転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います

転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います【27話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います」を紹介させていただきます。 ...

 




 

27話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 仮の婚約

豪快に吐き出されたオレンジジュースが、私の新品のスカートを鮮やかに濡らした。

「ああ、このワンピース……おろしたてなのに……」

けれど、自分が物語の主人公のように衝撃的な「出生の秘密」を知らされたばかりの私には、服の染みを気にしている余裕なんてなかった。

「……かなり驚いたようだな」

母がハンカチで拭いてくれたものの、ほとんどコップ一杯分を丸ごとこぼしたような量だ。薄いハンカチ一枚でどうにかなるはずもない。
しかも、今日の母の口調はどこか妙によそよそしかった。「びっくりしたでしょう?」を丁寧に言っているつもりのようだが、そこには感情がまったく感じられない。

戸惑って瞬きをしていると、やがてジュースを拭くのを諦めた母は、濡れたハンカチを雑に遠くへ投げ捨て、私の頬を優しく撫でた。

「でもシャナ。あなたももう7歳よ」
「……『もう7歳』って言い方、おかしくないですか?」

普通なら「まだ7歳」と言うはずだ。私はまだ幼稚園児くらいの年齢なのに。

「こんなに愛らしくて、美しくて、可愛いんだもの。あなたを我が物にしたいと欲しがる人間が出てくるのも当然だわ」
「驚くのも無理はない……」
「お母様、お説教や前置きはひとまず後にしてください……」

今はそんな悠長な話をしている場合じゃない。それに、人前で親バカな発言をするのはやめてほしい。
……いや、もう手遅れか。

目の前には、穏やかに佇む皇后陛下と、その息子のレイヴン殿下。そして母の失言に苦笑しながら深く頷いている父がいた。
いつも通り上品にお茶を嗜んでいるレイヴンを見て、私はなんとも言えない疎外感を覚える。どうやら、この場で何も知らなかったのは私だけだったらしい。

(ごめんね、レオン。急に吹き出しちゃって驚かせたわよね……)

心の中で遠くの友人に謝罪していると、父が苦笑いを浮かべながら口を開いた。

「実は、お前がレイヴン殿下と一緒に家庭教師の授業を受けることになった本当の理由は――」
「あなたが生まれた頃から、あちこちの貴族から山のように縁談の打診が来ていたからなのよ」

母が父の言葉を引き継ぐ。

「その頃って、私まだ……せいぜい3歳か4歳じゃありませんでした?」
「そうね。上は7歳から、下は生まれたばかりの赤ちゃんまで、本当にいろいろな話があったわ。一番呆れたのは、妊娠中のお嫁さんが『絶対に男の子を産む』と決めつけて申し込んできたバリス伯爵ね。もし女の子が生まれたらどうするつもりだったのかしら……」

母は面白そうに笑ったが、私はちっとも笑えなかった。悪役令嬢ならぬ婚約者候補の中に、まだ生まれていない赤ちゃんまで混ざっていたなんて……。

「もちろんすべて断ったから、そんなに青ざめる必要はないよ、シャナ」

父が私の顔色を伺いながら、優しくフォローを入れる。
どうやら私が婚約を嫌がるのは織り込み済みだったようだが、まさかこんなカオスな縁談ラッシュが背景にあったとは夢にも思わなかった。

(『公爵家の一人娘に転生した』どころか、『転生したら婚約者候補がまだ生まれていませんでした(性別未定)』なんて展開になりかけていたなんて……!)

背中に冷や汗が流れる。

「そんなに驚くことか?」
レイヴンが呆れたように肩をすくめた。
「帝国に六家しかない公爵家の一人娘で、しかも七クラス魔法使いアナイスの娘だ。お前は生まれた時から超有名人なんだぞ。縁談の話くらい山ほど来て当然だ」
「私って……そんなに有名だったんですか?」
「そうだ」
「……」

ぐうの音も出ない私に、母が追撃をかける。

「そのうえ最近のあなた、あまりにも目立つことばかりしているでしょう? 伝染病が流行する貧民街へ駆け込むだけでも十分すぎるのに、誰にでもニコニコ笑いかけて人助けまでして」
「人聞きの悪い言い方をしないでください! それじゃあ、病気で苦しんでいる人たちを冷たく見捨てろってことですか?」
「誰にでも愛想よく振りまく必要はなかったと言っているの。おかげで、あなたを『舞い降りた天使』だと崇める信仰まで生まれかけているじゃない」
「可愛い子どもを褒める大げさな表現を、そんな怪しい意味に結びつけないでください!」
「そのうち、あなたの彫像まで作られそうな勢いだったわよ。見ていればわかるでしょう?」

(このお母様、さらっと恐ろしいことを言う……)

「みんな正気なの……?」
「目立つことを自分からやっておいて、有名になりたくないなんて都合が良すぎるだろ」

呆れたように口を挟んできたのはレイヴンだった。

「私が望んで目立ったわけじゃないわ!」
「だが、首を突っ込んだのは事実だ」
「その言い方は誤解を生みます! 私は一人で行っただけで、あなたに『ついて来て』なんて頼んだことは一度もありません!」
「お前が行くなら、私も行く。当然だろう。それとも私が知らないふりをすればよかったとでも?」

冷たく言い放つレイヴンだが、彼が病気にかかったら困るからと心配していた私としては、返す言葉に詰まる。
彼が私を追ってくることを見抜いていたのに、止め切れなかった自分にも少し申し訳なさがあった。

「なるほど。どうやら殿下は、死ぬ気もなさそうですね」

私がムッとして嫌味を言うと、レイヴンはクスクスと笑った。その笑顔は、どこか楽しそうにすら見えた。

「殿下、悪い癖ですよ。シャナはただ、困っている人を見捨てられない優しい心を持っているだけです。どうかお戯れはお控えください」

父がレイヴンをけん制するように冷たく言った。しかし、レイヴンは悪びれもせず言葉を返す。

「公爵、私が一番の適任だと認められたのですから、半分はあなたの息子になったようなものでしょう?」
「……」
「それに、シャナも私のことを嫌ってはいない」
「……」

(ちょっと待って。)

会話の前提があまりにも飛躍しすぎている。私はおずおずと手を挙げた。
母と皇后陛下が、まるで「可愛らしいお人形」でも見るような温かな眼差しで私を見つめてくる。

「遠慮せずに言ってみなさい、シャナ」

皇后陛下が優しく促してくれた。

「えっと……もしかして私だけが知らなかったのでしょうか。……私の『本当の』婚約相手って、レイヴン殿下なんですか?」
「あら、まだ直接は話していなかったかしら?」

――聞いてませんけど!?

「それくらい察しなさい。わざわざあなたをここへ呼んで、正式に婚約の話を切り出しているんだから、当然でしょう?」
「……でも、レイヴンとお茶を飲むことなんて、今までも普通にあったじゃないですか……。そんなの、ただの日常の一コマだとしか思いません!」

「正式な縁談としては出していなかったけれど……そうね、あなたの言う通りだわ」

隣で見ていた皇后様が穏やかに頷いた。

「シャナ、もしかしてレイヴンのことが嫌いかしら?」
「……この人も私のことが嫌いだと思います」
「何を言っているんだ? 私は君のことが好きだが?」

悪びれもなく言い放つレイヴンを、私は射殺さんばかりの目でにらみつけた。
(空気を読んでよ……!)

「でも、本気の婚約の話じゃないですよね? まさか7歳の子どもを異性として見るような変態じゃありませんよね……?」

そうじゃないと言ってほしい。仮に「そうだ」と答えられたら、私の尊厳が崩壊する。

「すぐに結婚しろという話ではないわ」

皇后様が微笑むと、レイヴンが急に真面目な顔つきになって私を見つめた。

「シャナ。これから六年間、私はここを離れてアカデミーへ行くことになる」

そんな真剣な顔をされると、なんだか不安になる。

「その間に、もし君が私のことを忘れてしまったら困るだろう?」
「私、健忘症じゃないんですけど……」
「それに私がいない間、お前は好き勝手に事件へ首を突っ込んで、危ない目に遭うに決まっている」

……なんだろう。私、いつの間にかとんでもないトラブルメーカー扱いされていないだろうか。

「だから、形だけでも婚約という『縄』を張っておかないと安心できないんだ」
「……そうね、レイヴン。どれだけその整った美貌を武器に迫られても、私には通用しないわよ」
「君には言葉で説得するより、こうして囲い込むほうが効果的だろう?」
「……」
「もちろん、休暇のたびに帰ってくるし、時間ができれば会いにも来るつもりだがな」

まるで二度と会えなくなるような重重しい空気を作らないでほしい。

「自分の所有物が他人に横取りされるかもしれないのを、黙って指をくわえて見ていると思うか?」
「……もう『所有物』扱いを否定するのも疲れたわ……」

レイヴンは初めて会った時から、私を自分のものだと言い張っていた。
最初の頃は「私にだって人権がある!」と反論していたけれど、今ではもう驚くことすらなくなっている。人を「物」のように扱うなんて絶対におかしいと反発していたはずなのに、今では不思議と軽く受け流せるようになってしまっていた。

「言葉にはお気をつけください、殿下」

父が今にもレイヴンを斬り捨てそうなほどの鋭い視線で睨みつける。

「これはあくまで、シャナを害意ある縁談から守るための『仮の婚約』です」
「ですが公爵、もし将来的に婚約破棄などということになれば、かえってシャナの評判を傷つけることになりませんか?」
「評判ばかり気にするような浅はかな人間を、シャナの隣に置くつもりはありません。ですから、その点はご心配なく。殿下は余計なことは気にせず、学業に専念なさってください」

バチバチと火花を散らす大人たちの会話を聞きながら、レイヴンが静かに付け加える。

「私は、婚約者を疎かにするつもりはありません」
「そもそも第一皇子殿下の側から強引に縁談が持ち込まれなければ、こんなことにはならなかったのです。ですから、どうか気に病まず、私のことは今まで通り放っておいてくだされば結構です」

(ああ……なるほど)

父とレイヴンのやり取りを聞いて、私はようやく全体のからくりを理解した。

レイヴンの異母兄である第一皇子は、私より10歳も年上だ。まだ会ったことがないのでどんな人物かは分からないが、レイヴンから聞く限りでは心優しく穏やかな人らしい。
しかし、複雑な宮廷事情があって皇太子には立てられていないものの、彼は皇帝陛下の長男。そんな有力な皇子からの縁談を角を立てずに断るには、相応の理由が必要だったのだ。

そこで最も都合がよかったのが、「すでに第二皇子であるレイヴンと婚約している」という事実を作ること。

「それを最初に言ってくれればよかったのに……」

だからあの時、「他の相手よりレイヴンのほうがいいでしょう?」と聞かれたのだ。
政治的なカモフラージュなら納得できる。私が理解して頷くと、レイヴンと父も、私が事情を飲み込んだことを察したようだった。

「それじゃあ、二人で少しお庭でも散歩してきたらどうかしら?」

皇后様が優しく提案すると、レイヴンは黙って立ち上がり、私の手を引いた。
私も大人しくそれに従う。両親も止めなかったのは、大人同士でまだ詰めるべき政治的な話が残っているからだろう。

静かな庭園を歩いている間、私とレイヴンは一言も交わさなかった。
大人たちのいる東屋から十分に離れた木陰で、ようやくレイヴンが足を止めた。

「レイヴン」
「何だ?」
「事情は分かったけど……それでも、あなたは本当にこれでいいの?」

レイヴンが振り向く。
少年らしさを残した整った顔立ちは、まだ大人とは言えないものの、深く静かな金色の瞳だけは、私がこの世界で初めて彼に出会った日から少しも変わっていなかった。

「私はまだ7歳だからいいけど、あなたはもう12歳でしょ?」
「それがどうした」

レイヴンは少し不機嫌そうに低く答える。
(……もしかして、早くも思春期に入りかけているのかしら?)

「アカデミーに通うようになったら、好きな人や彼女だってできるかもしれないじゃない。そんな時に『形だけの婚約者』なんて存在がいたら、さすがに邪魔でしょう?」
「……」
「あ、もちろん『気にするな』って言われても気になるのは分かるよ? でも、どうせ後で解消する婚約なんだから。気にせず恋愛もたくさんして、色んな人と出会って、友達もいっぱい作って……」
「気にする」
「え?」
「君も気にしろ。婚約したんだからな」
「……それって、あなたのほうが圧倒的に損じゃない? 私はまだ7歳だよ? ただの子どもなのに」

レイヴンは彫りの深い美しい顔立ちをしているから、あと数年もすれば恐ろしいほどの男前になるのは目に見えている。ましてや、これからの年代は思春期だ。異性への興味が一気に高まる時期なのに、どうせ将来解消する仮の婚約のために青春を捧げるなんて不憫すぎる。

「恋人を作らなくても、誰かに恋をすることくらいは自由なんだから……」
「他の人間には、興味がない」

レイヴンは淡々と、しかし即答した。

「……人に聞かれたら、重大な誤解を生む言い方よ?」
「私を理解できるのは、君しかいないんだ」
「……」

だからこそ、その狭い世界はもっと多くの人と関わって広げるべきなのだ。
レイヴンは頭が良すぎた。あまりにも優秀すぎるがゆえに、自分の基準に満たない人間をハナから受け入れようとせず、少しばかり傲慢に育ってしまった。
彼の世界は極端に狭く、中に入ることを許された人間は片手で収まるほどしかいない。

奇跡的に私はその中にカウントされているようだけれど……。
(まさか、本当に私一人しかいないわけじゃないわよね……?)

「私には、お前だけいれば十分だ」

まっすぐに見つめられ、胸がドクンと跳ねる。
(……これは子ども特有の、友情ゆえの独占欲。……そうよね?)

そう思い込まないと、変な汗が出てきそうだ。
私は胸騒ぎを振り払うように、ぎこちなく笑ってみせた。

アカデミーへ行けば、星の数ほどの出会いがある。友達もできて、素敵な恋だって知るはずだ。そうなれば、私のような生意気な年下幼馴染のことなんて、きっとすぐに頭から押し出される。

……たぶん。

(早く成長して、この生意気で美しい王子様も、大人の余裕ってやつを身につけてくれればいいんだけどな)

私は秋の澄んだ空を見上げながら、遠い目で小さく溜息をついた。

 



 

 

  • 過剰な縁談ラッシュと「仮の婚約」の発覚
    シャナのもとへ殺到する無数の縁談(10歳上の第一皇子からの打診含む)を角を立てずに断るため、大人たちの裏工作により、第二皇子レイヴンとの「形だけの仮の婚約」が決定していた。
  • レイヴンの執着と独占欲
    アカデミー赴任で6年間離れるレイヴンは、シャナをトラブルや他人のアプローチから守る「縄」として婚約を承諾。シャナを「自分の所有物」扱いし、「お前だけいれば十分だ」と強い執着を見せる。
  • シャナの誤解と温度差
    政治的カモフラージュだと納得したシャナは、レイヴンに「アカデミーで自由な恋愛をして」と勧めるが拒絶される。シャナは彼の執着を「子供特有の独占欲」と捉え、大人になれば忘れるだろうと楽観視している。

 

【転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います」を紹介させていただきます。 ...