大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【157話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

157話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 14回目の回帰の果てに掴んだ幸せ

楽団が奏でる力強い演奏とともに、保護所の入口の扉が静かに開いた。

先頭に立って開くのを待っていたエスターは、中を覗き込むなり驚きで思わず息を呑んだ。

(思ったより……人が多い)

保護所がまるで華やかな宴会場のように飾り付けられているのも新鮮だったが、そこを埋め尽くす人の多さにはさらに圧倒された。

「お嬢様! お誕生日おめでとうございます!」

エスターの隣で花びらを撒く役に選ばれたジェロムが、満面の笑みで祝福の言葉をかけた。

「ありがとう。最近は勉強もすごく頑張っているんですって?」

「はい! 立派な秘書になってみせます!」

ジェロムは目を輝かせながら、エスターに小さな木のバスケットを差し出した。

空だったバスケットには、通り過ぎる人々が手渡してくれる色とりどりのバラの花が、次から次へと積み重なっていく。

温かな祝福の花道を歩くうちに、胸から溢れ出す愛おしさにエスターの目にはうっすらと涙が滲み始めた。

割れんばかりの大きな拍手と、途切れることのない温かい声。

自由で優しい家族が待つ壇上へと、力強く駆け上がっていく。

宝石がふんだんに散りばめられた長いドレスの裾が、ふわりと優しく階段をなぞる。

壇上に足を踏み入れたエスターは、そこに置かれた巨大な物体に思わず目を丸くして足を止めた。飾りだと思っていたものが、本物のケーキだと気づいたからだ。

「これ……本当にケーキなんですか……?」

高さは成人男性の身長を優に超え、横幅も圧倒的な存在感を放っていた。

「気に入ったかしら?」

「はい……」

気に入るかどうかという以前に、これほど巨大なケーキを一体どうやって切り分けるのだろうと本気で疑問に思うほどだった。

「心配いらないわ。お皿もたくさん用意してあるもの。」

ドフィンはエスターの驚く顔を見て満足そうに微笑むと、テーブルの横に山積みにされた皿を指さした。驚いたことに、その一枚一枚に『エスター』の名が美しく刻まれていたのだ。

「このお皿に、ケーキを乗せるんですか?」

「そうよ。あなたの誕生日を祝うケーキなんですもの、みんなに知ってもらわなくっちゃね?」

期待に満ちたドフィンの誇らしげな表情を見てしまうと、とても断れる雰囲気ではなかった。

「じゃあ、さっそく切り分けましょうか?」

「はい!」

エスターはケーキを切るため、あらかじめ用意されていた脚立に嬉しそうに登った。

予想もしなかった賑やかな誕生日パーティーになったけれど、エスターの顔から幸せそうな笑みが消えることはなかった。

「エスター、こっち向いて。」

脚立を下りてきたエスターの頬に、ジュディがいたずらっぽく生クリームをちょこんとつけた。

「えへへ、美味しいですね。」

エスターは嫌がるどころか、指でそのクリームをすくうと嬉しそうにぺろりと舐めた。

「エスターは朝から一生懸命準備してたんだから、いたずらしちゃ駄目だよ。」

デニスがジュディを優しくたしなめながら、ハンカチでエスターの頬を丁寧に拭いてあげる。

続いて、プレゼントの贈呈式が始まった。

代表してジュディとデニスからの贈り物を受け取り、箱を開けたエスターは思わず「ふふっ」と笑いを溢れさせた。

「気に入ったかい?」

「どちらが良いと思う?」

「……選べませんっ。」

本当に甲乙つけがたい贈り物だった。

デニスの贈り物は国立図書館が厳選した『必読書十冊』で、ジュディの贈り物は初心者向けの『子ども用狩猟セット』だったからだ。

エスターの好みにどんぴしゃりというわけではなかったけれど、どちらも二人「らしい」愛情が詰まった贈り物で、エスターはとても愛おしく受け取った。

賑やかな食事会は何時間も続いた。

大勢からの祝福に少しばかり疲れを感じ始めた頃、エスターはノアと交わした言葉を思い出していた。

『庭園に出てこい。』

彼女はそっと会場を抜け出し、一人で静かな庭園へと向かった。

「ここだ。」

先にベンチへ腰掛けていたノアが、エスターの姿を見つけると嬉しそうに手を振った。

夜のそよ風が、ノアの柔らかい髪を優しく揺らす。エスターは思わずその幻想的な姿に目を奪われながら、彼の隣へと腰を下ろした。

「今日は楽しそうだったね。」

「うん……。一日中、こんなに幸せでいていいのかなって思っちゃった。」

「もちろんだよ。エスターには、誰よりも幸せになる資格があるんだから。」

「ありがとう……。」

ノアのまっすぐな言葉に、エスターの笑みはさらに深くなった。

「エスター、まだ君に話していなかったことがあるんだ。」

「なぁに?」

「聖域にいた頃のことなんだけどね……。毎日、同じ人物が出てくる夢を繰り返し見ていたんだ。」

そこで一度言葉を切ると、ノアは真摯な瞳でエスターを見つめた。

「それが『お前』だったと言ったら、信じるか?」

「え……?」

思いもよらない告白に、エスターは目を丸くした。

「最初は分からなかった。でも何度も何度も見ているうちに、自然と気づいたんだ。」

信じがたい話ではあったけれど、「そんなはずはない」と否定するには、エスター自身これまであまりにも多くの奇跡を経験してきていた。

「……初めて私の夢を見たのがいつだったか、覚えてる?」

「いや……最初がいつだったのかは、私にも分からないんだ。」

もしかすると、かつて道に迷ってノアと出会ったあの日から、彼は自分の夢を見るようになったのかもしれない。

理由はどうあれ、ノアが自分の壮絶な人生のすべてを知っていたのだと知り、不思議な温もりが胸を満たしていく。

地獄のように苦しかった監獄での日々。その孤独な苦痛を、ずっと見守り、一緒に悲しんでくれていた人がいたのだ。

「じゃあ……私が何度も生き返っていたことも、知っていたの?」

「うん。」

「……だから、いつも全部知っているような顔をしていたんだね。」

「嫌だったか?」

「ううん。それも全部私だもの。隠したいことじゃないよ。」

そう言ってふっと息をついたエスターを、ノアは我慢できなくなったように強く抱きしめた。

「君を見るたびに……ずっとこうして抱きしめたかったんだ。」

エスターの体を愛おしそうに腕の中に収め、ノアは優しく背中をさすりながら続けた。

「話したいことは、これだけじゃないんだ。」

「まだ何かあるの?」

「うん。もっとすごい話だよ。」

ノアが急に黙り込むものだから、エスターのほうがかえって緊張してパチパチと瞬きを繰り返した。

「……私は、お前が好きだ。」

低く穏やかな声が、夜の静けさの中でエスターの耳に届く。

エスターは視線の置き場を失って狼狽え、慌てて言葉を返した。

「……えっ? あ、私も……!」

「じゃあ、キスしてもいいか?」

「ええっ!?」

エスターは跳ね起きるようにノアから飛び退くと、両手で自分の口を固く覆った。

その必死な姿を見たノアは、楽しそうに目を細めて悪戯っぽく笑った。

「冗談だよ。でも、好きだっていうのは本当だ。だから、そんな簡単に『私も』なんて生返事をするなよ?」

あまりにもストレートで情熱的な言葉に、エスターの顔は耳まで真っ赤に染まっていく。

その隙に、ノアはエスターが口を押さえていた手を優しく外し、小指を自分の指と絡めてベンチの上に置いた。

「ようやく取り戻した君の日常を、私は邪魔するつもりはないよ。その代わり……君が成人したら、すぐに結婚を申し込むつもりだ。」

「でも、あなたは未来の皇帝でしょう? 私はどう頑張っても聖女なのに……。」

「そんなの無理だよ」と言いたげに、エスターはノアの額を指でつついた。

「それならちょうどいいじゃないか。皇宮と神殿が一つになれば争いもなくなって、世界はもっと平和になると思わないかい?」

「うーん……そんなに簡単な話じゃないと思うけどな……。」

「その時はその時だ。だから――私のプロポーズを受けてくれるかい?」

「だめ! 勝手に話を進めないで!」

からめた小指にギュッと力を込め、ノアは周りまで明るく照らすような眩しい笑顔を浮かべた。

「本当に大好きだよ、エスター。」

もう一度、飾らない真っ直ぐな想いが告げられる。

風に乗って届くノアの真剣な熱量が、エスターの胸を優しく締め付けた。エスターは胸がいっぱいになり、すぐには言葉を返せず、そっと瞳を閉じた。

(このまま、時間が止まってくれたらいいのに……)

振り返れば、今世のあらゆる大切な瞬間に、いつもノアが寄り添ってくれていた。

ノアのことが好きだった。けれど――。

「……それでも、私はまだ、お父さんとお兄ちゃんたちのほうが好きだと思う。」

エスターは静かに目を開け、申し訳なさそうな表情でノアを見つめた。

比べられるような性質の愛情ではないと分かってはいても、いまの彼女にとっては、家族の存在があまりにも大きすぎたのだ。

ここでノアに甘い答えを返してしまえば、大切な家族を裏切るような気持ちになってしまう。できることなら家族と一緒に、何ものにも邪魔されない温かな時間をできる限り長く過ごしたかった。

「分かっているよ。君にとって家族が何よりも大切だということくらい。それなら私は、その『次』の場所で十分満足さ。」

ノアはそっと握っていたエスターの手を持ち上げると――次の瞬間、その白い手の甲へ愛おしそうに唇を寄せた。

「……っ!?」

驚いたエスターは、その場で凍りついたように固まった。

「い、今、何したの……!?」

「私からの誕生日プレゼント。」

「手、手の甲にキス……!?」

エスターが慌てれば慌てるほど、ノアの口元には甘い笑みが深く広がっていく。

「うん。これからは毎年、君の誕生日をもっと盛大にお祝いするつもりだから、楽しみにしていてね。」

どういうわけか、その「おめでとう」という言葉が、まるで「勝者へのご褒美」のように甘く聞こえてしまい、エスターの顔は爆発したように赤くなった。

そんな彼女を愛おしそうに見つめていたノアは、やがて穏やかな表情に戻ると、エスターの手を優しく握り直した。

「誕生日おめでとう。そして……生きていてくれてありがとう、エスター。」

自分の壮絶な過去もすべて知るノアだからこそ、その言葉はエスターの胸の奥深くまで響き渡った。

「うん……。私、生きていて本当によかった。」

エスターはノアの肩にそっと身を預け、重なる互いの手を愛おしそうに見つめた。

数日後の朝。

エスターは食堂へ向かう途中、廊下に飾られた一枚の絵の前に立ち止まった。自分で描いた、大切な家族の絵だ。

「……描き直そうかな。」

小さく呟いたそこへ、なかなか来ないエスターを心配して迎えに来たデニスが、ゆっくりと隣に並んだ。

「絵を見ていたのかい?」

「少し……古く感じちゃって。」

「でも、家族みんなが綺麗に描かれているじゃないか。」

「お母さん……そうなんです。でも、私のお母さんと、お兄ちゃんたちのお母さん……お二人の姿がないんです。」

デニスも顎に手を当てて絵を見上げると、深く納得したように頷いた。

「言われてみれば、そうだな。」

エスターは新しい家族の絵を描こうと心に決め、デニスと並んで食堂へと向かった。

「よく眠れたかい、エスター?」

「はい! おはようございます、お父様。」

エスターは胸を張って微笑み、自分の席へ腰を下ろした。

そして、これ以上ないほど完璧で愛おしい自慢の日常を見渡す。

家族と囲む温かな朝食。

他人には冷酷だけれど、自分にはどこまでも甘いお父様。

誰よりも自分を可愛がって保護してくれるお兄様たち。

そのすべてが、輝くほど完璧だった。

「そういえば、公開裁判の件だが。」

朝食のパンをちぎっていたエスターは、父の言葉にピクッと耳をそばだてた。

「ハドソンとその娘の裁判日程が決まった。今回の件に関わった神殿関係者たちの処罰も、同じ日に執り行われる予定だ。」

「それはいつですか?」

「一週間後だ。首都の広場で行われる。」

エスターはオリーブオイルをつけたパンを大きく口に含み、もぐもぐと咀嚼した。

「お父様、私たちも見に行って良いでしょうか?」

「裁判の傍聴か。一度見てみたいと思っていたんだ。」

ジュディとデニスが目を輝かせてドフィンに頼み込む。

「……良いだろう。ただし、名目はデニスの見学教育のためということにしておけ。」

許可が下りると、いつものように水を勢いよく飲み干したデニスが、そのままエスターに新しいコップを差し出しながら尋ねた。

「公開裁判では、興奮した群衆が暴徒化するのが世の常ですよね?」

「その通りだ。」

「最も重い刑罰は絞首刑ですが……四大公爵家の一つですから、そこまでの判決は厳しいかと。父上はどうお見立てですか?」

「お前の言う通り絞首刑は難しいだろう。だが、ハドソンの娘は奴隷として売られる可能性が高いと見ている。」

「奴隷、ですか……。」

エスターは驚いて小さく息を呑んだ。あのプライドの高いラビエンが、誰かの下で奴隷として働く姿など想像もつかない。生涯を暗い地下牢で過ごすよりも、遥かに酷で重い罰に思えた。

「お父様! もし本当にそうなったら、あの子をうちに買い取りませんか!? 私が思いつく限り痛めつけてやりますから!」

パンを食べ終え、本格的に料理に手を伸ばそうとしていたジュディが、嬉々とした声を張り上げた。

「わざわざエスターの視界に入る場所に置く必要はない。一番過酷な場所へ売れば済む話だ。」

ラビエンのことになると、まるで自分のことのように本気で怒ってくれる家族の姿を、エスターは愛おしそうに見つめ、ふっと柔らかく微笑んだ。

「お父様……それから、デニスお兄様、ジュディお兄様。」

エスターは自分へ注がれた三つの温かな視線を、一人ずつ愛おしそうに見つめ返した。

今まで喉まで出かかりながらも、恥ずかしくてどうしても口にできなかった言葉――。

けれど、今の自分ならまっすぐに言える気がした。

「……私、皆さんのことが大好きです。」

こんなにもストレートな好意をエスターが口にしたのは、生まれて初めてのことだった。

「ろ、録音だ! ベン、今すぐ魔導録音機を持ってこい!!」

「ただいま参りますーッ!!」

「エスター、頼むからもう一回だけ言ってくれ! 驚きすぎて頭が真っ白になったんだ、な!?」

「『好き』と『愛してる』なんて辞書では一歩違いだろう!? つまりエスターは『愛してる』と言ったんだよ!」

テーブルの上が一気に大騒ぎになる中、当のエスターだけは平然とした顔でフォークでミニトマトを刺した。

「ごちそうさまでした。」

長く、つらく、暗い時間だった。けれど、それを乗り越えた先で、彼女は時間が止まってほしいと願うほど幸せな日常を手に入れたのだ。

一緒にいるだけで心がぽかぽかと温かくなる、かけがえのない家族。

十四回もの過酷な人生を繰り返した末に、ようやくその手に掴み取った本物の幸せ。

(どうか、この幸せな日々がいつまでも続きますように……)

エスターはそれ以上何も望まず、ただ今日のような温かな日常が永遠に続くことを祈り、そっと幸せそうに微笑んだ。

<完結>

 



 

  • 祝福に包まれた誕生日パーティーと巨大ケーキ

    保護所で催された豪華なパーティーで、エスターは人々の温かい祝福と名入りの皿が用意された巨大ケーキ、兄たち(デニス・ジュディ)からの個性あふれる贈り物を受け取り、心からの幸せを噛みしめます。

  • ノアからの告白とプロポーズ

    エスターの過去の苦難や回帰の記憶を夢で見てすべて知っていたノアは、まっすぐな好意と成人後のプロポーズを伝えます。エスターは戸惑いつつも、「家族が一番」という自身の想いを理解し寄り添ってくれるノアに深く感謝します。

  • 家族への溢れる愛と掴み取った本当の幸せ

    ハドソン父娘の公開裁判の報せを聞くなか、エスターは父親(ドフィン)と兄たちへ「大好きです」と素直な想いを伝えて大騒ぎになります。14回もの壮絶な人生を乗り越え、ついにかけがえのない温かな日常を手に入れて物語は幕を閉じます。

 

 

 

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