監禁王子のメイドとして生き残る方法

監禁王子のメイドとして生き残る方法【63話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「監禁王子のメイドとして生き残る方法」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【監禁王子のメイドとして生き残る方法】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「監禁王子のメイドとして生き残る方法」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

63話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 届かない返事

だが、ロゼも簡単には引き下がらない。

まるで厚かましく開き直ったかのように、平然と訴えかける。 「アルバート様、今の私がおかしく見えることは分かっています。でも……私は同じ人間なんです。信じてくださらなければ困ります。アルバート様は私を信じるとおっしゃったではありませんか……」

うつむく姿は、いかにもか弱げだった。悔しそうな表情と震える声が、その言葉に一層の説得力を与えている。今の彼女は、アルバートの判断を何としても揺さぶろうとしていた。

アルバートはロゼから距離を置いていたハヤンのもとへ歩み寄り、静かにしゃがみ込む。

「人の本質を決めるのは、肉体ではない」

その言葉に、ロゼの表情がゆっくりとこわばり、驚愕の色に染まっていく。

「同じ肉体に入っていたとしても、まったく別人を見分けられないなどあり得ない。それは愚か者だけだ」

ロゼの顔から血の気が引いていく。何を言っても、もはやアルバートを欺くことはできない――そう悟ったようだった。

私は、もしかしたらアルバートが私を見つけられるかもしれないという一縷の望みを胸に、彼とハヤンのいる方へと駆け寄った。

「アルバート! アルバート!」

声の限り叫ぶ。しかし、アルバートは微動だにしない。 今の私は半透明の存在になってしまっているせいか、私の声は誰の耳にも届かないらしい。

どうしよう……。まずは塔の外へ出るべきなのだろうか。ここを離れれば、この絶望的な状況を打開する糸口が見つかるのだろうか。

アルバートは身をかがめ、ハヤンと目を合わせた。 普段ハヤンに向けるような冷徹な敵意はほとんど感じられない。いつもの軽口も消え失せ、まるで重大な事実を確認するかのような真剣な表情をしていた。

「彼女は?」 「私が生きているから、消えてはいない……」

ハヤン也また、真面目な面持ちで答える。 そうだ。ハヤンと私は契約者同士で、互いに命を共有している。私がハヤンを助けられるように、ハヤンもまた私を助けられる存在なのだ。

――契約者。 その事実を改めて思い出した瞬間、私ははっと息を呑み、ロゼの手の甲を見つめた。 私とハヤンの契約の紋様が刻まれていた場所――。 だが、そこから紋様は綺麗に消え失せていた。もう、どこにも存在していない。

ドラゴンとの契約は、魂同士で結ばれるものだと聞いていた。 そして私はあの契約のとき、自分の名前を口にした。 「ロゼ」ではなく、「ユ・ジョンイン」と。 私自身の、本当の名前を。

もしかしてアルバートは、彼女の手の甲から紋様が消えているのを見たのだろうか。 そう考えると、彼の突然の態度の変化にも納得がいく。いくら鋭いアルバートでも、魂が入れ替わったことそのものを目視で見抜くはずはない。 でも、アルバートとロゼが話している間、彼が手の甲を確認している様子はなかったような……。

「手の甲を見れば、はっきり分かるはずなのに……」

そう呟いたとき、ハヤンがアルバートの耳元に小声で何かをささやいた。ハヤンもまた、アルバートに紋様のことを伝えていたのだ。

「手の甲が、どうしたの?」 アルバートはハヤンの言葉の意味が分からないというように、わずかに首をかしげた。 ……え?

「ロゼが契約したとき、私に名前を教えてくれたんだ」 「名前?」 「うん。彼女自身の名前」

アルバートはわずかに目を細めた。 「それを、事前に聞いていたということか」

……まさか、それだけの理由で見抜いたわけじゃないよね? 半信半疑のまま彼を見つめていると、アルバートが小さくつぶやくのが聞こえた。

「――戻ってきたら、その時に聞こうと思っていたんだ」

その言葉は、私が必ず戻ってくるということを微塵も疑っていない前提に満ちていて、私の胸を熱く焦がした。

「なるほど。ドラゴンとの契約は魂に結ばれるものだ。彼女が本来のロゼではないのなら、契約の紋様も消えるはずか」 ハヤンは静かにうなずいた。

アルバートはハヤンをじっと見つめ、ひとつ深くため息をつくと、顎に手を当てて尋ねた。 「そういえば、彼女の名前は何というんだ? いつまでも『彼女』と呼び続けるわけにもいかないだろう」

私がロゼではないという重大な事実よりも、そちらの名前の方が重要に思えるのは、私の思い違いだろうか。 アルバートと視線を交わしたハヤンが、はっきりとした口調で告げた。

「ジョンイン、って名乗ってたよ」 「ジョンイン?」 「うん」

アルバートは、初めて私の名前を口にした。 彼は小さくうなずきながら、静かにそれを繰り返す。

「……ジョンイン」

その発音は、まぎれもなく私自身を呼ぶ声だった。 契約のとき、一度だけ何気なく告げた名前。この世界ではもう消えてしまったと思っていた自分の名を、まさか誰かの口から聞くことになるなんて。しかも、その相手がアルバートだからこそ、なおさら胸の奥が締めつけられる。

(名前を聞いておけばよかった……)

こんなにも簡単に状況が一変するなら、あのとき当然そうしておけばよかった。もし名前を伝えていれば、自分のことや生きていた世界のことも、もっとたくさん話せたはずだのに――そう思うと、悔やんでも悔しきれなかった。

私の名前を口の中で転がすように繰り返していたアルバートは、ふと眉をひそめ、何かを深く考え込んでいる様子を見せた。 「どこか聞き覚えのある名前だな……」

彼の言葉の意味を考える間もなく、私はロゼの姿を見て息をのんだ。 彼女はついに、取り繕っていた仮面を完全に脱ぎ捨てるつもりらしい。その顔に浮かんだ笑みは、もはや人間のものではなかった。

――それは、底知れぬ狂気だった。

「アルバート様、それでも私を愛してください」

彼女が最終的に求めていたのは、どこまでもアルバートの愛だった。 塔の呪いも、魔法のかかった杖も、もはや彼女にはどうでもよかったのだ。

アルバートは鼻で冷たく笑った。 「なぜ私がお前を?」 「私を愛してくだされば、あなたが望んでいるあの女も戻して――」

「……本当は、そうではないかもしれませんけどね」 ロゼは初めて、私の存在をあからさまに認めた。 けれど、その口調には言い知れない違和感があった。まるで私の存在すら、自分に都合のいい道具として利用できると言わんばかりだった。

それでも、アルバートは冷静さを失わなかった。 「お前が死ななければ、それでいい」 彼は迷うことなくそう答えた。

だが、ロゼの笑みはさらに深く、おぞましく歪んでいく。 「……でも、私を殺したら、あの女が戻る体もなくなってしまいますよ?」 「…………」 「彼女がまだこの世界に存在できているのは、私が生きているからなんです」

私がこの世界にまだ繋ぎ止められているのは、ロゼが生きているから……? 困惑する私の前で、ロゼはアルバートへとさらに歩み寄った。

「アルバート様、それなら取引をしましょう。私はただ、あなたの愛が欲しいだけなんです。それだけです」 「あなたの魂が消えてしまうのが嫌なら、私を愛してくださればいいんです」 「お前にとって、『愛』とは何だ?」 「……塔へ来られた時から、もうお気づきだったでしょう?」

ロゼはアルバートの殺気に満ちた視線を真正面から受け止めながらも、一切ひるまなかった。こんな極限の場面で「肝が据わっている」と表現すべきかは分からないが、彼女の態度は不気味なほど堂々としていた。

「まずは、『恋人の魂が消える』とはどういうことなのか、きちんと説明するべきではありませんか?」 アルバートの冷徹な問いに、ロゼはフッと不敵な笑みをこぼした。 「肉体が死ねば魂も消えるのが普通です。でも、幸運にも機会を得た魂は、本能的に生き延びたがるものです。彼女も同じでした」

ロゼがアルバートに嘘をついている可能性も当然ある。しかし、ここまでの話の筋道に、嘘をついているような綻びは見当らなかった。 「彼女が手に入れた肉体は、ちょうど黒魔法の影響で弱っていた私の身体だったのです」 「ずいぶん理にかなった話だな。魂の仕組みについても、やけに詳しく知っているようだ」

アルバートが目を細めて見据えると、ロゼは静かに微笑んだ。その笑みは、これまで私の真似をして見せていたものとはまるで違う、得体の知れない気味の悪さがあった。 「黒魔法を扱う者ですから、魂について調べる機会も多かったんです。ただ――肉体を持たない魂は、時間が経つにつれて輪郭を失い、消えてしまうのですよ」

消えてしまう? ――それじゃあ、このままでは私も、完全に消滅してしまうということ……?

「私が嘘をついていないことは、アルバート様ならきっとお分かりでしょう」 「…………」 「彼女が私の体に憑依できたのは、私の肉体が彼女の魂の波長と奇跡的に適合していたからなんです」

アルバートは何も言わず、ただロゼをじっと見つめ返していた。その瞳の奥には、言葉では表せないほど複雑で激しい感情が渦巻いている。 ロゼは声をひそめ、さらに畳みかける。 「魂と肉体が完全に適合する相手を見つけるなんて、まるで砂漠でオアシスを一つ探すようなものなんです」 「…………」 「私の条件を受け入れてくださることが、アルバート様が彼女を救うことのできる唯一の方法なのです。彼女をもう一度、私の身体に正しく憑依させる方法を知っているのも、世界で私だけですから」

その説明は、ぞっとするほど筋が通っており、抗いがたい説得力を持っていた。 ロゼはそっとアルバートの手を取る。 彼の唇がわずかに震えた。しかし今度は、先ほどのようにロゼの手を荒々しく振り払うことはしなかった。 それに気づいたロゼの顔に、歓喜の笑みが一気に広がった。

「では、彼女をこのまま消え失せさせますか? それとも、私の条件を受け入れてくださいますか?」

私が読んだ原作の物語では、アルバートは塔へ来るなり、迷うことなくロゼをその手で惨殺していた。 もしかすると、彼はあの時からすでに気づいていたのだろうか。 ――ロゼが生きている限り、どんな手を使ってでも、自分の最も大切な人を人質に取られてしまうという残酷な真実に。 ……そして、その果てに自分が望むものを掴むためなら、彼はどんな犠牲も、どんな屈辱も厭うつもりなのだと。

アルバートは大きく息を吸い込んだ。 その微かな息遣いから、彼が抱える底知れぬ苦悩が、半透明の私にまで痛いほど伝わってきた。

「お前が嘘をついていないと、どう証明する?」 ついに、交渉が始まった。 「魂について記された禁断の文献を調べれば、すべて分かることです。魂に関する研究を、私ほど徹底して行った人間は他にいませんから」 「魂と肉体が分離する現象は、この塔へ入る前から起きていたことなのか?」 「黒魔法を使えば使うほど、避けられずに起こる現象ですから」

何度も自分の魂が肉体から抜け出す異様な経験をしながらも、それでもなお黒魔法を手放さなかったロゼは、ある意味では底知れぬ執念の化身だった。 「命を失うことなど、私にとっては大したことではありません……。私が本当に望むものを手に入れられるなら、すべてを投げ出してもいい」

ロゼはアルバートを渇望していた。 まるで人生で一度も光を見たことのなかった者が、初めて太陽の光を浴びたかのように、狂おしいほど彼を求めている。もはや本心を隠そうともしない彼女の瞳には、ドロドロとした欲望が濁りなく浮かんでいた。

「さあ、アルバート様。契約なさいますか?」

アルバートの瞳に、かすかな変化が走った。 これまで一切の感情を見せなかったその顔に、ゆっくりと、ひどく作り物めいた笑みが浮かび上がっていく。 本性を赤裸々に晒すロゼとは対照的に、自分の内なる感情を完璧に覆い隠すアルバートの笑みが、なぜかどうしようもなく痛々しく感じられた。

「少し、考える時間をくれないか?」

アルバートの笑みを肯定と受け取ったのだろう。ロゼは満足そうに深くうなずいた。頑なだった彼の態度がわずかに変わっただけで、彼女は嬉しくて仕方のない様子だった。

「一週間あれば、十分だと思います」 「そうか。では、ひとまず宮殿へ戻ろう」

アルバートもうなずくと、ロゼに自然な動作で、今日私が持ってきていた鞄を手渡した。 ロゼが私の鞄を持つ――。 その光景を目の当たりにした私は、言い表せない複雑な感情に胸を掻きむしられたい思いだった。鞄の取っ手を握る彼女の手に不自然に力がこもるのを見て、たまらなく嫌な予感が胸をよぎる。

「おいで」

ハヤンと視線を合わせることさえ避けていたアルバートは、その場で途方に暮れているハヤンを、いつもの自然な動作で自分のそばへと呼び寄せた。 おろおろと立ち尽くしていたハヤンは、ロゼの姿と目が合うと小さく身をすくめ、慌ててアルバートの後ろへと身を隠した。

「反乱は、無事に収まったようですね」 「……ああ。宮殿へ戻ったら、お前の部屋を用意しよう」 「もともと私専用の泊まり場所はなかったんですか?」 「あちこちの部屋を転々としていたからな」

アルバートは、私がロゼに多額の寄付金を渡していたことなどにはあえて触れず、自然に言葉を合わせた。 「できるだけ私の近くに部屋を用意しておけ」 ロゼはうっとりとした笑みを浮かべながらうなずく。アルバートも作り笑いを張り付けたまま、静かに首肯した。

「それから、もう『殿下』とは……いや」 「あ……分かりました、アルバート様」

ロゼはすぐに呼び方を改めた。彼女の狂った望みを受け入れるふりをしながら、決して懐には踏み込ませない適度な距離を保つそのやり方は、あまりにも巧妙だった。

問題はまだ何一つ解決しておらず、ロゼもまたアルバートを手に入れるためにあらゆる手段を尽くそうとしている最中だというのに―― それでも私は、アルバートと一緒なら、どんな途方もない困難だって必ず乗り越えられるのだという、不思議な安心感に包まれていた。

私たちは石造りの階段を下り、厨房と外をつなぐ重い扉へと向かう。 先頭に立ったアルバートが、ふと背後に声を飛ばした。

「ロゼ、ちゃんとついて来るんだ」

言葉面だけを聞けば、それは当然「ロゼ」に向けた呼びかけだった。 けれど、私には分かっていた。 彼がその名を呼ぶときの、わずかな息のまじり方や、声のトーンを。 春の風のように優しく、愛おしげに響くその声が、私の耳の奥をくすぐる。

――あれは、間違いなく私に向けられた言葉だった。

「はい!」

彼には決して届かないと分かっていながらも、私は思わずそう返事をした。 少しでも、彼の不安や心配が軽くなればいい。 そんな願いを胸に込めて。

 



 

  • アルベルトの本心と「ジョンイン」という名前:アルベルトはロゼの手の甲から契約の紋様が消えていることと、ハヤンから聞いた「ジョンイン」という名前を手がかりに、目の前にいるのが本来のロゼではなく入れ替わった彼女自身であることを確信する。

  • ロゼの狂気的な取引とアルベルトの苦悩:ロゼはアルベルトへの歪んだ愛を原動力に、「自分が生き続けなければ元の体に戻る方法はない」と彼の愛を要求し、アルベルトは彼女を生かして大切な人を取り戻すために苦渋の決断として交渉の時間を承諾する。

  • 宮殿への帰還と届かない返事:反乱が収まった後、アルベルトはロゼに鞄を持たせて宮殿へと連れ帰ることを決め、彼が「ロゼ」と呼んだその優しい声が自分に向けられたものだと確信した主人公は、届かないと知りながらも心の中で強く返事をする。

 

 

【監禁王子のメイドとして生き残る方法】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「監禁王子のメイドとして生き残る方法」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...