私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに

私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに【42話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

42話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 唯一の親友、破格の恋愛候補

「深い仲、か……」

デミアンがゆっくりと呟き、どこか意味ありげな視線を向けてきた。その視線に射抜かれた瞬間、まとまりかけていた考えはすべて吹き飛んでしまう。

そのときになってようやく、私はルチにぴったりともたれかかったままの体勢だったことに気づいた。

普段から私とルチはスキンシップが多い。幼い頃から、ルチが落ち込んでいると私が抱きしめるのが習慣だったから、この程度の距離感には何の抵抗もなかったのだ。

ただ、それはあくまで二人の時の話。人前でここまで密着することは滅多になかった。

(でも、この妙に親しげな体勢は何なの……?)

不自然さを感じて、私は肘でそっとルチの脇腹を押してみた。

けれど彼は、離れるどころか逆に私の肩をさらに強く抱き寄せたのだ。有無を言わせないしっかりとした腕の力から、「大人しくしていろ」という明確な意思がはっきりと伝わってくる。

(もう、ルチが意地を張り出すと誰にも止められないんだから!)

私が内心で頭を抱えていると、デミアンの鋭い視線がルチを真っ直ぐに射抜いた。

「もしかして、お二人は友人以上の関係なのですか?」

「どうしてそんなことを聞く?」

デミアンの少し張りつめた声とは対照的に、ルチの声は余裕そのものだった。

「ただの興味です」

「無礼だから、その好奇心は胸の内にしまっておけ」

場の空気はますます険悪になっていく。しかし、デミアンも引く様子はなかった。

「不快に思われても知りたいのです。なぜ教えていただけないのですか? 人に堂々と話せないような関係なのですか?」

デミアンは穏やかに微笑んでいたが、その笑みの裏にはどこか企みを感じさせるものがあった。案の定、向かいにいたルチの体がぴくりと動く。

「何を――」

「何を言ってるんですか! 私たちの関係を誤解されるのは困ります!」

ただならぬ気配を感じ取り、私は慌てて二人の間に割って入った。せっかくの誕生日パーティーだ。招待客同士が言い争いになるような事態だけは避けなければならない。

私の叫びに、デミアンは興味深そうに目を細め、ルチは唇をきつく結んだ。

「では、その“深い関係”というのは、具体的にはどんなものなのですか?」

「もちろん、本当に仲のいい友達ってことですよ。いわゆる親友です!」

デミアンが妙な勘違いをしないよう、私はきっぱりと言い切った。

これだけ言えば十分伝わったはずだ。そう思って同意を求めるようにルチを見上げると、彼はなぜか硬い表情のまま、どこか不満そうに私を見つめていた。

(しまった……。家族みたいな関係、って言えばよかったかな?)

「ああ……本当に仲のいい友達なんですね」

デミアンの口元に、ゆっくりと意味深な笑みが浮かんだ。そして、小さく呟く。

「それほど深い絆だなんて、少し羨ましいですね」

けれど、その声はまったく羨望には聞こえなかった。言葉の裏に別の感情が隠れているような、不思議な気配が漂っている。

すると、私の肩をしっかりと抱いていたルチの手が、ゆっくりと離れていった。ようやく自由になって振り返ると、ルチはまるで私に裏切られたかのような目を向けている。隣のハリソンまで、「何をしているんだ」と言いたげな視線を送ってきた。

(ええっ、これでもまだ足りないの!?)

「そんな軽く言わないでください」

私はデミアンを真っ直ぐに見つめ、きっぱりと言った。

その一言にデミアンは口をつぐみ、ルチはわずかに期待するような表情を浮かべる。注がれる二つの視線を正面から受け止めながら、私は胸を張って宣言した。

「私たちは、この世界で一番仲のいい親友なんです!」

(よし、これで文句なしでしょ?)

そう思ってルチを見ると、彼ははぁ、と呆れたような目で私を見返してきた。ここまで言ってもまだ不足だというのだろうか。

「世界で一番仲のいい親友だなんて、とても信頼し合っているんですね」

デミアンが小さく笑うと、ルチは再び表情を引き締め、彼を鋭く見据えた。

「ただの友達程度の関係なら、そんなことは言えないでしょう」

デミアンの低い笑い声がぴたりと止まる。二人の男が無言で見つめ合う様子に、私はこれ以上耐えきれず、大声で遮った。

「さあ! 早く中に入りましょう! 入ったらケーキのろうそくを灯して、美味しいものも食べましょう。お腹が空いていませんか?」

「そうですね。遅くなる前にお祝いしましょう。私もお腹が空いてきました」

デミアンが先に賛成して微笑み、ルチは――ひどく顔をしかめたものの、結局は折れてしぶしぶ頷いた。

「……入ろう」

ハリソンが安堵したように大きな息をつく。少し離れた場所で様子をうかがっていた執事は、場が落ち着いたのを見るや否や、急いで近寄ってきて案内を申し出た。

「ご案内いたします。どうぞこちらへ」

(今さら出てくるなんて、この裏切り者……!)

私がじろりと睨むと、執事は「私も身の安全が第一ですので」と言いたげな目で巧みに返してきた。うちの使用人たちは本当にたくましいというか、人間味がある。この執事も私と同じで、自分の命を何より優先するタイプなのだ。

執事の案内に従って食堂へ向かうと、中で待っていた両親が二人の客を温かく迎え入れた。

「お越しいただきありがとうございます、ルチアーノ皇子殿下」

「エスピンの誕生日を祝う席ですから、参加するのは当然でしょう」

「ハリソンも、よく来てくれましたね」

「ご招待いただき、ありがとうございます」

両親はまずルチとハリソンに挨拶を交わし、それからすぐに、その後ろに立つデミアンへと満面の笑みを向けた。

「初めてお会いしますね。エスピンの新しいお友達でしょう? ようこそ!」

「いらっしゃい。急に招待したお友達が、こんなにハンサムだとは思いませんでした。来てくださって本当にありがとう」

両親はすっかり感激した様子で、デミアンの手を握りしめた。特に父は、嬉しさのあまりなかなか手を離そうとしない。ルチとハリソン以外で、私に新しい友達ができたことがよほど嬉しかったのだろう。

まさか両親がここまで大歓迎するとは思わなかった。こうなると、ルチの心配もあながち的外れではなかったのかもしれない。

「初めまして。デミアン・クェイドと申します」

過剰な歓迎に戸惑っているはずなのに、デミアンは完璧な社交用の微笑みを崩さなかった。

だが、その名を聞いた瞬間、満面の笑みを浮かべていた父の表情がピキリと固まった。

「クェイド……?」

「はい。クェイド公爵は私の父です」

「……!」

両親も、最初にルチがそうだったように驚愕の表情を浮かべた。そして一斉に私のほうを見て、「どこでこんなとんでもない相手を見つけてきたんだ」と言いたげな顔をした。私も知らなかったことなので、ぎこちなく笑って誤魔化すしかない。

父はルチを一度見て、それからデミアンを見て、何か言いたそうに口を開きかけ――そして静かに閉じた。無理やりため息を飲み込むその表情は、「エスピンのやつ、またとんでもないことをやってくれたな」と物語っている。

母もまた、呆れたような視線を私にじっと注いでいた。これまでの数々の騒動で、両親の心臓を鍛えておいて本当に良かったと思う。

「……こんな立派なご子息がいらっしゃるのですから、クェイド公爵もさぞ誇らしく思っておられるでしょう」

父は気絶する代わりに、なんとか社交辞令を絞り出した。デミアンは一瞬だけ動きを止めたが、すぐに蜜が滴るような、とろけるほど甘い笑みを私に向けた。

「お二人こそ、こんなに愛らしいお嬢さんがいて、本当にお幸せでしょう」

それは、誤解を招くには十分すぎるほどの眼差しだった。

(この人、本当に存在自体が有罪だわ……!)

「私も、エスピンが娘でいてくれて幸せですよ」

父は娘を褒められて満足そうに笑ったが、私は気恥ずかしさが限界に達し、慌てて席に着くよう促した。

「いつまで立ち話をしているの? 早く誕生日ケーキのろうそくを灯しましょう!」

円卓の席はあらかじめ決められており、私から見て右側にルチ、ハリソン、父、母、そしてデミアンの順に腰を下ろした。つまり私は、ルチとデミアンのちょうど真ん中に挟まれる形になった。

「先にケーキをお持ちしましょうか? それとも、お食事を先になさいますか?」

「ケーキです! 先にケーキのろうそくを灯してもいいですか?」

執事の問いかけに食い気味に返事をすると、全員が快く賛成してくれた。執事が一度席を外すと、さっそく父が身を乗り出してきた。

「エスピンとは、どのようなきっかけで知り合ったのですか? お付き合いは長いのでしょうか?」

さっきルチが聞いていたことと全く同じ質問だった。周りのみんなの過剰な反応が、恥ずかしくてたまらない。それにしても、ルチの態度は本当に父にそっくりだ。

「魔法道具店で知り合いました。知り合ってからは、まだそれほど長くはありませんが……」

デミアンはそう言って言葉を濁し、ちらりとルチの方へ視線を向けた。私もつられてそちらを見ると、ルチは相変わらず無表情のまま、固く口を結んでいた。

心の中で私はツッコミを入れる。(あれだけ「新しい友達を作れ」と口うるさく言っていたくせに、何なのその態度は!)

「付き合いの長さは重要ではありません。これからもっと親しくなる予定です。そうですよね、エスピン?」

デミアンがわざとらしく、意味深な言い回しを重ねる。案の定、父も母も困惑した表情で私を見つめてきた。変に聞こえたのは私だけではなかったらしい。二人の視線が「私たちは何も知らないからね、変なことを言わないでよ」という無言の圧力を伴って、忙しなく私へ向けられる。

やがて何かを察したのか、両親はそっとルチへ視線を向けた。私もつられてルチを見ると、彼はデミアンをあからさまに睨みつけていた。

(本当に大人気ないんだから……。ん? ちょっと待って?)

その時、私はふと、ある重要な事実に気づいた。

私はすでにルチとハリソンとは「親友ポジション」を強固に築いている。となると、この世界線で残されているのは、恋愛枠としてのデミアンだけだ。

もしデミアンが最初から私に好意を持っているのだとしたら、この思わせぶりな態度もロマンス小説の定番として何ら不思議ではない。ヒロインが男性キャラクターから好意を寄せられるのは当然の展開なのだから。

ルチの過剰な反応ばかりを気にしていたせいで、一瞬そのことを忘れていた。どうせ私からデミアンに近づくつもりだったのだ。向こうから歩み寄ってくれるなら、これほど好都合なことはない。

(これって、むしろ大チャンスじゃない!)

有利な状況なら、全力で利用するべきだ。私は下心を綺麗に隠し、デミアンににっこりと極上の笑みを返した。

「ええ。これからたくさん仲良くしていきましょうね」

「エスピンと同じ考えだなんて、嬉しいですね」

私の腹黒い本心など知る由もないデミアンは、思わず見とれてしまうほど柔らかな笑みを浮かべた。本当に、その笑顔だけは完璧だった。

「ゴホン!」

わざとらしい、大きな咳払いが響いた。

ハッと我に返って振り向くと、父の視線が落ち着きなく揺れていた。信じられないというように私とデミアンを見比べ、さらにはルチの顔色を確認するように何度も視線を行き来させている。

「もしかして、二人は……」

ガタン!

テーブルを軽く叩く大きな音が響き、父の言葉は途中で遮られた。音の主であるルチへ視線を向けると、彼は冷ややかな視線でデミアンを見つめながら、淡々と言い放った。

「知り合ったばかりなんだ。これから親しくなろうという、ただの段階だろう」

不快感を隠そうともしないルチの冷淡な声に、その場の空気は一気に凍りつく。ハリソンは困ったような表情で、私とルチを交互に見つめていた。

(思った以上にルチの反応が大きいな……)

最初から、新しい友達ができたら多少は嫉妬するだろうとは予想していた。実際、幼い頃のルチは私を独占したがるところがあり、ハリソンと親しくなることさえ最初は快く思っていなかったくらいだ。

それでも、ここまで露骨に不機嫌になるとは思っていなかった。だからこそ、さっき私は三角関係を疑ってしまったのだ。

「彼は少し誤解を招く話し方をする癖がある。聞く人によっては勘違いされることもあるから、これからは気をつけるように」

ルチが先輩風を吹かせるように忠告すると、デミアンはじっと彼を見つめた後、ふっと笑った。

「そうだったのですね。知りませんでした。はい、分かりました。これからは言葉に気をつけます」

「そうだ。必ず気をつけるんだ」

最後に念を押すように言い、ルチは腕を組んだまま黙って様子を見守る姿勢を取った。この場で最も身分の高い皇子殿下が、あれほど露骨に重苦しい空気を放っているせいで、両親も息が詰まりそうになっている。

「はははっ! どうやら私が少し過敏になっていたようですね。我が家のエスピンは本当に可愛いですから。誰かに連れ去られないよう、つい警戒してしまうんですよ。ははは!」

父は大げさに笑いながら、場を和ませようと少々無理のある冗談を口にした。

(ああっ、お父様! 空気を変えようとしてくださっているのは分かりますけど、その冗談はさすがに無理があります……!)

私が声にも出せず焦っていると、デミアンは一瞬目を丸くした後、優しく微笑んだ。

「ご心配になるお気持ちは、よく分かります」

(ひゃあああっ!)

デミアンの全肯定の返答で、場の空気はさらに一段階おかしな方向へ進んでしまった。まさか父の親馬鹿トークにまで便乗して、私をいじり倒すつもりなのだろうか。顔に熱が一気に集まり、頬が火照っていくのを感じる。

「……それに」

ルチの鋭い声が、再び張り詰めた空気を切り裂いた。

「今のも、また同じような言い方だった」

ルチはデミアンを鋭く睨み据えた後、一瞬だけ私へ視線を向けた。まるで「少しは自覚しろ」と言いたげな目だった。

急に恥ずかしくなって、私は居心地の悪さに身を縮める。ルチにそんな風に指摘されると、なおさら気まずい。ハリソンも「またか」とでも言いたげに、呆れたように私たちを見比べている。

「今回も、私が何か失礼なことを言ってしまいましたか?」

デミアンが困ったような表情で小首を傾げる。

「い、いいえ!」

その整った顔の破壊力に弱い私は、とっさに手を振って否定するしかなかった。するとルチから、「また彼の肩を持つのか」と言いたげな冷たい視線が突き刺さる。

(ちょっとルチ、睨まないでよ。あなたは親友で、この人は私の大切な恋愛候補なんだから!)

私は気づかないふりをして、さっと視線を逸らした。

「ケーキをお持ちしました」

絶妙なタイミングで執事が近づき、テーブルの中央に大きなケーキを置いた。

「美味しそうですね」

「でしょう!」

デミアンが褒めると、私は思わず声を弾ませた。それもそのはず、私の大好きな果物がたっぷりと乗った、見事な生クリームケーキだったからだ。料理長のブルーノおじさんが、私のために気合いを入れて作ってくれたのがひと目で分かった。

「ブルーノが、お嬢様のお誕生日だからと特別に心を込めてご用意いたしました」

「あとでブルーノにお礼を言っておくね」

執事がろうそくに火を灯し、一歩下がって軽く手を振ると、食堂の魔法灯が消えて幻想的な光が広がった。それを合図に、両親とルチ、ハリソンは慣れた様子で手拍子をしながら歌い始めた。

「♪ハッピーバースデー トゥーユー

ハッピーバースデー トゥーユー♪」

みんなが声をそろえて歌う中、デミアンだけは少し戸惑った様子を見せていた。この世界には、誕生日の歌を歌い、ろうそくを吹き消して願い事をするという文化はない。私が前世の素敵な文化をどうしてもやりたくて、周囲に積極的に広めてきたのだ。

最初は戸惑っていたみんなも、今ではすっかり自然に歌えるようになっている。

「愛するエスピン、お誕生日おめでとう!」

歌が終わるのを待っていた私は、目を閉じて心の中で真剣に願い事をした。

(もっと思い切り遊べますように。両親に小言を言われませんように。あっ、それからルチのお説教も! お説教なんて大嫌い!)

「ふーっ!」

私は大きく息を吸い込み、ろうそくの火を一息で吹き消した。パッと魔法灯が灯り、食堂に明るさが戻る。

デミアンも空気を読んだのか、歌の終わりに合わせて遠慮がちに拍手を補ってくれた。みんなから祝福されて、私は一気に上機嫌になる。本当に嬉しい理由は、このあと始まるプレゼント贈呈会だけど!

「エスピン、誕生日おめでとう」

最初に父がプレゼントを差し出した。ちなみに、この時のために黄金(ピンク色の鳥)は部屋へ置いてきた。私へのプレゼントは全部、私のものなんだから、横取りされるわけにはいかない。

魔法商店で私自身が選んだ品なので、中身は分かっていたが、それでも両手で丁寧に受け取った。

「ありがとうございます!」

「エスピン、愛する私の娘。お誕生日おめでとう」

続いて母が一冊の貴重な本を手渡してくれた。

「ありがとうございます、大切に読みますね」

そして私は、期待に胸を膨らませながらルチを見つめた。今まで彼がくれたプレゼントはどれもセンスが良く気に入っていたので、今回も楽しみにしていたのだ。

ルチは無表情のまま懐から小さな箱を取り出し、私に差し出した。

(小さな箱……! これ、一番重要なポイントよね!)

小さいほど高価な品に違いない。胸を躍らせながら受け取り、すぐに箱を開けた。中には、鮮やかな赤い宝石がはめ込まれた、繊細な細工の指輪が入っていた。思わず口が大きく開く。

「わあ! これ、ずっと欲しかったの!」

嬉しさのあまり、ルチの顔をつかんで頬にキスでもしたくなるほどの衝撃だった。

父に魔法商店で買い物をさせてもらった時、私は二つの品で最後まで迷っていたのだ。一つは父に買ってもらった「風の魔法」が宿る魔道具。そしてもう一つが、この「火の魔法」が宿る指輪だった。予算の都合で両方は買えず、それだけが心残りだったというのに、まさかこれが私の手元に来るなんて!

「どうしてこんなに私の欲しかったものをぴったり選べるの? ルチ、最高!」

私が親指を立てて見せると、ルチはようやく固かった表情を和らげ、満足そうに口元を緩めた。

「説明書は箱の中に入ってる」

「説明書なんてなくても分かるよ。本当に欲しかったものだから。ありがとう!」

コレクションがまた一つ増えたことが嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。そんな私の様子を、デミアンがじっと見つめていた。

「エスピン、お誕生日おめでとうございます」

次にハリソンから渡された箱を開けると、中には私好みのデザインのアメジストがあしらわれた銀製のブレスレットが入っていた。長年の付き合いだけあって、みんな私の好みを熟知している。

「ありがとうハリソン! 大切にするね」

「エスピン、私もささやかですが、プレゼントをご用意しました」

最後にデミアンが少し照れくさそうに口を開いた。半ば無理やり招待したようなものだったので、私はプレゼントなんて期待していなかったのだが、彼は懐から小さな箱を取り出した。

その大きさも包装も、ルチがくれたものとほとんど同じだった。

「えっ、本当ですか? さっきお花までいただいたのに」

「それは招待のお礼です。こちらは誕生日プレゼントですよ。お誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます。開けてもいいですか?」

「もちろんです」

私は急いで箱を開けた。その瞬間、あまりの衝撃に言葉を失い、思わず口がぽかんと開いてしまった。デミアンの顔と、箱の中身を何度も何度も見比べる。

「わあ……! わあ! わあ!」

それしか言葉が出なかった。

中に入っていたのは、さっきルチからもらった指輪とデザインが瓜二つのものだった。違うのは、赤い宝石ではなく、深い青色の宝石がはめ込まれていることだけ。

「魔法の指輪ですか?」

「はい。水の魔法が宿った指輪です。お気に召しましたか?」

「はい! もちろんです!」

私は思わず悲鳴のような声を上げた。だって、これはあの有名な魔法道具店にさえ置いていなかった、超レアアイテムなのだから!

「魔法の指輪とは……」

両親は驚いたように顔を見合わせた。

「デミアン殿、どうしてこのような貴重な物を贈ろうと思われたのですか? 知り合ったばかりの相手に贈るには、少々高価すぎるのでは……」

「ご負担に感じられましたか?」

「いえ、そういうわけでは……。ただ、エスピンの好みにぴったり合う物をご存知だったのが不思議でして」

父の疑問に、デミアンは私を見てにやりと微笑んだ。

「私たちが初めて会った場所を覚えていますか?」

「あっ、魔法道具店ですね!」

「はい。店主のおすすめを参考にさせていただきました」

なるほど、あの店主さんなら誰よりも私の好みを把握している。彼のおすすめなら、私が大喜びするのも当然だ。

疑問が解けると、私は純粋にプレゼントを喜ぶことにした。デミアンの方へ向き直り、両手の親指を勢いよく立てて見せる。

「本当に最高です! ありがとうございます!」

「お気に召していただけたなら、用意した甲斐がありました」

デミアンは穏やかに微笑みながら優しく答えた。

そして――彼はちらりとルチの方へ視線を向けると、片方の口角をわずかに上げた。その表情は、まるでルチに向かってこう告げているようだった。

『君のプレゼントも最高だけど、私はもっと最高だろう?』

二人の間で、再び見えない火花がパチパチと散るのを、私はまだ知る由もなかった。

 



 

 

  • 「世界一の親友」宣言とルチの不満

    密着するルチとの関係をデミアンに追及されたエスピンは、場を収めるために「世界一の親友」と言い切る。デミアンは意味深に納得したものの、ルチは「ただの友達ならそこまで言えない」と独占欲を滲ませ、不機嫌なまま食事の席へ移行する。

  • 両親への挨拶とデミアンの「恋愛枠」浮上

    デミアンがクウェイド公爵の息子だと知り両親は激震するが、デミアンはエスピンに甘い視線を送り続ける。エスピンは「ルチとハリソンが親友枠なら、デミアンは自分の恋愛候補(原作の定番)だ」と気づき、この状況を有利に利用しようと彼に笑顔を返す。

  • プレゼント対決と黒幕の挑発

    ルチからは欲しかった「火の魔法の指輪」を贈られて大喜びするが、デミアンからはさらにレアな対となる「水の魔法の指輪」を贈られる。大興奮するエスピンの横で、デミアンはルチに向け「私の方が最高だろう」と言わんばかりの不敵な笑みを浮かべ、二人の火花は最高潮に達する。

 

 

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