私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに

私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに【48話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

48話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 婚約話

「ルチ! ルチ! ルチ!」

私は皇宮へ駆けつけ、ルチの部屋の扉を壊さんばかりの勢いで開けた。

「エスピン?」

突然の訪問に、ルチは驚いて体を起こした。

「エスピン、大丈夫ですか?」

ハリソンまで驚いた様子で声をかけてくる。(いや、この二人はどうしてこんなにものんきなの?)

最近のルチとハリソンはいつも一緒に行動していた。ルチが知っていることなら、ハリソンも知っているはずだ。

(二人で口裏を合わせて、知らないふりをしているってこと?)

「ちゃんと話して!」

「落ち着いて。どうしてそんなに興奮しているの? 何があったの?」

ルチが近づいてきて私デリア……ではなく私の手を取り、ソファまで連れて行った。

しかし、ソファに座っても震えは収まらなかった。

落ち着けですって? どうしてこんなに興奮しているのかですって? 今そんなことを言っている場合じゃない。

「あなた、婚約しているんでしょう!?」

ルチは目を大きく見開き、後ろにいたハリソンも息をのんで驚いた。

だが、その反応は私が婚約していることに驚いたのではない。私がその事実を知っていたことに驚いたのだ。

裏切られたという思いが、さらに強くなった。

「……私は少し失礼します。」

ハリソンは慌ててその場を離れた。逃げるタイミングだけは見事だったが、今日の追及の相手はルチであって、ハリソンを捕まえるつもりはなかった。

ルチはしばらくの間、ゆっくりと瞬きをしていた。

「どうやって知ったんだ?」

ちなみに、ルチは私がいろいろな方法で神々に仕えていることは知っていたが、メイ、ベル、シオン、デリアの存在までは知らない。このすべてを知っているのは、当事者たちとビリブンだけだ。

「今は、どうやって知ったかなんて重要?」

「……それはそうだけど。」

「どうして私に話してくれなかったの?」

私は腕を組み、「言い訳があるなら聞こう」という視線でルチを見つめた。するとルチは、あまりにもあっさりと答えた。

「婚約しないと思っていたから。」

あまりにも簡潔な返事だったので、私は一瞬その意味が理解できなかった。

「え?」

「婚約するつもりはなかったから、あなたには知らせなかったんだ。」

ルチの瞳は少しも揺らがなかった。その真っ直ぐな態度を見ているうちに、私の怒りは急速に冷めていった。

「……それでも、教えてほしかった。」

こんな大事なことを他人づてに知ったのは、やっぱり寂しかった。

『え? そんなことで寂しいと思うものなの?』

一瞬、自分が少し興奮しすぎているのではないかという考えが頭をよぎったが、すぐにその思いを振り払った。私はこれまで、どれほどルチのために尽くしてきただろう。陰で支え続けてきた自分の苦労を思えば、そう感じるのも当然だと思えた。

「あなたに余計な心配をかけたくなかったんだ。それに……」

なぜかルチはそこで言葉を切った。

「それで?」

先を促すと、ルチは小さく笑った。

「君が何も反応しないんじゃないかとも心配だった。」

つまり、私がルチの婚約話を聞いても何とも思わないと考えていたってこと? だったら、さっきあんなに安心したように笑ったのはどうして?

「ヌヌも言っていたけど、私があなたを心配しないわけないでしょ?」

「それとは少し違うだろ?」

何が違うの? 理解できずに顔をしかめると、ルチが私を呼んだ。

「エスピン。」

「なに?」

「私が婚約しなければよかったと思う?」

ルチは不思議そうな目で私を見つめた。まるで私の本心を知ろうとするように、慎重に様子をうかがっている。

「婚約しないって言ってたよね。」

「しないよ。ただ、あなたの考えを聞きたいんだ。私が婚約しない方がいいと思う?」

ルチの瞳が、どこか真剣な色を帯びた。

「相手は誰なの?」

私は答える前に、先に婚約相手を尋ねた。

ルチは少し眉をひそめた。話をそらすつもりかという表情だったが、何か思うところがあったのか、素直に答えてくれた。

「ゼルダ・パーカー。」

『それ、誰?』

思わずそう口にしてしまうほど、聞いたことのない家名だった。

「パーカー家? 初めて聞く家名だけど?」

「ナルム伯爵家だよ。」

「でも、どうして私は聞いたことがないの?」

私が社交界で活動していないからといって、貴族の家門をまったく知らないわけではない。あちこちから噂を集めていたおかげで、むしろ家門の名前には詳しかったはずなのに、そんな私ですら聞いたことのない家門だった。

「特に目立つところのない家門だから。」

目立たない家門って……。いくらなんでも、皇族の婚約相手なのに、それはあまりにも地味すぎない?

「その人とは知り合いなの?」

「いや。私も噂を聞いた程度だ。相手は私より年上でもあるし。」

年齢が少し離れていると、同年代ほど顔を合わせる機会はなかった。

「何歳なの?」

「25歳。」

「……それはちょっと衝撃だね。」

相手は成人で、ルチはまだ未成年だった。もちろん、成人と未成年が婚約すること自体は珍しくないが、そうした婚約はたいてい幼い子どもの後見人となるためなど事情がある場合の形式的なものであり、未成年者が成人すると解消されるのが常だ。今のルチには、そんな婚約は必要ないはずだった。

「その人のことが好きなの?」

「会ったこともない相手を?」

ルチは「何を言っているんだ」というように眉をひそめた。だったら、好きでもない相手と婚約する理由は何だという話になる。

「うん。私は、あなたには婚約してほしかったわけじゃない。」

そう言いかけると、ルチはしかめていた眉を一瞬で緩め、慌てて手で口を押さえた。

「これは、なんだかすごく……」

手で口を覆っていたせいで、もごもごしていて最後までは聞き取れなかった。

ルチが契約婚約のような話を持ち出さなかったのは幸いだったが……いや、真っ先にそんな発想をした私の方がおかしいのかな? 恋愛小説を読みすぎて、考え方が偏ってしまったのかもしれない。

そんなことを反省しながら顔を上げると、ルチは満足そうににっこり笑っていた。

「私が婚約するのが、そんなに嫌なの?」

『なんでそんな話になるの?』

正直なところ、ルチが婚約すること自体が嫌なわけではない。私が口を出すことではないのだから。ただ、将来出会うはずの原作ヒロインのことを考えると、軽々しく婚約しない方がいいと思った。

『もっとも、物語はすでに原作から少しずつ変わり始めているし、ルチの相手が原作ヒロインではない可能性もあるけれど……。』

それでも、本当に相手と会ってから慎重に決めた方がいい気がした。

「でも、私は本当にびっくりしたんだから。これからは軽々しく婚約なんてしないって約束して。いい?」

私はきっぱりと言い聞かせるように言い、小指を差し出した。もう二度と、こんなふうに驚かされたくなかった。

ルチはしばらく私の手を見つめると、おずおずと指を絡め、親指をそっと重ねてきた。

「……そうして。」

そう答えながら、ルチは口元に浮かぶ笑みを隠そうともしなかった。

「それはそうと、イザベル皇妃は何を望んでいるんだ?」

「さあ。私にも分からない。」

そうは言ったものの、ルチの様子は落ち着いていた。普段ならイザベル皇妃の話題が出るだけで気分を悪くするのに、今日はさっきからずっと嬉しそうに笑っている。だから私は、それ以上深く考えないことにした。

「急に不安になったのに、そんなにはっきり言い切っていいの?」

「うん?」

「婚約のことだよ。イザベル皇妃が主導している話なのに、『嫌です』なんて言って通用すると思う?」

これはあのイザベル皇妃自らが進めている縁談だ。ルチが「嫌です」と言ったくらいで、簡単に取りやめになるとは思えなかった。

「簡単にはいかないだろうね。でも、だからといって言われるまま従うわけにもいかない。」

ルチはあまり深刻そうではなく答えた。特に解決策があるようにも見えないのに笑っているので、なんだか信用できなかった。私も何か方法を考えなければ、と思ったその時――。

「君と約束したから。」

ルチは優しく微笑んだ。その視線には、あふれるほどの愛情が宿っているように見えた。

『……前から思ってたけど、この子、最近ちょっと様子がおかしい気がする。』

「……もしかして?」

私はある可能性に思い当たった。危うくルチに「私のこと好きなの?」と聞きそうになったが、ぎりぎりで飲み込む。そんなことを口にしたら、もう後戻りはできない。

(ハリソンの件を忘れちゃだめ。)

告白されると思ったのに違っていた、あの苦い記憶がよみがえった。また早とちりして恥をかく前に、必死で自分を落ち着かせた。

「エスピン。」

私が考え込んでいる間、ルチはじっと私を見つめていた。

(うっ……!)

思わずたじろいでしまうほど、甘く優しい眼差しだった。あんな穏やかな表情には、本当にまだ慣れない。

『だから私が勘違いしちゃうんだよ……。』

なんとなく照れくさくなって、知らないふりをしながら口元を少しだけ上げた。

「ん?」

「婚約のこと。」

「うん。」

ルチが私の手を握った。いつも握る手なのに、なぜか指面に力が入りそうになって、少し身じろぎしてしまった。ルチは何事もないように、その手をぎゅっと握り返した。

「私が解決するから、待っていて。」

力強くそう約束するルチに、私はただ頷くことしかできなかった。本当に、なんだか変な気分だった。

皇宮を出ると、その足でまっすぐデリアのもとへ向かった。

なんとなく気持ちが落ち着かず、このまま家へ帰れば一人で悩み続けそうだったからだ。どうすればいいか分からない時はデリアに相談しよう――そう思い立って足を向けたのだ。

「思ったより早かったですね。どうでした? 皇子様から婚約のお話は聞けましたか?」

デリアは笑顔で私を迎えてくれた。

「うん。大したことじゃなかったよ。話は聞けたけど、ルチには婚約する気はないみたい。」

簡単に事情を説明すると、デリアは予想していたように大きく驚くこともなく頷いた。

「そうでしたか。」

『……私が少し過剰に反応しすぎたのかな?』

「パーカー家って知ってる?」

私の問いかけに、書類を手に立ち上がろうとしていたデリアが動きを止めた。

「急にどうしたんですか、パーカー家なんて?」

「ルチの婚約相手なんだって。でも私は聞いたことのない家なんだ。」

「皇子殿下の婚約相手がゼルダ・パーカーなのですか?」

「ゼルダ・パーカーを知っているの?」

デリアは小さくため息をつき、書類をもう一度机に広げた。

「実は、以前ご依頼いただいていた件の調査がようやく終わり、ご報告しようと思っていたのですが……。どうやら、そちらの方が先のようですね。」

『前に頼んでいた調査って、何のことだったっけ?』

調査対象があまりにも多く、少し混乱していた。

「先ほどメイベル・プレミアムで話し合って、いくつか情報を整理しました。その中に、すでに調査が進んでいた件があり、資料が残っていたんです。」

デリアは二つの書類を持ってきて、私の向かいに座った。そして、そのうち右側の書類を私へ差し出した。

「こちらをご覧になった方が分かりやすいと思います。」

デリアは、自分で説明するより資料を見た方が早いと判断したようだ。私はすぐに書類へ目を通した。

そこには、先ほどメイベルで名前が出てきたネイス伯爵について記されていた。密会が疑われる接触の記録をはじめ、日時、場所、面会回数などが細かくまとめられている。しかも彼らは大胆にも、昼間に会っていた。

(まあ、夜に家へ帰らなければ夫人に問い詰められるだろうし……)

『思い出した。』

そして、推定される相手の名前を確認した瞬間、私は思わず口をあんぐりと開けた。

ゼルダ・パーカー。

ルチの婚約相手になる予定の人物だった。

「これ、本当なの?」

現場を直接押さえない限り、この手の情報はあくまで推測にすぎない。密室で二人が何をしていたかまでは、監視している者にも確認できないのだから。

「ご覧になれば分かると思いますが、状況証拠はかなり揃っています。さらに決定的な証拠を集められるよう、魔法道具も手配するつもりです。」

魔法道具は高価なため、確信がなければ使うことはない。つまり、デリアはこの二人の関係をほぼ確実だと判断しているということだった。

「ひどすぎる……。ここまでやるなんて、あまりにも――」

「そんな人物をルチに紹介するつもりなの?」

思わずきつい言葉が口をついた。いくら嫌っているからといって、さすがにやりすぎではないだろうか。イザベル皇妃が常軌を逸しているのは分かっていたが、今回は度を越えていた。

私が憤ると、デリアは落ち着いた口調で言った。

「そういう人物だからこそ、皇子様の婚約相手に選んだのでしょう。」

イザベル皇妃が、ルチの婚約者を何も調べずに選ぶはずがない。当然こうした事情はすべて把握したうえで、あえて選んだということだ。相手の弱みが大きいほど、思いどおりに操りやすいから。

「つまり、自分の都合で自由に支配できる相手だから選んだってこと?」

デリアは静かにうなずいた。

もしゼルダ・パーカーが本当にルチと婚約することになれば、彼女はイザベル皇妃の手中に落ちるしかない。

『ルチも、ゼルダ・パーカーにこんな問題があることを知っているの? だから「自分が解決する」と言い切ったの?』

ルチは自分が解決すると言っていた。それでも、このまま放っておくわけにはいかなかった。

改めて資料に目を通すと、ネイソン伯爵とゼルダ・パーカーの関係は思った以上に長かった。デリアの部下が最初に不審に思ったのは約3か月前。その間、二人は2日に一度は必ず会っており、まるで世間に見せつけるかのように情熱的な時間を過ごしていた。だが、この1週間は一度も会っていない。それは、ゼルダ・パーカーが警戒すべき理由を得たということなのだろう。そして、その時期はルチとの婚約話が持ち上がった時期と一致しているはずだった。

どれほど軽んじられている皇子とはいえ、相手が――

「相手は皇族ですから、慎重になるのも当然でしょうね。」

「証拠を押さえるのも大変そうだね。」

「ええ。少し時間がかかると思います。」

相手が慎重であればあるほど、証拠をつかむのが難しいのは当然だった。

「こうなることは予想していたの?」

「ええ。二人とも重要人物ではありませんでしたから。」

こうした問題は、証拠もないまま軽々しく公表することはできない。もしゼルダ・パーカーが誹謗中傷だと主張し、世論を味方につければ、こちらが逆に批判を浴びる可能性もあった。

「これはとても慎重に進めなければならない件だからね。証拠は確実に集めて。」

「分かりました。人員と魔法道具を十分に投入して調査を進めます。」

「証拠は必ず手に入れてみせます。」

私はデリアを信じて任せることにした。

「それで、もう一つの話って何?」

今日だけでも情報量が多すぎて頭がいっぱいだったが、デリアがわざわざ呼んだ以上、まだ何かあるのだろうと思って尋ねた。

「ええ……こちらも、説明するより書類をご覧いただいた方が早いと思います。」

つまり、口頭では簡単に説明できない内容ということだ。嫌な予感しかしない。私はデリアが新たに差し出した書類を受け取った。

『ジュリアン暴行事件』

その見出しを見た瞬間、デリアが言いづらそうにしていた理由を理解した。

「これは……」

「はい。これは、メイが経営していた仕立て店に関する調査報告です。お時間がかかってしまい、申し訳ありません。」

デリアと知り合ったばかりの頃、私はメイとベルが過去にどんな苦労をしてきたのか調べてほしいと頼んでいた。その時はベルについての報告だけ受け取り、メイについてはさらに調査が必要だと言われていた。それが、こんなに時間が経ってからようやく報告書として届くとは思ってもいなかった。

「本当に時間がかかったね。でも謝る必要はないよ。それだけ調査が難しかったってことなんだから。」

「そう言っていただけて助かります。実は、メイから店を引き継いだ人物が、長い間ほかの大陸へ行っていて、最近ようやく戻ってきたんです。」

「ほかの大陸?」

この世界にも当然、別の大陸は存在していた。しかし、大陸間の交流はそれほど盛んではない。貿易商が行き来する程度であり、その人物は別大陸へ渡ったという。しかも、ジュリアン商会を買い取った人物が、だ。

「商会はどうなったの?」

「もちろん売却してから出発しています。」

何か引っかかるものがあった。私はそのまま資料を読み進めた。

ジュリアン商会の創業者はメイの祖父だった。商会は着実に成長し、父の代で事業を引き継いだ後には、王都でも指折りの大商会へと発展していた。

「思った以上に大きな商会だったんだね。」

「はい。ですから、一夜にして倒産した時は、周囲も大きな衝撃を受けたそうです。」

資料には、ジュリアン商会が発展していった経緯が、かなり詳しく記されていた。

メイの祖父と父は商才に恵まれ、市場を見る目も確かで、素早く事業を広げて財を築いた。調査した限りでは、不正な点は見当たらなかった。しかし、メイの父は事故で亡くなり、幼いメイが仕立て店を継ぐことになった。店主の突然の死に従業員たちは動揺したものの、メイは店を着実に立て直していった。

そんなある時、有望な生地を見つけて大量に仕入れた。ところが予想に反して、その生地は売れず、多額の資金が寝てしまった。さらに、その頃から生地を納入していた仕立て工房が、代金の支払いを先延ばしにし始めた。

仕立て店にとって最大の取引先は仕立て工房だった。そうした取引先では大量の生地を使用するため、一度支払いが滞ると店への影響も大きかった。代金の支払いは月に一度まとめて行われていたため、衣装室の1か月分の発注だけでもかなりの金額になる。複数の取引先から同時に代金の支払いを止められれば、どれほど経営が安定していても商会は大きな打撃を受けるしかなかった。

結局、メイは商会を売却せざるを得なくなった。その時、メイの商会を買い取ったのがコナー・ウェスリーという人物だった。

ここまでは、以前メイから聞いていた話と一致している。コナーは二束三文でメイの商会を手に入れた後、ほどなくして商会を転売し、自身は別大陸へ渡ってしまった。

この点を不審に思ったデリアは、さらに調査を進めた。資料には、メイの父親がどのように亡くなったのか、そしてメイが商会を継いでからコナー・ウェスリーが裏でどのように商会へ圧力をかけ続けていたのかまで、詳細に記録されていた。

「この件なら、本当はもっと前に調査が終わっていたはずです。それなのに今になってようやく報告が上がってきたということは……」

「カーナーという人物の背後に誰かいるの?」

「その可能性が疑われたため、報告が遅れました。相手は別大陸にいたので、情報を集めるのに時間がかかったんです。」

「それでも、よく突き止めたね。」

「少し前にカーナーが別大陸から戻ってきたと分かったので、すぐに調査を始めました。少し探りを入れただけで、案外あっさり話してくれました。」

カーナーは愚かにも、デリア側の人間が仕掛けた罠にはまり、酒に酔った勢いで全てを話してしまったのだという。別大陸へ渡る前、自分はある貴族の汚れ仕事を請け負っていたのだと。

「そんなことまで簡単に話したの?」

「本人は、遠い土地で長く暮らすことになると思っていたので……いろいろな恨みを買っていたみたいですね。」

無理やり見知らぬ土地で暮らすことになったのなら、それも無理はない。だが問題なのは、コナーがただの貴族ではなく、容易には手を出せない人物だったことだ。

ジェームズ・ウェイド伯爵。

彼はイザベル皇妃の最側近だった。

思っていた以上に大きな事件だった。最後まで資料を読み終え、私は静かに書類を閉じた。

「予想どおりだったから驚きはしないけど、相手が相手だから厄介だね。」

「最初からこうなると予想していたんですか?」

デリアが驚いたように尋ねた。

「うん。最初から何かおかしいと思ってた。」

「どのあたりがですか?」

「全部。話を聞した瞬間から、何もかも怪しいって感じたんだ。」

メイとベルの話を聞いた瞬間、私は直感した。

(これは、何か裏がある展開だ。)

恋愛小説を読んだことがある人なら、誰でも疑うような流れだった。デリアが私をじっと見つめていたことも、今は気にならなかった。それよりも心配だったのは、この事実をメイに伝えることが、過去の傷をもう一度えぐることになるのではないかということだ。ようやく過去を乗り越え、穏やかに暮らしている彼女に、この事実を知らせるべきなのか迷ってしまった。

「もし秘密にしておきたいのでしたら、私も口外しません。」

まるで私の考えを見透かしたように、デリアが静かに言った。

「ううん。こんなことを秘密にはできないよ。ただ、知ったらメイが傷つくんじゃないかと思って、それが心配なんだ。」

「それでも、知っておいた方がいいと思います。」

もし身近な人が、自分に関わる秘密を知ったまま黙っていたと後で分かったら、それはそれで裏切られた気持ちになるだろう。私は重い足取りで立ち上がった。

「知らせに行かなきゃ。あと、さっきお願いした件もよろしくね。」

「ゼルダ・パーカーの件ですね? お任せください。」

 



 

  • ルチの突然の婚約話と真意

    主人公のエスピンは、ルチがナルム伯爵家のゼルダ・パーカーと婚約するという噂を知り、本人に詰め寄る。ルチは「婚約するつもりはなかった」と否定し、エスピンを安心させようとするが、その背後ではイザベル皇妃がこの縁談を主導していることが明らかになる。

  • デリアによるゼルダ・パーカーの裏の調査

    デリアからの報告により、ルチの婚約相手とされるゼルダ・パーカーにはネイソン伯爵との不審な密会やスキャンダルの噂があり、イザベル皇妃が彼女を意のままに操るために選んだ駒であるという黒い背景が発覚する。

  • メイの過去を巡る黒幕の影

    さらに、デリアからメイの過去の仕立て店倒産事件に関する調査報告がもたらされる。かつて店を乗っ取ったコナー・ウェスリーの背後には、イザベル皇妃の最側近であるジェームズ・ウェイド伯爵が存在していたことが判明し、皇妃による陰謀の全貌が徐々に浮かび上がってくる。

 

 

【私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ...