こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
169話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最後の希望
クラリスは、目がくらむほど高い場所から、人々が雲のように押し寄せてくるのを見下ろしていた。
彼女を殺せと叫ぶ声を上げる彼らが、恐ろしくなかったと言えば嘘になる。その瞬間、狭すぎる処刑台の上で、今にも足を踏み外して落ちてしまいそうなほどの眩暈に襲われた。
「……コオ……」
だが、背後にぴたりと寄り添うマランが、「落ち着いて」と静かに声をかけてくれた。「大丈夫よ、クラリス。私がついてる」というその穏やかな言葉に、彼女は小さくうなずき、両脚にぐっと力を込めた。足首に巻き付けられた長い鎖が擦れ合い、金属音が耳障りに響く。
どうせ処刑を受けるのなら、些細なこと一つでも疎かにしてはいけない――そう自分に言い聞かせ、彼女は自らを奮い立たせていた。なぜなら、これは好機だったからだ。クラリス自身が、この瞬間をそう定義していた。
事の発端は、クエンティンが深い傷を負って戻り、クラリスの処刑について語った直後のことだった。
『私はね、公爵様。ユジェニが言っていたことは、正しかったと思うんです。……そうかもしれない、と考えました』
『大王妃殿下が“真実を……必要とする人”だという意味ですか』
クラリスは両目にぐっと力を入れ、大きくうなずいた。
『はい。ゴーレムを目覚めさせるには、彼女をここへ連れてこなければなりません。でも、向こうから自ら来ると言った以上……むしろこれは好機です』
ただし、問題が一つあった。どうやってゴーレムに触れさせるか、という点だ。彼女の手を無理やりつかんで石へ連れていくこともできなくはない。しかし、そんな強引な行為で本当に「真実を必要とする人物」であることを証明できるのか。クラリスはゴーレムマスターとしてそれに賛同できなかったし、ノアもまた“鍵”の原理を思い浮かべながら同じ意見だった。ゴーレムを目覚めさせるには、彼女自身が意志をもって石に触れなければならない。
『それは、あまりにも不確実です。しかも彼女は、今まで崩れたゴーレムを実際に見たことすら――』
それまで、彼女が自ら望んで何かを成し遂げたことなど、一度もなかった。だからこそ、それを「好ましくない出来事」として片づけられる理由になるのだ。
『……むしろ、だからこそ可能性があるんです』
クラリスははっきりとした声音でそう答えた。それはアメルダの人生そのものを揺るがした存在――ゴーレム。偉大な過去の残滓を、彼女はこの手で撫で、その確かな実在を感じ取ってみたかったはずだ。たとえそれがほんの一瞬であったとしても。
『どうか、私を信じてください。公爵様』
その懇願を受け、マクシミリアンは言葉を失ったように見えた。だが、他に選択肢はなかった。今のセリデンには、彼に従って戦える騎士も兵も存在しない。マルルとの戦闘で負傷した者たちの大半は、いまだ治療所の寝台に伏したままだった。仮に魔法使いシネットと彼が二人きりで立ち向かったとしても、幼い子どもたちの命を刈り取ることに何の躊躇もない王室騎士の剣のほうが、はるかに早く振り下ろされる――それは明白だった。
『……私は、やれます』
クラリスはそう静かに言い切り、彼を説得し続けた。これは完全に運に委ねるしかないことで、彼女が何かを「うまくやった」としても、結果が変わるわけではないのだと。
「セリデンの子どもたちを危険にさらさず、私たちも崩れたゴーレムを開いて、無事に公爵様のもとへ戻ります」
マクシミリアンは最後までうなずかなかった。だが、それ以外に道がないことも彼自身わかっていたはずだ。
クラリスが部屋を出ると、すぐにノアが後を追った。彼は思わず彼女の手をつかんだが、彼女が振り返ったとき、仮面の奥で動いていたのはただ静かな瞳だけだった。どう言えばいいのかわからず、言葉を選んでいる様子だった。
「ごめん、ノア」
クラリスは自分が彼を困らせているという事実について謝った。彼はそっと首を横に振った。
「いや……言葉で謝るべきなのは、少女のほうだ」
誰かのために、何ひとつしてやれないなんて。
『……ノアも、セリデンを好きなだけなんだよ』
この状況で彼が軽率に動かないのは、下手をすれば自分とマクシミリアンが結託したと王室に曲解され、想像もつかないほどの流血を招くのではないかと恐れていたからだった。
『それでも……私にとっても、セリデンは大切なの。だって……あなたの故郷でしょう』
『……うん』
『それにね、私にとっても同じなの。幼い頃の楽しい思い出は、全部この土地にあるんだもの』
クラリスは幼少期の彼の姿を思い浮かべ、思わず微笑んだ。張り詰めていた胸の奥が、この瞬間だけ、ふっと緩むのを感じた。
『ねえ、ノア。ひとつ、聞いてもいい?』
そうして、慎重に選ばれた問いかけに、彼は静かにうなずいた。
『保存魔法が解かれる条件って、何かあるのかな。術者が定めた“鍵”を集める、っていうのは除いてだけど』
彼はすぐには答えなかった。だが、その沈黙は拒絶ではなく、ほんのわずかな思案の色を帯びていた。
まずい気配だった。クラリスは遅れて、彼が何か別の考えを抱えていたことに気づいたが、だからといって質問を重ねることはできなかった。
「あるわ。単純に、魔力が枯渇して自然に消滅する場合。それから、より強力な魔法使いの力で、無理やり破壊すること。それから……」
ノアはしばらく言葉を失った。
「……それから?」
クラリスの催促に、彼は重たそうに口を開いた。
ドン!
突然、歓声が大きくなり、クラリスははっとして過去を振り返るのをやめ、顔を上げた。そして、ひとつの恐ろしい事実に気づいた。少し前まで彼女を殺せと叫びながら駆け寄ってきていたセリデンの人々の大半が、ぴたりと動きを止めていたのだ。
彼が険しい表情でじっと彼女を見上げている――その事実を、クラリスははっきりと感じ取っていた。騎士たちもまた、民衆を扇動することが思うように進んでいないと察したのか、なお一層、鬨の声だけを無理に張り上げている。
そのとき――人波の向こう側から、もう一隊がこちらへ向かって来るのが見えた。この処刑のために呼び寄せられた、村の司祭だった。彼の到着と同時に、クラリスの背後から「誰かが登ってくる」気配が伝わってきた。
ぎい……ぎい……。
木製の階段が重みを受け、軋みながら悲鳴を上げる。その不快な音が一歩ごとに近づくのを聞きながら、クラリスは静かにマランの名を呼び、そして問いかけた。
崩れ落ちたゴーレムに関わる六つの鍵は、本当にすべて揃っているのか。あの巨像は、果たしてアメルダの明確な意思によって破壊されたものだったのか。もし、そうでなかったのなら……。
ぎい。
階段が、再び鳴った。処刑台の上に、ついに相手が姿を現した。
アメルダだった。真っ赤に染まった唇で、今にも裂けそうな歪んだ笑みを浮かべている。
その瞬間、彼女がふらつき、一歩後ずさった。馬上の人物が叫んだ。
「私に魔力を渡せ! 逃げるのよ、クラリス!」
「あ……」
クラリスは、その言葉の意味を即座に理解した。
――触れていない。
考えが甘すぎたのだろうか。しかし、それ以外にゴーレムを起動させる方法はなかった。では、今、何をすればいい?
混乱の中でも、クラリスは足元を見下ろした。群衆の最も後方には、赤子を抱いた大人たちと幼い子どもたちがいた。そして、その周囲を王宮の騎士たちが取り囲んでいる。望む結末が訪れるまで、決して油断しない。彼らの態度は、そう告げているようだった。
やがて、アメルダに与した告発者が前へと進み出て、クラリスの罪状と判決文を読み上げた。
「……セファス王室の恩寵を裏切った王女の処刑は、いかなる理由があろうとも免除されるものではない」
クラリスは彼の背後に静かに立ち、その乾いた、感情の抜け落ちた宣告をただ聞いているしかなかった。
「コオ。(クラリス、急いで)」
アメルダが告発者に注意を向けたその一瞬を突き、マランが彼女の手のひらへと滑り落ちるように現れ、必死に訴えかけてきた。魔力を与えれば体を巨大化させ、彼女を救い出せる――そう言いたいのだ。
クラリスはマランを、ぎゅっと強く握りしめた。
「……ふぅ……」
彼女は、どうしようもなく――生きたいと願っていた。そして、自分にはそれを成し遂げる力があることも分かっていた。もし彼女自身と近しい者たちの無事だけを考えるのなら、それだけを優先するのなら――この忌まわしい処刑台から逃れることは、決して不可能ではない。
……けれど。それでも、この瞬間においてなお、彼女の心は、誰かの犠牲の上に生き延びてまで生きたいとは思わなかった。そうして手に入れた時間の中で、心から幸せになれるとも、胸を張れるとも思えなかった。
そして何より――それはクラリスらしくない。セリデン公爵夫妻の娘であるクラリスが、そんな卑怯な真似をするだろうか。――するわけがない。たとえこの場にいるのがマクシミリアンでも、ブリエルでも、同じ選択をしたはずだ。彼らもまた、潔い死を選ぶ人間だと彼女は知っていた。
「コオ!」
再び小さく響いた催促の声に、クラリスは最後にマランへ託す願いを思い浮かべた。言葉は必要なかった。ただ祈りを込めて、その冷たい表面にそっと唇を触れさせればいい。
「……コオ?」
「うん、本気だよ。」
マランはクラリスを見上げ、その視線のまま、彼女の衣の皺に沿ってそっと下へと滑り降りた。
「これより、クラリス・レノ・グレジェカイアを、即刻処刑に処すことをここに宣告する!」
判決文の朗読が終わると同時に、遅れて到着した司祭が短い祈りを捧げた。すべては滞りなく進んでいた。あまりにも――順調に。
いよいよ処刑が始まる。面前から、不安と興奮の入り混じったざわめきが立ち上った。クラリスは背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま、足枷のついた足を一歩、前へ踏み出す。
彼女に罪はなかった。それは、かつてマクシミリアン自身も口にはしなかっただけで、心のどこかでは分かっていたことだろう。だからこそ、今さら恥じるように俯く必要などなかった。
――きい。
司祭と告発者がその場を離れると、再び処刑台へと誰かが上がってくる気配がした。それは処刑執行人だった。よく手入れされた剣を携えた男である。
だが、アメルダは彼を下がらせ、自ら剣を手に取った。一切の疑いも残さず、クラリスを完璧に殺すため――そう見えた。
「跪きなさい。慈悲を与えよう。苦しみは最小限で済ませてあげる。」
クラリスはゆっくりと身を低くした。そうしている間も、彼女の意識はすべてマランに向けられていた。彼女の小さなゴーレムは、切実な魔法を胸に抱いたまま走り続けている。
「……本当に、うんざりね。」
クラリスの前に歩み寄ったアメルダが、低くつぶやいた。その声には、長い年月をかけて積み重なった憎悪が滲んでいた。クラリスは顔を上げ、彼女を真っ直ぐ見据えた。
「エレオノール王妃は――本当に、あなたを愛していました。」
あまりにも予想外の言葉だったのだろう。その一言に、彼女は思わず動きを止めた。
「妹として思っていた、というのは本当ですよ。あなたが可愛くて、愛おしいって――先王陛下に、どれほどたくさん語っていたか、ご存じないでしょう」
――それを、あなたがどうして知っているの?
アメルダはそう問い詰めたい衝動に駆られた。
「もし、あの方が生きておられたなら……」
クラリスは、かつて“宝石”が語ってくれた話を思い返しながら、静かに、けれど確かな言葉でひとつの仮定を紡いだ。
「あなたが“真実”の中で、胸を張って生きていけるよう、きっと手を差し伸べてくださっていたはずです」
アメルダの瞳がわずかに揺れた。その一瞬の混乱の中で、クラリスは確信にも似た何かを掴む。
――ああ、やっぱり。ユジェニの言葉は正しかった。アメルダは、誰よりも“真実”を必要としている。それを、彼女自身が一番分かっているのだ。
「……まだ、間に合います」
クラリスははっきりと告げた。
「陛下の手で、すべてを正しい道へ戻す機会が。今なら、まだ――」
彼女はそこで言葉を切った。続く言葉が、あまりにも重い意味を持つと知っていたからだ。
――このままでは、取り返しがつかない。そう、静かに、しかし確かに、処刑台の上から“最後の希望”を差し出すように。
「結局、誰も幸せにならないだけよ。」
クラリスは、そのか細い訴えにすがるように、彼女が考えを改めてくれることを願った。だが――
「うるさいわ。」
返ってきたのは、すでに感情を失った冷たい言葉だった。
「本当に、ソムにそっくりね。」
彼女が振り上げた鋭い剣先が、クラリスの顎の下に触れた。骨身に染みるほど冷たい刃が、幼い首筋をかすめる。ぞくりと悪寒が走った。
「人の心を揺さぶる……本当に、忌まわしい瞳。正しい道へ戻る機会? 馬鹿げた話ね。」
彼女は鼻で笑った。
「これこそが、私の唯一の“正しい道”よ。私が――誇り高く、生き残るための……!」
そう言い放つと、彼女は剣を高く振り上げた。
同時に、極限まで研ぎ澄まされた感覚が、誰かの足音が急速に近づいてくるのをクラリスに告げていた。
ノア。マクシミリアン。そしてその背後に、バレンタインとライサンダーの気配。
クラリスの願いどおり、彼らはこれまで踏みとどまっていた。だが――もはやこれ以上の猶予はないと悟り、こちらへ駆けてきているのは明らかだった。その接近を大王妃も察したのだろう。甲高く、ひび割れた笑い声が響く。
「――助けに来たつもりかしら?」
嘲るような声が落ちるのとほぼ同時に、クラリスの頭上で振り上げられた処刑刀が、迷いのない速さで、彼女のうなじへと振り下ろされようとしていた。
* * *
――再び、少し前。
「……それで?」
クラリスに“保存魔法を解除する方法”について最後の答えを求められたとき、ノアはほんのわずか言葉に詰まり――そして、ゆっくりと口を開いた。
「……その魔法を発動させた者が、直接回収する方法がある。」
クラリスは、その言葉が彼に再び母の死を思い出させたようで胸が痛んだ。
「ノア……ごめん。私、余計なことを……」
「いや、違う。そうじゃない。ただ、少し……」
彼は癖のように仮面に触れた。石はすでに失われているというのに、なぜ今もそれを身につけているのか、自分でもわからなかった。
「少し気になることがあってね。」
「なに?」
彼はかつてアルステアと交わした会話の一部を語って聞かせた。
「17年前、この場所で魔法使いアルステアが亡くなった時――俺を抱いていたのは、まだ生きていた母だった。死にかけてはいたけれど……それでも、ゴーレムによる保存魔法が展開されたその瞬間まで……母は確かに生きていた。」
「……なに?」
「生きている人間を、保存魔法の領域に入れた場合――」
それは魔法使いの倫理に反する行為として禁じられているため、実際に中で何が起きているのかは分からない。ただ、魔法使いアルステアが私に……。
彼はクラリスの様子をうかがいながら、しばし言葉を飲み込んだ。
「ノアを攻撃した時のことでしょ?」
彼女が柔らかく代わりに言うと、彼はすぐにうなずいた。図星だったようだ。
「それは実質的に、母と魔法使いアルステアの争いだった。あの瞬間、彼が何を感じたのかは分からないけれど、気を失う直前に彼はこう言ったんだ」
『やはり……最後の息が吹き込まれている、か』
その言葉を聞いた当時は、それがいったい何を意味しているのか少しも理解できなかった。しかし、その後に彼が語った過去の話を静かに辿っていくうちに、もしかすると保存魔法の中にあるアデル・シネットは、「生きている」と言える状態ではないのではないか――そんな疑念が浮かび上がってきた。
保存魔法の基本原理は、時間の制御だ。彼女は、深い傷を負ったまま子を産んだ直後の時間に留め置かれ、それ以来ずっと生き続けていたのかもしれない。
「もしそれが事実なら、魔法使いの宝石がこれまで一度も魔法使いの団長を選ばなかった理由も、簡単に説明がつきます。引き継ぐべき相手がいなかったわけでも、誰かを待っていたわけでもなかった。」
「……単純に、団長がまだ生きていたから、ということ?」
「そう考えるのが自然だ。そして、もう一つ分かったことがある。アルステアが、あれほどまでに崩壊したゴーレムを開こうとした理由だ。それは俺の体に残っている母の魔法を消すためだけじゃなかった。母上の、完全な死を望んでいたんだ。」
ノアはゆっくりと頷いた。
「たぶん、そうだろう。新しい団長が擁立されるためには、どうしても先に果たさねばならないことだった。やはり、私が魔法使いの宝石に触れてしまったのが原因でしょうね。もしそうでなければ、こんなことをもう少し早く知ることができたかもしれないのに」
「私もその可能性を考えなかったわけじゃないけど……どうしようもないわ」
「ノアのお母様は、今どんな状態なのかしら?」
「生きてはいるのでしょうけど、母の命がどれほどマナとして残っているのかは分からないわ。本当に、最後の呼吸だけが、かろうじて保たれている状態なのかもしれない」
「もしかして、あの方自身が保存魔法を拒んでいる、ということは?」
「それが簡単にできるなら、最初から鍵なんて設定しなかったはずでしょう?」
「でも……今では、そのゴーレムの一部は私のゴーレムでもあるの。だから、もしかしたら私の魔法で……保存魔法の中へ踏み込み、あの方にお願いすることができるかもしれない」
「可能性がゼロではないけれど……下手に手を出したら、かえって魔法そのものが崩れてしまうわよ」
保存された内部がすべて崩壊する可能性がある――そんな警告を受けて、クラリスは自分の仮説を軽々しく試すことはできなかった。
だが、処刑台で残された時間がほとんどない今。クラリスは、もはや残された道はアデル修道女に頼ることしかない、という事実を悟っていた。生き延びたいという切実な衝動の中で、もし保存された真実が崩壊してしまったらどうするのか、そんな不安もよぎったが……たとえそうなったとしても。一度くらいは、生きるための努力をしてみたかった。
いや、もしかするといつか、ノアと同じようにクラリスを引き止め、ただの「実験」として扱いたいと考える者が現れるかもしれない。本当にクラリスが保存魔法に干渉することで、アデル修道女を目覚めさせることができるのか。命が危機にさらされている状況にもかかわらず、彼女の胸は抑えきれない好奇心で高鳴っていた。
期待と、願いと、そして――生きたいという想いを抱いて。
クラリスは、欲望すら混じった切実な思いをマランへと押し付けた。
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処刑台に立つクラリスの「好機」と目的
クラリスは多くの民衆が見守る処刑台の上に立たされていますが、これを大王妃アメルダに自らの意志で崩壊したゴーレムに触れさせ、目覚めさせるための「好機」と定義し、セリデンの人々を守るため命を懸けて対峙しています。
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ノアが明かした保存魔法の秘密とアデルの現状
ノアとの過去の会話により、保存魔法の領域にいる彼の母(アデル)は完全な死を迎えておらず、最後の呼吸を留め置かれた状態であること、そして彼女が生死の狭間にいるために「魔法使いの宝石」が次の団長を選べずにいたという事実が明かされます。
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絶体絶命の危機とクラリスの決死の賭け
アメルダに剣を振り下ろされようとする極限の状況下で、クラリスは「生きたい」という強い願いを抱き、自身のゴーレムである「マラン」に祈りを託して、アデルの保存魔法の内部へ干渉し彼女を目覚めさせようという危険な賭けに出ます。