こんにちは、ちゃむです。
「転生令嬢は治療スキルで異世界のみんなを救おうと思います」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
28話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 異変と襲撃
翌日。
「よくやった」
「……なんであなたがここにいるの? 忙しいんじゃなかったの?」
「婚約者との親睦を深めるため、アカデミーへ出発する前の予定は全部空けた」
笑わせないでほしい。本気で言っているのだろうか。
「もう十分親しくなっているだろう」
レイヴンは自信満々に言った。そんなこと、私がいつ口にしたというのだろう。
「顔に書いてある」
(心の声まで読めるなんて……恐ろしい子)
「読心術が使えたら、もっと楽だったんだがな」
「……」
私は必死に気持ちを落ち着かせようとした。すると、仏様のように穏やかな表情を浮かべたエブリンと、双子のレオンとイアンが、心配そうに私の様子をうかがい始めた。
レオンが身を乗り出して口を開く。
「シャナ、トイレに行きたいの?」
「……」
「もしレイヴン殿下に気を遣って言い出せないなら、私にこっそり言っていいんだよ」
イアンも真顔で続けた。
「生理現象は恥ずかしいことじゃないからね」
(お前たち、私を恥ずかしがらせないで……!)
思わず頭を抱えそうになる私を見て、レイヴンが不機嫌そうに目を細めた。
「シャナ。なぜ私より彼らのほうが気楽なんだ?」
「より親しい相手のほうが、一緒にいて気楽なのは当然ではありませんか、殿下」
イアンが鋭く言い返した。無表情な顔と相まって、いつも以上に冷たく見える。
(よく言った、イアン……!)
「それなら、私のほうがもっと気楽なはずだ」
「なぜそのような勘違いをなさるのか分かりません」
「議論するまでもない。私はシャナとほぼ毎日会っていた」
「私たちは一緒に暮らしています」
「同じ師匠のもとで一緒に学んでもいた」
「まだ数時間しか経っていませんよ」
イアンとレイヴンの間に、今にも火花が散りそうな鋭い空気が流れた。私は慌ててエブリンの後ろへ身を寄せる。……私の心の避難場所だ。
「それに、私とシャナは婚約している」
「婚約しているからといって、必ずしも仲が良いとは限りません。もしそうであれば、世の中に不仲な夫婦など一組も存在しないでしょう」
「では、本人に聞いてみよう。シャナ、私は君を不快にさせているか?」
(しまった……!)
話を振られないことを切に願っていたのに。イアンとレオン、そしてレイヴンの三人が、一斉に私へ視線を向けた。
「シャナ。私は、君が私の前でおならをしても構わない」
「シャナ。私たちは、君が私たちの前で失敗しても……」
「二人とも黙って!!」
本当は「うるさい!」と叫びたかった。けれど私は一応7歳の淑女(仮)なので、必死に言葉を選んだ。イアンとレイヴンは、まったく同じ表情で――つまり「何をそんなに恥ずかしがることがあるのか」という顔で私を見つめていた。
「おならもしないし、粗相もしません!」
「じゃあ、誰と一番親しいんだ? 当然、婚約者の私だろう?」
「いいえ、私たちでしょう」
私はエブリンにぎゅっと抱きついた。
「三人とも違うよ。一番仲が良いのはエブリンだから!」
「シャナ様……」
エブリンは嬉しそうに微笑むと、私をそっと抱き寄せてかばってくれた。それを見たレイヴンが、あからさまに不満そうな声を漏らす。
「今度は私が侍女と張り合わなければならないのか?」
「そんなこと言ってないでしょ! それに、親しさにも段階があるじゃない。どれだけ仲が良くても、人前で『おならがしたい』とか『うんちしたい』なんて言える相手にはならないでしょ!?」
……「うんち」と口にした瞬間、私の尊厳は完全に打ち砕かれた気分になった。
「双子はもう行きなさい。会う約束があるって言っていたでしょう」
「でも、シャナ……」
「病院の外には出ないし、マリアとエブリンも一緒だから大丈夫よ」
「レイヴン殿下もいらっしゃいますよね?」
レイヴンはその隙を逃さず口を挟んだ。
「まるで私が危険人物みたいな言い方だな」
「レイヴン、いちいち言い返さないで!」
「私の判断が間違っていてほしいとは思いますが、残念ながら私はほとんど間違えません」
「今回は間違ってるよ。それに君は、自分が間違っていることに気づいていないだけだ」
「もう、その辺で……」
「私が何か勘違いしているとでも言うんですか……?」
……胃が痛い。
ねえ、誰も私の話を聞いていないの?
「もう答えは出ていますね。まずは、自分が思っているほど察しが良くないことを認めてください」
「少なくとも、シャナのことに関しては殿下より私のほうが理解しています」
「それもどうだろうな」
「二人とも黙って、あっち行って!!」
上品な言葉遣いは完全に崩壊した。
私は双子を追い払うように手を振り、続けてレイヴンにも「向こうへ行って!」と手をシッシッと振った。
外で待機しているヒューや、潜んでいる護衛たちを全員見つけ出そうとしたら、いくら時間があっても足りない。双子は最後まで食い下がったせいで、結局エブリンにお尻を叩かれて追い出された。本当に、文字通り追い出されたのだ。
(マリアがいたら、とっくに首根っこをつかんで放り出していただろうけど……)
マリアは昔から、なぜかレイヴンを恐れていた。「私たちのような人間は、もともとそういうものなんです」と言っていたし、エラも同じだった。
こうして病院に用意された薬剤調合室――つまり私の部屋には、レイヴンと私、そしてエブリンだけが残った。部屋の主は私なのに、どう見てもレイヴンのほうが主人みたいな顔でソファに深々と腰掛けていた。
(さすが私の親友……いつでも堂々としていて頼もしいわ。うん、見ていて気持ちがいいくらい)
「あなたたち、どうしてそんなに相性が悪いの?」
「双子が一方的に絡んでくるだけだ。見ていれば分かるだろう?」
「お前も楽しそうに相手をするから、余計に調子に乗るんじゃないのか?」
「私とまともにやり合えるくらい肝が据わった子どもなんて、そうそういないからな」
……ほら、やっぱり楽しんでいるじゃない。
「でも、あなたと双子って一歳しか違わないでしょう?」
「子どもは子どもだ。見れば分かる」
「はいはい。患者さんのところへ行くついでに、病院の案内もしてあげるわ」
「堂々としていて、本当に見ていて気持ちがいいわね……」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないから」
・
・
・
この病院は3階建ての建物として完成した。
建物自体は予定より早く完成したものの、逆に工房へ注文していた備品の納品が遅れてしまい、マリアはヤキモキしていたようだ。けれどエラと私は、限られた時間の中で細部までこだわれることを素直に喜んでいた。
病院の外壁は清潔な白。
これは私の譲れないこだわりだった。病院といえば、やっぱり白い建物でなくっちゃ。
けれど、この世界では病院を白い外壁にするという発想は一般的ではなかったらしく、私が「白い壁にしたい」と言った時、みんな不思議そうな顔をした。エラに至っては「目立ちたがりなんですね」と笑っていたくらいだ。
それも無理はない。この世界には、私たちの知るような「病院」という施設自体がほとんど存在しなかった。薬は薬局で購入し、治療や手術は神殿か「治療院」と呼ばれる魔法使いの施設で受けるのが一般的だったからだ。
病院が完成してからまだそれほど時間は経っていない。以前、「病気になったらどこへ行くの?」とエラに尋ねた時、「薬で治らなければ、あとは我慢するのが普通です」という答えが返ってきた。
お金持ちなら治療師や司祭を家に呼べるから問題ないけれど、一般庶民にそんな余裕はない。そんな事情もあって、薬師と治療師が一緒にいる施設は存在しなかった。国が運営する施設もわずかにあったが、費用がとても高いうえに、何より治療師や司祭は薬師を見下していたため連携など取れるはずもなかったのだ。
「治療院を運営できるような司祭は、かなり高位の聖職者だけだからね」
そう説明しながら、私はレイヴンを案内する。
「一階は診察室と待合室。受付はマリアが担当することになったの。二階は入院病棟。ベッドはたくさんあるけれど、まだ入院患者は一人もいないわ」
「君の治療で入院が必要になる患者なんて、本当にいるのか?」
「……これから出てくるかもしれないじゃない」
素っ気なく答えたものの、それはただの私の願望だった。とにかく、誰も私を止めてくれないのだから好きにやらせてもらう。
「それで、3階は?」
「備品倉庫と、さっき私たちがいた薬剤調合室。どう? いいでしょう?」
「広い空間をずいぶん大胆に使ったな」
「……」
皮肉なのか、それとも褒めているのか。
「褒めている」
「やっぱり読心術でも使ってるんじゃないの……?」
レイヴンは小さく笑った。私はそのまま、彼が興味深そうに院内を見て回るのを好きにさせておいた。その隙に、私はこっそり奥の入院病室へ向かおうとする。
でも、勘の鋭いレイヴンが私を見逃すはずもなかった。
(……だから、察しのいい子どもは苦手なのよ)
私は扉を開ける前に、トントンと二度ノックした。返事はない。
「リリー、入るよ!」
レイヴンが不思議そうな顔で私を見つめている。どうやら、私の「高度な配慮」を初めて目にしたらしい。
「足音で気づいているかもしれないけれど、エブリン以外にも一人いるの。驚かないでね。危険な人じゃないから」
「……エブリン、もしかして毎回こんな感じなのか?」
エブリンは静かに頷いた。本当なら、例の「スノーマンの歌」をレイヴンの前で歌ってやろうかとも思ったけれど、さすがに恥ずかしかった(双子と違って一生からかわれそうだ)。それに、歌えば歌うほどリリーが怒るようになった気がしたため、最近は歌うのをやめていた。
最初は誰も紹介せず放っておけばよかったと後悔したこともあった。けれど、毎日会いに来て、ご飯を食べさせ、一緒に過ごしたおかげで、リリーは少しずつ警戒心を解いてくれていた。毎回怒られてばかりいる気もするけれど、返事がないよりはよほど安心できた。
拷問の傷痕はまだ残っていたものの、長く眠っていたせいで衰弱していた体は順調に回復していたため、私はリリーをこの病院へ連れてきたのだ。彼女には身寄りも友人もいないと聞いていたので、いずれロンに支援を頼んでみようと考えていた。
「入るよ。開けるね!」
「……人助けをするのも大変なんだな。そこまで気を遣うなんて」
「そんなに何でも正直に口にしていたら、いつか刺されるわよ、レイヴン」
エブリンまで同意するように頷かないでほしい。
「環境が変わったばかりだから、きっと敏感になっているだけなの」
「……あの中にいるのは金魚なのか?」
リリーがレイヴンのその一言を聞いていませんように、と私は心から願った。
私はレイヴンの肩を一発叩いてやった。彼は律儀にも「痛っ」と小さく声を上げ、痛そうなふりをしてくれた。ありがとう。
そして、そっと扉を開けた。
「リリー、いる……?」
その瞬間だった。
扉を開けた私を、誰かが勢いよく押しのけた。次の瞬間、何かが稲妻のような速さでレイヴンに向かって飛びかかる!
何が飛びかかったのか確認する暇もなく、エブリンが私の腕をつかんで後ろへ引き寄せた。私は悲鳴を上げることすらできず、息をのむ。目の前の空間が一瞬で空になった。
(危ない――!)
だが、レイヴンは私より先に自分へ向けられた攻撃に気づいていたようで、少しも動じなかった。悠然とした表情のまま、視線すら逸らさない。
パシッ――!
小さく乾いた音が響き、飛んできた何かが弾き返された。護衛が防いだわけではない。おそらく、レイヴンが身につけている防御用アーティファクトの効果だ。
(……やっぱり、あなたも全身に高性能な装備をつけているのね)
「レイヴン!」
「慌てる必要はない。この程度なら問題ない」
「避けて!」
「シャナ、お前は後ろへ」
エブリンが私を抱き寄せて庇い、レイヴンが一歩前へ出た。エブリンが私の前に立ち、視界を遮る。
(誰かが侵入できるはずがないのに……!?)
だからこそ、母はこの部屋中に強固な防御魔法を張っていたのだ。窓からの侵入を防ぐため、レイヴンの護衛たちでさえ身元確認を受けてからでなければ入室できない仕組みになっていた。
「……これは何だ?」
珍しく、レイヴンの戸惑った声が聞こえた。私はエブリンの腕をそっと押しのけ、前方を見た。
そこに立っていた襲撃者は、リリーだった。
荒い息をつきながらこちらを睨みつけ、目は充血して真っ赤に染まり、皮膚のあちこちには黒いあざのような変色が広がっていた。
「呪いを受けているようだな」
「きゃあああっ!」
リリーが突然金切り声を上げ、レイヴンへ襲いかかった。まるで私やエブリンの姿など目に入っておらず、レイヴンしか見えていないかのようだった。
私はとっさにエブリンの腕を引く。
「エブリン、止めて!」
「はい!」
言い終わるより早く、エブリンはレイヴンとリリーの間へ割って入った。それでもレイヴンは終始落ち着き払っていた。その余裕は頼もしくもあったが、同時にこんな状況に慣れているように見えて、私はあまりいい気分にはなれなかった。
(12歳にして、陸戦・海戦・空中戦まで全部経験済みってことかしら……)
リリーは弾かれたようにエブリンへ飛びかかった。爪を立てて引っかこうとしたが、エブリンのほうが腕が長く、先に顔を押さえつけられてそのまま床へうつ伏せに押さえつけられる。
リリーはなおも激しく暴れ続けた。その目は、狂気じみた光を宿してレイヴンを睨みつけたままだ。
「どうやら、あれは私にしか見えていないようだな」
「分かっているなら、さっさと避けなさいよ!」
なんて危機感のない人なのだろう!
「囮がいるほうが都合がいい。早く拘束してくれ」
「どんなに強力なアーティファクトを持っていても、油断は禁物よ!」
「ヒューゴさんは? 騎士の皆さんは!?」
「呼ぶな。こんなものがここにいると知られたらどうする。病院を開く前に大騒ぎになる。だから来るなと言っておいたんだ」
「何言ってるの!? 今そんなこと気にしている場合!?」
「安心しろ。あの程度なら、お前の侍女に敵う相手じゃない」
確かに、リリーは栄養失調からまだ完全には回復しておらず、走るどころか長時間歩くことすら難しい状態だった。普段のエブリンなら、簡単に取り押さえられるはずだ。
でも――今のリリーは明らかに普通じゃない。
あんなボロボロの体で、弾丸のように突進してくるなんて、本来あり得るはずがなかった。
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双子とレイヴンの張り合いと病院案内シャナとの親しさや理解度をめぐりレイヴンと双子(イアン&レオン)が激しく口論を展開。双子を追い払った後、シャナは完成した白い外壁の病院内(待合室・病棟・調合室)をレイヴンに案内した。
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元患者リリーの突如たる異変と襲撃回復途中で入院中だった身寄りのない少女リリーの部屋を訪れると、彼女は目を真っ赤にし、皮膚に黒いあざが浮かんだ「呪い」のような状態に変貌。レイヴンを目がけて激しく飛びかかってきた。
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危機的状況での連携とレイヴンの冷静さレイヴンは防御用アーティファクトで初撃を防ぎ、自身を「囮」にして冷静に対応。騒ぎを大きくしたくないため騎士を呼ばず、普段以上の異常な身体能力で暴れるリリーを侍女エブリンが取り押さえた。