こんにちは、ちゃむです。
「憑依者の特典」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
129話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狂気の魔法使い
〈クゥ……〉
「このままじゃ、長く苦しんで死ぬだけだな」
〈……〉
私はセレペンスを取り出した。
闇を帯びた剣身が、軽やかに弧を描く。
スッ――。
母狼は抵抗しなかった。
やがてその巨体は横へと崩れ落ち、地面が重く震えた。
私は背を向け、セレペンスを静かに鞘へと納めた。
「どういうことですか?」
「仔たちを守るために、番犬としての役目を拒んだのでしょう」
堕ちた森の精霊はアナシアに支配され、侵入者を無条件で襲うよう命じられているはずだった。
だが彼女には、生まれたばかりの仔がいた。
授乳しながら戦うことなどできるはずもない。
もし討伐隊を襲えば、仔たちは確実に巻き添えで命を落とす。
だから母は、仔を守るためにあえて討伐隊を見逃したのだろう。
「その代償として、心臓を締め付けられる苦しみで死ぬと分かっていながら」
「……それなのに、討伐隊の方が約束を破って手を出した、ということですか」
「そういうことよアッシュ」
「やっぱり人間って……こんなに嫌らしいんですね。だから私は人を嫌うんですよ」
ヘスティオが苛立ちを隠さず吐き捨てた。
「モリフィスってやつ、本当に頭おかしいんじゃない?」
「違う」
「え?」
私の否定に、ヘスティオを含めた仲間たちが一斉に目を見開く。
私は倒れた母狼と仔狼たちに聖力を施しながら、静かに続けた。
「これはモリフィスの仕業じゃない。キメラ研究者は、ああいう“可愛いもの”を無駄にしないタイプよ」
モリフィスは狂気じみてはいるが、独自の美学と執着を持つ人物だ。
だからこそ、ああいった無意味で残酷な行為を好んでやる人間ではない。
――そして、こんな残虐なことを平然とやる人間は、別にいる。
私は、唯一生き残った仔狼がゆっくりと目を開けるのを見届けながら言葉を続けた。
「たぶんこれは、オデリテ公女の仕業だな」
「今さらどこをほっつき歩いていたのだ、曾孫よ」
「遅くなり申し訳ありません、曾祖父様」
ダンジョン時間でおよそ一時間前。
第三エリア――“茨の森”では、マルセリオ家の八代前の祖と、その直系の子孫が言葉を交わしていた。
「後方で対処すべき問題が残っておりましたので、確認してまいりました。曾祖父様が気にかけるほどのことではございません。どうかご安心ください」
片方は黒い制服を纏った、金髪ポニーテールの美女。
かつて第1魔導軍の指揮官を務め、現在は第7魔導軍の副指揮官へと左遷された――オデリテ公女である。
前線部隊を壊滅させる失態を犯しながらも、副指揮官の地位を維持している時点で、その一族の権勢は推して知るべしだった。
さらにオデリテ本人も、反省や悔悟の色は一切なく、ただ不遜に顎を上げている。
そこからも彼女の性格がよく分かる。
「もちろん、全く気にしていない。あんな忌々しい人間どものことなど、私の知ったことではないのだから」
そしてもう一人は、深紅の外套をまといながらも、“曾祖父”という呼び名に似つかわしくない若々しい容姿の少年。
空のように淡い青の長髪と、銀色の瞳。
その身体には、ところどころ小さな傷跡が刻まれていた。
可愛らしい子蛇が頭の上でくねり、子リスが左右の肩を行き来し、子猫が腕の中で眠っていた。
全体的に柔らかな色合いと穏やかな雰囲気――まるで無害な動物好きの青年にしか見えない。
だが実際の彼は、人間界でも指折りの強者にして狂気の魔法使い――キメラ研究者、モリフィス・マルセリオンであった。
モリフィスは腕の中の子猫を撫でながら、柔らかな笑みを浮かべる。
「それより、さっき通った道で見かけた子狼たち、可愛かったと思わないかい?猫じゃなくて犬系のキメラも、案外悪くない気がしてきたよ」
「研究素材にするおつもりですか?今からもう一匹捕まえてまいりましょうか?」
たった今、残酷なことをして戻ってきたオデリテは、顔色ひとつ変えずにモリフィスへと問いかけた。
それは、確信があったからだ。
モリフィスの腕の中で眠っていた子猫が、会話を理解したかのようにふいに顔を上げ、目を開く。
その瞬間――愛らしい子猫の瞳が蛇のように変わり、可愛らしい口元から鋭い牙がのぞいた。
「キャアアッ!」
実のところ、モリフィスの体に張り付いている小動物たちは、可愛い見た目の裏に怪物の本性を隠したキメラだったのだ。
「おや、うちのカタリナ。嫉妬しているのかい?」
「そのようですね。」
「残念だが、どうやら無理みたいだね。」
「かしこまりました、曾祖父様。」
そうしてオデリテは、背後で適当に放った殺気を収めた。
そのとき、短く赤い髪をした老練な印象の女性が、節度ある足取りで歩み寄ってきた。
王国軍総司令官、ロミナ・レカンドロ侯爵である。
彼女の登場に、オデリテは威圧感を覚え、一歩後ろへと下がった。
「モリフィス大魔法師。」
「ええ、レカンドロ侯爵。」
八サークルの大魔法師とオーラマスターが対峙する構図。
戦意はまったく感じられないのに、不思議と場を張り詰めた緊張が支配していた。
レカンドロ侯爵がモリフィスに口を開く。
「国を害する件は片付きましたか?それでは、再び出立してもよろしいでしょうか?」
ぶっきらぼうな声と表情ではあったが、その眼差しには露骨な嫌悪の色が滲んでいた。
それを見抜いたモリフィスは、蛇を巻き付けた腕を顎の下に添え、目を細めて笑う。
「残念だな、レカンドロ侯爵。我々が常にその手のことにばかり関わっているわけではないのだよ。」
「……違うとでも?」
「今回は違う。そうだろう、曾孫よ?」
「はい、曾祖父様。」
オデリテは相変わらず無表情のまま、淡々と答えた。
モリフィスは、自らの曾孫の言葉をどこまで本気で信じているのか、こんな冗談めいた言葉まで口にする。
「ご覧の通りだ。我々は今回、何一つしていない。家門の名にかけて誓おう。」
それを聞き、終始ふてぶてしかったオデリテが、ふっと小さく笑った。
どこかの老人らしく、モリフィスは後継を見ることに本気だった。
すでに曾孫の代まで見届けてなお、その先の玄孫(やしゃご)まで拝もうとする、どこまでも図々しい祖先である。
一方、レカンドロ侯爵は内心で皮肉げに笑っていた。
(今回“何もしていない”のが、そんなに誇らしいことかしら)
ついに彼女は堪えていた嫌味を口にする。
「少しは自重なさることはできませんか?」
「うん?」
「退却した我が軍の背後に、回収もできないほどの障害物を積み上げていくなんて。最近は両国間で魔石を巡る争いが激化していると聞きますが、このようなやり方で報復する必要があるのですか?」
「魔石?そんな争いがあったのかね?」
レカンドロ侯爵は、自分がモリフィスを過大評価していたことを悟った。
魔法に取り憑かれ、生体実験ばかりを繰り返すこの狂気の魔法使いは、重度の人間嫌いであり、人間社会にはまるで興味がなかった。
その一方でモリフィスは、オデリテに魔石争いに関する情報を伝えていた。
「なるほど、そういうことか。国境に魔石が現れたのだな?」
「はい、曾祖父様。昨夜から我が魔導国と帝国の軍が対峙しています。いつ全面戦争に発展してもおかしくありません。」
「くくっ、それならば簡単な解決法がある。」
「え?」
国際情勢どころか世間の常識すら怪しいモリフィスの口から、“解決法”などという言葉が出てくるとは。
オデリテだけでなく、レカンドロ侯爵までも思わず耳を傾けた。
もっとも――狂気の魔法使いの口から出る提案が、まともであるはずもなかった。
「聖女をさらって脅せばいいではないか。」
「……」
「生半可な聖女ならすぐ死ぬがな。二百年前にもなかなか面白いことをしたことがあってな。効果は確かだったぞ。あのときも聖女ルクレチアを捕らえておいたら、帝国の連中が泣き喚きながら大騒ぎしてな。」
「……“聖女誘拐事件”のことですね。」
「ああ、今はそんな大層な名前で呼ばれているのか。当時はただの“聖女監禁”と呼んでいたのだがな。知っているか?私はあの出来事を今でもはっきり覚えている。あの頃の私はまだ生きていてな――四歳の、とても可愛らしい子どもだったのだ。」
「……そうですか。」
「そういえば、今回のダンジョンにも聖女が来ているのではないか?どうする?さらってしまうか?」
ついに聞くに堪えなくなり、レカンドロ侯爵が口を挟んだ。
「モリフィス様、冗談が過ぎます。」
「くくっ、レカンドロ侯爵ともあろう方が、聖女誘拐のような重大事を冗談にされるとは。これは大事ですな。」
「……」
あまりの言葉に返答を失ったレカンドロ侯爵を放置し、モリフィスはオデリテへと向き直った。
「私は手を貸してやっても構わんぞ、曾孫よ。」
「曾祖父様が政治に興味をお持ちとは、少し意外ですね。」
「政治?違うな。人間どもの事情など知ったことではない。」
「では、なぜです?」
モリフィスは愉快そうに笑みを浮かべた。
「私は人間には興味がないが、聖女となれば話は別だ。あれは非常に興味深い研究材料だからな。お前も魔法使いなら分かるだろう?」
「そうですね。」
オデリテは、ヘルカイオン討伐や黒の魔剣士との戦いで見た、圧倒的な力を持つ“神聖降臨”を思い出した。
確かに神聖降臨は驚異的な力ではあったが、自分の専門外の領域でもあり、特別に興味を引かれるものではなかった。
むしろ、適度に手が届きそうで、研究対象として関心を持ちやすいのは――
「そういえば、あなたの卒業論文のテーマを考えるなら、研究対象は“聖獣”のほうが適しているかもしれませんね。」
「……」
神聖降臨と呼吸を合わせた銀髪の聖騎士を思い浮かべながら、何気なく口にした言葉だった。
オデリテはそれを否定しなかった。
「それよりも、今回は卒業するつもりはないのか?我が家に、二十歳をとうに過ぎても魔塔を卒業できない者がいるとはな。やれやれ」
「大叔父様、何度も申し上げていますが、私は魔力よりも“理”を重んじる黒魔術師ですので、魔法の実技成績にはあまり興味が……」
「はっ!このままでは我が家の大魔術師の血筋も途絶えかねん。せめてお前の子孫はまともな魔力回路を持てるよう、相応しい相手を見つけて婚姻でもしておけ」
やはり年長者との会話は、こうして強引に話が進んでいくものだ。
レカンドロ侯爵は、二人の実りのない会話を見かねて口を挟んだ。
「そろそろ出発いたしましょう。」
「ちょうどいいところだった。急ぐ必要はない。」
彼らは第三区域――茨の森の前に立っていた。
大人の腰ほどもある太さの茨が、不気味にうねり絡み合っている。
ところどころには巨大なチューリップのような形の食虫花が大きく口を開け、獲物を今か今かと待ち構えていた。
この食虫花の茨は再生能力が異様に高く、ソードマスターですら飲み込まれる危険がある。
王国軍は主に剣士中心の構成であるため、オーラ使いの多い彼らにとっては相性が非常に悪い場所だった。
レカンドロ侯爵が注意を促す。
「近づけば捕食され、養分にされます。」
「魔術師がわざわざ近づく理由もないだろう。」
モリフィスは袖に留まっていた蛇を軽く払って飛ばした。
「やれやれ、ベアトリーチェ。」
小さく丸まっていた蛇のシルエットが、次第に膨れ上がり、禍々しい姿へと変わっていく。
ギャアアアッ!
もはや蛇ではない――“蛇だった怪物”が、灼熱のブレスを吐き出した。
一直線に伸びる炎に、茨の森は一瞬で火に包まれる。
その炎は、食虫植物の異常な再生力すら上回り、焼き尽くしていった。
焼かれた植物たちは悲鳴のような音を上げながら崩れ落ちる。
――少なくとも第六階位以上の精霊魔法に匹敵する火力。
モリフィスの使役するキメラ一体が、並の上級魔術師数人分以上の戦力であることの証明だった。
「これでいい。レカンドロ侯爵。」
モリフィスのおかげで、両国の討伐隊は無事に焦土と化した道を進み、森を抜けることができた。
結界の境界を越えたところで、モリフィスが足を止める。
「では、ここで解散としよう。」
どうやら彼は、再び帝国軍の進軍を妨げるために何か仕掛けるつもりらしい。
「はあ……もう好きにしてくれ。」
レカンドロ侯爵は諦めたように肩をすくめた。
最初から止めても無駄な相手だし、帝国軍と合流するのも避けたかった。
ここまでのやり取りを見る限り、聖騎士とキメラ研究者が互いに干渉しないことが、むしろ大陸の平和に繋がるのかもしれない。
「育て。」
モリフィスは低く呟いた。
大魔術師である彼は、多系統の魔法を扱える。
その中には植物の成長を促進する系統――クロロマンシーも含まれていた。
地中に残っていた根を持つ食人植物の茨が、焼け跡の中で不気味な速度で再び成長を始めた。
茨は元の領域をはるかに越えて、さらに密集しながら広がっていく。
このままでは、近くにいる軍勢のいる区域へ侵食し、騎士や魔術師たちを養分として取り込みながら増殖していくだろう。
やるべきことを終えたモリフィスは、満足げな表情で振り返った。
「これで帝国軍に追いつかれる心配はないだろう。」
「……承知しました。参りましょう。」
レカンドロ侯爵はこめかみを押さえながら、騎士らしく沈黙と忍耐を保った。
王族を保護し、この狂気の魔術師から離れるためには、それが最善だった。
この先は、未知の領域。情報もない、新たな局面へと踏み込むことになる。
生きた植物で構成された迷路へと、両国の討伐隊は足を踏み入れた。
「ほう、もう迷宮の庭園に到達したか。」
アナクシアが作り出した数多くの魔導具の中には、実用性に優れた便利なものも少なくない。
その一つが――監視の鏡。
この鏡は、領域内のあらゆる場所の様子を映し出すことができた。
鏡越しに勇者たちの動向を眺めながら、アナクシアは楽しげに目を細める。
「先陣に立った人間たちが、弾除けのように使われているか。まったく、人間というのは争い、分裂し、裏切ることを好む生き物だな。」
アナクシアは監視の鏡を逆召喚で消し去ると、歩き出した。
そしてサキュバスの女王に問いかける。
「ボス部屋の準備は?」
「問題なく完了しております。どうぞご自身の目でお確かめください。」
「そうか。」
やがて二人は、巨大なアーチ状の鉄門の前で足を止めた。
ゴゴゴゴゴ……!
わざと重々しい音が鳴るように作られた扉が、左右にゆっくりと開いていく。
その先に広がっていたのは――荘厳な謁見の間。
血を吸い込んだかのように赤く染まった絨毯が、一直線に伸びている。
その先には、いくつもの階段を上った先にある玉座が据えられていた。
そして、その玉座の上には黄金と宝石で飾られた豪奢な王座が威圧感を放っていた。
公爵であるアナクシアがボスルームを王の謁見の間のように仕立てた理由は明白だった。
『私は魔王になる』
それは魔界全体への宣戦布告にも等しいが、彼女は意に介していない。
背後には混沌の悪が控えているのだから。
サキュバスの女王がアナクシアをそっと促す。
「どうぞお座りください、アナクシア様」
「まだ、その時ではない」
最初に玉座へ座る瞬間には、特別な意味がある。
できるだけ多くの者の前で行いたかった。
――断罪を執行する者たちが、この場に踏み込んでくるその瞬間に。
その光景を思い浮かべるだけで、アナクシアの瞳には狂気じみた興奮が宿った。
「三魔王へ送った“贈り物”への返答はどうなっている?」
「贈り物を持っていった者たちの首が戻ってきました。きれいに切り落とされています。」
「いいね。」
魔界では、それは最高の“返答”だった。
彼女が送った鏡を通じて、魔王たちもすぐにこの“宴”を見届けることになるだろう。
盛大な――魔王デビュー戦になるに違いない。
ザアアアッ!
鬱蒼としたイバラの森は、青い聖火によって灰へと変わった。
私は前を指差し、格好よく叫んだ。
「全軍、前進!」
「はい、軍団長!」
「軍団長に続け!」
「……たった四人で軍団って何だよ。それで遊んでて楽しいのか?」
イペルとアッシュは調子を合わせていたが、ヘステオは冷ややかに言い放った。
「『試練の魔戦士建築家』が、社会性のない可哀想な友人だと遺憾の意を表します。」
「『均衡を奏でる読舌家』は、正しいことを言えなくする組織文化に反対します。」
私はヘステオの言葉を聞こえないふりをして、そのまま前へ進んだ。
焼け野原のように変わってしまったイバラの森のあちこちには、まだしぶとく生きてうごめく植物の蔓が残っていた。
私は手に持っていた鎖をぶんぶんと振り回し、それらを見つけるたびにオーラを込めて叩き切っていった。
バシュッ!
鎖の先には錘が付いており、一撃ごとに鈍器のような威力を発揮する。
ちなみに私は、ウェポンマスター・アグネスを師に持つおかげで、大抵の武器はそれなりに扱える。
「ねえ。」
「ん?どうしたの?」
テシリドに呼ばれて、私は満足げな表情のまま振り返った。
さっきの華麗な活躍に感心したのかと思ったが、どうやら違った。
「その首輪、そんなに気に入ってるの?」
「え?」
「ずっと持ち歩いてるから。」
そこでようやく私は、何気なく振り回していた鎖の先の錘――首輪に目を向けた。
これは、さっき母狼を苦しませずに送り出したあとに手に入れたものだった。
【アイテム】『服従の首輪』
アナクシアが魔獣を調教するために作った特殊な首輪。装着した瞬間から対象は再びあなたを主人として認識し、絶対的に服従する。※装着した瞬間、対象の首回りに合わせてサイズが自動調整される。
なお、子狼は神聖力をたっぷり与えて成長を促した後、アンデッドたちに預けてきた。
ボスでない限り、生きた存在を連れていくことはできないため、それが最善だった。
「『魂を裁く天秤』が首輪を見つめて、妖しく笑っているように見えるぞ。」
その様子を見て、私はこのアイテムの使い道に妙な不安を覚えた。
急いでインベントリに放り込み、軽く手を払う。
「別に、気に入ってるわけじゃないよ。」
「そうか。」
「本当だって。」
「分かったよ。」
なんとなく気まずさをごまかすように、私は足早に歩き出した。