大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【127話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

127話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 暗い夜空を照らす星

三日後。

エステルは、神殿だった建物の修繕が終わったと聞き、外出の準備を整えた。

ドフィンからも、今日から救護活動を手伝ってよいとの許可をもらったのだ。

「ジュディお兄ちゃんも一緒に行けたらいいのに。」

「今日は剣術の授業で大事な技を習う日だそうだから仕方ないな。次は必ず連れて行こう。」

真昼の強い日差しが照りつける中、エステルとデニスは神殿のある中心街へ向かっていた。

馬車には、エステルが聖水へと変えた水をいっぱいに積んでいた。

だが中心街の入口に近づくと、通り過ぎる人々の雰囲気が一気に沈んでいるのを感じ取った。

窓越しに外を眺めていたエステルは頬をふくらませ、しょんぼりとつぶやいた。

「みんな、混乱しているみたい。」

「そうだろうな。神殿はこれまで帝国民に精神的支えを与えてきたのだ。だから今の彼らにとって、神殿は悪因に違いない。」

遠くに見える神殿の前では、うずくまって声を上げて泣く人々の姿も。

人々の神殿に対する考えを変えるには、まだ時間が必要に思えた。

そのとき、近づいてくる途中、外を眺めていたエステルの目に、見覚えのある子どもの姿が飛び込んできた。

「お兄ちゃん、あれゼロムじゃないですか?」

「本当だ。何してるんだろう?」

少し薄汚れた服装のまま、ゼロムは人混みをかき分けながら人々の顔を確認していた。

「ちょっと怪しくない?」

「うん。連れてきた方がいいな。」

二人は馬車を止め、ビクターにゼロムを馬車に連れてくるよう頼んだ。

ゼロムはエステルのそばにいたビクターに気づき、嬉しそうに駆け寄ってきた。

「わあ、エステル姉さん!兄さん!久しぶりです。会いたかったんですよ!」

以前より少し背が伸びたようなゼロムは、にこやかに笑いながら再会を喜んだ。

「元気にしてた?ところで、ここで何してたの?」

「人を探していたんです。」

ゼロムは手に持っていた紙を広げて見せた。

ざっと線だけで描かれたその絵は、どこかの男の姿だった。

「この人、誰?」

絵をひょいと受け取ったデニスが、ジェロムに尋ねた。

「えっと、それは……」

だがジェロムはすぐに答えられず、ためらいがちに視線を揺らし、それから決心したように声を出した。

「実は数日前、貧民街にたくさんの人が押し寄せてきたんです。」

「なぜ?」

「貧民街にいたあるおじさんを探してて……その絵に懸賞金がかけられていたんです。しかもものすごい額で。」

ジェロムの言葉を聞きながら考え込んでいたエステルは、胸の奥にチクリとするような違和感を覚えた。

「貧民街の人たちを利用するなんて……誰が仕向けたのか、分かってる?」

「いや、それは教えてもらったんじゃなくて、たまたまあの人たちが話しているのをこっそり聞いちゃったんです。」

馬車の中でも周囲を気にしておびえているゼロムは、声をひそめた。

「ムリョ・ブラウンス公爵様らしいんです。四大名門の一つ、あのブラウンス公爵ですよ!」

「なにっ?」

エステルとデニスは同時に眉をひそめた。

そしてゼロムが持ってきた絵を改めて見つめた。

男の顔は初めて見るものだった。

いったいどういう事情でブラウンス公爵がテレシアにまで入り込んで人を探しているのか、不審に思われた。

なにより、その人物が決して善人ではないと知っているエステルは、ゼロムがこんなことに関わっているのが苦々しかった。

「これ、本当にやらなきゃダメなの?」

「いや、そういうわけじゃないんですけど……どうせやることもないし、お金もくれるって言うんですよ。」

しょんぼりするゼロムの頭に、デニスが手を置いた。

「この前、文字を習いたいって言ってたよね?」

「はい!」

「もうすぐ習えるよ。だから、こんなことしてないで友達と一緒に勉強の準備をしなさい。」

「えっ、どういうことですか?」

ジェロムは信じられないという顔で何度もデニスに聞き返した。

「大公家から支援が決まったんだ。だから、これからは一生懸命勉強しなきゃいけない。文字を自分で読めるようになったら、私の本もプレゼントするよ。」

「ひょえ……」

今にも泣き出しそうなジェロムがあまりにも可愛くて、デニスは頭をくしゃっと撫でながら「泣かないで」となだめた。

「ジェロム、じゃあこの絵、私がもらってもいい?」

「もちろんです!どうせ貧民街の人たちにばらまかれた絵ですし。それに僕は、お姉さんが欲しいと言ったら何だってあげますよ!」

いつのまにか耳まで真っ赤になったゼロムが、気恥ずかしそうに紙を差し出しながらエステルに渡した。

「お姉さんと兄さんは、僕の知ってる人の中で一番いい人たちなんです。だから、大公さまもきっとすごくいい人なんですよね?」

デニスとエステルは互いに目を合わせ、苦笑した。

「そうだな。」

するとゼロムはなぜか口ごもり、二人の顔色をうかがいはじめた。

「実は……最近、大公さまのことを良く言わない人が増えてるんです。たぶん、あの神殿の件のせいだと思うんですけど……」

「それなら私たちも知ってるわ。君が謝ることじゃない。」

むしろ安心させるように微笑むエステルを見て、ゼロムは決意したように拳をぎゅっと握りしめ、叫んだ。

「僕、戻ったらみんなに言います!そんなことないって!」

「そうしてくれる?ありがとう。」

ジェロムとはまた会う約束をして馬車を降り、再び神殿へ向かった。

以前来たときには門番が塞いでいた入口も、今は誰でも入れるように大きく開かれていた。

馬車を降りたエステルとデニスは、その門を通ってゆっくりと中へ入っていった。

エステルは一階の正面に大きく見える女神の石像を前にして、しばらく足を止めた。

久しぶりに巨大な石像を見つめていると、初めて中央神殿を出るときに目を向けた記憶がよみがえった。

『私はまだ、あなたの意図を分かりません。』

慈しむような眼差しで石像を見上げていたが、ふと石像の目が自分を見返しているような感覚に襲われた。

「えっ?」

思わず驚いて、石像に近づこうとした――。

すると、横にいたデニスがエステルの肩を抱いた。

「大丈夫か?」

「……あ、兄さん。」

我に返ったエステルは、杯を持ち直して再び祭壇を見つめた。

しかし、先ほど感じたあの気配はもう消えていた。

見間違いだったのかと思い、杯を軽く揺らした。

二人は神殿にいた大公の騎士たちの案内を受け、ほどなくしてパラスを見つけることができた。

「こんにちは、パラス様。」

ドフィンの子らが聖水を持ってきたという話を聞き、挨拶に出てきたパラスの目が大きく見開かれる。

「こ、これは……いや、君は……?」

彼は、中央神殿へ共に行きセスピアに会ったエステルのことを思い出し、信じられないというように驚愕の眼差しを向けた。

エステルはにっこり笑いながら、パラスにきちんと挨拶をした。

「私のこと覚えていらっしゃいますよね?あの時はいろいろ事情があったんです。」

「大公殿下のお嬢様でいらっしゃいましたか?」

「そうです。」

「私は……大きな無礼をしてしまいました。」

「私もお話しできなかったので、謝らなくても大丈夫です。」

まだ衝撃が大きいように見えるパラスに、エステルは少し気まずそうに笑いながら、騎士たちが運んでいる大きな樽を指し示した。

「お父様から聞いていらっしゃるか分かりませんが、全部聖水なんです。人々の治療に使ってください。」

すでに大きく見開かれていたパラスの目は、今にも飛び出しそうなほどさらに見開かれた。

「この大量の樽がすべて聖水だと!?一体どこで手に入れられたのですか?」

聖水がどれほど貴重なものか、誰よりもよく知っているパラスは、衝撃を受けた表情で聖水を見つめた。

「我が家の近くに、聖水が湧き出る噴水台があるんです。」

本当のことを詳しく話すわけにはいかないエステルは、気まずそうに目をそらしながら大まかに説明した。

「え……?噴水台から聖水が湧くとおっしゃるのですか?」

信じられないというように、パラスの目がさらに大きく見開かれた。

「はい。本当です。」

「そのような事例があるとは、これまで一度も聞いたことがありません。テレシアにそのように祝福された噴水台があったとは……。もしかすると、まだ発見されていなかった初代聖女様の遺物かもしれません。」

「ははは、そうかもしれませんね。足りなければまた持ってきますよ。」

パラスはなおも、聖水が噴水台から湧き出るという事実に驚きを隠せずにいた。

「私も次は必ず連れて行ってください。死ぬ前にどうしても、初代聖女様の遺物を拝見したいのです。」

その熱のこもった視線に、エステルは少し気まずさを感じ、わざと視線を逸らして辺りを見回しながら尋ねた。

「患者さんが多いですね。」

「行き場のない人々がみんなここへ来るのです。医師たちもいますが、治療には限界があります。」

エステルとは違い、無限に神力を使えるわけではないパラスは、日々力を消耗し続けていた。

「今日は私もお手伝いします。」

「お嬢様がですか?患者を看る仕事なので……。」

「私、神殿で働いていたんです。候補生でしたから。」

パラスはその言葉に、胸の内で再び驚いた。

ドフィンの娘が神殿で養われていたという噂は聞いてはいたが、信じてはいなかったからだ。

その言葉を聞いた後もしばし迷ったが、子どもたちが来たら世話をしてほしいとドフィンに頼まれていたことを思い出し、承諾した。

「では、お願い申し上げます。」

エステルは、人々が思い思いに座っている1階の広いホールを見渡しながら、デニスに言った。

「私はここにいますから、お兄様も気兼ねなく行ってきてください。」

「わかった。少しの間待っていろ。」

デニスはエステルの肩を軽く叩き、数人の騎士を連れて2階へ向かった。

神殿の中に図書館をつくる予定があり、デニスは蔵書に加える書籍の選定や配置などを見に行くのだった。

ひとり残ったエステルは、目をきょろきょろとさせながら、すぐ隣にいた人のもとへと歩み寄った。

「じゃあ、少し力を使ってみようか。」

もちろん大々的に神力を使うことはできないが、パラスが仕事に専念している隙に、密かに治療を行えば、ここでエステルの力を知る者はいなかった。

「どこが痛くて来たの?」

「私は手首を骨折して……。きちんと治るまでには数か月かかるのですが、それでは家族が飢えてしまいます。」

「見せてごらん。」

傷ついた外傷から重い病まで──エステルの神力は病を選ばず、すべての人に平等に届いた。

手のひらから放たれた神力を受けた人々は、一様に顔に明るさを取り戻し、瞳の輝きが澄み渡った。

「わ、私、本当に治ったみたいです!こんな……信じられない。これを本当に、ただ受け取っていいんですか……?」

「その代わりに感謝の気持ちとして、大公様が神殿を訪れることは悪いことではないと、周りの人に話しておいてね。」

治療を終えると、すぐに隣の人へと移った。

「……あの、お嬢様でいらっしゃいますよね?」

一年前の行列を覚えていた人々の中には、エステルを見て気づく者もいた。

特有の雰囲気のためだった。

「そうよ。」

エステルは彼らににっこりと微笑んでから、再び治療に集中した。

急を要する患者が多く、会話に時間を割く余裕がなかったのだ。

すると周囲には、たちまちざわめきが広がっていった。

大公家の令嬢が身分を隠さず、患者たちに直接触れて治療を施す姿は、どこでも見ることのできない実に貴重な光景だったからである。

「だ、大公様のご息女だって!」

「そんな方がなぜここに?」

「えっ、見ればわからない?私たちを治療してくださっているじゃないか。」

ざわめきが大きくなり、いったい何事かと顔を上げたパラスは、エステルの掌から放たれるまばゆい光を目にして息をのんだ。

「……あの光は何だ?」

もっとよく確かめようとエステルに近づこうとしたその時、

「パラス様!!急患です!」

慌ただしい声とともに、兵士たちが誰かを担ぎ込みながら神殿の中へ駆け込んできた。

「他領から来た者ですが、身分証を確認した途端に倒れてしまい……。とにかく、患者をここへ運ぶよう命を受けてきました!」

「そこ、中央に下ろしてくれ。」

まるで死に瀕しているかのように、血の気の失せた男の姿が横たえられた。

服の下から肉がただれていくのが見え、周囲に悪臭まで漂っていた。

パラスは事態の深刻さを感じ取り、床に倒れ込んでいる男へと近づいていった。

「た、助けてくれ……ごほっ、ごほっ。」

言葉さえうまくつなげられない男は、息をするたびに血を吐いた。

そしてそのまま崩れ落ちてしまった。

パラスは眉間にしわを寄せ、男の瞼をめくって状態を確認した。

しかし神力を注いで体を調べても、病の原因を突き止めることはできなかった。

「何の病気なのか分かりません。」

「私もです。」

隣で一緒に見守っていたエステルも困惑した。

このように無秩序に肉がただれ崩れていく病など、どこでも見たことがなかったからだ。

「残念ながら、治療できる状態ではありません。」

パラスはそう言うと、反対側にいた騎士に手で合図を送った。

男を別の場所へ移せと命じようとした、その時だった。

「パラス様、少しお待ちください。」

澄んだ声で制したのはエステルだった。

「今このまま外へ出してはなりません。」

「どうせ治療などできません。力を使えば他の患者を救えなくなりますし……。」

絶対に駄目だと強く言い張るパラスと、紅玉のような瞳で真っ直ぐに見返すエステルの視線がぶつかる。

「伝染病かもしれません。」

エステルの脳裏には、昨夜ノアから受け取った手紙の内容がよぎっていた。

聖花を運んでほしいという頼みと共に、国境付近で広がり始めた伝染病について記されていたのだ。

――もしかして、この人が。

エステルは今まで一度も目にしたことのない病を抱えた患者を前に、胸がざわめいた。

倒れていた男が国境地帯から来たのかもしれないと考えた。

病にかかった男を抱えて待っていた兵士に尋ねた。

「この人、別の領地から来たと言いましたね?どこからですか?」

「ここに身分証があります。」

男の身分証を受け取って確認すると、やはりテレシアから最も近い国境地帯の村に住む領地民だった。

もしかするとノアが把握している以上に、伝染病ははるかに速く広がっているのかもしれない。

エステルは声を落とし、パラスにだけ聞こえるように囁いた。

「最近、国境地帯近くで伝染病が広まっていると聞きました。この人の領地もそうですし……どう見ても伝染病にかかっています。」

「え?伝染病が蔓延しているというのは、女神の加護が失われたという意味です。それが本当なら……どうして我が帝国でこんなことが……」

神官としての矜持がまだ残っていたパラスは、強く拳を握りしめながら女神の石像を振り返った。

しかし石像はいつも通り静かに佇むだけで、彼らに何一つ答えを示さなかった。

「パラス様、伝染病だとしたらすでにテレスィアにも広がっているかもしれません。」

倒れ込んだばかりで多くの人と接触したわけではないだろうが、それでも拡散の可能性を考えざるを得なかった。

「惜しいことですが……お嬢様が持ってこられた聖水を使うべきかと存じます。」

「私も同意します。」

憂いに満ちた顔でため息をついたエステルは振り返り、指示を下した。

「ビクター、すぐにここにいる全員に聖水を飲ませて。」

「全員にですか?」

「うん。君もだ。」

病が危篤な状態では聖水は役に立たなかったが、接触した程度であれば十分に浄化できた。

「それと、君たちは出て行って、体調の悪い人は必ずここに来るように伝えてくれ。神殿ではなくテレシアで世話をすると言うんだ。」

「承知しました。」

兵士たちはエステルの指示どおり、すぐに外へ駆け出して行った。

「では、この男はどうしましょうか?」

パラスの問いに、エステルは男を見つめた。

瀕死の状態だけに、そのまま放置すればすぐに死んでしまうだろう。

(どうすればいい……)

エステルの胸に、かつてハンスを治療した時のような葛藤がよみがえった。

自分の聖力を使えば、難なく救えることは分かっていた。

だが、見ている目があまりにも多かった。

ついにはパラス神官長まで隣にいた。

この状況で男を治療するとすれば、黙って見過ごされることはないだろう。

『たとえ知られたとしても……』

悩みは長く続かなかった。

エステルは、もし今ここにノアがいたらどんな言葉をかけてくれるだろうと心に浮かべてみた。

『君のしたいようにすればいい。』

きっとそう言ったに違いない。

エステルはわずかに笑みを浮かべ、決断を下した。

いずれにせよ、自分が聖女である事実を明かす時は迫っているのだ。

神殿の権威を真正面から覆すよりは、むしろラビエンヌが偽物だという噂が広まる方がましだった。

「私が治療します。」

「えっ?あんな状態なのにどうやって……。危険すぎます。もしお嬢様に病がうつったら……。」

娘を一片の欠片すら惜しんで守ろうとしたドフィンの姿が脳裏に浮かんだ。

パラスが止めようとした。

しかしエステルはすでに男の横に座り込んでいた。

「私には絶対に触らせないでください。」

その姿からただならぬ気配を感じたパラスは、唇をきゅっと噛みしめ、ただ見守ることにした。

エステルは意識を失った男の胸に手を置いた。

ゆっくりと目を閉じ、精神を集中させる。

「必ず助けます。」

ノアから贈られた手袋をはめていたため、手から直接の光は見えなかったが、パラスはエステルの力を感じて目を見張った。

男を治療するには予想以上に時間がかかり、その分エステルの聖力も大きく消耗した。

その間、周囲にいた人々は息を呑んで、この光景をただ見守るしかなかった。

エステルの掌の下から溢れ出た眩しい光が通り過ぎると、ただれていた皮膚に再び新しい肉が芽生えた。

「私たち、今……聖女様を見ているのでは?」

「そのようですね。」

いつの間にか膝をつき、エステルに向かって祈る人々の姿まであった。

男を救おうと力を注ぐエステルと群衆との間には、まるでひとつの隔たりが生まれたかのように感じられた。

「静まれ。止まれ。」

図書館に納める書を選んで騎士たちと共に階段を下りてきたデニスは、足音がエステルを妨げるのではと気遣い、その場に立ち止まった。

そして両手を背に組み、下にいるエステルをじっと見下ろした。

「不思議だな。我らのエステルの周りにだけ光が満ちているように見えないか?」

「ええ、私の目にもはっきりと見えます。」

「そうだ。目がちゃんとある人なら誰だってわかるはずだ。」

暗い夜空を照らす星。

その光を気品高く宿すエステル。

「“エステル”なんて名前がこれほど似合う人が、他にいるだろうか?」

デニスは独り言をぶつぶつと繰り返しながら、こぼれ落ちそうな視線でエステルを見つめた。

 



 

 

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