こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は54話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
マリ:本作の主人公。クローヤン王国の元王女。身分を隠して侍女として働いている。本名は、モリナ・ド・ブランデン・ラ・クローヤン。
ラエル:皇太子。血の皇太子と呼ばれ恐れられている。
キエル:皇室親衛隊団長。キエルハーン・ド・セイトン。
オルン:公爵で宰相。ラエルとは昔からの親友。
ヨハネフ三世:西帝国の皇帝。
オスカー:第十皇子殿下。
アリエル:皇太子妃候補。シュレーアン家。
レイチェル:皇太子妃候補。イーストバーン家。
54話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- キエルの怒り
「俺の友達に何をしようとしていたのでしょうか?アリエル令嬢」
慣れた声に驚いて目を開いたマリの視界に、彫刻のような銀髪の男性の姿が入って来た。
「侯爵閣下?」
キエル侯爵。
彼はいつもと全く違う冷たい目つきでアリエル公女を睨んでいた。
「その・・・」
「まさか、私の友達に手を上げようとしていたのですか?」
アリエルは当惑する。
(どうしてキエルハーン侯爵様が?)
キエルハーン侯爵!
皇室親衛隊の団長であり、帝国三大貴族の一つであるセイトン家の当主!
爵位は侯爵でシュレーアン大公家に比べてやや低いが、持っている底力は断じて劣っていない。
むしろ辺境伯としての軍事力は帝国最強。
そんなセイトン家のキエルハーン侯爵がなぜ突然ここに現れたのか。
(しかもこの目つきは)
アリエルは唾をごくりと飲み込んだ。
元々キエルハーン侯爵は他人に親切なことで有名だった。
それでもなぜか壁があって人々は彼に接することに困難を感じたが、とにかくキエルハーンはいつも人々に親切に接してきた。
しかし今はそんな親切さは跡形もなく、冷たさだけが満ちている。
「言ってみてください、公女」
「・・・」
アリエルはマリに対する自信を失って口をつぐんだ。
キエルハーンの冷ややかな雰囲気に圧倒されたのだ。
「あ、あの・・・、教育をしようとしました」
「教育?」
「はい、その侍女が生意気で・・・」
アリエルが吐いた言葉にキエルの顔がさらに冷たくなる。
「シュレーアン大公家では、教育をこんな風にするようですね」
アリエルの顔が赤くなった。
「そして皇居のどこからでも誉められるフォン・ヒルデルンですが、何の過ちを犯したのか不思議ですね」
キエルは少しため息をつく。
低いけれど重く、それでいて聞く人の胸がひんやりとするため息。
「マリちゃん」
「は、はい、閣下?」
マリはキエルが見せた意外な姿に驚いてぼんやりと答えた。
キエルはいつものように穏やかな口調でマリに話しかける。
「お忙しいようですから、先にお帰りいただけますか」
「あ、いや、私は・・・」
マリは慌てて首を横に振った。
何だか、このまま行ってはいけないような気がする。
しかし、キエルは笑みを浮かべたまま、強く断ることのできない声で話した。
「セイトン家の当主としてアリエル公女に言いたいことがあるのです。個人的な話ですのでお願いします」
その言葉にマリは面食らった。
急に当主として言いたいことがあるなんて?
とにかくそこまで言われては、この場にいることもできないので、マリは仕方なくその場を退いた。
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マリが姿を消した後、アリエルは固くなった。
まるで猛獣の前に一人残されたような気分だ。
「ど、どういうことですか、閣下?セイトン家の当主として私に言いたいことがあるなんて」
「ええ、その通りです」
キエルは頷きながら、片手で額を覆っている銀髪を後ろに流す。
すると、彫刻のような顔が現れ、アリエルを注視した。
「アリエル公女。いや、アリエル。私たちのセイトン家がどんな家門なのか知っているのか?」
突然の呼び捨て。
しかし、固くなったアリエルは反発することすら考えられなかった。
「皇室の守護家門、帝国の盾など。色んな呼称が多いが、簡単に言えば血で染まった戦闘家門だ。いつでもその好戦性を示すわけではないが、いくつかの例外がある」
アリエルは唾をごくりと飲み込んだ。
「まさに大切なものが脅かされた時と、我慢できない怒りを感じた時。そして今回の場合は両方とも該当する」
「そ、それは何に対してですか・・・?」
「あの少女は私が一番大切に思っている存在だ」
「・・・!」
「そして私は今とても怒っている」
青ざめるアリエルを見て、キエルは低く一喝した。
「あなたたちデルフィナの中で誰が皇太子妃になるかなんて、私の感心事ではない。しかし、肝に銘じなさい。あの少女の毛先一つにも触ることを考えるな。またこんなことがあったら、次はそのまま見過ごさない」
その夜、アリエルは自分の離宮で青ざめながら、じっとしていた。
キエルハーン侯爵の言葉が頭から離れなかったのだ。
『あの少女の毛先一つでも触ることを考えるな』
「あり得ない・・・」
アリエルは唇を噛んだ。
あの不細工な侍女がキエルハーン侯爵の庇護を受けている?
そんな現実を受け入れられなかった。
「どうしたの?」
しかし、彼女は考え続けることができなかった。
誰かが彼女を訪ねたのだ。
「公女殿下、お客様が来られました」
「この時間に?帰して」
アリエルはカッと怒鳴る。
ただでさえ頭が複雑なのに、この時間に客?
侍女のマチルダがモジモジした。
「それが帰せる方ではなくて・・・」
「・・・?」
すぐにお客さんの顔を確認したアリエルの目が明るく大きくなる。
絹のような金髪、絵画のような美しい顔。
皇太子ラエルだったからだ。
キエルの怒りが凄まじいです・・・。
それだけマリのことを大事に思っているのですね。
夜遅くにラエルが訪問した理由は?