悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【145話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

145話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 旦那様の特権

ロゼッタは魔塔から戻るなり、すぐさまメロディのもとへ向かった。

見れば、メロディは仕事で疲れきった様子で、肩をこわばらせたままベッドに横になっている。ロゼッタは急いで「奇跡のゴム槌・改三」を取り出した。どこであれ疲れた場所を軽く叩くだけで、すっと身体を楽にしてくれる、ブリグス商店の定番人気商品である。

「ふぅ……本当にありがとう、ロゼッタ」

ベッドに横になったまま、メロディはロゼッタの手慣れた世話を素直に受け入れた。

「大したことじゃないわ。別にそんなに大変でもないし」

メロディは、どこか浮かない表情をしたロゼッタの横顔をじっと観察した。

「魔塔で、何かあったの?」

「ううん、何も。いつも通りよ。私はエヴァンが好きで、優しいエヴァンはいつも不器用なだけ」

「……エヴァンが、ただ厄介なだけってわけじゃないでしょ」

「……ってことよ」

メロディは、ロゼッタとエヴァンの間にある複雑な事情を十分に汲み取ったうえで、慎重に言葉を選んだ。それは、つまり彼女が本当に困り果てている、という意味ではなかったからだ。

「慰めてくれてありがとう、メロディ。でもね、私――片想いだって、嫌いじゃないの。相手がエヴァンなら……あ、そういうこと」

ロゼッタは、ふと何かを思い出したように目を瞬かせると、くすくすと肩を揺らして笑い始めた。

「ねえ、エヴァンってさ。『優しい皇后陛下が、子どもを預かってくれる』って本気で思ってるのよ?」

「……まさか」

「本当なの。もう、可愛くてどうしようもないんだから。ぎゅーって抱きしめたくなっちゃう」

メロディは大きく息を吐き、背もたれに身体を預けた。

「エヴァンが、そんなふうに考えてるわけないでしょ、ロゼッタ……」

エヴァンはロゼッタよりいくつか年下ではあったが、今の彼は立派な成人の男性だ。そして何より――それは、彼が心から皇后に仕えると誓っている証でもあった。

「それに、エヴァンが出張先で冬用の手袋をお土産に買ってきてくれたの」

「いつも通りだって言ってたわりに、魔塔では良いことがたくさんあったみたいね」

「それが、私がエヴァンを好きな理由よ。エヴァンと一緒にいると、良いことばかりが起きるんだもの」

「じゃあ、次はいつ会うことにしたの?」

「うーん、本来なら次は来月のはずなんだけど……」

ロゼッタは、さっきまで使っていたゴム槌を動かす手を止めて、意味ありげな笑みを浮かべた。

メロディは、ロゼッタがすでに何か「手を打っている」に違いないと直感した。内容はわからなくても、近いうちに必ずエヴァンに会えるようになる――それだけは間違いない、妙に胸が高鳴る結末を予感させるものだった。

 



 

その頃、エヴァンは書卓の上に無造作に広げられた手袋を見つめたまま、深い思案に沈んでいた。

少し前までロゼッタの手を包んでいた、あの繊細なレースの手袋。彼が贈った新しい手袋へと替える際、彼女がうっかり忘れていったものだ。

(気づいて、すぐ追いかけはしたけれど……)

エヴァンが見つけた頃には、すでにロゼッタの馬車は遠くへ走り去っていた。もちろん、彼女が手袋を忘れたと知れば、すぐさま返すつもりで「前方注意! 最高速度で走れ!」などと御手に命じたに違いないが、そんな事情をエヴァンが知る由もない。

「……あぁ、どうしよう」

誰もいない部屋で、彼は小さく呟いた。

視線を落とし、そっと手袋を手に取る。指先に乗るそれは、驚くほど軽く、そして――小さかった。

「……本当に、小さいな」

こんなにも可愛らしい手袋がぴったり似合うお嬢様は、一体どれほど可愛らしい方なのだろう。

ロゼッタの白い手首、指の細さ、手袋越しに感じた微かな体温。次々と思い出が胸をよぎり、彼女のことを思い浮かべ始めた途端、エヴァンの指先には魔力まで宿ってしまった。ロゼッタと共にいる間ずっと抑えてきたものだったせいで、自分が光を放っているという事実にさえ気づけずにいたのだ。

早く返さなければと思うのに、なぜか視線は離れず、手袋を置くこともできない。まるで、それが彼女の一部であるかのように、エヴァンはしばらくのあいだ、静かな部屋でその小さな手袋を見つめ続けていた。

「エヴァン」

そのとき、ジェレミアの呼ぶ声と同時に、エヴァンの部屋の扉がノックもなく勢いよく開いた。

「うわっ!」

エヴァンは思わず声を上げ、慌てて振り返った。

「し、師匠!」

「悪いな。ずいぶん集中している様子だったから」

その指摘に、エヴァンの顔は一気に真っ赤に染まった。お嬢様が置いていった手袋のことばかり考えていた――その事実が、どうにも恥ずかしかったのだ。

「……い、いえ。違います」

「そうか?」

扉を閉めて近づいてきたジェレミアの気配に、エヴァンはびくりと肩を跳ねさせ、反射的に手袋を背中へ隠した。

ジェレミアは小さくため息をつく。

「か、隠してどうする……。師である私に言えば、すぐお嬢さんへ届けてやれるだろうに」

「……エヴァン?」

「は、はいっ!?」

驚いて顔を上げた瞬間、すでに目前まで来ていたジェレミアが、ぐいっと彼の両頬を掴んだ。

「顔色が悪いな。魔力酔いが抜けきっていないのか?」

「い、いえ……違います。師匠」

「なら、ロゼッタに相当振り回されたというわけだ」

「そ、そんなことは……! お嬢さんは、僕にとても……その……お優しくて……。むしろ、困ってしまうほど……」

視線を逸らすエヴァンに、ジェレミアはふっと息を吐き、掴んでいた手を離すと、今度は弟子の頬を軽く撫でるように整えた。

「まったく……相変わらずだな、お前は」

その声音は呆れを含みながらも、どこか柔らかい。

「ロゼッタが優しいのは事実だが、それに甘えきるほど、あの子は未熟ではない。そして――お前もな」

ジェレミアは、エヴァンの背後にちらりと隠れたレースの端を見逃さなかった。

「……忘れ物だろう」

「……っ」

「届けてこい。余計なことを考える前に」

短く、しかし有無を言わせぬ口調だった。

エヴァンは一瞬ためらい、それから意を決したように背筋を伸ばす。

「……はい。師匠」

小さな手袋を胸に抱き、部屋を出ていく弟子の背中を見送りながら、ジェレミアは独りごちた。

「毒になるかどうかを決めるのは、距離じゃない……覚悟だぞ、エヴァン」

静かな部屋に、その言葉だけがゆっくりと落ちていった。彼はじっと扉のほうを見つめていた。

「何度も言ったはずだが、エヴァン」

去りゆく弟子の背中に、かつてかけた言葉を重ねる。

「はい」

「私は、お前が何を正しい道だと分かっているかを知っているし、信じている」

「ぼ、ぼくは……し、師匠の期待に背くような行動は、絶対にしません」

「私の期待に応えろ、という意味ではなかったのだ、エヴァン」

ジェレミアは深く息をつき、記憶の中のエヴァンの顔から視線を外した。

なぜだかエヴァンを見ていると、自分の師であるオウェンの気持ちが、今さらながらよく分かる気がした。オウェンもまた、ジェレミアをずっと子ども扱いしてきたのだから。

あの頃は、「自分を信じてもらえていない」という事実が苦しかった。だが今になって思えば、必ずしもそれだけではなかったのだろう。師とは結局のところ、呼吸をするように弟子のことを案じてしまう存在――ただそれだけなのかもしれない。

「……あの、師匠」

ふと、まだ部屋に残っていたエヴァンが声をかけてきた。

「ん?」

「もしかして……僕に、何か頼みごとがあって呼ばれたのではないですか?」

「……用がなかったわけではないが。顔色が悪そうだし、後でもいいと思ってな」

「いえ! 僕は大丈夫です。どうか、お話しください」

少し強めに言い切るエヴァンを前に、ジェレミアはわずかに逡巡した。だが――弟子を頼るべきときだと判断し、静かに息を整える。

「……実はな。お前の助けが必要だ」



一方その頃。

クロード・ボルドウィンは、メロディの執務室の前を通りかかったところで、すれ違おうとした使用人の腕をそっと掴んだ。

「失礼。もし私の身だしなみで、何か気になるところがあれば教えてほしい」

突然のことに、使用人のハインは一瞬目を瞬かせ、それからゆっくりと主人の姿を上から下まで眺め回した。まるで、何かを測るように。

クロードは三十代半ばに差しかかった今もなお、首都が誇る美丈夫として常に名が挙がる男だった。そんな彼に、見劣りする点などあるはずがない。

「小さなお嬢様に良く見せようとしている様子を見るに、また叱られに行かれるようですね」

クロードは余裕のある笑みを浮かべた。

「ええ、いつものことです」

「用心なさるに越したことはありません。最近はロゼッタお嬢様が、かなり鋭い目でお二人を見張っておられますから」

「魔導士の、しかも末の妹が、いまだにあんな可愛らしい真似をするとはね。実に微笑ましい」

ハインは、どうしようもないという風に、その弟の呑気な様子にため息をついた。

「まあ……ともあれ、クロード様の外見に不足はありません。あとは奥様からの“お叱り”を受け取るだけでしょう」

「叱りだなんて。夫の特権を享受するだけさ」

彼はなぜか、すでに薄々気づいているような口調で話しながら、用心深くメロディの執務室のドアをノックした。

返事がなかったため、彼はもう一度ドアを叩き、そしてまさにその瞬間、勢いよく扉が開いた。

予想していた通り、メロディは今にも怒鳴り声を上げそうな表情で、彼を睨みつけていた。

クロードはひとまず落ち着こうと、できる限り愛想のいい笑みを浮かべてみせた。以前から、少なくとも顔だけはそれなりに評価してくれていたはずだからだ。

「こんにちは、メロディさん」

「……クロードさんは、本当にバカですね!」

即座に返ってきた暴言にも、彼の表情はわずかも揺らがなかった。いや、むしろ笑みはいっそう深まった。

「その反応を見る限り、きちんと話は伝っているようですね」

メロディは自分の執務用の椅子に戻ると、どすんと腰を下ろした。

「薬草の栽培は、クロード様とジェレミア導師が本当に長い時間をかけて成し遂げた成果ですよね」

「私がいちばん誇りに思っている仕事でもあります」

クロードは彼女の前に立ち、机の縁に軽く体を預けた。両手でそっとメロディの頬を包み込み、持ち上げると、彼女の眉間には深く刻まれたしわが寄っているのが見えた。――ヒギンス夫人がよく浮かべていたのと、まったく同じしわだ。

「……そんなに怒っているのですか?」

「その研究を、何の見返りもなくすべて公開するというのが、少し納得いかなくて……。そう決まるまでの過程も含めて……お二人がどれほど長い時間をかけてきたかを思うと……」

「お疲れさまでした」そう言おうとした彼女の最後の一言は、ほとんど声にならなかった。そしてメロディは、すぐにまた、むっつりとした表情で睨みつけ、別の話題を切り出した。

「念のため言おておきますけど、クロードさん」

「聞いています」

「公爵家が薬草の流通を独占できなくなるんじゃないか、なんて心配しているわけじゃ絶対にありませんからね」

「もちろん分かっています」

「私はね、あの貴族たちがクロードさんの研究を当然のように要求する態度に腹が立っているんです! 本当に図々しいじゃないですか!」

「確かに、そういう一面はありますね。でも大丈夫ですよ。僕も彼らを利用するつもりですから」

「……え?」

彼はメロディの椅子の両側にある肘掛けに、そっと両手をついた。自然と上体が前に傾き、二人の顔の距離が近づく。

「これからは、僕の私費で土地や人手を確保しなくても、さまざまな気候や土壌での栽培実験が、競争形式で始まることになるんですよ」

「……そうですね……」

「私とジェレミアは、そのすべての成果を、誰よりも先に手に入れることになります。それはとても有益なことですから」

メロディは、彼の表情に浮かんだ意味深な笑みを見逃さなかった。やはり冷静に考えてみれば、ただ一方的に損をするような男ではない。

「少しは気分が晴れたみたいな顔ですね。私が相変わらず悪役で、安心しましたか?」

「否定できないのが、悲しいところです」

「可愛いな」

彼は身を乗り出し、短く唇を重ねた。気持ちをなだめるような、穏やかで優しい仕草だった。

「それでも、まだ腹が立つなら、私にいくらでも怒鳴っていいですよ」

「……最初から、クロード様に腹を立てていたわけではありませんし。まあ……」

「意地悪ですね」

彼がまた唇を重ねようとしたため、メロディは慌てて顔をそむけてそれを避けた。

「もう、すぐキスしようとするんですから!」

「じゃあ、執務室で別のことも許可されたって意味で……」

「絶対に違います!」

彼はくくっと喉を鳴らして笑い、再び体を起こして机にもたれかかった。

「冗談ですよ。僕に何か話があるんでしょう?」

「ええ、ロレッタ(ロゼッタ)の件です。最近、魔法使いの違反者が首都に戻ってきたという話は聞いていますよね?」

もちろん彼は頷いた。

「何か問題でもありましたか?」

「問題はありません。ただ……」

メロディは一瞬、言葉を切った。どうやら『参戦競争の夫人』になってしまった自分を、どう説明するか考えているらしい。

「二人のことが、いつも気の毒に思えてしまって。魔法使いエヴァンは、淑女を尊重できる立派な男です。たとえ多少時間がかかったとしても、ロレッタの心を傷つけるようなことは、決してしないでしょう」

「本当にそうでしょうか?」

「ええ、もちろんです」

「……!」

その瞬間、メロディははっとして、その場から勢いよく立ち上がった。

クロードが「ええ、もちろんです」と答えたとき、彼の顔には、あまりにも鮮やかな悪魔的な微笑が浮かんでいたのだ。その笑みは、もしエヴァンがロレッタの心を傷つけるようなことがあれば、彼が持つあらゆる影響力を行使してでも、魔法使いエヴァンを決して放ってはおかない――そう告げているように、はっきりとした意味を帯びていた。

メロディは、長らく忘れていた彼の本来の性質を思い出す。彼は、ロレッタを愛する男に対しては、容赦なく残酷になれる――悪魔の中の悪魔だったのだ……!

「ちょ、クロードさん! 魔法使いの違反者をいじめちゃダメです!」

「ええ? まさか。僕がそんな人間に見えます?」

メロディは激しく首を縦に振った。どう見ても、間違いなくそういう人(いじめる側)にしか見えなかった。

「不思議ですね……」

彼は自分の唇に指先を当てたまま、意味ありげに目を細めた。

「僕がいじめたいと思っている相手は、メロディさんだけだってこと、そろそろ分かってもいい頃だと思うんですが」

「……っ!」

「もしかして、僕のいじめ方が足りませんでしたか?」

彼は再び、メロディが座っている椅子の肘掛けに両手をついた。

一瞬で二人の距離が縮まり、メロディは自分でも気づかないうちに、きゅっと目を閉じてしまう。

そして今度は、彼女が拒む間もなく、深い口づけが始まった。

 



  1. ロゼッタの手袋作戦と、エヴァンが秘める覚悟

    魔塔にわざと手袋を置き忘れたロゼッタの作戦は成功し、エヴァンは彼女の手袋を見つめて魔力を宿すほど動揺します。師匠のジェレミアに見透かされて「届けてこい」と背中を押されたエヴァンは、手袋を返す覚悟を決めると同時に、師匠から「助けが必要だ」と頼み事をされます。

  2. 研究公開を巡るクロードの策略と夫婦の和解

    クロードとジェレミアが苦労して成し遂げた薬草研究を無償公開することに憤慨していたメロディ。しかしクロードから「他者に実験を競わせ、その成果を誰よりも先に回収する」という合理的な意図を聞かされ、メロディは彼の底知れなさに圧倒されつつも宥められます。

  3. 妹を溺愛するクロードの「悪魔的」な本性と甘い抱擁

    ロゼッタの恋路について、メロディが「エヴァンは彼女を傷つけない立派な男だ」と評した瞬間、クロードは「もし妹を傷つければ容赦しない」という冷酷で悪魔的な微笑みを浮かべます。メロディがその過保護さに慄いて釘を刺す間もなく、二人は深い口づけを交わします。

 

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