こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

43話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 予想外の反応
最近ユネットから発売された化粧品はどれもそれなりだったが、今回のマッサージオイルは特に熱い反応を呼び起こした。
特に、重要なターゲットのひとつに「妊婦」が含まれていることに人々が関心を示したのだ。
その上、売上の一部が寄付されるという点も。
「妊婦のための化粧品だなんてすごいですね。妊娠って大変じゃないですか……まあ、そんな話はよく聞きますけど、実際に妊婦のために作られたものってなかったですよね?」
魔法使い出身で有名な工芸家レオルネが、感謝の気持ちを込めて母親を通じて連絡してきた。
「物を販売しながら一定の比率で寄付されるのを見るのは初めてです。」
彼女もまた感心していた。
彼女はユネットに役立ちたいと、共に協力しないかという提案も持ってきていた。
『この勢いをそのまま続けられたらいいな。』
優れた工芸家であるレオルネンとの協力は、トゥンサルクリームの宣伝とともにイメージアップにも貢献するだろう。
「工芸家が作った容器に化粧品を入れて販売するのはいかがでしょう?もちろん大量生産はできませんが、限定版で少量だけ。」
少量のため売上にはあまり貢献しないかもしれない。
だが、共同作業を行う相手が工芸家レオルネンなのだ。
いくら現在ユネットがその存在だけで話題になっているとはいえ、社交界をざわつかせているとも言われており、もう少し認知度を上げるチャンスなら逃すわけにはいかなかった。
また、限定版を他の化粧品と組み合わせてパッケージにすれば効果はあるものの比較的注目されていない化粧品たちにも光が当たる機会になるのではないか?
もちろん新商品のマッサージオイルも、より一層話題に上るだろう。
私はレオルネの提案を笑顔で受け入れた。
同時に頭の中では、限定パッケージについての構想をぼんやりと描き始めた。
「ヨテ、見てませんか?ビビアン嬢が久しぶりに社交界に復帰されたとか……」
「ユネットが勧めてくれた化粧品を使ったら、確かに肌が変わったんです。角質もできなくなったって知ってますか?」
「鉛や危険な成分が含まれた化粧品は絶対使わないって決めるきっかけになりました。」
リリカは社交界の中心でありながら、自分ではない誰かに変わっていくのを実感していた。
以前は「プリムローズ公爵と小公爵が溺愛する妹」であり、そんな彼女に嫉妬する「悪女の姉」という存在のおかげで、誰もが彼女を大切にし、愛してくれた。
しかし今は、そうしたものもなく、自分自身への評価は下がる一方だった。
ビエイラ令息との関係も、自分が間違っていたと気づいた。
あの時は、無理してでも伯爵令息と結婚すべきだと思っていたが…むしろ彼を手放す方がよかった。
『いや、もう放してあげたじゃないか。』
今さらビエイラをつかんだところで、何の意味がある?未練がましいだけだ。
『どうしてあの程度の男に、私が執着してるんだ?』
リリカは無意識のうちに指先をいじりながら、ゆがんだ形のボトルを見て、ため息をついた。
最近は何一つ思い通りにいかない。
公爵家の令嬢や騎士たちも、もはや彼女に声すらかけようとしない。
リリカは知らなかったが、強力な力を持つ傭兵王セリアンとの繋がりもユリアが断ち切ってしまっていた。
いつの間にか、リリカの周囲から人がいなくなっていた!
『これ、どういうこと……。』
ようやく出席できた社交の集まりだったが、誰一人としてリリカに話しかける者はいなかった。
先日の建国祭で貴族の令息たちが自分を無視したのと同様に、やはり貴族の令嬢たちも同じだった。
わずかな希望すら打ち砕かれてしまった。
『ああ、予想できなかったわけではないけれど、ここまで徹底的に無視されるとは!』
両手をぎゅっと強く握りしめた。
込み上げてくる焦りに、手が震えないよう踏ん張っていた。
『何かいい方法はないかしら?』
とにかく、今日からが問題だった。
社交の集まりにやっと出席できたというのに、誰ともまともに話もせずに終わった、という噂が立ったらどうしよう?
「…はぁ。」
湖の水面に反射する陽の光、その上を羽ばたく蝶。
朝日に照らされて咲いた艶やかなバラ、日よけの下で椅子に座りながら楽しげにおしゃべりする子どもたち。
みんな幸せそうだった。
まるで孤島のように、どこにもなじめない私を除いては。
『今からでも具合が悪いって言って帰ろうか?』
――そんな時だった。
「マッサージオイルなら、香りがいいから、眠くても無理に我慢しなくてもいいですよね。」
「そうそう。朝早く起きる必要もないですし。」
「それに公女様が、レオルネンが参加した限定版だなんて……。」
「今まで使ってた化粧品がちょうど切れたところだったし、新しいのもちょっと試してみたいじゃないですか。もしかしたらもっと効果があるかもしれないし?」
ユネットの化粧品の話をしていた令嬢たちが、リリカの方をちらっと見た。
「そういえば、プリムローズ公爵夫人もユネットを前から知ってて使ってたって言ってましたよね。」
「ちょうどあそこにプリムローズ令嬢がいるから、聞いてみましょうか?」
リリカはぴくっと耳を立てた。
『いきなり私の名前が出てくるなんて、どういうこと?』
リリカは自分が話を盗み聞きしていたことが悟られないように、最大限穏やかな表情を保とうとした。
視線を横に流していたリリカの元へ、貴族令嬢たちが何人か近づいてきて声をかけた。
「リリカ・プリムローズ令嬢、ユネットについて公爵夫人から何か聞いていたりしませんか?」
いきなり挨拶もなく本題に入るなんて。
しかも以前はプリムローズ令嬢と言われれば無条件で従っていたのに、今では名前まで呼び捨てにするなんて?
ユリアがいる席でさえ、彼女はずっとプリムローズ令嬢のままだったのに…。
けれども、複雑な思いを抱いていたのはリリカだった。
立場が変わったとか、相手の無礼にこだわっている場合ではなかった。
「ユネットのことを聞いたことがありますか?」
「プリムローズ公爵夫人が、ユネット代表と知り合いだとおっしゃってたでしょう?」
リリカにとっては初耳だった。
プリムローズ公爵夫人に関係する話題には、いつも最大限耳をふさいでいたのだ。
また、葬式や仏前に花を供えるような悲しみの話は聞きたくなかったから、一部の公爵夫人に関する話題はなるべく避けるようにしていた。
『そんな気もするし、違う気もする…。』
もちろんリリカは生まれつきの肌質で、化粧品などには特に関心がなかった。
ユネットが化粧品としてかなり評判が高いということは知っていた。
みんなが自分のように欠点ひとつない肌を持っているわけではないだろうし。
とにかくどうにかして関わろうとする様子がやけに露骨だったけれど……これが化粧品の話なら、利用価値はある。
だが関心がなかったというのも事実だし、何よりも、それを周囲に伝えるような人もいなかったため――
「ユネットのことですか。」とだけ答えて、少し考え込んでいると。
自分たちがあまりにも強引すぎたと思ったのか、令嬢たちの口調が少し柔らかくなった。
「今回ユネットでマッサージオイルの限定版が出るらしいですよ。」
「出たのはいいけど、品切れで手に入らなかったんですよ。」
マッサージオイル。
寄付キャンペーンのために妊婦に焦点が当たってはいたが、基本的にはマッサージできる対象に男女老若の区別はなかった。
騎士たちは筋肉痛をほぐすために使っていた。
貴族の子どもたちは靴を履いて痛めた脚を癒すことができるといって、夢中になるほどの新商品だと評判だった。
「もしユネットの代表に話ができるなら、限定版を手に入れられるか聞いてもらえませんか?」
「それと、今後また限定版が出るときは私たちの分も少しだけ確保してくれたら嬉しいんだけど…。」
リリカが質問に答えなかったにもかかわらず、子どもたちは自然とぺちゃくちゃとおしゃべりを始めた。
「はぁ、本当に手に入れるのが大変。正直なところ価格をもう少し上げるべきだと思います。」
「そうですよ。貴族が使うからこそ意味があるのに、どうして平民まで肌が良くなるんですか?」
「奴らの肌が良くなったって、何に使うんです?平民の肌まで良くなったら、自分たちが貴族になったかのように図に乗るんじゃないですか?」
貴族にだけ売れと、そう社員たちに言ったのに、全く聞いていないと不満をぶつけた。
「発売日を前もって知らせてくれれば、他の平民や下級貴族が買えないように買い占めてしまえるのに。」
「販売を止められないなら、化粧品全部買い取ってしまえばいいんですよ。」
「みんなの肌が良くなったら、希少価値が下がってしまうじゃないですか。」
「それとも、そういう提案を公爵夫人に伝えてみるのはどうです?ユネットの代表って公爵夫人と親しいなら、その話を聞いてくれるかもしれませんよ。」
自分たちも化粧品で効果を感じたくせに、それを他人が享受しないようにするなんて、なんという策略か。
一度も肌のことで悩んだことのなさそうなリリカから見れば、彼らも目の前の子どもたちもまったく区別がつかないようにしか見えなかった。
『まあ、肌が犬か牛かくらい良くても、好きになれないわ。』
以前はリリカを見て、その美貌よりも肌の美しさを先に褒める人もいた。
しかし……最近ユネットの化粧品が有名になってからは、肌に悩んでいた子どもたちの顔が明るくなったのが目に見えた。
『こうなると、私のメリットがなくなるじゃない。』
確かに今より数が減った方がいいという意見には同意した。
『でも、いくらなんでも葬式に供える花を渡した相手の庭に……先に訪ねていくことはできないよ。』
以前であれば、プリムローズ公爵夫人が先にやってきて、「気にしないで」とリリカに言っていただろう。
しかし今は、リリカの方から先に謝ってほしいというような態度だった。
その態度は、手にできたイボのように目障りだった。
『自分は良い夫人で、良い母親のふりをしてたくせに。』
いつもそうだったように、ホグはホグらしく笑うのだ。
最近、社交界に顔を出すようになってから、リリカの行動範囲が狭まったのも気に入らない。
彼女の一つひとつの行動が気に障った。
しかし、今回の件は確実にチャンスだ。
「じゃあ……次の集まりのときに、じっくり詳しい話をしましょうか。」
「まあ、そうしましょう!」
こうしてリリカは次のサークルの集まりにも参加する機会を得た。
しかし……。
再び参加したサークルの集まりは、リリカの思惑とは異なる方向に流れていった。
「お母様がもらった化粧品はあるんですけど、その品々は全部ユリア姉さんが騎士団にだけ分けてくれるので、私の手元には回ってこないんですよ……。」
リリカの計画はこうだった。
『最初から化粧品を手に入れるつもりなんてなかった。』
その代わり、ユリアが化粧品を騎士団に配っていたという噂を逆手に取って利用することにしたのだ。
計画通りに。
生まれつきのリリカは、よそよそしくしながらも善人のふりをするようなタイプ。
さも気まずそうなふりまでしていたが…。
「じゃあ、リリカ・プリムローズ令嬢を通して化粧品をもらうのは難しいのですか?」
「えっ?」
予想外の反応だった。
彼女たちはリリカの事情にはあまり耳を貸さず、ただ化粧品の話だけに関心を示していた。
もちろん、令嬢たちとしても、以前のようにリリカを排除してユリアをけなすのは気が引けた。
リリカが姉の婚約者を奪ったような状況だから、うっかり言えばすぐに広まって問題になる、そんな人格批判のネタのようなものだ。
とはいえ、リリカが悪者だと決めつけてユリアに親しげにするには……彼女もそこまで気楽な立場ではなかった。
むしろ慎重さがあったと見るべきかもしれない。
近づいてくるなら、先日の騒動は知らないふりをしてうまく取り繕えるはずなのに。
『どうせ化粧品は、リリカ・フリムローズよりもユリア・フリムローズの方が上手く手に入れられそうだけど……』
「それで…前に化粧品を持ってきてくださるようなことをおっしゃってましたけど、結局持ってこられなかったんですか?」
今回の集まりでは、持ってくるふりをしておいて、結局リリカが手ぶらだというのが彼女たちの要点だった。
『私と話していれば化粧品をもらえると思ったのに。』
最初から手に入れようとする素振りすら見せなかったリリカに、彼女たちは衝撃を受けていた。
昔ほどではないにせよ、積極的なこの令嬢なら少しくらいは耳を傾けてくれると思ったのに……。
「私の婚約者である兄ジキセン殿下は、ユリア令嬢が奪ったと聞きました。」
ジキセンはむしろ、騎士団に与えるためにユリアの化粧品を途中で持っていったのに…。
『まさか、ジキセンお兄様が奪ったなんて言えないから、適当にごまかしてユリアが家柄で手に入れたって話にしたの?』
いや、ユネットの評判ってそんなに低かったっけ?
嫌いなユリアがあえてそんな風に言わざるを得なかったほど?
「プリムローズ小公爵も、公爵夫人も持っているのに、リリカ令嬢だけ化粧品を持っていないんですか?」
肌に無頓着な騎士の間でも、日焼け止めのような化粧品が注目されている。
ジキセンは、人前で恥をかきたくなくて自分がもらえなかったという代わりに、ユリアからもらったのだと話して回った。
しかしこうなると、リリカはまるで一人で公爵家から外れたような存在になってしまった。
かつてのようにリリカの評判がよければ、哀れに思われる可能性もあったかもしれないが……
『今のような状況では…むしろ私の弱点になるのか。』
最低限のジキセンすら受け取れなかったのなら。
ジキセンが受け取った化粧品を、リリカに少しでも分けてくれていたら。
せめて…こんな反応にはならなかっただろうに。
まるでリリカがフリムローズ公爵家の一員ではないかのように!
このままでは、単に図々しくユリアにたかっているように見えるリリカの立場が、絶対によくなることはなかった。
「もしかして、家門内でリリカ令嬢だけ仲が良くないのですか?」
「何ですって?」
「まあ、公爵夫人に葬儀の場で花を捧げたので、もしかしてと思いまして。」
本当は世論を動かそうとしたのだった。
貴族令嬢たちと話す流れで、自分の私生活をさらけ出しながらも、自分が不当な扱いを受けたと語り、公爵夫人を非難しようとしたのだ。
それでむしろユネットの代表とも親しくしていたせいで、私情からリリカを無視したのではないかと持ちかけようとしたのだが……。
『正直に言っちゃダメだ。』
――むしろ、公爵夫人と仲が悪いってことになりそう。
でも、だからといってそう見られるほどにしたリリカは、自分の立場がもっと悪くなったと感じ、頭が痛くなった。
『私が前と違うって…公爵家の金の装飾じゃないって、ますます見下してるってことじゃない。』
彼女たちが話すことも、公爵夫人を通じて化粧品の一つでも手に入れようとしてるのに、最初から哀れなふりなんてするんじゃなかった。
失敗だった。
リリカがこんなふうに行動しても通じると見たのは、以前から哀れだと哀れまれてきたからだ。
空気を読めないほうではないが、今の微妙な雰囲気には気づけたはずなのに。
無意識に気を緩めてしまったのだ。
ユネットの大胆さのせいで、自分に話しかけてきたのだと思った。
自分に少しでも関心があると勘違いしてしまった。
それが違っていたとしても、フリムローズ公爵家に興味があるのだと見なしていたのだ。
自分をよく思っていないのに、わざわざ近づいてきて話しかけてくるほどユネットが図々しいとは思えなかった。
『以前だったら、先に話しかけることもできなかったはず。』
まるで試すような、からかうような視線――。
リリカがただ静かに座っていて、他の令嬢たちが立っていたせいで、自分が見下されているように感じたのかもしれない。
『この状況を打開しなきゃ。』
結局、空気を読んだリリカは、力を込めて口角を持ち上げた。
そして。
「次は必ず持ってきますね!」と、穏やかに笑いながら答えた。

i-only-helped-by-chance-so-i-take-no-responsibility-matome





