こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
153話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 神の啓示
じっとしているだけでも体がだるくなるような、静かな午後の時間。
エスターは机に向かい、一生懸命に古代語の本を読み込んでいた。新しく分かったことは特になかったが、何か見落としている部分があるかもしれないと、ページをぱらぱらとめくり続けていた。
「お嬢様、デザートでもお持ちしましょうか?」
そんなエスターのもとへ、ドロシーが近づいてきて優しく声をかけた。
「あっ、今日はベーカリーからデザートが届く日だったよね?」
「はい。お嬢様のお好きなタルトもたくさん入っておりますよ」
「食べる!」
エスターがパッと明るい笑顔を見せると、ドロシーもつられて嬉しそうに微笑み、デザートを取りに食堂へと向かった。
だが、ドロシーが部屋を出た途端、エスターの表情は一気に曇った。集中できずにいた本を閉じ、深くため息をつく。
「このまま伝染病を放っておいていいのかな……」
エスターは神殿とは別に、デルバート領内で救護活動を続けていた。聖花を育てて聖水を作り配ったり、聖力で人々を癒やしたりといったことを、ひたむきに繰り返していた。皇室の保護所を通じて、エスターの作った聖花は帝国全体へ配布されてもいた。だが、それだけでは根本的な原因を断つことはできなかったのだ。
「修正区も、一度この目で見に行ったほうがいいかも……」
自分なら帝国に広がる伝染病を解決できる――そんな噂の言葉が、どうしても頭から離れなかった。神殿の利己的な態度に腹を立ててそのまま帰ってはきたものの、もともと神殿に行く前から考えていたことでもあり、簡単に割り切れるものではなかった。
なかなか答えが出ず、指先をもてあそんでいると、ノックとともに扉がそっと開いた。
「エスター、何してる?」
「ちょっと休んでただけだよ」
部屋に入ってきたデニスを見て、エスターは嬉しそうに微笑んだ。デニスは図書館から来たのか、眼鏡をかけ、脇には本を二冊抱えていた。
「シュル、少し大きくなったみたいだな」
デニスは何気なく、ぐっすり眠っているシュルのそばへ行き、じっと覗き込んだ。
「机にほこり一つないな。侍女がよく掃除してくれてるみたいだ」
デニスはゆっくりと机の上を指でなぞりながら、どこか意味ありげに声を漏らした。
「ふーん……。本棚の本も増えてるし、部屋の中にある物も増えてるってことだよね」
デニスらしくない遠回しな様子に、何か頼み事でもあるのかとエスターは言葉を待った。
「でさ、最近欲しいものとかない? 買ってほしい物とか」
「欲しいもの?」
突然の質問に、エスターは本から顔を上げて首を傾げた。
「うーん、私は最近『エド・イランの猫』とか『彫刻家イクリプスの生涯』みたいな本を探してるけど。そういうのはどう?」
「うーん……別に」
エスターがあまり乗り気でない様子で視線を横に逸らすと、デニスは困ったように呟いた。
「そんな聞き方じゃ分からないよね。分かったよ。じゃあ、私がなんとかしてみるよ」
「デニスお兄ちゃん?」
意味の分からないことをつぶやいたデニスは、来た時のようにさっと部屋を出ていった。
エスターが不思議に思いながらそのまま座っていると、しばらくして再びドアがノックされた。当然ドロシーだと思っていたが、入ってきたのはジュディだった。
「さっき食堂でドロシーに会ってさ。これ、持っていってあげてって言われたんだ」
ジュディが持ってきた皿には、きれいに盛り付けられたデザートがたくさん並んでいた。
「わあ、美味しそう!」
エスターは嬉しそうに笑い、ぱっと駆け寄ってジュディを迎えた。するとジュディは、小さなタルトをひとつ取って、そのままエスターの口にぽんと放り込んだ。
小さいとはいえ口いっぱいに広がる甘さに、もぐもぐと頬を動かすエスター。そんな妹を見つめながら、ジュディは少し様子をうかがうように黙り込んだ。
「ねえ、エスター。ちょっといい?」
すぐに聞けずにためらう様子が、さっきのデニスとそっくりだった。
「何か欲しいものないの?」
「え、どうして分かったの?」
ジュディはエスターに心を読まれたのかと思い、思わず胸元を手で隠して一歩後ろに下がった。その大げさな様子に思わず笑いながら、エスターは口の中のタルトをしっかり飲み込んでから答えた。
「デニスお兄ちゃんも、さっき同じこと聞いてきたんです」
「ほんと? デニスが? ああいうの全然気が利かない奴だと思ってたのにね」
デニスの部屋の方向をちらっと見ながら、ジュディはエスターの頭を優しく撫でた。
「で、何て答えたの?」
「ううん、特に欲しいものはありませんって」
「どうして? 拳銃とか職人が作った道具もいいし、馬なんてどうだ?」
「私には、あまり必要な物じゃない気がします……」
デニスやジュディが挙げるものは、どれも自分たちが欲しそうな物ばかりに思えた。結局、エスターの本当に欲しいものを引き出せなかったジュディは、悔しそうに口いっぱいにお菓子を頬張ったまま部屋を出ていった。
「あ……もうすぐ私の誕生日か」
お兄ちゃんたちが交代で訪ねてくる理由に、エスターは合点がいった。
あと一週間に迫った自分の誕生日のことを思うと、ありがたい気持ちと同時に、どこか落ち着かない気持ちにもなった。エスターは窓辺にもたれて、沈みゆく夕日をしばらく眺めたあと、ふと母のことを思い出し、引き出しを開けた。
一番上の引き出しには、豪華なダイヤのネックレスが二つ入っていた。一つはノアからもらったもの、もう一つは――記憶にはないけれど、母が自分に遺してくれたというピンクダイヤだった。
「お母さん……」
あまりにも大切で触れることもできず、しばらく見つめたあと、エスターはノアからもらったネックレスを取り出した。普段着には合わないと分かっていながらも、なんとなく首にかけてみる。
「ノアは今何してるのかな。誕生日の日、会えるかな?」
ぼんやりと鏡に映る自分を見つめながらそう思ったが、すぐに気恥ずかしくなって慌てて外し、引き出しに戻した。
その途端、急に強烈な眠気が押し寄せてきた。抗えないほどの眠気に襲われ、口元を手で押さえてあくびをしながら、エスターはベッドに倒れ込むように横になった。
「ん……なんでこんなに眠いんだろう……ちょっとだけ寝て起きようかな……」
ソファの上で眠っていたシュルが、ベッドに移動するエスターを半分眠った目で見送っていたが、やがて部屋全体が静かな眠りに落ちていった。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
エスターは誰かのやわらかい手が頬に触れるのを感じ、もぞもぞと動いてゆっくり目を開けた。
しかし、そこは自分の部屋ではなかった。
何もない空っぽの空間。どこまでも続くような暗闇だけが広がる場所に、彼女は横たわっていた。
「ここ……どこ? まさか、また誘拐されたわけじゃないよね?」
驚いて体を起こしたエスターは、慌てて自分の体を確かめた。幸いにも怪我はなく、眠る前と同じ姿のままだった。
「誘拐じゃないなら……夢?」
夢にしては、肌で感じる感覚があまりにも現実的だった。頬をつねってみても、目が覚める気配はない。
いったい何なのかと戸惑っていると、エスターのすぐ近くに“誰か”がいた。今まで気づかなかったのが不思議なほど、すぐそばに。
「やっと見えるようになった?」
存在を認識した瞬間、暗闇に溶け込んでいた女性のシルエットが、ほのかに光を帯びて浮かび上がった。その声は直接エスターの頭の中に響き、全身に鳥肌が立つような感覚が走る。
「……もしかして、エスピトス様……?」
どうしてその名前が浮かんだのか、自分でも分からなかった。ただ、直感だった。
「そう。あなたたちは私をそう呼んでいるわ」
衝撃を受けたエスターは口を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。
「本当にあなたが神なの? これって、私が見ている夢なの?」
「夢か現実かは、あなたがどう受け止めるか次第よ。私はいつだって、あなたたちの信仰の中に存在しているのだから」
頭の奥に直接響く澄んだ声を聞いていると、とても夢だとは思えなかった。
エスターは、数歩踏み出せば触れられそうな距離に立つその女性をじっと見つめた。もし会えるのなら、ずっと言いたかったことをすべてぶつけるつもりだった。どうして自分をこんな過酷な人生に生み落としたのか、問いただしたかった。
けれど、いざ目の前に現れると、言葉が喉に詰まって出てこない。何から話せばいいのか分からず、胸の奥から感情だけが込み上げてきた。
「……どうして今になって現れたんですか?」
ようやく口を開いたエスターの声は、子どものように震えていた。
「私を恨んでいるの?」
「はい、恨んでいます」
ためらいのない答えに、エスピトスの声はわずかに寂しさを帯びた。
「そうだと思っていたけど、実際に聞くとやっぱり胸が痛むわね。あなたは知らなかったでしょうけど、私はいつもあなたのそばにいたのよ」
エスターがさらに問い詰めようとした瞬間、エスピトスの姿がゆらりと揺らいだ。このまま消えてしまうのではないかと焦って手を伸ばしたが、その手は彼女の身体をむなしくすり抜けてしまった。
「私はここに“存在していない”の。だから時間があまりないわ。今日は、あなたが必ずやるべきことを伝えに来たの」
「それは、何ですか?」
「中央神殿の地下に、“水晶宮”があるの。それは、あなたたちが“初代聖女”と呼ぶあの子と、私が交わした盟約によって生まれたものよ」
エスターも、デニスから受け取っていた古代書を通して、帝国を守る結界と、それを維持するための“水晶宮(水晶球)”の存在は知っていた。
「その水晶宮を壊しなさい」
「帝国を守る契約なのに、それを壊せと言うんですか?」
あまりにも理解しがたい内容に、エスターは自分の耳を疑った。
「ええ。必ず壊さなければならないの。あなたにしかできないことよ」
「でも、私にどうやって……」
「水晶宮は、聖女が作った“聖剣”でしか破壊できない仕組みになっているの。もちろん、それにふさわしい力でなければならないけれど、今のあなたなら十分よ」
「もし、やらなかったら?」
助けを求めていたときは見捨てておいて、今さら現れてこんなことを言われても――そんな反発心が込み上げていた。
「私はあなたに何かを強制することはできない。すべてはあなたの選択よ。ただし、水晶宮を壊さなければ、帝国は昔のように闇に飲み込まれてしまうわ」
そう言うと、エスピトスは両腕を広げ、そのままエスターを優しく抱きしめた。
記憶にもない母親に抱かれているかのような温もりに、エスターの目には自然と涙が浮かんだ。
「大切な人たちがたくさんできたでしょう。その人たちを守らなければいけないのよ」
「ひどい……本当にひどすぎます。どうして私ばかりなんですか? 私はただ幸せに暮らしたいだけなのに、それも許されないんですか?」
感情があふれ出したエスターは、大声で叫んだ。
「恨むなら、後でいくらでも恨んでいいわ。でも、水晶宮を壊せば、そのとききっと……」
その先の言葉が聞こえないまま、ふっと身体が軽くなる感覚とともに、エスターは自室のベッドでぱっと目を開けた。
――目が覚めた。
視界に映るすべてが、見慣れた自分の部屋へと戻っていた。窓の外を見るとまだ完全に日が沈んでおらず、どうやらそれほど時間は経っていないようだった。
「消えた……?」
混乱しながらも、目のあたりがかゆくて手の甲でこすると、そこには涙がにじんでいた。
鼻をすすりながら横を見ると、シュルが宝石のように透き通った黄色い瞳で、こちらをじっと見つめていた。その瞬間、「聖女が作った聖剣を使え」というエスピトスの言葉が頭をよぎる。
「シュルのことを言ってたの……?」
ぞくりとした感覚が残る腕を抱きしめながら、エスターはシュルを見つめた。
「……あなた、いったい何者なの?」
もちろん答えが返ってくるはずもなく、シュルはいつものように舌をぺろりと出し、大きな目をぱちぱちと愛らしく瞬かせるだけだった。
翌朝。
早起きしたエスターは、まっすぐドゥエンの部屋を訪ねた。夜明け前にドゥエンが戻ってきた物音を聞いていたからだ。
「お父様はいらっしゃいますか?」
「執務室におられます。すぐにお呼びいたします」
ベンが先に執務室へ入り、エスターの来訪を告げた。
「何だって? エスターが来たのか?」
山積みの書類に追われていたドゥエンは、椅子から飛び上がるように立ち上がり、そのまま駆け出してエスターを迎えた。ほんの数日会っていなかっただけなのに、その間ずっと険しい表情をしていた彼の顔が、ようやく緩んだ。
「こんなに朝早くから来るなんて。お父さんに会いたかったのかい?」
「はい。会いたかったのもありますし、お話ししたいこともあって」
「そうか。私もお前に話したいことがたくさんあるんだ」
すぐに機嫌を良くしたドゥエンは、口元をほころばせた。
「さあ、こっちに座りなさい」
ソファに向かい合って座ると、ドゥエンは待ちきれない様子で、まず自分のほうから話し始めた。
「ブラウンズ家は“四大公家”から除名されることが正式に決まった。今日中に帝国全体へ発表され、近いうちにあの父娘の公開裁判が行われるはずだ」
「本当ですか? よかった……!」
これまで想像もしていなかった展開に、エスターは思わず笑みを浮かべ、弾んだ声で答えた。間違いなく喜ぶべき知らせだった。
だが、笑っているはずのエスターの顔には、どこか暗い影が差していた。いつもと違う様子に気づいたドゥエンの目が鋭く光る。
「私がいない間に何かあったのか? 話があると言っていたことと関係しているのか?」
「お父様、実は……」
一晩中悩んだ末、エスターは自分に起きたことをすべて正直に話す決心をしていた。
「昨日、エスピトス様に会いました」
簡単には信じがたい内容だったが、ドゥエンは疑うことなく、真剣な表情でエスターの話に耳を傾けた。話が進むにつれて彼の顔色は次第に曇り、最後には深いため息をついた。
「神殿の地下にある水晶宮、か……」
四大公家の当主であるドゥエンでさえ、初めて耳にする話だった。皇室が神殿に強く出られない理由は聖女以外にもあるとは推測していたが、まさか“盟約”という実体が本当に存在していたとは。
「話を聞く限り、最近境界地帯でモンスターが増えているのも、その水晶宮と関係している可能性が高いな。伝染病の対応で手一杯だったが、急激に増えたモンスターの数も確かに異常だった」
ドゥエンは顎に手を当てて考え込んだ。
「だが、すべて水晶宮が正常に機能していないせいだとするなら、本来は修復すべきではないのか。壊すというのは、どうにも納得がいかないな」
「私もおかしいと思いました。でも、確かにそう言われたんです」
これまで一度も姿を見せなかったエスピトスが、わざわざ現れて伝えた言葉だ。冗談であるはずがなかった。
昨日の出来事のあと、どうせ自分しか知らないことだからと、知らないふりをしようかとも考えた。だが、「大切な人たちを守りなさい」と言ったエスピトスの言葉が、どうしても心に引っかかっていた。
『大切な人』
その言葉どおり、今のエスターには命を懸けてでも守りたい人たちがいた。帝国がどうなるかという大義のためではない。この世界で初めて自分を信じてくれて、愛してくれた家族――その人たちのために、水晶宮を壊すと決めたのだ。
「私、神殿に行ってきます。許していただけますか?」
エスターは強い意志を宿した目で、まっすぐにドゥエンを見つめた。
「エスター……」
戸惑いと切なさが滲むドゥエンの声。
「無理にやらなくていい。女神の言うとおり、帝国に再び暗黒の時代が訪れるとしても――それもまた、この国の運命だ。誰もそれをあなたのせいだとは思わないだろう」
ドゥエンは、エスターの言葉がすべて真実だと信じていた。帝国に闇が訪れるということは、すなわち滅亡に繋がる可能性があるということ。それを理解しているからこそ、彼にとって軽く口にできる話ではなかった。
ドゥエンは生涯を帝国の守護に捧げ、この国を心から愛してきた。だが――大公である前に、彼はエスターの父だった。
何百万という国民よりも、エスター一人のほうが大切だった。たとえすべてを犠牲にすることになったとしても、娘を犠牲にするようなことだけは、決して望まなかった。
「あなたがすべてを背負う理由なんて、どこにもないんだ」
エスターを見つめるドゥエンの瞳には、深い愛情が溢れていた。それを感じ取ったエスターは、そっと微笑んだ。
「正直、少し怖いんです。何が起こるか分からないから。水晶宮を壊したあと、後悔してしまうんじゃないかって、そんな想像もしてしまって……」
ドゥエンの心配は、そのままエスターの不安でもあった。だからこそ、なおさら愛おしかった。
「なら、知らないふりをしていればいい。わざわざ危険を冒す必要はない」
しかし、すでに決意を固めていたエスターは、ゆっくりと首を横に振った。
「私、お父さんに出会って、ここで暮らして、本当に幸せでした。いつも孤独で、死にたいとばかり思っていたのに……もっと長く生きたいって思えるようになったんです」
あまりにも幸せだったからこそ、その幸せが壊れてしまうのが怖かった。何度も繰り返してきた過去の人生は、ひどく苦しかった。それでも、この人生のためなら、もう一度すべてを経験してもいいと――迷いなく思えた。
自分にこれほどの幸せをくれた大切な人たちを、守りたかった。
「だから行ってくるんです。許してください、お父さん」
胸が焼けつくような思いで見つめるドゥエンの目に映ったエスターは、初めて連れてきた日の姿と重なって見えた。恐怖に押し潰されそうになり、震えながらも自分に「殺してほしい」と言った、あの時の少女。
同じ瞳をしている――けれど、確かに違っていた。今度は“生きるため”の決断だった。
その目を見たドゥエンは、もう止めることができなかった。
「世界は、どうしてこんなにもお前に重荷を背負わせるんだろうな……。私が代わってやれたなら、どれほどよかったか」
胸が締めつけられる思いで、ドゥエンはエスターを強く抱きしめた。どこかへ行ってしまいそうで、強く抱きしめたせいで息が詰まりそうになるほどだったが、エスターは抵抗せず、静かにその腕に身を委ねていた。
「何も起こらないかもしれませんよ。女神様がわざわざ現れてお願いしてきたんですし、まさか殺されるなんてことは……ないですよね?」
「冗談でもそんなこと言うな」
ドゥエンは本気で怒った声で叱りながら、エスターの額を軽く小突いた。
ドゥエンとエスターは、まだ眠っている双子には何も告げず、二人だけでそのまま神殿へ向かった。馬車の中で、ドゥエンがふと口を開く。
「そういえば、デルバートが言っていた誕生日のドレス、まだ完成していないそうだが……大丈夫なのか?」
「ほとんど仕上がってるんですけど、最後に宝石を一つ、スカートに縫い付けるみたいで。それに少し時間がかかるみたいです」
「誕生日までには、ちゃんと間に合うといいが……」
「そうですね」
二人は神殿では何も起こらないはずだと無理に信じ込み、あえてそれ以上は核心に触れずに別の話題を続けた。だが、それで緊張が消えたわけではなかった。
エスターは気持ちを落ち着けるため、隣に置いたクッションの上で眠っているシュルをそっと撫でた。
「もう着いたみたいですね」
「少し雰囲気が変わった気がするな」
ほんの一週間しか経っていないのに、前に来た時とは様子が違っていた。路地に倒れていた人々の数は明らかに減り、神官たちがあちこちを巡回しているのが見えた。
――回復してきている。とはいえ、先はまだ長いだろう。
外の様子を見ているうちに、やがて神殿の正門が目の前に現れた。二人は堂々と正門を通り抜け、彼らに気づいた神官がすぐにサロンのもとへ案内した。
「聖女様!」
知らせを聞いたサロンは、仕事をすべて放り出して飛び出してきた。エスターが戻ってきてくれたのではないかと、期待を隠せない様子だった。
「その呼び方はやめてください。私はエスターです」
だがエスターはすぐに線を引き、呼び方を正した。
「あ、すみません……つい……。ですが、大公様までご一緒とは、何かあったのですか?」
「昨日、エスピトス様から啓示を受けました。それを実行するために来たんです」
エスターは女神とのやり取りを簡潔にまとめてサロンに伝えた。それを聞いたサロンは、大きな衝撃を受け、困惑した様子で行きつ戻りつした。
「本当に女神様がそのような啓示を下されたのですか? 信じられません……。水晶球は帝国を守る結界なのですよ。それを壊せだなんて、私一人で決められる問題ではありません」
「私も覚悟を決めて来ました。あなたたちの判断を待つつもりはありません。機会は一度きりです。今ここで止められるなら、それで終わりです」
エスターが一人でもはっきりと言い切ったため、ドゥエンは口を挟まず、ただ隣で見守っていた。
「それは……はあ……」
サロンはどうしていいか分からず、頭を抱えた。何百年もの帝国の歴史と共にあった水晶球を壊すという発想は、どう考えても受け入れがたいものだった。だが、あれほど神殿を拒んでいたエスターがドゥエンまで連れてきて、ここまで言う以上――それがただの嘘だとも思えなかった。その間ずっとエスターを見てきた性格からしても、サロンはそう判断した。
エスターを信じると決めたサロンは、ぎゅっと目を閉じてから口を開いた。
「……分かりました。私が責任を持ちます。ついて来てください」
サロンは二人を聖女宮へ案内した。水晶球がある部屋は、聖女宮の地下へとつながっていた。ラビエンヌが投獄されて以来ずっと空いているせいか、聖女宮の内外には人の気配がなかった。
「こちらです」
中へ入ると、中央階段ではなく別の通路へと進み、地下へと続く階段が現れた。階段を半分ほど下りたところで、鍵が五重にかけられた鉄の扉が見えた。
その瞬間、エスターとサロンは同時に息を呑み、視線を交わした。
「この気配は何ですか?」
「私にも分かりません。以前はこんな気配はなかったのですが……」
サロンでさえ戸惑うほど、扉の向こうから異様な気配が満ちていた。
「どうやって入るんですか?」
「これが鍵です」
代々、聖女に引き継がれてきた鍵は、現在サロンが管理していた。エスターはしばらくその鍵を見つめた後、サロンに返し、小声でささやいた。
「お父様を連れて外へ出てください。聖女宮に人がいるなら、全員外に出してください」
「え? ですが危険なら、私たちも一緒に――」
「私一人で大丈夫です。お父様を巻き込みたくありません」
サロンはエスターの固い覚悟を十分に理解し、申し訳なさそうに頷いた。
「……この程度のことしかできず申し訳ありません。どうかご無事でお戻りください。祈っております」
エスターはわざと少し明るい声で、後ろにいるドゥエンに声をかけた。
「お父様、ここから先は私一人で入ります。お二人は一緒にお茶でもお召し上がりになりながら待っていてください」
「何だと? 一人だなんて絶対にだめだ。私も一緒に入る」
「私もそうしたいですが、ここは聖女しか入れない場所なんです。他の人が一緒にいると扉が開かないそうです。そうですよね、サロン?」
「ええ。他者が侵入できないよう、そのように作られています」
サロンはドゥエンの鋭い視線を避けるように、ぎこちなく微笑んだ。しばらくの沈黙の末、ドゥエンはついに折れ、エスターに向き直った。
「気をつけるんだ。危ないと思ったらすぐに戻ってこい。分かったな?」
「もちろんです」
「前で待っているからな」
「……はい、お父様」
エスターは何度も振り返りながら、遠ざかっていくドゥエンの姿が見えなくなるまで懸命に手を振った。
「すぐまた会えるよ。何事もなく出てくるから」
一人になったエスターは、寂しさを押し込めるように、固く閉ざされた錠を一つずつ外していった。すべて外して扉を開けると、軋む音とともに、嫌な気配がさらに濃く流れ出してきた。
最も神聖とされる神殿――その聖女宮の地下に、こんなおぞましい気配があるなんて、背筋が凍る思いだった。エスターは顔をしかめながら、狭く湿った通路へと足を踏み入れた。
足を進めていくと、松明もない真っ暗な通路の先に、小さな扉が現れた。
「全部ここから出ているんだ……」
今すぐ引き返したい気持ちを必死に押さえ込みながら、閉ざされた扉の取っ手を強くひねった。
「くっ……!」
扉を開けた瞬間、むっとするほど濃い空気が吹き出し、思わず腕で顔を覆った。
「……あれが本当に水晶球なの?」
確かに光を放ってはいるものの、その中に混じる黒い気配はただ事ではなかった。濁りきった水晶球は、それ自体が危険な存在に見えた。
「危ない感じがする……」
気を抜けば、その黒い気配に首を絞められ、飲み込まれてしまいそうな感覚だった。エスターは緊張で乾いた唇を、そっと舌で湿らせた。
「水晶球がすでに汚染されているから、壊せってこと……?」
慎重に考えながら、連れてきたシュルを床にそっと降ろした。するとシュルは、周囲の禍々しい気配を警戒するように、ぴんと身体を張った。
「シュル……」
エスターはシュルに向かって手を差し出し、はっきりと声をかけた。
次の瞬間、眩い光に包まれたシュルは長い剣へと姿を変えた。以前部屋で試した時よりも、さらに大きくなっている。ゆっくりと剣を動かすと、低く唸るような振動が伝わってきた。
同時に、皮膚がひりつくような危険な気配が一層濃くなる。エスターは息を呑み、周囲を見回した。黒い気配は、まるで剣を持つ自分を敵と認識したかのように、一斉にこちらへ集まり始めていた。その気配は結界に遮られて直接触れてくることはなかったが、それでも十分に危険だった。
「時間をかけてはいられない……」
黒い塊に包まれるような形になったエスターは、すぐさま水晶球を破壊しようと腕を振り上げた。一瞬、呼吸を整えようと目を閉じ――再び開いたとき、エスターの瞳はいつの間にか黄金色へと変わっていた。
砕けた水晶球の亀裂を狙い、エスターは一気に剣を振り下ろした。
だが水晶球は思ったほど簡単には砕けず、強烈な反動が手に伝わってきた。
「っ……!」
剣を手放さないよう、全身の力を込めて踏ん張るしかなかった。剣から溢れ出す力と、水晶球にこもる力が激しくぶつかり合い、衝撃が空間を震わせた。さらに、広がった亀裂からは黒い気配が絶え間なく溢れ出し、エスターの周囲を侵食し始めていた。
「もう少し……あと少し……!」
弾き飛ばされまいと耐えながら、エスターは剣をさらに強く水晶球へ押し込んだ。ついに剣先が水晶球の中心に届き、核のようなものを貫いた感触が走る。
「やった……?」
確認しようと目を見開いたその瞬間――圧縮されていた膨大な力が、水晶球の内部から一気に爆発した。
水晶球に密着していたエスターは、そのまま後ろへと激しく吹き飛ばされた。
「うっ……!」
全身に走る激痛に歯を食いしばった。防護膜のおかげで致命傷にはならなかったが、その衝撃は避けようのないほど強烈だった。
どうにか震える体を抑えながら顔を上げ、エスターは水晶球の様子を確認する。かつての丸い形はすでに失われ、砕け散った破片が床一面に散乱していた。
「よかった……」
水晶球の破壊には成功していた。だが、中に封じられていた黒い気配はすべて外へ流れ出し、その一部は壊れた扉の外へと逃げていった。外に出してはいけないはずなのに――そう思いながらも、今は体を動かす余裕すら残っていなかった。
その時だった。外へ漏れ出た黒い気配の影響か、あるいは水晶球の爆発による余波か――聖女宮全体が大きく揺れた。
――ドォン!
轟音が四方から響き渡り、建物全体が軋み始めた。
瞬く間に天井が崩れ、壁が砕け散り、大量の瓦礫が降り注ぐ。もし聖力で防護膜を張っていなければ、あの瓦礫に一瞬で押し潰されていたと思うとぞっとした。
「お父さんを外に出しておいてよかった……」
エスターは崩れゆく聖女宮の地下で、横たわったままぼんやりとその光景を見つめていた。神殿の象徴ともいえる聖女宮が崩壊していく様子を見ていると、なぜかおかしな笑いがこみ上げてくる。
「自分の手で壊したいとは思ってたけど、こんな形で叶うなんてね……」
意図とは違っても、結果的に神殿を壊すことになったのか――そう考えながら、エスターはゆっくりと瞬きをした。
防護膜の上に大小の石が次々と降りかかる。今はなんとか防いでいるものの、水晶球を破壊するのに力を使い果たしており、もう長くは持ちそうになかった。
「防護膜が消えたら、本当にここで死ぬのかな……?」
自嘲するような笑いが漏れた。かつては死ぬことばかり望んでいたのに、今ではその気持ちすら思い出せない。こんなにも強く、生きたいと思うようになるなんて。
「……私、ずいぶん変わったな」
今は、死ぬのが怖かった。やっと幸せに生きていけると思えたのに、こんな形で終わるなんて、あまりにも悲しい。
「お父さんに、もう一度だけ会いたい……」
エスターはかすかな声でつぶやきながら、扉の方をじっと見つめた。帰らなきゃいけないのに――一緒に来てくれた父、ちゃんと挨拶もできなかった双子の兄、そしてノア。みんなの姿が、次々と脳裏に浮かんでは消えていった。
みんなのために無理やり体を起こそうとしたが、やはり力が入らなかった。さらに、この混乱の中で抗うことのできない眠気が押し寄せ、まぶたがゆっくりと閉じていく。
完全に意識が途切れる直前――崩れゆく瓦礫の向こうから、誰かがこちらへ必死に駆けてくるような気がした。
「……ノア?」
ここにいるはずのない人なのに、なぜか父ではなくノアの姿が浮かんだ。そんなはず、ないのに。
その考えはそこで途切れ、エスターは深い闇へと沈んでいった。その間にも聖女宮は崩壊を続け、ついにはエスターのいた地下ごと完全に押し潰してしまった。
ほぼ同じ頃――。
ドゥエンとサロンは聖女宮の前に立ち、言葉を交わしていた。サロンは茶でも飲みに行こうと提案したが、エスターを心配するドゥエンがそれを断ったためだった。ドゥエンはエスターが出てくるまで一歩も動かず、この場を守るつもりでいた。
「今朝、ブラウンズ家が四大公家から除名されたという報告を受けました」
「そうか。じきにあの男も娘とともに公開裁判にかけられるだろう。元聖女という立場くらいは考慮されるのか?」
「もちろんです」
「今回の件に関わった神殿側の人間も、責任を免れることはできないな」
「はい。我々も相応の責任を負う覚悟はできています」
サロンもまた、今の神殿には改革が必要だと強く感じていた。これまで見て見ぬふりをしてきた現実を痛感していたのだ。これまでは何とか腐った部分を立て直そうとしてきたが――腐ったものは修復するのではなく、取り除くべきだ。
そう強く決意したサロンの表情を見て、ドゥエンもそれ以上は何も言わなかった。ただ腕を組んだまま、じっと聖女宮を見つめる。
「どれくらいかかりそうだ?」
「水晶球を壊すなんて、私にも想像がつかなくて……」
言葉を濁すサロンに、ドゥエンはふいに顔を向けた。
「俺に嘘をついてるわけじゃないよな?」
エスターを一人で残してきたことが気にかかっていたサロンは、ついに事実を打ち明けた。
「水晶球のある部屋には誰でも入れますが、先ほどお嬢様が“必ず閣下を外へ連れて行ってほしい”と強くおっしゃって……嘘をつきました」
「俺に? まさか、危険なことでも……」
違和感を覚えたドゥエンがエスターのもとへ向かおうとした、その瞬間――。
ドォン――!
凄まじい轟音が聖女宮の地下から響き渡った。同時に、周囲の地面が生き物のように大きく揺れる。
「この音は一体……!?」
あまりの衝撃にサロンが言葉を失う中、ドゥエンは我を忘れたように聖女宮へと駆け出した。
「ダメだ!!!」
だがすでに崩壊は止めようがないほど進行しており、入口さえ跡形もなく崩れ去っていた。ドゥエンは聖女宮全体が崩れ落ちる光景を、呆然とした表情で見つめるしかなかった。
「エスター……!」
あの地下にエスターがいると考えた瞬間、不安と焦りで、全身の血の気が引いていった。
ドゥエンが崩れ続ける聖女宮の中へ無理に入ろうとすると、護衛たちが一斉に彼を取り押さえて必死に止めた。
「殿下! 今はおやめください!」
「危険すぎます! まだ建物は崩れています!」
「放せ! 娘がまだ中にいるんだ!!」
今にも泣き出しそうなドゥエンの表情を見て、護衛たちは申し訳なさそうに顔を伏せた。
「……我々が中を確認してまいります。殿下はここでお待ちください」
「いや、私が行く!」
しかしドゥエンは護衛たちを振り払い、再び前へ進もうとした。青ざめた表情のベンもまた、ドゥエンの後を追った。
だが、崩れた瓦礫の山の中にまだ人が生きているとは、とても信じられない光景だった。
「頼む……エスター……!」
狂いそうなほどのドゥエンは、崩れた女神像の破片を足で蹴りながら、手当たり次第に瓦礫を掴んでは脇へと放り投げた。
「石をどけろ! この下に、まだ生きているはずだ。必ず見つけ出す!」
ドゥエンの部下たちは彼が怪我をしないように二次崩落を警戒しつつ、必死に瓦礫の撤去を始めた。遅れて駆けつけたサロンや、騒ぎを聞きつけて集まった神官や聖騎士たちも同様に作業へ加わった。
「聖女様が中に取り残されています!」
その一言で全員が力を振り絞り、必死に瓦礫をどかしていく。その中にはカリドの姿もあった。カリドはエスターが中に埋まったという話を聞いて衝撃を受け、誰よりも必死に瓦礫を取り除いていた。
重苦しい沈黙が場を支配する中、誰もがかすかな希望にすがるように作業を続けていた、その時だった。
エスターがいた部屋に最も近づいていたカリドが、重い天井の残骸をどかしている最中、下から漏れ出す光を見つけた。
「ここです!!」
その叫びに、周囲の人々が一斉に駆け寄る。光を目印にさらに掘り進めていくと、次第にその正体が明らかになった。
「まさか……」
そこには、球体のように広がる美しい光の結界があった。
その中に、エスターがいた。しかもあの爆発の中にいながら、傷一つ負っていない様子で、まるで何事もないように静かに横たわっている。
目の前の光景が信じられず、神官たちや長老たちはただ感極まってその場にひざまずいた。
「女神様が降臨なさったのです……!」
真偽は分からなかったが、ドゥエンはただエスターが無事に生きていると分かっただけで胸がいっぱいになり、手で顔を覆った。
「……本当に、よかった……」
安堵とともに涙がこみ上げてくる。泣くまいと強く目を押さえたドゥエンは、すぐに光の球体へと歩み寄った。
「待て……」
だが、その中にはエスター一人だけではなかった。光の結界の中には、エスターを守るように強く抱き寄せたまま眠っている男が、もう一人いたのだ。
ドゥエンは横から回り込み、その人物の顔を確認すると、思わず息を呑んだ。
「皇太子が……なぜここに?」
到底理解しがたい状況だったが、とにかくまずは二人を結界の中から救い出さなければならなかった。しかし、光の膜の内側には手を入れることすらできなかった。剣で切り裂こうとしても、まったく歯が立たない。
「これはどうすればいいんだ……?」
「我々が触れていい力ではありません。聖女様は今、女神の加護のもとにおられるのでしょう」
同じように結界を調べていたサロンは、他に手立ても見つけられず、困惑した様子で答えた。
「つまり、エスターをこのまま放っておくしかないということか?」
「今は……そうなります。こちらでも引き続き方法を探します」
「もしエスターに何かあったら、神殿ごと許さないぞ」
今回の件が神殿の直接の責任ではないことは、ドゥエン自身も分かっていた。だが、エスターをここへ呼び寄せたのが神であるなら、その怒りを向ける先は神殿しかなかった。
苦しげな表情のドゥエンは、もどかしさに耐えきれず結界に手を当てた。そして何度も、愛しいエスターの名を呼び続けた。
「エスター、家に帰ろう。誕生日の前に帰るって、約束しただろう?」
その声が、眠り続けるエスターに届くことを願いながら――。
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女神エスピトスからの啓示とエスターの決意
エスターは夢(あるいは精神世界)の中で女神エスピトスと出会い、帝国を破滅から守るために「中央神殿の地下にある水晶宮を壊すように」と告げられます。エスターは大切な家族や人々を守るため、危険を覚悟で水晶宮を破壊することを決意します。
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水晶宮の破壊と聖女宮の崩壊
エスターは父ドフィンを巻き込まないよう嘘をついて地上に遠ざけ、一人で地下へ向かいました。シュルが姿を変えた聖剣を用いて汚染された水晶球を破壊することに成功しますが、その直後に発生した大爆発と崩落の衝撃により、聖女宮は地下ごと完全に崩壊してしまいます。
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奇跡的な生存と謎の皇太子の出現
崩落後、必死の救助活動によって瓦礫の下から発見されたエスターは、美しい光の結界(防護膜)に守られて無傷の状態で眠っていました。しかしその結界の中には、なぜかエスターを抱きしめるようにして一緒に眠る皇太子ノアの姿もあり、一同に驚きをもたらしました。