こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
88話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 決戦の朝
エノク皇太子の冷徹な命令により、騎士団叙任式に参加していた全貴族と兵士たちが皇宮内に留め置かれることとなった。
皇宮は広大であったが、突然これほどの大勢を収容するには限界がある。しかし、そもそも監視と容疑者の特定を目的としている以上、あえて広い部屋や快適な環境は与えられなかった。後から証拠を隠滅されたり、口裏を合わせられたりする二次災害を防ぐための措置であることは明白だった。
事情を察した貴族たちは、誰一人として表立って不満を口にすることはできなかった。何しろ、皇帝暗殺未遂という前代未聞の国家反逆事件が起きたのだ。彼らは行き場のない恐怖と抑えきれない怒りを、まだ正体の分からぬ犯人へと向けて吐き出していた。
「一体どこの誰だ……皇帝陛下にあんな悍ましい真似をしたのは……!」
「今日、この皇宮にいた者の中に必ず内通者がいるはずです。早く捕まえて罪を償わせねば……!」
「償わせるだけで済みますか? 皇帝陛下を狙ったのですよ。一族もろとも処刑すべきです!」
激しい非難の声が飛び交う中、当然ながら事件の黒幕であるリリカもその輪に混ざっていた。彼女は周囲に合わせて不安げな表情を作りながらも、無言でドレスの裾の下、自分の指先を強く握り締めていた。
(……皇帝へ致命傷を与えるところまでは、確かに成功していたはずなのに)
長年、泥をすするような惨めな日々に耐え続け、ようやく掴みかけた栄光だった。だが、もし“呪術”そのものが本当に万能な力であったなら、洪河(ホンハ)の一族はあそこまで歴史の陰で惨めな人生を送ってはいなかっただろう。
人間一人分の生命力を代価に爆発を起こすその術は、発動条件が異様なほど厳しい割に、破壊の威力は決してコストに見合うものではなかった。だからこそリリカは、他人ではなく家族愛に縛られた洪河の一族の命を強制的に生贄として捧げたのだ。むしろ予想以上に術がうまく作用し、皇帝を即死寸前まで追い込めたこと自体が奇跡に近かった。
だが、多大な犠牲の上に築いたその完璧な計画は、ジェステラダ皇帝が傷一つなく再び立ち上がったことで、すべて水泡に帰した。
(落ち着きなさい、まだ大丈夫よ。たとえ洪河一族の使った別荘が見つかったとしても、血で描かれた魔法陣は発動と同時に消滅するよう細工してある。そこから私へ辿り着ける可能性など、ほとんど残されていないはず……)
一族の者である自分ですら、呪術の全貌を深く理解しているわけではないのだ。ましてや、先ほどの魔力痕跡すらない不可解な爆発が呪術によるものだと見抜ける者が、この皇宮にどれだけいるというのか。証拠がなければ、皇室と騎士団が互いに責任を押し付け合い、疑心暗鬼に陥って自滅するだけのはずだった。
どれだけ冷静に考えを巡らせても、どうしても一つの疑問がリリカの胸に棘のように突き刺さる。
『エノク皇太子……あの人はなぜ、爆発の直前に叫んで周囲を遠ざけたの?』
まるで、“何が起こるか”を最初から完全に察知していたかのように。本来なら、誰一人としてあの爆術の気配など察知できない――それが世界の常識のはずなのに。
なぜエノクはその異変に気づき、さらには確実に死んでいたはずの皇帝を謎の液体で救ってみせたのか。常識では到底説明がつかない不可解な現実を前に、リリカはいっそ今起きているすべてが質の悪い悪夢なのではないかと疑った。
心身ともに限界を迎え、少しでも休もうと思ったがそれすら許されない。彼女に割り当てられた即席の休憩室には、不安に駆られた人間がひっきりなしに押しかけてきていた。
「リリカ、一体どういうことなんだ……? 神殿が関わっているという噂まで流れているぞ」
隣で、プリムローズ公爵が焦りを隠せない様子で問いかけてくる。慰めるように肩へ手を置いてきたが、リリカはそれを冷酷に無視して目を閉じた。
普段なら父として慕う“優しい娘”を完璧に演じていただろうが、今の彼女にはそんな余裕は微塵もなかった。
『落ち着いて。まだ私の仕業だと決まったわけじゃない。これからどう言い逃れをするか考えないと……』
必死に焦燥感を押し殺したものの、良い打開策は一つも浮かばない。多くを捨て、危険を冒して皇帝を狙ったというのに、結局思い通りになったことは何一つなかった。
『イバフネ教の僧侶たちには、私がこんな提案をしたなんて絶対に口を割らせないわ。上位騎士たちを皇帝から引き離すために、騎士団側で最初のボヤ騒ぎを起こさせたなんて、共犯のあいつらだって言えるはずがないもの……』
結局、リリカは底知れぬ不安を抱えたまま、休憩室でただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。だが、彼女の願いとは裏腹に、皇宮全体の調査は一向に終わる気配がない。昼間だったはずの時間は過ぎ去り、いつの間にか窓の外はすっかり暗夜に包まれていた。
「一体いつまで私たちを不審者扱いして閉じ込めておくつもりなの?」
誰もが苛立ち、体力も限界に近づいていた。昼のうちはまだ冷静だった貴族たちも、次第に皇室への不満を露わにし始めた、まさにその時――。
――バン!
休憩室の扉が音を立てて勢いよく叩き開けられ、返事を待つことなく、抜き身の剣を携えた近衛騎士たちがなだれ込んできた。
貴族たちは彼らを見るや否や一斉に駆け寄り、口々に怒りをぶつけ始めた。
「いつまで我が家門を容疑者扱いするつもりだ! 閉じ込めるなら、せめてもっとまともな部屋を用意しろ!」
「私は陛下暗殺とは何の関係もない! 忠誠を疑うとは何事だ!」
リリカも最良のタイミングを見計らい、聖女の仮面を被ってその抗議の輪に加わった。
「私は皇帝陛下が負傷された際、真っ先に怪我を治そうと休憩室から駆けつけた者です。皇宮を襲った卑劣な犯人と関係がないことは、私の行動が証明しているでしょう?」
これ以上、この気味の悪い皇宮に留まっていたくはなかった。今後どんな行動を取るにせよ、まずはここを離れて神殿の庇護下に入るべきだ。
「私は神に仕える聖女です。何かお役に立てることはありませんか? たとえば、今一度皇帝陛下のご容態を確認し、祈祷を捧げるとか……」
“助けたい”という殊勝な建前で聖女の肩書きを持ち出したが、その立場そのものが、若き騎士たちへの無言の政治的圧力になることを彼女は知っていた。
だが、ざわめく貴族たちの中で、ずっと冷徹な目でリリカだけを注視していた隊長の騎士が静かに口を開いた。
「リリカ・プリムローズ令嬢。ご本人で間違いありませんね」
「なぜ彼女だけを特別扱いするのです! 我々も――」
抗議しかけた貴族の言葉は、すぐに恐怖で途切れた。
皇太子の側近である騎士たちが険しい表情のままリリカに近づき、有無を言わさずその細い両腕を背後で手錠をかけ、強固に拘束したからだ。
「何をする気だ! 事情は分からなくとも、この子はイバフネ教の聖女だぞ!」
驚愕したプリムローズ公爵は、慌てて騎士たちの前に立ちはだかり、今にも剣を抜きそうな勢いで怒鳴り声を上げた。
「この子は我がプリムローズ公爵家の令嬢でもある! 協力を求めるなら、まず礼を尽くして頼むのが筋だろう!」
「協力だと? フザけたことを……」
だが、公爵本人がどれだけ威圧しようとも、目の前の近衛騎士はむしろ憐れむように皮肉げに笑った。
「リリカ・プリムローズ。あなたを、ジェステラダ皇帝陛下暗殺未遂、および禁忌の呪術を使用した国家反逆の容疑で現行犯拘束します」
――ドクン。
リリカの心臓が、底のない深淵へと真っ逆さまに落ちていくような錯覚がした。
皇宮の最奥、皇帝の寝所。
寝台に横たわっていたのは、帝国を絶対的な武力と権力で統べる皇帝であり、エノク皇太子の祖父であるジェステラダ・フィアステだった。
両親を亡くしてからはエノクの後見人となり、同時に彼を十代で凄惨な戦場へ送り込み、容赦なく怪物として鍛え上げた人物。エノクにとって恐怖の象徴であり、同時に「生かしておく必要のある」冷徹な最高権力者。
「……目を覚まされましたか」
ユリアの『エリクサー』によって肉体は完全に細胞レベルで再生したものの、脳の意識がはっきりするまでには多少の時間が必要だった。
横たわるジェステラダがゆっくりとまぶたを開けると、そこには冷徹な表情のままベッド脇に腰掛けている孫のエノクの姿があった。
「……どういう、ことだ」
「エリクサーです。ユリアの……錬金術師ギルドの秘薬を使用しました」
何度か瞬きをして視界を鮮明にした直後、皇帝ジェステラドが最初に口にしたのは、自らの体調ではなく現在の状況確認だった。死にかけた驚きや、そばで看病していた孫を気遣うような言葉は、爪の先ほどもなかった。
皇帝はエノクの説明を聞くと、自嘲気味に口元を歪めて笑った。
「神の奇跡だとほざく神殿の神官どもなど必要ないと言い放った直後に、その神官の呪いでそのまま死んでいたら、歴史の笑い者になるところだったな。あっちの世界も案外、笑いのセンスは悪くないらしい。俺のような長生きの年寄りを、そう簡単には連れていかなかったのだからな」
つい数時間前まで即死寸前の致命傷を負い、奇跡的に生還したばかりだというのに――まるで何事もなかったかのような、傲岸不遜な態度だった。
「だが、これほど劇的な事件なら、ユネトの薬の宣伝効果としてはお釣りが来るな。薬が皇帝を死の淵から救ったという象徴性は十分だ。これで我が帝国の医薬産業の噂は大陸全土へ広がるぞ。くくっ……」
エノクは無言で、そんな祖父の姿を冷ややかに見つめていた。
(今の姿を、ただ肝が据わっているとか、冷静だと片づけていいのだろうか)
そこには死への動協も、テロへの恐怖も微塵もない。
――まるで、人間味というものが欠落している。
目の前で笑うジェステラダ皇帝こそ、彼自身が常々エノクに叩き込んできた「皇帝」という冷酷な概念そのものだった。
誰にも傷ついた姿を見せるな。誰にも折れる姿を悟らせるな。帝国の皇帝とは、感情を持つ普通の人間であってはならない。
『戦争程度で怯えるな! 人が死ぬことなど大したことじゃない! 帝国を統べる皇帝になる者なら、それくらい当然の日常だ!』
周囲の重臣たちが皆、時期尚早だと反対したにもかかわらず、まだ十代前半だったエノクを冷酷に最前線の戦場へ送り出した時のように。今もなお、「皇帝とはこうあるべきだ」と、その傲慢な背中で語っているようだった。
「ユネトの薬はもっと値上げしろ。この奇跡の対価なら誰も文句は言えん。……エノク、お前がここで何をすべきか、分かっているだろうな?」
ジェステラドは鋭い眼光で孫を射抜いた。
――皇帝陛下がいなければこの帝国は困る、そう言って、ただ自分の偉大な傍に縋りついていろ。皇帝を救った最大の功績を盾に、今度はエノク自身が「陛下を引き止める哀れな孫」としての政治的パフォーマンスを行え、という意味だった。
「……おじい様。私は……」
幼い頃のエノクは、目の前の祖父がなぜ怒っているのかも分からず、ただその圧倒的な威圧感に怯え、言われるがままに人形のように従っていた。だが、こんなジェステラダの裏の顔を何度も見て大人になった今では、彼が何を望み、どうやって自分をコントロールしようとしているのかが完全に理解できた。
(昔の私は、いつだっておじい様の望む通りの完璧な後継者を演じてきた)
――けれど、今は。どうしても、もうそうしたいとは思えなかった。
エノクは静かに立ち上がると、表情を消して淡々と言い放った。
「いいえ。おじい様が万が一あのまま亡くなられていても、次代の私がいますから。帝国の統治において、特に大きな問題はなかったと思いますよ」
「……何だと?」
ジェステラダ皇帝の目が、信じられない反逆者を見るかのように大きく見開かれた。
皇帝はエノクのあまりにも不敬な言葉を聞いた瞬間、反射的に寝台から凄まじい勢いで身体を起こした。
――なぜそんなことを言う? 今の言葉は、自分が考えた通りの「お前はもう不要だ」という意味なのか?
常人なら衝撃を受けて言葉を失う場面だったが、ジェステラドは怪物だった。彼は寝台から這い出るように身を起こすと、傍にいたエノクの衣服の襟元を強引に掴み、そのまま力任せに引き寄せた。
「この、恩知らずの愚か者が……っ!!」
鼓膜を突き刺すような怒声に、室内の空気が一瞬で凍りついた。伊達に長年帝国の頂点に君臨してきたわけではない。彼から放たれる圧倒的な殺気と膨大な魔力のプレッシャーは、年老いた肉体から発せられているとは思えないほど鋭く、凶悪だった。たとえ相手が実の孫であろうと、牙を剥くなら一切の容赦はしない。
「……っ」
だが、エノク皇太子は、眼前に迫った皇帝の狂暴な視線から決して目を逸らそうとはしなかった。
一歩も退かず、真正面からその鋭い双眸を受け止める。
目の前の男を、自分を育ててくれた祖父として見ているのか。それとも冷酷な皇帝として見ているのか。守護者なのか、師なのか。あるいは、自分を檻に閉じ込め、押さえつけ続けてきた元凶なのか――今のエノク自身にも、もう判別はつかなかった。
けれど、それも当然だった。ジェステラダはエノクにとって、人生の先を歩く偉大な先達であり、同時にいつか越えなければならない最大の壁。血の繋がった唯一の家族でありながら、常に自分を支配しようとしてきた相手。
ただ一つ、昔とは決定的に違う確かなことがあった。
(……不思議だな。前ほど、あなたの怒りに心が振り回されない)
かつてのジェステラダという絶対的な存在は、幼いエノクにとって世界のすべてであり、空そのものだった。時には、唐突に世界をひっくり返す理不尽な天災のようでもあった。
――だが、今は違う。もう、彼の暗雲に飲み込まれることはない。
エノク皇太子には、いつの間にかもう一つの、決して折れない心の支えができていた。皇帝からだけ徹底的に教え込まれてきた冷酷な価値観に、「それは違う」と優しく疑問を抱かせてくれた、もう一人の最も大切な存在。
――ユリア・プロムローズ。
人生の肝心な岐路には必ず目の前に現れて、孤独だった自分の手を引き、引き止めてくれた女性。自分の初恋の相手であり、きっとこの命が尽きる最後の瞬間まで愛し続ける人。
(私はあなたみたいに、邪魔になった家族を冷酷に切り捨てたりはしません。ですが――)
今のエノクは、昔ほど皇帝の感情に支配されなくなっていた。襟元を掴まれたまま、細めていた瞳をゆっくりと開き、彼はどこまでも穏やかな、しかし拒絶に満ちた口調で告げる。
「ですが、今おじい様がその血まみれの姿で表に戻れば、神殿側に余計な政治的口実を与えるだけです。これからの処罰がすべて完了し、安全が確保されてから帰還された方がよろしいかと」
「……何だと?」
「今は、公爵家やイバフネ教と正面から無策に争っている場合ではありません。それに、神官の出入りを禁じた直後に皇帝が死ねば、政治的に非常に厄介だった。後から神殿に『皇太子が皇帝を見殺しにした』と責任を押しつけられるのだけは、絶対に避けなければなりませんでしたからね。だからあなたを、薬の性能テストも兼ねて生かしたのです」
エノクの冷徹な言葉の刃が、皇帝のプライドを切り裂く。
「私はまだ後継者として未熟ですし、これからユリアと共に、もっと強く、大きくなります。ですから陛下には、私があなた以上の偉大な功績をこの帝国に立てるところを、特等席で指をくわえて見届けていただかないと困るのですよ」
「……」
ジェステラダ皇帝は、エノクの襟元を掴んでいた老手の力を、信じられないものを見るようにゆっくりと緩めていった。
エノクの白い首筋に赤い痕が残るほど強い握力だったが――それでも、エノクは一切気に留める風もなく、ただ静かに佇んでいた。
自分が激怒して殺気を放ったことを隠そうともせず、それでいてなお、この底知れない落ち着きぶり。もし孫が、自分がこんな暴力的な反応をすることまで完璧に予測して言葉を選んでいたのだとしたら。
それはつまり――エノクという男が、もう簡単には揺らがない「真の支配者」へと脱皮したことを意味していた。
普段のエノクなら、自分の顔色を窺い、望む通りの完璧な答えを返してくる――ジェステラダは心のどこかでそう確信していた。……いや。
(私のすべてを予測し、超えていくというのか。この小僧が……)
これまで戦場でも政界でも、どんな凄惨な会話でも決して揺らがなかった皇帝ジェステラドの瞳が、その瞬間だけ、生まれて初めて激しく動揺に揺れた。
「……お前、変わったな。あの平民の娘のせいか」
「生きている人間なら、変わるのが当然でしょう? 私はあなたの人形ではない」
ユリアという光によって、エノクは確かに変わった。以前のように、皇帝の影に怯えて振り回されるだけの哀れな操り人形ではもうない。孫としても、後継者としても。
――ただ、この偉大な男に認められたい。
そんな子供じみた悲しい執着を完全に手放した瞬間、エノクの胸の奥は、これまでの人生で最も不思議なほど軽くなっていた。
「……」
ジェステラダは、眼前の孫が少しも動揺を見せないことに、支配者としてかえって激しい戸惑いを覚えていた。普段なら、エノクの不敬な言葉を力でねじ伏せて反発したはずだ。だが、今回はそれができなかった。なぜなら皇帝の冷徹な内心が、エノクの言った合理的な選択を「正しい」と認めてしまっていたからだ。
どれほど重苦しい沈黙が続いただろうか。先に折れるように口を開いたのは、皇帝ジェステラドのほうだった。
「……これから、どうするつもりだ」
「犯人は、すでに捕らえています。お体はエリクサーで回復されたとはいえ、精神的な安静は必要です。陛下はここで大人しく休みながら、特等席で見ていてください。――次代の私が、この帝国をどう動かしていくのかを」
あと数時間もすれば、東の空から夜が明ける。
今日という日は、すべての証拠が揃い、国家反逆者リリカ・プリムローズの容赦なき断罪の裁判が行われる日だった。
エノク皇太子は、皇帝の寝所へ来るまでの間に起きたすべての出来事と、愛するユリアの真っ直ぐな笑顔を静かに思い返しながら、決戦の朝へ向けて歩き出した。
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黒幕リリカの拘束: 皇帝暗殺未遂事件の黒幕であるリリカ・プリムローズは、即席の休憩室で言い逃れを画策していたものの、禁忌の呪術を使用した国家反逆の容疑で近衛騎士団に現行犯拘束された。
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皇帝の生還と傲慢な態度: 致命傷を負った皇帝ジェステラダは、ユリアの『エリクサー』によって完全に肉体が再生して目覚めるが、生還後も恐怖や人間味を見せず、エノクに対して自身の権力を誇示するための政治的行動を要求した。
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エノクの覚悟と祖父からの脱却: エノク皇太子はユリアの存在を心の支えにすることで、長年自分を支配していた祖父への恐怖や執着を完全に手放し、次代の支配者としての冷徹かつ合理的な覚悟を皇帝に突きつけてリリカの断罪裁判へと向かった。