継母だけど娘が可愛すぎる【３２話】ネタバレ

「これのこと？」

ヴェリテが指摘したデザイン画を持ち上げる。

「うん。それはドレスで合ってるの？」

ヴェリテの反応に少しドキドキする。

「変に見えるかしら？」

「別に、初めて見たデザインだから」

内心ホッとしてため息をつく。

ただ、今の服に比べると地味な感じがして、ブランシュが気にいるかどうかは疑問だった。

とりあえず、たくさん描いてみた。

「ところで、この前ブランシュが踊るの見た？どうだった？可愛いでしょ？」

「うんうん、可愛かったよ」

声から真心が感じられない。

こいつ・・・、今日は私と一晩中、ブランシュについて語り明かさねば！

ブランシュの素晴らしさを説こうとした瞬間、鏡の部屋がノックされる。

「王妃様、ダンスの練習をしに行かれる時刻です」

「ああ、もうそんな時間？すぐに出かけるわ」

デザイン画を選んでいると、時間が経つのも忘れるほどだ。

「それでは、楽しい時間をお過ごしください。王妃様」

「ええ、ええ。今日もブランシュと踊ってくるわ！」

興奮した状態で練習室のドアを開ける。

ドアが開くや否やブランシュが駆けつけてきて私を歓迎した。

「遅れてごめんなさい、ブランシュ姫。見せたいものがあって」

「見せたいもの・・・？」

私はブランシュにデザイン画が書かれた紙束を渡す。

「建国祭の時に着るドレスのデザイン画です」

「うわぁ！とっても綺麗です！」

ブランシュは感嘆した表情でデザイン画を覗き込んだ。

「色んな種類がありますので、後で調べて気に入ったものを教えてください」

「は、はい！アビゲール様に似合う服も選びますね！」

いや私じゃなくて、あなたに似合うものを選ばないと。

けれどブランシュがとても幸せそうだから、それ以上何も言えなかった。

「大切に保管してください。風に飛ばされたり、水に濡れないようにしてくださいね」

彼女はとても真剣な表情でそうお願いしていた。

あんなに切ない瞳で侍女に命令・・・、いや、お願いするなんて。

「それじゃあ練習を始めましょうか」

「あっ、はい！」

ブランシュが慌てて私のそばに近寄る。

今日はオルゴールではなく、まともな楽団とダンスの先生も呼んでいる状態だ。

そうしてダンスの練習が始まる瞬間。

座っていた侍女たちが一斉に立ち上がる。

一体どうしたのだろう？

「こんにちは、アビゲール」

「・・・セイブリアン殿下？」

いや、なんでお前が来るんだよ。

練習室の中に入ってきたのはセイブリアンだった。

表情はいつもと変わらない無表情で。

「殿下、お元気でしたか？ところで、ここにどういったご用件で・・・？」

「君に呼ばれたから来たのですが」

「私がですか？」

いや、いつ私がお前を呼んだと？

「ダンスの練習です。一緒にしようと言いませんでした？もう忘れたのですか？」

あの時断ったんじゃないの？

「踊るのが嫌だったのでは？」

「嫌いですよ。ですが、一度練習してみようかと思って」

これはどういう事だろうか。

セイブリアンじゃなくて偽物？

ミラードまで同行したところを見て、ようやくセイブリアンの意図が読み取れた。

ダンスの練習をしに来たわけではなく、私を見張りに来たのだろう。

散歩の時も監視していたのだから・・・。

とにかく、こうやってブランシュとセイブリアンが向き合うのは良い兆候だ。

「殿下、お時間を割いていただきありがとうございます。ブランシュ王女も殿下と会いたがっておりましたので」

ブランシュは緊張しながらも挨拶をした。

「い、いらっしゃいませ。お父さま・・・」

震えている娘を見てもセイブリアンの表情に変化はない。

その間に、ミラードがブランシュに近づいた。

それからニコッと笑いながら、彼女に話しかける。

「ブランシュ姫、お元気ですか？」

「こんにちわ、ミラード卿」

ブランシュがニッコリ笑う。

すると、ミラードはニヤリと笑った。

わぁ、本当に笑顔が似合わないわね。

私と話す時は人を殺すようなしかめっ面なのに。

もしかして・・・？

「今日ブランシュ姫が着ている服、とても綺麗じゃないですか？ミラード卿」

「はい、ドレスの青い生地がお姫様の瞳ととてもよく似合っており、オーバーではないリボンの装飾がお姫様の可愛らしさをさらに際立たせていますね。もちろん、お姫様はそうじゃなくても美しいのですが」

ミラードが満足そうな口調で話した。

お前もブランシュに夢中になったファンの一人なんだな・・・！