こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

44話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 緊急事態
使用人たちのためのシェルターを設けた後、もともと評判がよかったユリアの評価はさらに上昇し、使用人たちは彼女のために何かをしようと一層熱心になった。
そこでまず、頼まれてもいないことまで報告するようになった。
「最近、リリカお嬢様がよく外出されているという噂があります。」
「リリカが?」
『最近は評判が悪くて、会う人もいなかったリリカなのに、どうして?』
誰かと会っているという話は聞いていなかった。
「もしかして他のお嬢様方にユリアお嬢様の悪口でも言っていたらと思うと、心配でちょっと調べてみました。」
「馬夫の話では、前回はネランド伯爵のところに行ったと言っていました。」
皆、ありがたいことだ。
娘たちだけでなく、馬夫をはじめとする使用人たちまで私にこっそり協力してくれた。
今ではリリカは私の目を避けて、何かをする気力も失っていた。
―お姉ちゃんがオロオロしてる姿、笑えたわ。
―お姉ちゃんの味方は誰もいないのに、こっそり何かできると思った?
前世では私はリリカに殺された。
だが今は立場が逆転している。
使用人たちは今やみんな私の味方だ。
今ではむしろ、使用人たちがリリカの行動を監視し、何をしたのか、どこへ行ったのかを報告してくれるほどだった。
前世と現世が違うということを実感し、思わず微笑んだ。
「リリカが最近トラブルを起こすから心配ではあるけれど、みんながこれまで通り気を配ってくれると嬉しいわ。ありがとう。」
しかしながら、リリカと会話する貴族の令嬢が現れるなんて。
以前の葬式の花事件の後、貴族の令嬢たちはリリカを無神経な令嬢だと非難していたのに、どういうことだろう。
『リリカがこのままで終わるような子じゃないし。』
明らかに今回の頻繁な外出も何かを企んでいることは明白だった。
「最近はリリカお嬢様が以前と違って、騎士たちも警戒していて……貴族の令嬢たちと会うときには私たちを遠くに行かせるようにおっしゃいました。」
それを察したのか、以前のように護衛騎士たちはやたらと近づいてくることもなかった。
『ジキセンが私を警戒してるのを見たのかしら?思ったより勘がいいのね。』
以前は私を見下した視線を向けていた護衛騎士たちじゃないか。
私を見る空気感が変わったと感じることはあっても、こんなに突然騎士たちが避けるなんて。
やはり、どれほど不利な立場にいても公爵夫人は社交界を掌握していたわけではなかったのか。
「ただ、表向きは化粧品の話ばかりでした。」
リリカではなく、他の令嬢たちが声を大きくして話していたのがその内容だったと言う。
「化粧品のことなら、ユネット?」
「ええ。公爵夫人がユネットの代表と親しい関係なので、リリカお嬢様を通じて化粧品を手に入れてほしいって頼んでいたようですね?」
私は思わず笑みを浮かべた。
『お母様がどうやって改装前に化粧品を手に入れたのかと思ったら、私がユネットの代表だからなのね。』
もし私がユネットの代表だと知っていたら、リリカがそんなお願いをするはずがない。
『ねえ、私がユネットの代表って知らないから、こんなことするの?』
リリカのせいで正体を隠すことになって不便だと思っていたけれど、今回の件はむしろそのおかげで得をした。
この話を伝えてくれた騎士は、どうせ貴族の令嬢たちは最近集まればユネットの話しかしないのだから、大した収穫じゃないといった様子だった。
惜しそうにする騎士の姿に、私は思わず爽やかに笑った。
「いや、大きな助けになったよ。ありがとう。」
「えっ、本当ですか?」
「もちろん。」
いいことを言ったのか悩んでいた騎士の顔が明るくなった。
他の製品なら難なく手に入るかもしれない。
『でも、人々の口に最もよくのぼる限定版の話は別。以前ならともかく、今のリリカには絶対に手に入らないわ。』
リリカが母に頼むようにという予測ができたのは、本当に大きな助けだった。
「ご苦労さま。君たちがいてくれると頼もしいよ。」
私はこれからもリリカに関することなら些細なことでも報告してくれと、侍女たちや騎士たちに優しく伝えて笑った。
じゃあ、リリカをもう少し困らせてみようか。
・
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そして、事はユリアの予想通りに進んだ。
「どうして……」
リリカは自分なりにユネットで限定版を手に入れようとした。
決して傲慢でも、横柄な態度でもなかった。
社交界でうまく自分の立場を作るためだったのに。
あの気の利いた令嬢の一人にすぎないと考えながらも、それくらいならうまくやれると思っていた。
しかし…貴族ですら手に入れるのが難しい物を、リリカがどうやって手に入れられるというのか。
もしかしてと思ってはみたが、やはり試みは失敗に終わった。
ユネットで自分が公爵令嬢であることをしきりに強調したが、効果はなかった。
もともとユネットは、貴族だからといって特別扱いするような場所ではなかったのだ。
「プリムローズ令嬢でしたら… お母様である公爵夫人にお願いしてみてはいかがですか? 限定版を買われたかもしれませんよ。」
ユネットの店によく顔を出していたのは、プリムローズ公爵夫人がいたからだった。
「……」
その言葉には、返す言葉もなく言葉を飲み込むしかなかった。
『ここでこれ以上会話を続けたら、面倒なことになるかもしれない。』
もしかしたら、公爵夫人と自分の関係が良くないという意味に取られて注目を集めるかもしれない。
そうなれば、リリカの過去の悪行が再び取り沙汰される可能性もある。
結局、リリカはユネットから手ぶらでそっと戻ってきた。
「お父様に言ってみようとしても……」
以前、首飾りの件でこみ上げた怒りはまだおさまっていなかった。
自分にくれたものとは比べ物にならない、ユリアのルビーのネックレスの台座が、いまだに頭の中にはっきりと残っていた。
あんなにも豪華で大きなルビーは初めてだったのだから!
「いや… もしかして、本当に前とは違うというだけかもしれない。」
もし昔のままだったら、化粧品程度のことならすぐに父に頼んでいたはずだ。
しかし首飾りの違いは……以前のようにリリカを大切に思っていない証拠ではないか。
リリカは首をぱっと振った。
ただ、自分がすねてお願いしないだけだ。
絶対に父が聞き入れてくれないと思って、頼みに行かないというだけなのだ。
仮に聞き入れてくれたとしても、「少し探してみたけど見つからなかった」と適当に返されるだけなのは目に見えている。
『お兄様には頼めないし……』
リリカはどうしようもない状況に、唇を噛みしめた。
もう社交界の中心ではない自分。
貴族たちに関心を持たれない自分を見つめていた、その視線は……
『騎士たちが見ている前で、ユリア、その侍女に——』
彼女を叱ったのを見ると、やっぱり信用できない。
うなると、選択肢は一つしか残っていなかった。
『でも本当に公爵夫人に頼むのは難しいな……』
試してみなかったわけではない。
以前に一度、あの方に「母に会いたい」と言ってみたことはある。
仕方なかったからだ。
限定版を買ったかどうかは分からないが、もし買っていなかったとしてもユネットの代表と親交があると言っていたから、手に入れるのは難しくないだろう。
― はい、奥様にお伝えするようにいたします。
― 今お会いするのは難しいですか?
― 今は席を外されています。
あの方が知っていたと言っていたが、なんだか…嫌な感じがした。
公爵夫人に「お会いしたい」と伝えてほしいと言ったのではないか。
そして、リリカの疑念は事実だった。
ーお母様がリリカのせいで深く傷ついて、それでもこらえている気がするの。できるだけリリカに会わせないでくれる?
護衛騎士の話を聞いたユリアが、ミリ公爵夫人付きの侍女に伝えていたからだった。
その侍女は、公爵夫人の親族の縁で仕えていた者だった。
リリカが公爵家の皆に好感を得ていたとしても、彼女だけは最後まで完全には懐柔できなかった。
今でも明らかに、リリカの態度が気に入らないと感じていたのがはっきりと分かる。
母にレフィアの花を贈ったことも、失敗だったと謝ったのに!
『侍女の主君にとって、私は気に入らない存在だということか』
軽く言って周囲の人に話したくもなったが――
問題は、公爵夫人の直属というだけで、あの使用人たちの間で影響力が絶大になるという点だった。
『今も私の評価が…いや、私は公爵家の令嬢なのに、どうして一使用人の顔色をうかがっていなきゃいけないの?』
それでも親しくしていた騎士たちにそれとなく話してみたが…特に耳を傾ける気配はなかった。
公爵家の人々の中で、唯一まともに接してくれていた部類だったが、それも今では違っていた。
かつては過剰なほど熱心に自分に仕えていた様子を見ていただけに、最近の行動が本心でないことはすぐに分かった。
むしろユリアの味方をしているように感じられた。
だからこの前の社交の集まりでは、騎士たちが近くに来て自分の話を聞けないように遠ざけたりもした。
以前だったら、必ず隣にいて自慢してくれていたのに!
「はあ……」
直属の公爵領でも、それほど居心地のよさは感じられなかった。
自分が公爵の娘という身分であることも、皆が知っているのに……。
『これじゃダメだ。』
社交界で再び立場を築かなくてはならない。
使用人たちに自分を再び敬意を持って見させなければならない。
フリムローズ公爵とその息子が大切にしている、社交界の中心人物として……。
『でも、どうすればいいのか分からない。』
リリカは、じっとしていられるはずがないと思い、次の日また公爵夫人を訪ねようとしたが……
あの侍女は困ったように話を聞くだけで、「私から伝えておきます」と繰り返すばかりだった。
最近、公爵夫人が頻繁に外出しているとはいえ、どうして今週に限っては一度も公爵邸で会えないのか、疑問だった!
『最近、社交界の令嬢たちが頼んだ日がみんな重なってるってこと?』
公爵夫人に頼んで手に入れるのが最善だ。
だが、彼女に会うことすらできない今、ただ信じて待つには自分の立場があまりにも不安定だった。
『このままじゃいけないのに。』
そしてその瞬間、一つの考えが浮かんだ。
『限定版って言ってたよね。持ってる人もあまりいないし。それなら似たような物を渡されても、見分けがつかないんじゃない?』
リリカの頭が鋭く回転した。
『限定版って言っても、工芸家が作った容器だけが違うだけよね。』
公爵邸の人々が自分に背を向けたとしても、彼女が頼れる人が突然いなくなったわけではなかった。
何しろ、自分はフリムローズ公爵の令嬢なのだから!
「リリカお嬢様がドレスが気に入らなかったとかで、突然更衣室を変えられましたよ。」
突然の知らせが飛び込んできた。
「でもそこって、貴族の令嬢たちがよく訪れる場所じゃないですか?いくら評判が良くなくても、公爵令嬢だから… そこではリリカお嬢様にとても丁寧に対応してるみたいです。」
ユリアの耳には、リリカが最近出会った貴族令嬢たちとよく打ち解けているようだという話が入ってきた。
どうやら… 以前より騎士たちを遠ざけていたため、はっきりとは聞こえなかったが、華やかな令嬢たちと親しくしているようだ。
『本当にドレスが気に入らなかっただけ?それとも、自分への応対が気に入らなかったの?』
あれこれ考えていたそのとき、事件が起きた。
「ユネットの化粧品のせいで目が腫れたんです!」
順調だったユネットに、爆弾が落とされたのだった。
緊急事態だった。
いくつかの予定を取りやめ、すぐに対策を立てなければならなかった。
私はすぐに予備皇太子をはじめとする職員たちと会議に入った。
「マッサージオイルで顔のむくみを取り、凍ったクリームを塗って寝たのですが、夜中に目が腫れて不快だったので捨てたそうです。大丈夫だと思ってそのまま捨てたのが結膜炎だったそうで……」
職員の報告を聞いていると、頭が重くなった。
目が痛いと騒ぎ立てたパキラ嬢。
彼女の話を聞くだけでも、明らかに化粧品が原因だということが分かった。
普段は目のせいで困ったことなんて一度もなかったらしい。
「やっとの思いで手に入れた限定品なのに、そんなことが起きるなんて……」
疑わしく思うところはあった。
『たぶん結膜炎だろう。』
結膜炎が少しひどくなると、一時的に視界が遮られることもあるけど……。
もちろん深刻な場合は滅多にないけれど。
とはいえ、化粧品が原因で結膜炎になること自体は起こり得ることだ。
限定品だからといって中身が違うわけでもないのに……なぜそんなことが起きたのだろう?
『それに… ユネットの化粧品を塗って、なぜ結膜炎になるの?』
目の病気が起きた経緯を詳しく聞いてみると、ユネットの化粧品を塗った直後に目が痛くなったようだった。
本人に合わなかったとしても、以前には一度もなかった副作用だった。
「話を聞く限り、汚染された化粧品を使ったようです。でもおかしいですね。限定版パッケージが流通してからそんなに経っていませんし、製造から1ヶ月も経っていない化粧品がもう汚染されるなんてことあるでしょうか?」
「私もそう思います。」
「もしかして、スタッフから1対1のコンサルティングも受けず、サンプルも試さずに、限定版だからと欲しくなって、他の誰かから購入したのではないでしょうか。」
仮に極端な話、化粧品の成分が体質に合わないなら、それはあり得る。
例えば、私が甲殻類アレルギーでエビを食べると顔が腫れるような、そんな異常反応のように。
『だからサンプルがあるのに。スタッフの話も聞かずに、適当に購入したり、他の人からの再販売で買ったとしたら……』
だから私は、ユネットではない別のルートでユネットの化粧品を手に入れることになった。
そりゃそうだ、偽物の化粧品を使っておきながらユネットのせいで肌が荒れたなんて言われたらたまらない。
だからこういうことが起きないよう注意して、また注意していた。
特にユネットがやっと市場に定着しようとしていたこのタイミングで、こんなことが起きるなんて。
「これはちゃんと調べて、済ませなければなりません。」
安全な化粧品、自分に合う化粧品を謳って出したのに、こんなことが起きたら問題だ。
『ユネット』は、店頭に並んだ化粧品とは違って安全だと。
それをお客に信じさせてきたのだ。
『もしこの噂が広まったら、余波はどれほどになるだろうか。』
その好感のイメージが、むしろ逆風となって返ってくる。
ユネットに注いできた時間、努力… それらすべてが無駄になるのは当然だ。
私がこれまでセリアン兄弟を助け、マーケティングに取り組み、研究してきたことが、かえって仇となってしまう。
『私だけじゃなく、他の人にも被害が及ぶかも。』
ユリア・フリムローズがユネットの代表であることが知られていなかったから幸いだった?
いや、それを幸運とは思えなかった。
ユネットが噂で崩壊するというのは、単なる事業の失敗ではなかった。
『社交界でユネットの化粧品を使ってみたらとても良かった、と最も積極的に話していたのは、母様とビビアン皇女様だったじゃない。』
公爵夫人が個人的な親交から個人企業の化粧品を宣伝した、という噂が広まってしまったのだから。
ダメだ。
ビビアン嬢の社交界復帰に泥を塗ることになってもダメなことだ!
「それでは、王室相談団の職員を送って調べさせます。」
「はい。たとえユネットの過失だったとしても……問題を知った以上、改善しなければなりませんから。」
私はまるで砂を噛んだように口を固く開いて、真剣に答えた。
そして無意識のうちに呟いた。
「最初から手を出さなければよかったのに……」
すべてを台無しにしてしまった。私がダメにしてしまった。
母が薬物中毒で亡くなったときのことが頭をよぎった。
他の人たちが化粧品のせいで苦しむ姿なんて、見たくなかったから……。
もし私が何かをするとすれば。
私はただ、自分にできることで他の人の助けになる事業をしたかっただけなのに。
でも、こんなことが起きるなんて思わなかった。
『こんなことになると分かっていたら、せめて母様とビビアン皇女様だけでも巻き込まないようにすべきだったのに…。』
どれほどの時間が流れただろうか。
私はふと、目の前に立っていたエノック皇太子の視線に気づいた。
「あ……」
彼はずっと、私の手をじっと見ていた。
その視線を追って私も見下ろし、思わず小さく息を呑んだ。
自分なりに落ち着こうと努力していたけれど――
いつの間にか拳を強く握りすぎて、手の甲に血がにじむほどだったことに、ようやく気がついたのだ。
その時、頭の上から穏やかな声が降ってきた。
「代表、あまりご心配なさらないでください。」
「…化粧品の製造は私が責任を持って行っています。もしパキラ嬢に問題を引き起こした製品がユネットで買ったものだとしても、それがアレルギーではなく化粧品そのものの問題であるなら、それは私の調合ミスです。」
深刻な事態が起きているのに、声を荒げることなく落ち着いて答えるエノック皇太子。
事業経験が私より豊富だから?
いや、ただの人間性の問題だ。
彼は、私が関わっている事業に問題が起きたにもかかわらず、穏やかな態度でかえって周囲の人々を安心させていた。
「どうしてあんなことができるの?」
あんな人だけが事業をすべきじゃないか。
私が再び敬服の念に囚われそうになった、そのとき。
エノック皇太子の声がかすかに震えた。
「…はい、流通過程で何らかの問題があった可能性もあります。」
「その可能性は……」
「ユネット代表。」
そう、私はユネットの代表だった。
「まだ事件の詳細すら明らかになっていないのに、自責するのは違います。」
「……」
「なぜこんなことが起きたのか、まず原因を突き止めるのが先です。」
だから――
「もちろん、最初に彼女が誤解してしまった可能性もあります。たとえ彼女に非がなかったとしても、まだ化粧品事業は初期段階です。初期のミスがあるのは当然のことです。」
「……」
「問題が見つかっても、今見つかったのは幸いです。反省と謝罪をして、またやり直せばいいんです。」
その言葉で、私はようやく――
自分の過ちでもないことで責められ、悪女だと後ろ指をさされ、父や伯父にまで辱められてきた……
今は、過ぎ去った時間に執着してひどく意固地になっていたと一部認めざるを得なかった。
「そうですね……。」
私のせいでみんなに非難され、責められるのは愚かしい。
絶望に身を任せるのは、状況から逃げているだけだった。
だからこそ。
「皇太子殿下のおっしゃる通り、今私たちがすべきことは・・・できることをしなければなりません。」
今は気を引き締めるべき時だった。

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