォォォン!
大地が揺れ、本格的な死闘が始まった。
二つの存在の激突は、ウィブリル島が地図から消え去った後も続いた。意念だけで瞬時に取り出せるポーションが、ヒーラーの存在をかろうじて代替していた。テシリドはアイレットのポーションで再生力を補いながら、レヴィアタンと戦い続けた。
人間の体力の限界を遥かに超えた、凄絶な戦いだった。
そうして長い時が流れ、夕陽が水平線の上下を赤く染め上げる頃――。
ゴゴゴゴゴ……。
怪物の巨体が崩れ落ち、巨大な津波と水柱を巻き起こした。レヴィアタンの最期だった。
テシリドは、かつて島だった暗礁地帯へ降り立っていた。荒れていた呼吸も、やがて静まっていく。
聖剣を収めた彼は、遠く夕焼けに染まる水平線を見つめた。彼女と一緒に見るはずだった夕日を、今は一人で眺める。その眼差しはどこまでも虚ろだった。
彼は、海水が揺れる周囲へと視線を巡らせた。権能を使っても、アイレットを受け入れたあのダンジョンを感知することはできない。そして思い返せば、彼女が消えた瞬間に神の介入を感じていた。
これからどうすべきか。
「……ああ、あれがあったな」
しばらく考え込んだ末、彼は一つの解決策を見つけ出した。
彼は亜空間倉庫から転移石を取り出し、指先で砕いた。目的地は、ラグネイプ魔導共和国の首都――ゲヘニド。
都市の中央にそびえる漆黒の魔塔の上には、淡い月光が降り注いでいた。深夜だったが、魔導師たちの都はこの時間になっても灯りを絶やさず、活気を保っている。
テシリドはその雑踏の中へ自然に紛れ込み、魔塔へと入り、はるか上層の頂上階まで登っていった。その間、誰一人として彼を止める者はいない。
最後の階段を上り、扉を開く。すると、満天の星空のような天井の下に無数の蔵書が保管された空間が広がっていた。ここは魔塔主の私設書庫でもある。聖皇城地下の禁書庫にも匹敵する場所だ。
「『真理の果実』――黄金リンゴの栽培研究」
ウィィィィィン――。
テシリドが特定の本を引き抜いて開くと、空間が揺らぎ始めた。五本の枝を持つ渦がゆっくりと回転しながら広がっていく。やがてそれはダンジョンの入口へと姿を変えた。
彼はためらうことなく、その中へ足を踏み入れる。
ゲートの向こうには、物理法則を無視した立体的な空間が広がっていた。見渡す限り、本で埋め尽くされた書架ばかりだ。いや、この空間そのものが本を材料にして築かれているかのようだった。模様のように敷き詰められた壁も、満天の天井も、螺旋状の階段も、吊り橋のように伸びる床さえも――すべてが本で構成されている。
ここは「幻想の図書館」よりさらに上位の領域。その名は――
〈お知らせ。インペリヌス王立『万古の大図書館』が開館しました。魔界初の無人運営。教養ある魔族歓迎。〉
水の中から響くような、人ならざる存在の声が聞こえてきたのは中央部だった。そこには以前「幻想の図書館」で見かけたものによく似た、巨大な聖書が浮かんでいた。
テシリドは本でできた階段を上り、その前に立つ。本というよりは扉に近い外見だった。鎖に巻かれた中央部分には厳重な錠前が掛けられている。
テシリドの片手が懐へ伸びた。エランティアがいた「幻想の図書館」で、真理の聖書はフロピディスクの素材について教えてはくれなかった。だからこそ、その代わりとして手に入れた鍵があったのだ。
(もう必要ないと思っていたのに、こんな形で使うことになるとはな)
もちろん、後になって使うことになっても嬉しくはなかった。
テシリドは鍵を錠前へ差し込み、静かに回した。
カチリという音とともに、聖書を縛っていた鎖の封印が解かれる。光でできた二重螺旋が彼の身体を包み込むようにスキャンすると同時に、聖書が開いた。
〈資格確認。『大真理の参照権』の使用を承認します。〉
「……今回は“大真理への参照権”か」
予想外だった。だが、彼が準備していた問いは最初から一つだけだった。
〈幻想の図書館ですら答えを得られなかった者よ。何を知りたい?〉
「……」
問うべきことは決まっていた。しかし――。
〈何を知りたい? 問え。〉
「……」
テシリドは、それを口にするまで少々の時間を要した。94回目の回帰で一度尋ね、あっけなく拒絶された問いだったからだ。
深く息を吸い込み、肺の空気を整えてから、ようやく口を開く。
「アイレット・ロデラインは、今どこにいますか?」
〈質問を確認しました。探索を開始します。〉
大真理の聖書は、その問いを正しく受理した。そのおかげで、テシリドは今が117回目の人生の中でも特別な周回であることを改めて実感した。
〈探索完了。〉
灰燼と化したこの広く崩壊した世界に、同名の人物は存在しない。そして今回は、聖書も沈黙しなかった。対象の所在を特定した無機質な声が、再び空間に響き渡る。
〈アイレット・ロデラインは……〉
最初の問いへの答えを聞いた瞬間、テシリドの目が大きく見開かれた。
・
・
・
「……」
意識に光が差し込んだ。
私は暗い洞窟の中で目を覚まし、上体を起こして額を押さえた。ずいぶん長い間、現実から切り離されていたような感覚だった。深い眠りから目覚めた直後のように、直前までの記憶を取り戻すのに少し時間がかかる。
そして、ついに記憶が繋がった瞬間――
「テシリド……!」
叫ぶように呼んだその名が、暗闇の中へ虚しくこだました。
激しく高鳴る心臓を落ち着かせようと努めた。胸の内に渦巻く混乱と衝撃を吐き出すかのように、私は深く息を吐く。ようやく平静を装える程度に落ち着いたところで口を開いた。
「アグネス、どれくらい時間が経ちましたか?」
だが――
「アグネス?」
胸元のネックレスは静まり返っていた。アグネスの気配が感じられない。
どういうこと? 一人用ダンジョンだから、精霊の出入りまで制限されているのだろうか。
すると、視界にシステムメッセージが浮かび上がった。
[『世界を築く賢者』が、アグネスについては心配する必要はないと言っています。]
[『魂を裁く天秤』が、あなたは丸一日眠っており、現在いるダンジョンと現実世界の時間比率は2.5倍だと言っています。]
賢者の言葉にひとまず安堵した後、私は天秤の言葉を反芻した。
テシリドがいる側では、すでに9時間以上が経過しているという。その間、彼は序列183位の怪物を相手にどうなったのだろうか。
「……」
私は決して悲観的な人間ではない。それでも、楽観的な可能性を見出すことはできなかった。
指先が震える。その不安定な反応が嫌で、私は拳を強く握り締めた。
「はぁ……どうしてこんなことに……」
生きると言ったばかりだったのに。人間なら当然あるはずの生存本能。それを口にしただけだった。
「一緒に生きよう」と言っただけなのに。
「それの何が悪いっていうのよ……」
かすれた声は、空しく崩れ落ちていった。
システムが偏った判断をしたのだとか、拡大解釈をしたのだとか。そう理屈で片づけるべきだったのに、できなかった。心のどこかで納得してしまっていたからだ。
皮肉な話だった。私がテシリド・アルジェントに抱いていた長年の愛着や執着は、いつの間にかそれ以上の感情へと変わっていた。そう認めざるを得なかった。まだ自分の口で認めたことさえなかったのに。
こんなの、あんまりじゃない。
「ひどすぎる……本当に……」
両膝を抱えて泣いている場合ではなかった。私は歯を食いしばり、顔を上げた。
そうだ。認めよう。これは私の失敗だ。あの時、一瞬の感情に流されてしまった私の失敗だったとしても、今はその責任を取って取り返さなければならない。
私は無理やり冷静を取り戻した。
打開策がまったくないわけではない。『至高なる万物商』のおばあさんが運営するVIPポイントショップ。そこで販売されている高級腕時計は、確か死亡者の人生すら巻き戻せる一回限りの回帰アーティファクトだった。
今持っているゴールドをすべて現金化し、VIP専用キャッシュショップで何かを購入する。ポイントの還元率は、10万キャッシュにつき1ポイント。したがって、全財産を投げ打てば5万ポイントを確保できる。
そこに、おばあさんが後援してくれた半額割引クーポンを使えば、回帰アーティファクトを購入できるはずだ。
そして次は――。
(まず死ななきゃな)
回帰の発動条件は死亡。ならば、必要な結論は決まっていた。
[『世界を構築する精霊』があなたに激怒しています!]
頭頂部から突き刺さるような激しい刺激に、私は思わず身を震わせた。神の怒りがひしひしと伝わってくる。
「……精霊様?」
戸惑う私に向かって、激しい叱責が降り注いだ。
[『世界を構築する精霊』は、そんな結末を見るためにあなたと契約したのではないと激怒しています。]
[『世界を構築する精霊』は、その程度の浅はかな考えはゴミ箱に捨てろと怒鳴っています。]
容赦ない叱責に、私は複雑な気持ちで目を潤ませた。
だけど。
だけど。
だけど――。
胸の奥で渦巻いていた感情が、やがて言葉になってこぼれ落ちる。
「じゃあ、どうすればいいんですか。テシリドはもう別の時間軸へ行ってしまったんですよ。私をその時間軸へ送ることなんてできないでしょう?」
私と共に思い出を積み重ね、感情を交わしたテシリドは、もう二度と届かない時間軸へ流されてしまった。永遠に。
彼もまた、リセットされた世界をたった一人で彷徨っているのだろう。証拠も、証人もない記憶だけを抱えたまま。再びすべてに裏切られながら。
「それなら……せめて、その記憶だけでも消してください……。こんなに苦しいなら……」
弱々しい恨み言を口にしながらも、私ははっきりと自覚していた。
私が本当に望んでいるのは、ただ世界を救うことではない。
テシリド・アルジェントがいる世界を、救いたいのだ。
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絶体絶命の危機と離散
SS級ボス「レヴィアタン」の強力な攻撃を受け、アイレットとテシリドは追いつめられます。アイレットを救うため『世界を築く賢者』が「定員1名」のイベントダンジョンを発生させたことで、アイレットのみがその場から退避し、二人は離れ離れになります。
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レヴィアタンの討伐とテシリドの行動
残留したテシリドは限界を超えた戦いの末にレヴィアタンを倒します。その後、アイレットの捜索のため魔塔の『万古の大図書館』を訪れ、大真理の参照権を用いて彼女の居場所を突き止めます。
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アイレットの決意と後悔
ダンジョン内で目覚めたアイレットは、テシリドを失った(別の時間軸へ行ってしまった)と考え深く絶望します。回帰アーティファクトで時間を巻き戻そうと死を覚悟しますが、契約精霊からの激しい叱責を受けながらも「テシリドのいる世界を救いたい」という自身の強い願いを再確認します。