こんにちは、ちゃむです。
「監禁王子のメイドとして生き残る方法」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
55話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 激戦の地下牢
よし、これでこちらは一件落着だ。
私はハヤンとおしゃべりをしながら、少し後ろを歩いていたシュバートを追い越し、先頭を行くリアムの隣へと並んだ。
地図を見ながら走っていたリアムが、前を見据えたまま落ち着いた声で尋ねる。
「どうした?」
「王子様のことで、少しお聞きしたいことがあるんです」
ハヤンと話しているうちに、どうしてもリアムに確かめておきたい疑問が浮かんだのだ。まだ地下通路を抜けきっていない今なら、ちょうどいいタイミングだった。
私はずっと引っかかっていた。アルバートは私のことをあれほど大切に思ってくれているのに、どうして魔法を教えることにはあんなに消極的なのだろう。塔の中で私は必死に魔法を覚えようと努力したが、アルバートはいつも、私に必要な最低限の魔法しか教えてくれなかった。
彼がそこまで頑なに私を魔法から遠ざけようとする理由は、一つしか思い当たらなかった。
「王子様は……ドラゴンの契約者を変更する方法をご存じなんですか?」
私の問いに、リアムはピタリと口を閉ざした。
ゆっくりと視線を巡らせた彼は、私をじっと見つめる。そのエメラルドのような深い緑色の瞳が、暗がりのなかで静かに輝いていた。
その沈黙と曖昧な反応を見て、私は確信した。
アルバートは、私の代わりに自分がハヤンの契約者になろうとしているのだ。
「王子様は、いつも何でも一人で背負い込もうとなさるんですね」
「……そういうところは、確かに否めないな」
私の言葉に、リアムは初めて明確な同意を示した。同じ主君を持つ者同士、まるで職場の同僚と愚痴をこぼし合っているような妙な親近感が湧く。
「殿下はこれまでずっと、一人で想像を絶する重荷を背負って生きてこられた。だから、誰かを頼るという発想そのものがないのかもしれない」
「でも、ずっとそんな風に一人で抱え込ませるわけにはいきませんよね」
私はリアムの言葉に頷きながらも、アルバートがこの先もずっとそんな孤独な生き方を続けるのはあまりにも寂しすぎると胸を痛めた。私は、彼に人並みの幸せを掴んでほしいのだ。
幸いだったのは、私が早い段階でアルバートの無茶な計画に気づけたことだ。もし知らなければ、後で取り返しのつかない不意を突かれていたに違いない。
「契約者を変更する方法って、どこかの文献に載っているんですか? 私は本を随分読みましたけど、見たことがなくて……」
「そんな秘術、一般に公開されているはずがない。もし世に知られてしまえば、聖獣の力を悪用しようとする者が後を絶たなくなるからな」
ドラゴンとの契約が極めて珍しいのは、真の契約者になるまでの過程があまりにも過酷であり、存在自体が希少だからでもある。リアムの説明には納得がいった。
けれど、アルバートはその禁忌の方法を知っている。
「『ドラゴンの墓』へ向かうおつもりだ」
アルバートにこれ以上の無茶をさせたくないのだろう。リアムは私を牽制するのではなく、むしろ味方をするようにその情報を静かに教えてくれた。こんなに親切な彼を見るのは初めてだった。
きっと、すべてはアルバートの身を案じてのことなのだ。
「ドラゴンの墓ですか……。初めて聞きました。ハヤンにも聞いてみないと」
ひとまず安心したのは、私にはまだ一ヶ月の猶予があることだった。アルバートがローストラトゥを討って王位に就いた後、その空いた時間でハヤンと一緒に『ドラゴンの墓』へ行き、対策を練ればいい。そのためにも魔法の修行をもっと頑張ろうと決意した。
「公爵様。私が塔を出る時、魔法使いの先生を一人つけていただくことはできますか?」
一人で独学するには時間がかかりすぎる。アルバートはあまりにも天才すぎて、一度で魔法を理解できない私を教えるのをもどかしく思っている節があった。私には、もっと凡人向けの別の先生が必要だった。塔を出た後なら、それも十分に実現できるはずだ。それに私には、先生にお支払いするくらいのお給料は貯まっているのだから!
リアムは私の意図をすぐに察したようだった。彼は小さく頷くと、通路の突き当たりにある古い木製の扉を開けた。
「着いたぞ」
ギィィ……と重苦しい音を立てて扉が開くと、上へと続く石造りの階段が現れた。階段の先にある地上への扉も、リアムが力強く押し開ける。
地下のじっとりとした空気とは対照的な、眩しい日差しと新鮮な空気が私たちを迎えた。
私は思わず目を細めながら外へと踏み出した。私とリアムに続いて、シュバートとハヤン、そして兵士たちが次々と地上へ姿を現す。
「庭園の敵兵を気絶させろ。絶対に物音を立てるな」
リアムが低く指令を下す。庭園は色とりどりの花で美しく彩られていたが、生垣がまるで迷路のように入り組んでいた。それでもリアムの兵士たちは一切迷うことなく迅速に進み、ローストラトゥ側の見張り兵たちを次々と背後から無力化していく。
……あまりにも鮮やかに制圧していくけれど、この人たちは本当にただの王国の騎士なのだろうか。私は半ば呆気に取られながら、彼らの後ろを走った。
あっという間に近くの敵兵を制圧し終えた一行は、庭園の中央にある大きな噴水の前へと集まった。いつの間にか、ハヤンを抱いているシュバートの様子は、先ほどよりもずっと自然に馴染んでいた。
「もうハヤンを避けたりしないんですね?」
私が隣へ行ってニヤニヤしながら尋ねると、シュバートは少し耳を赤くして照れくさそうに口を開いた。
「……可愛いんだから仕方ないだろ。中身がドラゴンだって分かってても、可愛いものは可愛いんだ」
そんなことを言うシュバートまで、どこか微笑ましく可愛らしく見えた。まるで少し手のかかる弟が一人増えたような気分だ。
私は小さく笑うと、先ほどリアムから聞いたことを思い出して、腕の中のハヤンに尋ねた。
「ハヤン、『ドラゴンの墓』って知ってる?」
「……うーん。『墓』はよく分からないけど……僕が生まれた場所のことじゃないかな……?」
墓なのに、生まれた場所?
私が首をかしげると、ハヤンはいつになく真剣な表情で言葉を紡いだ。
「生まれる前に死んじゃう子も、たくさんいるから……。それほどたくさんのドラゴンが集まる場所なんて、他にはありませんから……」
なんとも壮絶で厳かな場所なのだろう。話を聞く限り、アルバートの言う「ドラゴンの墓」は、ハヤンの故郷を指している可能性が一番高そうだ。
「そこがどこにあるか覚えてる?」
「うーん……」
「あとで、一緒に行ってみようね」
ハヤンは私の言葉の意味がまだよく分からないようだった。詳しく説明しようとした、その時――。
噴水から流れていた水が、ピタリと止まった。
直後、ズズズ……と地響きを立てて噴水全体がゆっくりと横へスライドし、その下から地下牢へと続く秘密の通路が姿を現した。
「入れ」
中へ入る直前、リアムは先ほど兵士から奪った兜と鎧を私に手渡した。私はシュバートに手伝ってもらい、不器用になんとかその鎧を身につけることができた。私の体には大きすぎてぶかぶかで重かったが、何も着けていないよりはずっとマシだった。
「それでも、信じられないくらい順調ですね」
「ロゼ……どうしてそんなに落ち着いていられる? 不安じゃないのか? 俺たちは今、敵の本拠地のど真ん中にいるんだぞ」
緊迫した面持ちのリアムの問いに、私はあっさりとうなずいた。
「でも、勝つんですよね。それに、王子様は王になられるんでしょう?」
そんなの、答えが決まっているようなものだった。何かあるたびに焦るリアムたちとは対照的に、私は不思議なほど冷静だった。
だって、これは原作でも最初の大きな山場であり、序盤の核心となるアルバートの反乱劇だ。失敗するはずがない。それに、悪徳の限りを尽くしたローストラトゥは、すでにアルバートの手のひらの上で踊らされているのだから。何より、私はアルバートという男を心から信じていた。
私たちは再び、薄暗い地下通路へと足を踏み入れた。その道は地下牢の床裏へとつながっている。
出口の扉を開ける前に、リアムは壁に耳を澄ませて外の様子を探った。外は不気味なほど静まり返っている。
油断しているのだろうか。見張りが一人もいないなんて、いくら何でもおかしい。
「全員、武器を構えて準備しろ」
リアムの合図で全員が兜を深くかぶり、武器を構えて完璧な戦闘態勢に入った。互いに固い決意を込めた視線を交わしたあと、リアムが勢いよく扉を開け放つ。
「――待っていたぞ」
通路を抜けた瞬間、牢の前には、まるで私たちの到着を予期していたかのように待ち構えていた敵の軍勢がいた。先ほどの雑兵とは違い、全員が重厚な装備に身を包んだ精鋭たちだ。
その中心に立つ赤髪の男がリアムを見据え、激しい怒号を響かせた。
「ついに、あの呪われた男に王座を渡すつもりか、公爵! 一族が皆殺しにされたというのに、あいつだけが生き残ったことをおかしいとは思わないのか! あいつも薄汚い王の血を引く王子だろう!」
「よくもそんな口が叩けたものだ」
シュバートが顔をしかめ、怒りを剥き出しにして一歩前へ出た。アルバートを侮辱する言葉が、どうしても許せない様子だった。
そんなシュバートの反応を見て、赤髪の男は下卑た笑い声をあげた。
「ははっ、シュバート卿。ついに本性を現したな。なぜ貴様ほどの男が身分を隠して騎士団に入り込んでいたのか、ずっと不思議だったよ……!」
本当に……哀れな人たちだ。
私は怒る気すら起きなかった。どうせ後になれば、アルバートが本物の圧倒的な力で現れてすべてを蹴散らし、その時になって初めて自分たちがどれほど愚かな選択をしたのかを思い知るのだから。彼らは、主人公を引き立てるために倒される、ただの脇役にすぎないのだ。
「かかれ!」
男の怒号とともに、後ろに控えていた敵の騎士たちが一斉に突撃してきた。
数では完全にこちらが不利だったが、通路を抜けた直後の壁を背に陣取っていたおかげで、乱戦の割には守りやすかった。
私は鎧の隙間から周囲を冷静に見渡した。密集して戦う騎士たちの間に、わずかな空白の隙間がある。互いに斬り結ぶうちに陣形が崩れてきたようだ。
キィン! キィン!
剣と剣が激しくぶつかり合い、鼓膜を刺すような金属音が地下牢に響き渡る。
しかし、これほどの乱戦のなかでも、誰一人として私の存在には気づいていなかった。メルシーがかけてくれた「ハイド」の魔法は、今も確かにその効果を発揮している。
けれど、ここで派手な攻撃魔法を使えば、さすがに私の存在や位置が露見してしまうだろう。そうでなくても、敵が魔法使いの存在を警戒して通路を完全に封鎖してしまうかもしれない。そうなれば、牢獄の奥へ入るのがさらに難しくなる。だから私は、何としても自分の存在を隠し通したまま動かなければならなかった。
「おい、なんでこんなところに猫が……?」
戦っていた敵の騎士の一人が、場違いな存在に視線を向けた。
今のハヤンは地面にふわりと降り立ち、血生臭い戦場のど真ん中をのんびりと散歩するように歩いていた。ハヤンは剣を振り回す人間たちをきょとんと見つめている。何が起きているのか、よく分かっていないような無垢な表情だった。
私はその姿を追 routeしながら、念話で話しかけた。
『ハヤン、体が弱いって言ってなかった? 大丈夫?』
『ロジェが無事なら、私も大丈夫。魂が契約してるから……』
……魂の伴侶、か。それは心強い反面、自分の命の重さを突きつけられるようで少しぞっとした。私もちゃんと自分の命を大事にしないと、ハヤンまで巻き添えにしてしまう。絶対にハヤンを死なせるわけにはいかない。
『それに、みんな遅いもん……』
ハヤンの言葉に、私は思わず心の中で首をかしげた。
『……人間たちの動きが遅いってこと?』
『うん……全部簡単によけられるよ』
ハヤンは意外にもきっぱりと言った。普段はカメのようにのんびりしたハヤンでも、いざとなればドラゴンの本能で素早く動けるらしい。でも、契約者であるはずの私が、どうしてハヤンのその驚異的な視界を共有できないのだろう! ハヤンが成体になったらできるようになるのかな?
私は思考を現実に戻すために体をぶるっと震わせると、再び意識を通路の奥へと集中させた。
ひしめき合う騎士たちの向こう側に、もう一つの通路が見えた。その入口を塞ぐように、ガードの堅そうな騎士が二人立っている。
きっと、あそこだ。どうやら捕らえられた味方の魔法使いたちは、あの奥の地下牢に閉じ込められているらしい。
(まずはあそこへ突っ込んで、電撃魔法で奴らを吹き飛ばす? いや、それだと目立つわね。そのまま牢の扉を開け、中へ飛び込んで魔法使いたちに解除魔法をかける……一瞬でこなさなければならない魔法は、全部で三つ)
よし。私ならできる。
我ながら私の瞬発力と暗記力は侮れない。片手にはメルシーから預かった杖を持っているけれど、念のため護身用の剣も一本持っていこうと考えた。
ちょうどその時、壁にもたれて荒い息を整えている敵の騎士が目に入った。シュバートが致命傷を避けて動けないようにしたのか、座り込んでいるのがやっとの状態だ。シュバートは無駄な殺生をしなかったらしい。
メルシーの隠蔽魔法があるとはいえ、命を削り合っている人たちの間を丸腰で通り抜けるには、やはりそれなりの覚悟が必要だった。私はそっと近づき、倒れている騎士の手からその剣を抜き取った。
「うぅ……」
とうめき声を上げた騎士は、ふと自分の手が軽くなっているのに気づいて呆然とした。
「……あれ、俺の剣、どこいった……?」
私はその呟きを無視し、片手に剣を持ったまま人混みの中へ紛れ込んだ。初めて持つ本物の剣は思っていた以上にずっしりと重く、少し手が震えた。
戦場の誰もが、目の前の死活問題である対戦相手に意識を完全に奪われており、死角で何かが微かに動いていても気に留める者はいなかった。私はまるで影のように、人混みを縫うように避けて前へ進んだ。
一番奥では、赤髪の騎士団長がリアムと激しい一騎打ちを演じながら、慌ただしく部下たちに怒号で指示を飛ばしている。
空中で二人の剣が閃く様子は、凄惨でありながらまるで洗練された剣舞を見ているように美しかった。騎士団長の力任せで荒々しい剛剣を、リアムは驚くほど優雅な身のこなしで受け流している。まるでフェンシングの試合でもしているかのようだった。
私はその隙を見逃さなかった。騎士団長の意識が完全にリアムに釘付けになった瞬間を狙って、奥の通路を塞いでいる二人の騎士の至近距離まで接近し、杖をそっと向けた。
「フォゲット(Forget)」
私がこの世界で最初に覚え、そして最も使い慣れている忘却の魔法。電撃魔法で派手に吹き飛ばすよりも、今の状況を穏便かつ確実に切り抜けるにはこれが最適だった。
杖を振りながら、頭の中で完璧にその魔法陣を思い描く。
(今ここに立って、何を守ろうとしているのか――その目的を、この人たちが一瞬でも忘れてくれますように)
記憶を失わせる魔法は、術者の魔力量や相手の精神力によって効き方に差が出る。けれど、いくら強力な魔法であっても、人間の人間たる一生の記憶を完全に消し去ることはできない。この魔法の効果がどれくらい続くかは分からなかった。
しかし、今は数秒で十分だった。
私の魔法を至近距離で浴びた二人の騎士が、ぱちぱちと間の抜けた様子で目を瞬かせた。焦点の合わないぼんやりとした彼らの目の前を、私は一切の足音を消してすり抜けた。
「……あれ? 俺たち、なんでここに突っ立ってたんだっけ……?」
背後から聞こえる騎士たちの戸惑う声を置き去りにしながら、私は暗い階段を一気に駆け下りていった。
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アルバートの孤独な覚悟と「ドラゴンの墓」への道
ロゼはリアムとの会話から、アルバートが自分の代わりにドラゴンの契約者(ハヤンの相棒)になり、全ての重荷を一人で背負おうとしていると確信。リアムから、契約変更の秘術がハヤンの生まれた場所でもある「ドラゴンの墓」にあることを聞き出します。
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敵の本拠地への潜入と予期せぬ精鋭の待ち伏せ
噴水の隠し通路から潜入したロゼたちは、あらかじめ到着を予期していたかのような敵の精鋭部隊と赤髪の騎士団長に待ち伏せされ、激しい乱戦に突入します。しかしロゼは、「原作のイベントだから絶対に勝つ」と確信し、不思議なほど冷静に戦況を見つめていました。
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「隠蔽魔法」を駆使したロゼの単独潜入作戦
姿を消す魔法「ハイド」の効果を維持したまま、ロゼは戦場の死角を縫うように進み、捕らえられた魔法使いたちが眠る地下牢の奥へと接近。通路を塞ぐ二人の守衛騎士に忘却の魔法「フォゲット」を至近距離で浴びせ、一瞬の隙を突いて単身地下へと駆け下りていきます。