余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない

余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない【35話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない」を紹介させていただきます。 ネ...

 




 

35話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • にぎやかになる東屋

ご指定いただいた通り、登場人物の名前をリテイク(置換)いたしました。また、苗字の「フク(福/赫など)」に該当する部分も「翡」へと統一し、自然な流れになるよう調整しています。

「お父様は、ここに動物牧場でも作るつもりなのかしら……」

翡流は目の前の光景を眺めながら、ぽつりと呟いた。じっと見つめていると、本当にそうなってしまいそうな予感がして、ほんの一瞬だけ、おかしな現実味が脳裏をよぎる。

「ピィーッ! ピィーッ!」

「ピィィィ?」

「カン!」

ついさっき、子ギツネに「カン」と名付け、ユニコーンに選ばれて神獣の主となったばかりだった。それから一時間もしないうちに、従兄の啓院がふらりと遊びにやって来た。

「お兄ちゃん……本当に森で寝てきたの?」

啓院の髪にあちこち葉っぱがくっついているのを見て、翡流は目を丸くした。

「えっ、じゃあ『夜中にさらわれるかもしれない』って翡院お兄ちゃんが言っていたの、本当だったのね?」

急に背筋がぞっとして、翡流は身震いした。

ともかく、目を覚ました啓院は一人ではなく、不思議な獣を連れて姿を現していた。

その時だった。翡流の手首にぐるぐる巻きついていた赤ちゃん毒蛇のベムベム(ちなみに子ユニコーンと同じ名前だ)と、眠りから覚めて翡流に抱かれていた赤ちゃん聖獣が、そろって同じ方向をじっと見つめた。

次の瞬間――。

「ピィッ! ピピピピッ! ピィッ!」

宙に浮かぶその姿に、翡流と啓院は顔を見合わせた。

「……あの子たち、何をしてるのかしら?」

「……空気でも捕まえているんじゃないか?」

啓院の連れてきた獣――いや、ひよこのような見た目をしたふわふわの毛玉が、楽しそうに宙を舞っている。

子ユニコーンのベムベムと、子ギツネのカンは、おとなしくその鳴き声を聞いていたが、ときどき思い出したように返事をした。

「それにしてもさ」と、啓院は呆れたような目を翡流に向けた。「ベムベムにカンって……名前があまりにも適当すぎないか? センス、あるの?」

「……。」

翡流は一瞬黙り込み、すぐに啓院をなだめるように微笑んだ。

「私が何か言える立場じゃないけれど、大丈夫よ。あの子たちも気に入っているみたいだし」

「一日でずいぶんと家族が増えたね」

「ええ、にぎやかになったでしょう?」

「じゃあ……これからは、もう僕のところには遊びに来てくれないの?」

啓院の表情がふっと曇る。その寂しそうな様子に、翡流は胸が痛んだ。

「お兄ちゃんも、ここに住めばいいじゃない。空いているお部屋ならたくさんあるよ」

一瞬、啓院の表情が揺らいだが、すぐに諦めたように首を振った。

「次兄上が許してくれないと思うよ」

それには翡流も同感だった。

後になって気づいたことだが、お父様はこの東屋への独占欲が不思議なほど強かった。病気で寝込んでいる間でさえ、長兄や次兄が一定時間以上この家に滞在することを頑なに認めようとしなかったのだ。

『放っておけ。翡院兄上は器の大きい人だからな』

兄たちはその理由を知っているようだったが、翡流には教えてくれなかった。父に尋ねても何も答えず、ただ遠い目をするだけだった。おそらく、父が失ってしまった記憶に関係しているのだろう。

(いつか思い出したら、話してくれるわね)

翡流は少し離れた場所に立つ父をちらりと見た。そして、啓院の肩をぽんぽんと叩く。

「翡郎(叔父様)が倉庫へ行く間だけでも、うちに泊まってよ」

自然と「うち」という言葉が口をついて出て、翡流は自分でも少し驚いた。お父様も驚いたようにこちらを見ている。気まずさに頬を染めながらも、翡流は言葉を続けた。

「家族なんだから。……叔父様たちの暴走期はまたきっとやってくるわ。その時は、一緒にいた方がいいもの。もしお父様がダメだって言うなら、私がなんとか説得する。それでもダメなら、私が向こうへ行くから」

そう言うと、啓院の表情がぱっと明るくなった。

「ところで、長兄様と次兄様は?」

翡流が尋ねると、啓院は「本館に行ったよ」と答えた。

早起きをしたせいで、まだ午前中だった。

「本館に……朝から? あの二人は外出禁止じゃなかったかしら」

「うん、出かけていったよ」

「うーん、患者が問題を起こしたら困るのに……」

翡流が心配そうに眉をひそめると、啓院が小さく笑った。

「そうだね。でも、お前を困らせないために、あの二人も頑張っているはずだよ。叔父さんも『家族を支えるために、内助をしに行く』って言っていたしね」

「それ、一体どういう意味なのよ……」

余計に不安になっていると、聞き慣れない鋭い鳴き声が頭上から響いた。

「鳥……?」

空を見上げると、そこには不思議なことに、燃え盛る炎のような真っ赤な鳥が勢いよく羽ばたいていた。

――キィィィッ!

「何だ、あれは……」

「アラだわ! 私のお客さんよ!」

翡流には見覚えのある鳥だった。赤雲河(チョク・ユナ)の神獣だ。だが、今の翡流は「神獣を初めて見る子ども」を演じなければならない。名前を親しげに呼ぶわけにはいかなかった。

「お父様、抱っこして! ……ううん、肩車して!」

翡流が手を伸ばすと、父は待っていましたとばかりに、彼女をひょいと持ち上げて肩に乗せた。

足元では、子ユニコーンのベムベムも、子ギツネのカンも、大騒ぎしながら空を見上げている。家を守ろうと健気に威嚇しているのだろうか。

やがて、上空を旋回していた炎の鳥が翡流に気づき、急降下してきた。

「おいで(イリオン)」

翡流が腕を差し出すと、鳥は嬉しそうにその腕に止まった。――が、重い。

「ちょっと、自分の重さを考えなさいよ!」

久しぶりの再会だというのに、相変わらず空気の読めない鳥だった。大きな火の鳥は、翡流の腕が細すぎるのが不満なようで、抗議するように羽をバタつかせる。

「失礼な鳥だな」

その時、大きな手が鳥の翼をがしっと掴んだ。風の力で宙に浮かび上がった父だった。

「足に手紙が結ばれている。伝書鳥か?」

「ええ、そうみたい。お父様、下ろして。手紙を読まなきゃ」

地面に降り立ち、受け取った手紙を開く。その内容は、翡流の予想通りだった。

タク・ミンジェを治療してから、今日でちょうど三日。体内の毒はすっかり抜け、体が回復したという知らせだった。

「……つきましては、このご恩に報いるとともに、一つお願いしたいことがございます。私どもにお力添えをいただけるか、ぜひご検討いただけますでしょうか」

(よかった。これで、これからの悪縁を断ち切れたんだ!)

嬉しさがこみ上げ、ニヤリと笑いながら振り返った瞬間、翡流はぎょっとした。

父が、炎の鳥の首を容赦なく掴み上げていたからだ。火の鳥は「ケッケッ」と苦しそうにもがいている。

「ちょっと、お父様! 何をしているの!?」

「お前を傷つけようとした鳥だ」

「え? 傷つけるって……まさか、私の腕が細いって文句を言っていたこと?」

「お前の服が破れているじゃないか」

言われてハッと自分の袖を見ると、鳥の爪が引っかかったのか、あちこちに小さな穴が開いていた。

「あ……。でも、この子、もともとこういう性格なの! ちょっとおバカだけど、悪い子じゃないのよ。このままお父様に消されちゃったら可哀想だし、赤雲河との縁までこじれちゃうわ!」

「まるで、以前からよく知っているような言い方だね」

不審そうに眉をひそめる父に、翡流は慌てて言い訳を並べ立てた。

「も、もちろん初めて会ったわよ! でも、炎の能力者って気性が激しい人が多いでしょう? だから神獣も似たような性格なのかなって!」

いつの間にか隣にやってきた啓院が、ひょいとノイスを抱き上げて撫でながら、炎の鳥に囁いた。

「……聞いただろ? おとなしくしているんだぞ」

――ピィーッ!

「よし、お前は嫌われずに済みそうだね」

まるで「お兄ちゃん!」と甘えるように鳴くノイスを見ながら、翡流は小さく息を吐き、父を見上げた。

「お父様、休暇の日程にはまだ余裕があるよね? 今日は街へお出かけしましょう。啓院お兄ちゃんも一緒に行こう」

東屋に啓院(従兄)を一人きりで残していくのは可哀想だ。これぞ「共同育児」の精神である。そんな三歳児らしからぬ思考を巡らせながら、翡流は力強く頷いた。

「こんにちは、議員様」

にこやかに出迎えてくれたのは、赤雲河の主、ジョク・ユンハだった。前回の診察時よりも、格段に親しげで丁寧な態度だ。

「この三日間、お変わりありませんでしたか? ずいぶんお元気そうで何よりです。それに……ご家族も、増えたようですね?」

ユンハが驚くのも無理はなかった。翡流のリュックからは、子ギツネのカンがひょっこりと顔を出していたからだ。家に置いていくわけにもいかず、連れてくるしかなかったのだ。

「まあ、可愛い。でも、この子は白狐ではありませんか? どこでこんな貴重な魔獣を見つけたのですか?」

「それは秘密よ」

少しでも翡流から離れると「キャンキャン!」と寂しそうに鳴くカン。見た目は犬のようだが、中身はまるで猫のように好奇心旺盛だ。市場の雑多な刺激に興奮して暴れないよう、父が密かに風の防護壁でカンを包み込んで守ってくれていた。

「ユンドクさんとタク・ミンジェさんは?」

「もうすぐ来ますよ」

翡流は父の膝の上にちょこんと座りながら尋ねた。袖口には、赤ちゃん毒蛇のベムベムがぐるぐると巻きついている。

その時、緊張した様子の中年男性が、翡流の前に恐る恐る腰掛けた。

「す、少し失礼します。……薬は三日分お渡ししますね。長く放置すると感染しますので、傷口は必ず消毒用のアルコールか、清潔な水で洗ってください」

「は、はい……! ありがとうございます、先生……!」

翡流は今、市場の片隅にある小さな薬局を借りて、医師としての役目を果たしていた。

事前の手筈通り、薬局の主人にお金を握らせて場所を借り、さらに追加の硬貨を渡して患者を集めてもらったのだ。

「薬局での診察なんて、久しぶりね」

自然能力を持つ、幼くも優秀な医師が現れたという噂は、市場という場所柄もあり、瞬く間に広がった。ほぼ原価に近い値段で診察してくれるのだから、行列ができるのも当然だった。

「お兄ちゃん、よく覚えてくれたね」

助手役を買って出てくれた啓院は、驚くほど有能だった。頭が良いせいか、一度教えた薬草の名前や調合の仕方をすぐに覚え、てきぱきと立ち働いている。

一方、お父様はというと――。

「あっ、ちょっと、うわあああ!」

割り込もうとしたり、暴れようとしたりする不届きな客が現れるたびに、父は容赦なく風を巻き起こし、市場の外まで放り投げていた。

「わあ、お父様、最高! その調子でどんどん追い払って! 塀まで作っちゃって!」

「……参考にしよう」

父が静かに頷く。有能な用心棒(しかも国最高峰の武人)がいるというのは、これほど心強いものなのかと翡流は感激した。市場の噂話に「美しい鬼神が医師の背後に立っている」という一幕が加わったのは、言うまでもない。

診察を始めて三時間が経った頃。

「あの、時間と場所は事前にお伝えしたはずですが……どうしてここに?」

翡流の前に立っていたのは、ぼさぼさの髪に、どこか間の抜けた顔をした青年――ジョク・ユンハだった。まるで外で野宿でもしてきたかのような風体に、翡流は呆気にとられた。

「あなた……本当に、あの市場で噂のちび先生なのか?」

「ええ、そうですけど。そんなに不躾に見つめられても困ります。……さあ、次の患者さん、じっとしていてくださいね」

翡流は手元で水をうねらせ、患者の傷口を優しく包み込んだ。

「うわっ、水が、水が動いてる……! おおっ!」

患者が驚嘆の声を上げる。翡流がせっせと薬を調合する横で、啓院と、なぜか子ギツネのカンまでが器用に散らかった薬草や道具を片付け始めた。

(カン、あなた本当にキツネなの? 器用すぎるでしょう……)

さらに、手首のベムベムが放つ魔力のおかげで、作る薬の品質は以前よりも格段に上がっている。

そんな様子を信じられないといった目で見つめるユンハに、翡流は言った。

「どうしてこんなことをしているのか、ですって? 有名になりたいからです」

「はい……? 有名に?」

翡流の能力は、経験を積めば積むほど、薬工場のように素早く、確実な処方を行えるようになる。三度の人生の経験がある彼女にとって、この程度の調合は造作もないことだった。

「ただの風邪ですから、この薬を飲んでゆっくり休んでくださいね。お大事に」

感謝する患者を見送りながら、翡流はお父様を見上げた。

「お父様、一人だけに声を届けることはできる?」

父が指先をかすかに動かすと、翡流の声はジョク・ユンハの耳にだけ直接響くようになった。

「私のことを調べてからここへ来たのなら、分かっているはずです。このままでは、私は本館に入るどころか、他の後継者候補たちのように競うことすらできません」

翡流、啓院、そして原作のヒロインである雅燕には「連座制」が適用されている。東屋に追放された親を持つというだけで、一族の中での扱いは不当極まりないものだった。直系のエリートたちが実地で優雅に学ぶ機会など、彼女たちには与えられない。

「各自で頑張って生き残るしかない。だから、私はここで経験を積んでいるんです」

「……正直、経験を積んでいるようには見えませんけどね」

ユンハが呆れたように言った。

「これでも私は、在野の実力者や皇室お抱えの薬師を数多く見てきました。ですが、あなたのように瞬時に薬を調合する人間は初めてです」

ユンハが驚きから思わず一歩踏込んだ、その瞬間――。

目に見えない強烈な風の壁が、彼の体を後ろへと吹き飛ばした。

「距離を保て」

冷徹な父の声が響く。

「……はあ。あの、お父様? 私は決して襲いかかろうとしたわけでは……」

「なら、そこで話せ」

「翡流様、お父様が私を殺しそうなのですが? 昔の腕前を私に発揮されたら、ひとたまりもありません」

「近づかなければ大丈夫ですよ、お姉ちゃん」

翡流は楽しそうに肩をすくめた。

お父様が昔、本当は何者だったのかは分からない。普通の武人ではないことだけは確かだ。それは後でこっそり聞いてみるとして、今は目の前の交渉が先だった。

「翡家は、頼んでも私に機会をくれないでしょう。だから、機会は自分で作るものです」

翡流は真っ直ぐにジョク・ユンハを見つめ、不敵ににっこりと微笑んだ。

「私を、有名にしてくれますよね? 最初の『恩返し』は、そういう形でお願いします」

 



 

  1. にぎやかになる東屋と家族の絆

    子ギツネの「カン」やユニコーンの「ベムベム」など、一日で多くの神獣や動物たちが集まり、東屋は動物牧場のように賑やかになります。翡流は、叔父たちの暴走期に備えて従兄の啓院を家に引き留め、家族としての絆を深めます。

  2. 炎の鳥の襲来と、もたらされた「好機」

    空から赤雲河の神獣である炎の鳥(アラ)が手紙を携えて現れます。手紙には、翡流が治療したタク・ミンジェの完全回復と、その恩返し・協力の申し出が記されており、翡流は未来の悪縁を完全に断ち切ることに成功します。

  3. 市場での診療と、エルマナの不敵な計画

    父を頼もしい護衛、啓院を有能な助手にして、翡流は市場の薬局で驚異的な速度の診察と調合を行い、名を広めます。そして、様子を見に来た赤雲河の主ジョク・ユンハに対し、本館へ入るための「最初の恩返し」として、自分をさらに有名にするよう不敵に要求します。

 

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