余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない

余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない【44話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「余命わずかな赤ちゃん薬師は天才なのを隠さない」を紹介させていただきます。 ネ...

 




 

44話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 凍てついた過去と、温かな誓い

私は思わず身振いした。
「……お父さん、なんでそんな重いこと言うの?」
もちろん、嬉しいことは嬉しい。
「あの人が私の言うことを聞いてくれるようになったんだから……」

なぜか首筋がむずむずした。
それとは別に、驚くべきこともあった。
「つまり、何を言っても聞いてくれるってことだよね」
あなた、私がもう一度治療してあげる代わりに、何でも言うことを聞くって約束したじゃない。
どうして今さら、そんなことなかったみたいな顔をしてるの?
危うく忘れるところだった。
「ずるいお父さん!」
私はお父さんの肩をぺちぺちと叩いた。

……と思ったら、すぐに自分の手を押さえることになった。
「痛っ!」
「……どうしてわざわざそこを叩くんだ? 人を苦しめるのが趣味なのか?」
「もうっ、そんなわけないでしょ!」
腹が立って、お父さんの頬をむにっとつねった。
「怒ってたからそうなったんでしょ! もう治療してあげるって約束したんだから、私の言うことは全部聞くって約束したくせに、それすら嘘だったの!?」
「それは違う」
父は静かに栗をむいて差し出した。
父が黙々と栗をむいているので、その「違う」という言葉がいっそう穏やかに聞こえた。
「昔も今も、私の気持ちは変わっていない」
「じゃあ何が違うの!?」
「心構えだ」
父は栗をむき続けながら、どこか照れくさそうに言った。そのおかげで、場の張り詰めた空気は少し和らいだ。
「以前の私は、お前の取引相手であり、患者でもあった」
「……」
「でも今は、お前を娘として大切にしようとしている父親なんだ」

父がそのまま「格好いい」と言ってくれたのに、ただ「かっこよく見える」と思われたことが、妙に気に障った。
「いや、本当に嫌だったの?」
本当はうれしいくせに、そうじゃないふりをしようとしている自分が不思議だった。
違う。
「いいことなんてほとんどなかったから、どう受け止めればいいのかわからないだけ」
恥ずかしかった。
私は、人を素直に好きになることさえ知らない人間なんだ。
そんな自分がどこか欠けた人間のように思えて、腹立たしくもあった。
「……ビユ?」
私が答えないでいると、父の表情から少しずつ笑顔が消えていった。
「……もしかして、私、何か悪いことをしたのか?」
わかっていた。

少なくとも、今この状況で父に非はなかった。
私を侮辱した相手を懲らしめてくれた。
やめてほしいと言えば、ちゃんとやめてくれた。
私が認めるその日まで盾となり、これからはもっと私を守ると約束してくれた。
これ以上、何を望めというのだろう。
わかっている。ちゃんとわかっているのに……。
「うっ、ひっ……あっちへ、行って……」
「……どこか具合でも悪いのか?」
「向こうへ行って。お父さんなんて嫌い……なのに……」
突然しゃくり上げながら涙を流し始めるなんて、自分でも信じられなかった。
当然だ。
私自身にも、どうしてこんなふうになるのかわからない。
いったい、どうして――。

それでも、こうして毎回、一生懸命生きてきたのに……。
結局、私の手元に残ったのは、不完全な自分だけだと思うと、腹立たしいだけでなく悔しくもなった。
「やっぱり、私が悪かったんだね」
「何が悪かったのか、わかってるの?」
私はしゃくり上げながら父を見た。
涙腺が壊れてしまったみたいに、次から次へと涙があふれ、視界がぼやける。
まったく。
同じように必死に生きてきたのに、今回はうまくいったからこそ、余計に悔しくなってしまったんだ。
父はためらいながら私の涙を拭ってくれた。
けれど、それは意味がなかった。
また涙があふれてきたから。
「拭かなくてもいいよ」
私は無理やり目元をぬぐった。

慰めてくれる人がいるというだけで、涙があふれてしまう自分が情けなかった。
私はいつから、こんなにも弱くなってしまったのだろう。
私は唇を強く噛みしめた。
「どうして……どうして今になって思い出し始めるの……」
「……」
「どうして今さら、人をこんなに惑わせるの?」
わかっている。今になって言われても遅すぎることくらい。
そんなことを言いたかったのなら、私が自分の生まれを思い出したと打ち明けた、あの時に言うべきだった。
何より、私が治療を始めたことがきっかけで記憶を取り戻したのだという事実も、忘れてはいなかった。
「そこまで必死に縋らなくても、私も約束は守るわ」
それでも、どこか割り切れない気持ちが残る。
「約束を破るつもりなんてない」

過去の人たちがどれだけ私を裏切っても、私は約束を破らなかった。
それが私の最後の誇りだった。
私は、あなたたちのように卑劣でも陰険でもない人間だ、と。
「……約束だから」
「逃げないよ」
私は泣きはらした目でそう言った。
もう泣かないようにと目を大きく見開いたけれど、意味はなかった。
昔からそうだった。
我慢に我慢を重ねても、一度涙があふれたら、気が済むまで泣き続けるしかなかった。
そんな自分がおかしくも思えた。
父を訪ねる時は、ただの取引相手として接しようと決めていたのに、結局こんなふうに本音を漏らしてしまうなんて。
これも全部、父が突然あんなに優しく接してくれたせいだから問題なんだ。
「嫌い……どうして私にこんなことするの?」
「……」
「あなたには、そうしないという選択だってあったじゃない……!」
私はあなたじゃないから、記憶も自我も失うことがどれほど辛いのか、本当の意味ではわからない。
だからこれは、お父さんの立場も苦しみも知らない私の身勝手な言葉だ。
それでも――私は言う資格がある。
三度の人生すべてで、あなただけを待ち続けてきた私には。
その資格がある。
「本当に……ひどいよ」

こんなふうに私の味方になってくれる人だったのなら――私が歩み寄らなくても、一度くらいはあなたのほうから近づいてきてくれてもよかったじゃない。
「私は、お父さんが全部思い出すまでは認めないから」
わかっている。
これは医師として言うべきではない言葉だということを。
父の病気を診断した私には、この世界を去る前に病気を治しきることなどできないと、最初からわかっている。
だから、こんなことを言う資格なんてない。
それでも、あなたは私のお父さんだから。
長い間ずっと孤独だったんだから、それくらいは許して。
もし本当に、あなたが自分の力だけで記憶を取り戻すという奇跡を起こせたなら……。
その時は、私も認めるから。
私は涙を流しながらも、頑固に父を見つめた。
それでもあなたは、私にきついことを言わないつもりなの?

「泣きながら睨んでいても、可愛いと思ってしまうなんて……やっぱりお前は私の娘だな」
「……」
「生まれた時のことは思い出したんだろう? 残りも少しずつ思い出していけばいい」
「……」
「でも、その途中で私が体調を崩したら、お前はまた徹夜で看病するだろう。だから今回は、なるべく病気にならないように気をつけて思い出すことにするよ」
父の大きな手が私の頬をそっと叩いた。
そして親指で、顎先にぽろぽろと伝っていた涙を優しくぬぐってくれた。
「恨まれてみて、正直久しぶりに胸が痛んだ。……まあ、それも当然だな」
「いいことばかりしていられるわけじゃないもの」
「そうだな」
父はかすかに微笑んだ。

「兄さんが言ってたよ。あんたはどうしようもない父親だって」
「その通りだ」
「うん、その通り」
私が頑固に責め立てても、父はただ素直に認めるだけだった。
まるで私だけが、一方的に毒づいている人間みたいで、ふっと力が抜けた。
(私は何をしているんだろう)
子どもじゃあるまいし。
(体が幼くなると、心まで少し引っ張られるのかな……)
私は乱暴に涙を拭った。
「ごめん。みっともないところを見せちゃった」
思うように涙が止まらず、目の下が痛くなるまで何度もこすった。
すると私の手が父にそっとつかまれた。
父は自分の袖で、私の目元をとても優しく押さえるように拭いてくれた。

ひゅう――。
涼しい風が吹いた。
心地よい風が、頬を伝う涙をそっと乾かしてくれる。
「驚いただろうな。急に泣き出したから」
私は気まずくなって、うつむいた。
子どものように突然恨み言をぶつけるなんて。
もう二十七歳なのに、何をやっているんだろう。
「今さらそんなことを言われても、受け入れられないわ」
「そんなことを言う資格は私にはない。言うつもりもない。お前が怒るのは当然だからな」
この溝は、すぐには埋まらないだろう。
「私のほうから、ちゃんと暮らしていた頃のお父さんを探しに行けばよかったのかもしれないけど?」
「その気持ちはありがたく受け取る。だが、一つだけ訂正させてくれ」

「……」
「ちゃんと生きてきたんだね」
私はその時ようやく顔を上げ、父をまっすぐ見つめた。
「記憶はない。でも、毎日のように私を訪ねてくる人を見ているうちに、どこか焦りや不安、そして寂しさに満ちていたんだろうなって思った」
「……」
「人には生きる目標が必要なんだっていうだろう。君は私に、その目標をくれた。感謝している」
父は私の頬を優しく撫でた。
その目には、心からの想いが宿っていた。
胸が締めつけられるようだった。
「君は私に、君を思い出すチャンスをくれた。だから次は、私に君の父親になれるチャンスをくれないか」
私は少しためらったあと、正直に答えた。

「……お父さんは、昔はきっと立派な人だったんでしょう」
「ありがとう」
父は少しためらったあと、そっと最後に頭に手を置いた。
「今の私も、お前に認めてもらえるよう努力するよ」
父が過去にどんな人物だったのかはわからない。
それでも、並べられた情報を見れば、並外れた人物だったことだけは確かだった。
さっきまでは、その輝かしい経歴がありながら私を探しに来なかったことばかりを責めていた。
けれど、涙が止まると頭も少し冷静になってきた。
(確かに、お父さんの言うとおりだ)
(もし今でも本館でお父さんを探している者がいるのなら――)
人を送り込んできているという事実だけを見ても、それが善意によるものか悪意によるものかは、まだ判断できない。

どんな形であれ、関心を向けられることがどれほど大切かはわかっている。
だからこそ、父に何かを頼むこともできるし、父にとっても私だけが、その願いを聞いてあげられる唯一の存在だ。
私たちは互いにとって、大切であると同時に利用価値のある相手でもある。
私たちは家へ帰る支度をしていた。
父が私を抱き上げると、私は何となく落ち着かなくなった。
「もう、泣いた後だから顔がひどいのに」
私はこんなに気にしているのに、父はまるで何事もなかったようで、かえって気まずかった。
気にしているのは私だけみたいじゃない。
「ねえ、このままずっと抱っこしたまま話すの? 下ろしてくれない?」
「このまま話そう」
「どうして?」
「それこそ不思議だな。毎日、父親に抱っこされていたのに、どうしてそんなに気にするんだ?」

「療養所で診てくださっていた先生のことですか?」
むぅ……。
私は頬をふくらませた。
父はくすりと笑った。
「そのくらいは勘弁してくれ。私もお前のそばにいると……家に帰りたくなくなるんだ」
「家に帰りたくなくなるってこと?」
「そうだ」
そういえば、この父には家と離れることへの不安があった。
私はそっと父の頬に手を添えた。
「それより、さっきの話だけど。お父さんに命令できる唯一の相手がいるってことは、その人に利用される可能性もあるってことだよね」
私は軽く咳払いをした。
「その意味、わかって言ってるのか? つまり、お前が私の弱点になるということだ」
「もちろんわかってるよ。むしろ、お父さんこそ私がさっき言ったことを忘れたの?」

私の手が父の頬から離れた。
「剣というものは、一瞬たりとも手放さず、守り続けるための道具なんだ」
よく考えてみると、一度本音を口にしたら、もう恥ずかしがることもなく次々と言葉が出てくるようだった。
「これからは離れずに、ずっと守っていけばいいじゃないか」
いつからそんな気の利いたことを言えるようになったのだろう。
ずっと淡々と生きてきた私には、そんな言葉への耐性なんてなかった。
(……こんなことを言われたのは初めて。こういう時、どう反応すればいいの?)
でも、それを口に出すのは、なぜだか悔しかった。
結局、私はもう一度こぶしで父の肩を軽く叩くだけだった。
「……格好つけちゃって」
頭上では、穏やかな風の音だけが静かに響いていた。

「そうだな。言葉だけじゃなく、行動で示さないといけないな」
「そう! ちゃんと行動で証明して!」
「わかった。証明しよう」
「よし!」
話を終えて、私は大きく伸びをした。
そして、すぐに気持ちを切り替えた。
(今日のことを無駄にしないために、これからもっと気を引き締めないと)
私は静かに目を細める。
黒家の反撃。
そして、迫り来るシニオンの次なる策略。
すべては、ようやく始まったばかりなのだから。

 



  • ビユの涙と本音の吐露: ずっと強がって生きてきたビユでしたが、父・フク・ビフからの不器用な優しさや歩み寄りに触れ、堰を切ったように泣き出してしまいます。三度の人生でずっと待ち続けていた苦しみや、「どうして今さらそんな優しくするの」という複雑な本音をぶつけます。
  • 父としての覚悟: フク・ビフは、ビユの涙を優しく拭いながら、彼女が自分を父親として認めてくれるよう努力すると誓います。また、ビユが自分に生きる目標をくれたことへの感謝を伝えます。
  • 親密さを増す父娘: 激しい感情の衝突を経て、二人の間に確かな絆と信頼関係が生まれます。フク・ビフは「お前が私を動かす唯一の存在であり、弱点になる」と言葉にし、これからもビユを守り続けると約束します。
  • 新たな決意: ひとしきり泣いて落ち着いたビユは、気持ちを切り替えます。黒家の反撃やシニオンの次なる策略が迫る中、彼女は父と共に新たな戦いへと立ち向かう覚悟を決めます。

 

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