こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
96話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自業自得の落日
「あの子がプリムローズ公爵家を出て行ったことに、お前たちの落ち度はないとでも思っているのか? お前たちがしっかり面倒を見てさえいれば……!」
相次ぐ問題で眠れぬ日々を過ごしていた公爵は、いつもより濃く、そして頻繁に紅茶を淹れては口に運んでいた。しかし、それがかえって自分の神経を苛烈にすり減らしていることには、ついに気づいていなかった。
「噂が広まってしまえば、ユリアが何をしようと形勢を覆すのは難しいだろう。後継者の座に満足できず、公爵の地位まで奪おうとする強欲な娘――という構図ができあがるからな」
彼は不安に跳ねる鼓動をぐっと抑え込みながら、噂が広まるのを待った。
自分に逆らうあの執事の態度は気に入らなかったが、その仕事一つだけは見事にやってのけたはずだ。
「来るはずだ。来るしかない。ユリアは絶対に……私の前に跪く」
そして、案の定――。
噂を流せと命じてから数日後、ユリアがプリムローズ公爵城を訪ねてきた。
「お嬢様が、当主様にお目通りを願い出ておられます」
やはり噂を流したのは正解だった。これまでは、会いたいと何度乞うても会うことすらできなかったユリアなのだ。
(それなのに今は、あろうことか“自ら進んで”公爵城を訪ねてきたというわけか!)
公爵は極上の勝利の余韻に浸りながら、ソファの奥へと深く身をもたれかけさせた。
「今回は……少し余裕をかましてみるのも悪くないな」
そうだ。あの時、後継者の座をくれという言葉にすぐ頷いていればよかったのだ。だとするならば、ユリアもまた、彼が後継者の座を口にした時にすぐ承諾するのが身のためだった。何日もの間、じらされて気を揉まされたせいで、今の彼の機嫌はひどく損なわれていたのだから。
しかし、知らせを持ってきた執事は、淡々と、しかし決定的な言葉を付け足した。
「今すぐ向かわれた方がよろしいかと存じます。現在、お見えになっているのはユリアお嬢様だけではありませんので」
「何だと?」
その言葉を聞くやいなや、公爵はガバッと跳ね起きた。
急いで応接室へと向かうと、果たして執事の言う通りだった。そして、その場所で出くわしたのは――。
「あ、いや。お前たちがなぜここにいるんだ!?」
まったく予想だにしない人物たちだった。
彼が応接室に姿を現すと、一足先に優雅に茶を飲んでいたユリアが、にんまりと酷薄な笑みを浮かべた。
「私の意見が、私一人の考えではないということを、この方々が証明してくださるはずです」
ユリアの周囲を取り囲むように座っているのは、他ならぬプリムローズ公爵家の家臣たちだった。
「公爵閣下にどうしても申し上げたいことがあり、皆で共に参りました」
「それはどういう……」
公爵は、一瞬にして目の前が真っ暗になるような感覚を覚えた。ユリアの訪問を喜んでいたというのに、なぜ彼らとここで鉢合わせるというのだ。呼んだ覚えなどないのに。
「はは、お前たちも集団で間違いを犯すことがあるのだな」
公爵は、突きつけられた現実から必死に目を背けようと、彼らしくもなく大声で笑った。
「話は後で聞こう。私は娘と二人きりで話したいことがあるので、もう戻ってくれないか? 用件があるなら、正式に面会を申し込むように……申し込むように!」
そんな彼の哀れな努力も虚しく、家臣たちは微塵も動じなかった。それどころか、その場に真っ直ぐと立ち塞がり、それぞれが冷徹に自身の主張を始めるではないか。
「今どういう状況かお分かりでないようですが、一日二日と先延ばしにできるほど悠長な事態ではないのです」
家臣の話によると、昨日、イバフネ教の大神殿が激高した民衆や信徒たちによって跡形もなく破壊されたという。
これまで神殿は、人間に与えられた苦痛はすべて神の御心であり、治療を受けられないのもまた、その者自身の罪が深いからだと説いてきた。体調が優れない時は、治療を拒んだ神官ではなく、自分自身や家族、友人を責めながら過ごしてきた数百年間。
しかし今回の事態により、神官たちが自分たちの私腹を肥やすためについた嘘だったのではないか、という致命的な空気が形成されていた。
「寄付金を無断で私利私欲を満たすために使い、結婚してはならないはずの神官たちの隠し子が発覚したのです。民衆はもう我慢ならないと立ち上がったわけですよ」
「そ、それが私と何の関係が……」
「はは、これが公爵閣下にとって遠い世界の話だとでもお思いですか?」
家臣の一人があからさまに小馬鹿にしたように笑ったが、公爵は何の言葉も返すことができなかった。
「偽の聖女を助け、皇族と高位貴族を毒殺しようとした共犯者こそが公爵閣下だと、世間は大騒ぎですが? 愛する娘であり、不正を働いた同志でもあるリリカが失脚したことで、正気を失ってしまったのだと」
「当然、その反対ではないか!」
公爵はユリアへと勢いよく首を巡らせた。
「お前、今この父親を引きずり降ろそうと、こんな人たちを連れてきたのか? ええ!?」
「……」
「どうして娘でありながら、それほどまでに冷酷になれるのだ!」
公爵は、自分も被害者だと言わんばかりに、うろたえた表情を浮かべた。
「お前が私を憎む気持ちは分かる! しかし、それもすべてリリカに嵌められたからではないか。魅惑の呪術だか何だかにかけられていたのだと、あの紅河(ホンハ)の一族が言っていたのを、お前も確かに聞いたはずだ!」
皇帝陛下すらも死へと追いやった呪術がどれほど恐ろしいものか――公爵は、今度は情に訴えかける作戦に出た。ここにいる家臣たちのほとんどには、子供がいた。
「娘であるお前こそ、私を哀れに思うべきだ。不憫に思うべきだろう! 今のこの父親の心境がどれほど辛いか労うどころか、このように背後から突き刺すのか!?」
周りの者たちが聞いて共感できるように、わざと「娘に見捨てられる父親」として自分を悲劇的に飾り立てているのだ。
「あの恐ろしい魅惑の呪術が人を……」
「洗脳と呼べるほどのものではありません。ただ好感を抱かれやすくなる程度ですよ」
しかし、ユリアはきっぱりとした冷たい声で、彼の誤りを訂正した。
「洗脳と言えるレベルで人を魅惑できるのは、相手を異性として見ている人にしか通じないそうです。リリカが完璧に操ることができたのは、ジャコブだけです。今回、死刑を渡されたあの使用人のことですよ」
「り、リリカに嵌められたと言っているのではない! あいつの母親が私に呪術をかけたんだ! それが、このすべての始まりなんだ!」
そうでなければ、お前たちの母親がいながら、私が他の女にうつつを抜かすはずがないだろう……といった類の嘘を並べ立てようとした公爵は、続くユリアの言葉に一瞬で言葉を失ってしまった。
「あなたがこれまで会っていたのは、リリカの母親だけではないでしょう」
「え?」
「そもそも他の女と会おうとして、娼婦のいるあの街へ自ら足を運んだのではないですか」
残酷なほどに真相を突いた言葉だった。
リリカのせいにできなくなると、今度は彼女の母親に惑わされたせいにしているが……。事実、公爵が密会を重ねていた女は、彼女一人ではなかった。彼女は、公爵が浮気を繰り返していた数多くの相手のうちの一人に過ぎない。
妊娠中の妻を放置し、隠し子ができるリスクまで冒しながら、歓楽街に出入りしていたのは公爵本人だ。
「あなたが紅灯街に行きさえしなければ、すべての事件は始まらなかったはずです」
すべての発端はリリカの母親のせいだとする彼の言い訳が、そのまま彼自身へとブーメランのように跳ね返る。
娘のせい、息子のせい、妻のせい、部下のせい……。世界が理不尽に自分をおとしめているのだと、自分の過ちは何一つないと現実逃避する男に、ユリアは強制的に現実を直視させる。彼が必死に目を背けてきた、自分自身の罪を。
ユリアの声は、冷酷なまでに公爵を激しく追い詰めた。
「すでに呪術をかけた当事者は死んでまでいるというのに、実の娘を家門から追い出し、夫人に不当な仕打ちをしたのは、公爵、あなたの意志によるものではないのですか?」
「ユリア・プリムローズ!」
「調査してみた結果、彼女の呪術はそれほど大きく作用していませんでしたよ。あなたの『愛』とやらが、あまりにも薄っぺらかったせいでね」
「……」
「もっとも、私もあなたに『誰かを愛せるほどの人間性』があるのかどうかは疑問ですけれど。この世で自分自身が一番大切な方でしょう?」
公爵はその言葉を聞くやいなや、ガタッと席から立ち上がった。
自分は謝罪したというのに。なぜユリアは受け入れてくれないのか。なぜこうも、冷酷な言葉ばかりを浴びせてくるのか。理不尽で、情けなかった。彼は本当に傷ついた父親の顔をして、ユリアに向かって怒鳴り散らした。
「お前は娘の身でありながら、よくも父親に向かってそんな口が叩けるな!」
「……」
「お前が、お前があんなだから、私が外にうつつを抜かしたんだ! 母親にそっくりな忌々しい奴め!」
「父親が娘にしたことに比べれば、大したことではないと思いますが」
「父親が娘にすることと、娘が父親にすることが同じなわけがあるか!」
瞬間、既視感を覚えたユリアは、似たような言葉をどこで聞いたのかを思い出した。
『息子が母親にすることと、母親が息子にすることは違う』と、かつてジキセンが言っていたのだった。どこまでも自分に都合の良い、この家門の男たちの血の傲慢さ。
「私たちは血の繋がりがあるのだ。神が決めてくださった運命なのだぞ! それに逆らって、お前が幸せになれるとでも思っているのか!?」
公爵は、応接室にいる家臣たちをぐるりと見渡した。
「お前たちも、ここへは無駄足だったな。今頃、噂はすっかり広まっているはずだ。神殿のことは耳に届いていながら、肝心な噂は耳に入っていないようだな?」
そして、勝ち誇ったように大声を張り上げた。
「ユリア、お前がプリムローズ家を継ぐという噂を流してやったのだ! どんなに足掻こうとも、もう取り消せはしない。後継者の座を譲ってもらおうと、父親を追い詰めた強欲な娘になるのだからな!」
後ろ指を指されたいのか、と早口で言葉を浴びせかけていると、いつの間にか現れた執事が、隣で静かに告げた。
「噂は流れておりません。私が何の行動も起こしませんでしたから」
「何だと?」
「正気とは思えない公爵閣下のお言葉を、真に受けるわけにはまいりません」
「お前! 言ったはずだ、今度同じことをすれば本当に殺してやると!」
公爵の目に血が上った。彼は素早く執事へと掴みかかろうとしたが、それよりも早く護衛のセリアンが公爵を組み伏せ、取り押さえた。いつの間にか応接室を取り囲んでいた騎士たちも、すぐにそこへ加わった。
「何の真似だ! 私はこの家門の主人だぞ! プリムローズ公爵はこの私だ!」
床に押さえつけられ、無様に叫ぶ公爵の姿を見て、家臣たちは一様に首を横に振った。
「今の執事に対する暴力性をご覧になりましたか? 傍にいた私までゾッといたしましたよ。どうやら、ジキセン様と同様に、精神がまともではいらっしゃらないようです」
「お労しいことですね。実の娘だと信じていた者に翻弄され、息子まで病に伏せっている状況なのですから……」
これまでユリアと共に公爵へ冷徹に接していた家臣たちの態度が、瞬く間にひっくり返った。それは、あらかじめユリアと彼らの間で握られていた筋書き通りだった。
公爵が床に押さえつけられたまま、憐れみという名の冷たい言葉を浴びせられている間、誰もユリアを止める者はいなかった。家臣たちは公爵を、完全に哀れみの目で見つめていた。
「自らの罪から目を背けるために、狂ってしまった哀れな男」
彼らがプリムローズ公爵に下した評価は、まさにそれだった。
これで、彼がどれほどユリアの悪評を流そうとし、家門の財産をすべて神殿に寄付しようと言い張ったところで、誰も真に受けることはない。すべては「正気を失った狂人の戯言」として片付けられるのだから。
「……セリアン、もう放してあげてください」
「よろしいのですか?」
「ええ。もう十分に、ご自身のなしたことの報いを受けられたようですから」
ユリアのその言葉を最後に、プリムローズ公爵は床へと力なく崩れ落ちた。
ユリアは、冷たく硬い大理石の床へと虚しく行き倒れた男を、ただ冷ややかに見下ろした。彼がかつて、ユリアの母親に対してそうしたように。そして、今の彼女を傷つけたリリカに対しても、これとまったく同じようにしたのだろう。
だからこそ、ユリアが彼を哀れむ理由は、ただの一ミリも存在しなかった。
「……行きましょう」
ユリアの一言で、応接室に集まっていた人々が一斉に動き出した。家臣たちは、まるで初めからそこに何もなかったかのように、冷淡に公爵を通り過ぎて部屋を後にした。最後に残ったユリアもまた、ゆっくりと、しかし確実に彼から遠ざかっていった。
「ユリア! ユリア・プリムローズ……!」
公爵は、去りゆく娘の背中に向かって、狂ったようにその名を呼び続けた。しかし、応接室の重々しい扉が閉まるその瞬間まで、ユリアが振り返ることは二度となかった。
こうして、公爵城に一人取り残された男の、あまりにも惨めな没落が決定的となった。
翌日。
昨日、公爵城で起きた一連の騒動は、瞬く間に社交界へと広まった。家臣たちの口から漏れ出たその噂は、驚くべき速さで人々の間に浸透していった。
「プリムローズ公爵が、完全に正気を失ってしまったそうだ」
「リリカという偽の聖女に、どれほど深くのめり込んでいたのやら。あの子が失脚したショックで、頭がおかしくなってしまったらしい」
「実の娘であるユリアお嬢様が戻ってきたというのに、自分の罪を認められず、すべてあのお嬢様のせいにした挙句、執事にまで暴力を振るおうとしたのだとか」
一度作られた流れは、止まることなく噂を増幅させていった。それにより、公爵が流そうと企んでいたユリアへの悪評は、完全に、跡形もなく防がれることとなった。
今や、狂人の言葉を真に受けてユリアを非難する者など誰もいなかった。むしろ、狂ってしまった父親を哀れみ、それでも公爵家のために尽くそうとする「悲劇のヒロイン」として、彼女に圧倒的な同情が集まった。
「すべて予定通りですね」
応接室のソファに深く腰掛けたセリアンが、目の前で紅茶を淹れるユリアを見つめながら口を開いた。「これですべてが片付きました」
ユリアは、以前よりもはるかにリラックスした手つきで、彼のために淹れた紅茶を差し出した。
「本当に、すべてが終わりましたね」
公爵は、もはや自分の意思でその地位を退くことすら選べない状態に追い込まれた。彼の言葉はすべて狂人の戯言として片付けられ、家臣たちはすでに、ユリアをプリムローズ公爵家の新たなる絶対の主として認めているのだから。
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公爵の目論見の崩壊とユリアの返り討ち
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公爵は、ユリアの悪評を流して彼女を自分の前に跪かせようと画策していたが、彼女は家臣たちを引き連れて自ら公爵城に現れる。
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公爵が流そうとしていた噂は執事によって阻止されており、さらに家臣たちもユリアの側についていたため、公爵の思惑は完全に外れる。
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公爵の罪の暴露と狂人の烙印
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ユリアや家臣たちは、すべての問題の元凶がリリカやその母親、あるいはユリアのせいではなく、公爵自身の浮気や身勝手さ、浅はかな愛にあることを冷静に突きつける。
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言い逃れようと暴力を振るおうとした公爵はセリアンに取り押さえられ、家臣たちから「精神が崩壊した哀れな狂人」として見なされる。
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完全なる勝利とユリアの掌握
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公爵城での騒動は「正気を失った公爵の醜態」として瞬く間に社交界に広まり、ユリアへの悪評は完全に防がれる。
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ユリアは「悲劇のヒロイン」として同情を集めると同時に、家臣たちからプリムローズ公爵家の新たな絶対的当主として認められ、全ての問題に決着がつく。
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