こんにちは、ちゃむです。
「監禁王子のメイドとして生き残る方法」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
62話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ロゼの復活
私はレストランに入るときよりも、ずっと軽い気持ちで店を後にした。夕焼けが消えた夜空には、街灯のように星々が輝いていた。
塔は今や「かつてアルバートが滞在していた場所」という程度の扱いとなり、一種の観光名所として注目を集めていた。中へ入ることはできないが、外観だけでも人々の目を引く佇まいだった。人々は塔を美しいと思い始めていた。ほんの少し時間が経っただけなのに、人々の認識が変わるものなのだと不思議に感じた。
アルバートは、自分の存在を目立たなくする「ハイド」の魔法を使い、人々の視線を避けていた。彼の魔法は日に日に精巧になっていた。
空へと昇った私は、アルバートと初めて塔へ向かったときのように、宙を歩いた。夜空の星々は、まるで空へと続く道のように見えた。
視界に少しずつ塔が入ってきた。周囲には人の姿は見当たらない。アルバートがあらかじめ人払いをしていたのかもしれない。
私たちは静かに降り、扉の前に立った。塔の周囲が騒然としたあの日とはまるで正反対の静けさで、不思議な気分になった。
「私もここを出て以来、ここへ来るのは初めてだな」
アルバートが扉を開けた。ギィ、と軋む音とともに、闇に包まれた空間が姿を現す。アルバートは先に中へ入り、明かりを灯した。
久しぶりに見る厨房だった。
「私はもう少し上まで行ってくる。君は先に行っていてくれ」
アルバートは、自分がほとんど足を踏み入れることのなかった厨房を興味深そうに見回した。こうしてじっくり眺める機会など、これまでなかったのだろう。
私はうなずき、ハヤンと一緒に階段を上っていった。塔は静まり返っていたが、不気味な雰囲気は相変わらず私たちを包み込んでいた。
「バッグを持ってきておいて正解だったな」
アルバートからの贈り物を持ち帰るためのバッグだったが、思いがけず役に立った。私は辺りを見回しながら、しばらく思い出に浸った。
アルバートが寝ていたベッド。ハヤンも含めた三人で食事をしたテーブル。今でも、私たちがここで過ごした日々が鮮やかによみがえってくる。
自然と口元に笑みが浮かんだ。私は上機嫌のまま屋根裏部屋へ向かった。ロゼの服はすべて屋根裏に移してあったからだ。
屋根裏部屋には、いつの間にかうっすらと埃が積もっていた。下の階で過ごす時間が増え、きちんと掃除をすることがなかったせいだろう。私は軽く咳き込みながら、服をバッグへ詰め始めた。
その時、突然鋭い頭痛が走った。
「うっ……」
私は頭を押さえた。
「ロジェ?」
ハヤンが隣で、不安そうな声で私を呼んだ。
全身を激しい痛みが貫いた。黒魔法にかかったときとまったく同じ症状だった。
けれど、黒魔法はアルバートが治療してくれた。しかも、この塔に残っていた魔法はすべてアルバートが取り除いたはずだ。それなのに、どうして? 塔に何か問題でもあるの?
そう考えたのも束の間、意識が遠のいていった。
再び目を開けると――
不機嫌そうな表情をした「ロジェ・アティアス」の顔が目に入った。
……ロジェ・アティアスの顔が見える?
その瞬間、私は自分が「ロジェ」の体から抜け出してしまったのだと悟った。私は幽霊のように透けた姿のまま、空中に浮かんでいた。
これは……。
いったい何が起きているの? 私は今、生きているの? それとも死んでいるの?
混乱していると、ロゼがささやくような声が聞こえた。ハヤンのほうを向いたまま微笑むその姿に、背筋が凍りつく。私が彼女の身体にいた時とは、まるで違う雰囲気だった。
「やっと見つけたわ」
……その言葉は、間違いなく自分の身体を取り戻したことを喜ぶ響きだった。
目の前にいるロゼは、本の中でアルバートを愛し、そのためならすべてを手に入れようとしていた、本来の『ロゼ・アティオス』その人だと私は悟った。物語の中でアルバートが復讐の標的としていた黒魔法使い――。彼女が、自分本来の身体へ戻ってきたのだ。
すべてが終わり、あとは幸せになるだけだと思っていた、その瞬間――。
鋭い痛みが背中を駆け抜けた。
「……ロジェ?」
ハヤンが首をかしげる。目の前の「ロジェ」は、にっこりと笑った。
「どうしたの、ハヤン?」
その笑顔を見た瞬間、私はぞっとした。口元をゆるめるその表情が、私が笑うときの癖とあまりにもよく似ていたからだ。まるで長い間、私を観察し、そのまま真似してきたかのように。
もちろん、もともとロジェも私と同じような笑い方をする人だった可能性はある。けれど、私はさっき彼女の本当の姿を見たばかりだった。……あの不気味な雰囲気をまとっていた姿。それを思い出すと、今の笑顔は私を真似して作られたものなのだと確信した。
ハヤンは不安そうにまばたきをした。何かがおかしいと感じているようだった。
私は慌てて叫んだ。
「ハヤン、それは違う! 私じゃない!」
私じゃないの! と私は必死に叫んだ。
「そろそろ行きましょう。荷物も全部そろったわ」
ロゼは私とよく似た口調で話しながらバッグを手に取った。私は、彼女がこの間の出来事をどこまで知っているのか、不安になった。
……彼女のことを忘れてはいけなかった。
私が憑依した後、ロゼ・アティオスがどうなったのか気になったこともあった。けれど、生き延びることに必死で深く考えたことはなかった。ただ、「私が憑依した時点で消えてしまったのだろう」と安易に思い込んでいた。
それは大きな間違いだった。ロゼ・アティオスは死んではいなかった。彼女はずっと私を見ていた。これまでの私の行動を、ずっと観察していたのだ。私の真似をするために――そして、自分の身体を取り戻すために。
私はアルバートと交わした会話を思い出した。
「呪いをかけるためには、黒魔法使いの魂、魔法使いの道具、そして呪いをかける対象、この三つが同じ場所になければならない。」
呪いに必要な三つの条件。黒魔法使いであるロジェの魂。魔法使いの道具である杖。そして、彼女が呪いをかける対象だった私――「幽霊人」。
さっきの激しい頭痛は、彼女が私に呪いをかけたせいだったのは間違いなかった。私は、ロジェが使った黒魔法の副作用で苦しんでいたわけではない。彼女が私に呪いをかけたのだ。彼女の魂が塔の中に残っているとは思いもしなかっただけだ。
……どうすればいいの?
今のロジェは、もはや――
……やはり、私ではなかった。本の中でアルバートを手に入れるためなら何でもしようとしていた、あの黒魔法使いだったのだ。
だが今、彼女を裁くことは簡単ではない。黒魔法使いだという証拠がないからだ。それどころかアルバートは、ロゼの過去が今の私に重荷になることを心配し、その証拠さえ隠していた。
「ハヤン、帰ったら何かおいしいものを食べようか。お腹が空いたわ」
胸の奥から怒りが込み上げてきた。まるで当然のように私を演じる姿を見ていると、なかったはずの火傷まで疼きそうだった。今日、アルバートと本音で話し合ったことを思い出すと、なおさら怒りが湧いてきた。
……ハヤンの名前を呼ばないで! その名前を付けたのは私よ。あなたが呼んでいい名前じゃない!
そう叫びたかった言葉は、空しく宙に消えていった。
「……うん」
幸いだったのは、ハヤンがロゼを警戒するように、一歩後ろへ下がったことだった。今のロジェは、私が追い出されたことに気づいていた。私に接していたときとは態度がまるで違っていた。
レストランを出てまだそれほど時間は経っていない。だから、今ロジェが話している内容には矛盾があった。けれど、それも一時的なことだ。ハヤンは、私が別人に入れ替わったなどとは夢にも思わないだろう。
……どうすればいいの?
ロジェが黒魔法を使って、自分の体を取り戻したことは間違いなかった。だが、それにもかなりの制限があるようだった。もし自由に黒魔法を使えるのなら、これまでアルバートと何度も触れ合ってきた私を、とっくに嫉妬で殺していてもおかしくない。
……私に使える魔法は何かあるだろうか。
魔法使いとしていくつかの魔法は使えるけれど、自分の存在を知らせられるかどうかは分からない。しかも今日は外出する際、杖まで置いてきてしまった。
何よりも、アルバートに「私とロジェの魂が入れ替わっている」と伝えなければならない。果たして、その方法はあるのだろうか。
ハヤンのことを考えていると、目の前にアルバートの顔が現れた。私は驚いて思わず後ずさる。
「ずいぶん時間がかかるな」
やはり――アルバートにも、私の存在は見えていなかった。
「そんなに持ち帰るものがあるのか?」
私は慌ててロゼのほうを向いた。ロゼは目を細め、アルバートを見つめながら優しく微笑んだ。
「何でもありません、王子様。もうすぐ終わります」
「……そうか」
アルバートはロゼをじっと見つめながら答えた。
「アルバート! アルバート!」
私は彼の前へ駆け寄り、必死に手を振った。けれど彼の視線は私を通り過ぎ、私ではなくロゼへ向けられていた。――私ではない、侍女ロゼへ。
「王子様」
ロゼは荷物をまとめ終えると、アルバートのもとへ歩み寄った。彼女は穏やかに微笑んでいた。私が笑うときの表情を、ずっと真似している。アルバートを呼ぶ声まで同じだった。まるで、アルバートを慕う侍女「ロジェ」を完璧に演じているかのように。
「王子様」
私は、アルバートが違和感に気づいてくれることを願った。そんなことはあり得ないと分かっていながらも。
「アルバート、今のロジェは私じゃないの!」
私が必死に叫んでも、その声はアルバートには届かなかった。アルバートはただ、静かにまばたきをした。
ロゼはアルバートの胸へそっと身を寄せた。アルバートは優しくロゼの背中を撫でる。ロゼはさらに彼の腕の中へ潜り込んだ。
アルバートには、ロゼの異変は何ひとつ分からないようだった。彼の腕の中に抱かれているロジェを見つめながら、私は絶望した。
絶望に包まれた。
アルバートは腕の中にいるロゼと視線を合わせた。しばらく沈黙が流れる。アルバートはロゼを鋭く見据えた。
彼がロゼの顎に手を添えた瞬間、ロゼの顔は喜びに満ちた。しかし、アルバートの表情は正反対だった。彼の瞳は一瞬で冷え切った。
「おかしいと思っていた……。何度も私の思い違いではないか、ただの考え過ぎではないかと自分に言い聞かせていた」
ロゼの顎をつかむ彼の手に力がこもる。つい先ほどまで私と穏やかに話し、微笑んでいた人物とは思えないほど、その表情には冷たい怒りだけが宿っていた。
「……やはり、本当だったのか」
アルバートはロゼを見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「そうだ。あの目を見た時、私は復讐を誓った。すべてが終わったら、お前の首をためらいなく刎ねるつもりだった」
彼は穏やかに微笑むと、ロゼが自分の襟元をつかんでいた手をそっと外した。勢いで後ろへよろめいたロゼは、そのまま尻もちをつく。手を後ろについてようやく体勢を立て直した彼女の前に、アルバートは片膝をついて視線を合わせると、まっすぐその瞳を見つめた。
「君は、記憶を失っていたわけじゃなかったんだね」
ロゼは息をのんだ。まさかこんな展開になるとは、まったく予想していなかったようだった。聞いていた私も同じくらい驚いていた。けれど、相手がアルバートだからこそ信じられた。アルバートは、根拠もなくこんなことを口にする人ではない。私は誰よりも彼の洞察力を知っていた。
「君自身の口から話してくれることを願っていた……。まさか、ここまで全部変わってしまうとは思わなかった」
「王子様、何をおっしゃっているんですか。私はずっと王子様のおそばにいました。お食事のお世話もして、一緒に――」
ロゼは不安そうな表情を浮かべた。
私は背筋が震えた。気づいてほしいとは願っていたが、本当に見抜けるとは思っていなかった。考えてみれば当然だ。人が誰かに憑依するなど、普通は信じられるはずがない。しかも、それがこんなにも短時間で起きたのだから。
「本物のロゼは……いや、彼女はもう私を『王子様』ではなく、『アティオス』と呼んでいる」
私はその時、違和感の正体に気づいた。ロゼが彼を呼ぶ呼び方だった。だが、それだけで私が別人に入れ替わったと見抜くのは簡単なことではない。
「やはり黒魔法使いだったのだな。あの日、お前の肉体と精神が崩壊し、魂が抜け落ちた。そして、その時に『彼女』の魂が入り込んだというわけか」
予想もしなかった事態に直面しているにもかかわらず、アルバートの声は少しも揺らぐことなく、はっきりと響いていた。
「彼女はどこだ」
アルバートの瞳が鋭く光った。その言葉にロゼは明らかに動揺し、不安げに視線を泳がせた。こんなにも早く正体を見破られるとは思っていなかったのだろう。私でも同じだったはずだ。アルバートの反応は、あまりにも早かった。まるで人間離れした直感だった。
おずおずとロゼはアルバートの手首に手を添えた。視線をそらし、何度かまばたきをしてから口を開く。
「王子様……本当は、お話ししないつもりだったのですが……」
少し間を置いて、彼女は続けた。
「実は、塔へ戻った瞬間から……塔を出てからの記憶が、すべてなくなってしまったんです」
アルバートは無表情のまま問い返した。
「記憶を失った、と?」
「はい。でも、それでもここで何かがあったことだけは……」
「全部覚えています!」
ロゼは信じてほしいと懇願するように必死に訴えた。
それは事実なのだろう。彼女は毎日私を観察していたに違いない。私と同じように笑い、声の調子まで真似し、話し方までそっくりに再現していた。不安にならないはずがない。私は以前、ロゼの身体に憑依した直後、「記憶を失った」と言い訳をしたことがある。その前例がある以上、今のロゼの言葉にも十分な説得力があった。
私は気が気ではなかった。いくらアルバートでも、「また記憶喪失になった」と言われれば、心が揺らいでしまうのではないかと思ったからだ。
「人の本質を見抜くことは、それほど簡単なものではない」
アルバートはロゼに触れられた手を、まるで汚れでも払うかのように乱暴に振り払うと、眉をひそめた。その苛立ちに満ちた表情は、私ですら見たことがないものだった。
彼は冬の風のように冷え切った眼差しで、ロゼを見据えた。
「殺す前に言うつもりだったことすら、お前には叶わなかったのか。お前の体に憑依していた彼女は、どこへ行った?」
ロゼはまばたきをし、唇を強く噛んだ。瞳の奥には、隠しきれない絶望が浮かんでいた。その痛ましい表情は、思わず同情してしまいそうになるほどだった。
私は固唾をのんで、ロゼとアルバートのやり取りを見守った。今の私には、何もできることがなかったから。
「……何をおっしゃっているんですか。王子様が好きだと告白してくださって、抱きしめてくださって、キスまでしてくださったロジェは、私じゃないですか」
崖っぷちに追い詰められたロゼは、必死にアルバートへすがりつこうとした。その切実な訴えには、真に迫るものがあった。
しかしアルバートは、彼女がつかんでいた手首を振り払うようにして彼女を突き放した。それだけでロゼは勢いよく後ろへ倒れ込み、床に転がった。アルバートの瞳には、嫌悪の色が宿っていた。感情を隠そうともしない彼の姿は、どこか見慣れなかった。笑みの奥に隠されていた憎悪とは、なんて凄まじいものだったのかと思う。
「人として扱う価値があるのは、人間だけだ」
『人の本質は見抜ける』という言葉が、これほど胸に響くとは思わなかった。人が変わったことを、その目を見るだけで見抜いてしまうほど、彼は鋭い観察力を持っていたのだ。普段以上のその洞察力には、思わず驚かされた。
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ロゼの復活と身体の奪還
塔の屋根裏部屋で突然の激しい頭痛に襲われた主人公は、肉体から魂が抜け出し幽霊のような姿になってしまう。それは、かつて身体を乗っ取られていた黒魔法使いのロゼが、主人公を観察し続けて仕掛けた呪いによって本来の身体を取り戻した瞬間だった。
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本物を見抜くアルバートの洞察力
ロゼが主人公の話し方や笑い方を完璧に真似て周囲を欺こうとする中、アルバートの元へ戻った主人公は必死に自身の存在を訴える。しかし、ロゼと対峙したアルバートは、わずかな違和感や呼び方の変化から彼女が偽物であることを一瞬で見抜く。
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黒魔法使いの正体露呈と決別
アルバートは、目の前のロゼが記憶を失ったふりをしてごまかそうとするのを冷徹に拒絶する。彼はすでにロゼが黒魔法使いであることを知っており、主人公の体に何が起きたのかを鋭く問い詰めるのだった。