利用され長女はもう我慢しません

利用され長女はもう我慢しません【23話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「利用され長女はもう我慢しません」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【利用され長女はもう我慢しません】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「利用され長女はもう我慢しません」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

23話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • オークション

「武器」という言葉に、ラディスは瞳を輝かせて壇上を見つめた。

戦場で名を馳せた英雄の兜や、傭兵王の甲冑といった収集品が出品され終えると、ついに本命の武器が運ばれてきた。

「おお……!」

競売人が白い手袋をはめた手で一本の剣を高く掲げると、会場にどよめきが広がった。

「さて本日、ここにお集まりの皆様の多くは、この二つの顔を持つ美しき剣の伝説をご存じでしょう! 神が世界を守るために鍛え上げたとされる『善の顔』! そして、一つの時代を終わらせるほどの破壊を秘めた『魔の顔』! 伝説の炎の剣――『ピュール』でございます!」

競売人の手の上で、銀色に輝く美剣が姿を現した。

夜空に輝く星のごとく伸びた漆黒の刀身には、燃え盛る炎の紋様が刻まれている。炎をかたどった柄(つか)は芸術品のような美しさを放ち、その中央には真紅の魔石がはめ込まれ、鮮烈な光を放っていた。

その剣を見たイヴの口元に、満足げな笑みが浮かぶ。

今日の予定をすべて後回しにし、大急ぎでラディスをこのナイトマーケットへ連れてきた理由は、まさにこの剣を見せるためだったのだ。

競売人は声をひそめ、神妙な面持ちで説明を続けた。

「建国の功臣にして、史上最も偉大な騎士の一人――『炎の剣』アレクシス・ティルロードが愛用していた名剣『フィーレ』。その行方は長らく謎に包まれておりました。皇室はその存在すら否定し、世には無数の偽物が出回っております。しかし『フィーレ』は確かに実在したのです! そして今、時を超えて皆様の前に姿を現しました!」

「炎の剣『ピュール』! 開始価格は一億ルペンです!」

競売人の宣言が終わるや否や、イヴは指輪をはめた手を迷いなく高く掲げた。

「十億ルペン」

「……!?」

会場中が一瞬にして静まり返った。桁外れの提示額に誰もが息をのむ。

イヴは勝ち誇った笑みを浮かべ、ラディスを見つめた。彼女の黒い瞳が歓喜と感動で輝くことを疑わなかった。

(ラディス、すべては君のためだ……!)

しかし、ラディスは『ピュール』など見ていなかった。彼女は舞台の奥をじっと見つめ、何かを深く考え込んでいる。

視線に気づいたラディスはイヴの方へ顔を向け、不思議そうに首をかしげた。

「あの剣をお買いになるのですか?」

「……君にプレゼントするつもりだったんだが?」

「え? 私は結構です。あんな高価な剣は必要ありません。剣に使われるような真似はしたくありませんから」

「……!」

ラディスは壇上の端に無造作に置かれていた、まるで薪の束のように地味な鉄くずを指差した。

「私はあれが気に入りました。あれはいくらくらいするのですか? 私のお小遣いで買えますか?」

「……!?」

イヴの顔色がみるみる青ざめていく。

二人のやり取りを知る由もない競売人は、興奮で声を張り上げた。

「十億ルペン! 十億ルペン! 他に対抗される方はいらっしゃいませんか!?」

その時、客席の中から一人の男が嘲笑いながら立ち上がった。

「まだまだ青いお嬢ちゃんだな。ずいぶん度胸があるじゃないか!」

ラディスが視線を向けると、立ち上がったのは先ほどイヴが「一番嫌いな奴ら」と言っていた連中の一人だった。

イヴは表情を極限まで険しくし、低く低く唸った。

「ブランツ・ロドリック……!」

その名を聞いた瞬間、ラディスはぴくりと肩を震わせた。

ブランツ・ロドリック。

彼は南部屈指の名門・ロドリック家の当主であり、同時に討伐隊長だったロベルトの父親でもある。ラディスはロベルトから、ロドリック家とルセル侯爵家の確執を聞かされていた。

両家は古くから反目し合っており、とりわけブランツは、若くして侯爵位を継いだイヴ・ルセルを執拗に敵視しているという。

「名剣の噂を聞いて見物に来てみれば、その機会すら奪うつもりか。建国以来五百年もの間、一人として建国の功臣を排出できなかった家門は、やることが違うな!」

ブランツが辺りを見回しながら大声で言い放つと、周囲の客たちは面白がるように下品な笑い声を上げた。その笑いに背中を押されるように、ブランツは勝ち誇った目でイヴを見下ろす。

「お嬢ちゃん、すべてが思い通りになると思うなよ?」

そう言って帽子を脱ぐと、ブランツは競売人に向かって叫んだ。

「十一億ルペン!」

「おおおおっ!!」

会場の熱気は最高潮に達した。誰もがルセルとロドリックの代理戦争に固唾を飲んでいる。直接「ルセル」の名が出たわけではないが、ブランツの発言から、黒マントの男がルセル侯爵本人かその懐刀であることは明白だった。

こうして名剣『フュレ』を巡る競売は、両家のプライドを賭けた意地の張り合いへと発展していった。

空気を読んだ競売人が叫ぶ。

「十一億ルペン! 他にいらっしゃいませんか!?」

会場中の視線がイヴの手に集中する中、イヴだけはラディスを見つめていた。

(本当に……本当にあの剣に興味がないのか?)

騎士なら喉から手が出るほど欲しがるはずの名剣。しかも彼女の先祖であるアレクシス・ティルロードの愛刀だ。

『ピュール』の由来を知れば、彼女は間違いなく目を輝かせるはずだった。

だが、ブランツを冷ややかに見つめていたラディスは、やがて興味を失ったように視線を外し、壇上に置かれた緑色の小さな鉱石の塊をじっと見つめ始めた。

その瞳がきらきらと無垢な輝きを放っているのを見て、彼女が本気で惹かれているのはあの緑色の物体なのだと、イヴは理解せざるを得なかった。

十秒ほど葛藤した末、イヴは静かに掲げていた手を下ろした。

「おおっ……!」

競売人が最後の確認を叫ぶ。

「十一億ルペン! ほかにございませんか!……落札! 落札です!」

イヴがあっさりと引き下がるとは思っていなかったのか、ブランツは帽子を握りしめたまま真っ赤な顔で呆然と立ち尽くしていた。

(ふぅ……)

イヴは心の中で安堵の息をついた。競売で競り負けるのは屈辱的だが、正体を晒さずに済んだ。相手が何重にも勘違いして大金を叩いてくれたのだから、それで十分だ。

ラディスが欲しがらないのなら、マルセルの言う通り、自分にとってあの魔剣など無用の長物でしかない。それに、あんな派手な剣は飾りとしてすら趣味に合わなかった。

剣は予想を遥かに超える高値で競り落とされ、満足気な競売人はそれを厳重な箱に収めさせると裏手へ運ばせた。

その後も競売は続いたが、大勝負が終わった後の会場の熱気はすっかり冷めていた。

やがて競売人が、例の緑色の小さな塊が入った箱を指し示した。

「南部の荒野で発見された、かつて剣であったとされる品です! 現在は正体不明の緑色の結晶に覆われておりますが、中に眠る刃にどのような物語が秘められているのか……それは時の神のみぞ知る! 開始価格は十万ルペン!」

いびつで不気味な緑の塊に、手を挙げる者は誰もいなかった。競売人が木槌を掲げ、最後の呼びかけを行う。

「他に入札される方はいらっしゃいませんか?」

ラディスが、おずおずと手を挙げた。

「十一万ルペン……でも、大丈夫ですか?」

「もちろんでございます、美しいお嬢様! 十一万ルペン! 他には……落札! 落札でございます!」

イヴには、彼女の意図がまったく理解できなかった。

競売がすべて終わり、品物を受け取るため会場の奥へ向かいながら、イヴは尋ねた。

「魔剣を買うって言っていなかったかい?」

「はい」

「あれが君の言う魔剣なのかい? あんなもの、ただの錆びついた鉄の塊じゃないか。磨き直したところでまともに使えはしないよ?」

「私は、あれで十分です」

「まったく……」

その時、背後から低く陰湿な声が響いた。

「驚いたな」

振り返ると、そこに立っていたのはブランツ・ロドリックだった。

「これもお前の策か、ルセル侯爵?」

正体が割れている以上、言い逃れは無意味だった。イヴはフードを少しだけ持ち上げ、冷ややかに見返した。

「何を言っている、ロドリック?」

「お前があの剣を狙っているという情報は、どこから手に入れた!?」

イヴは手をぽんと叩くと、呆れたように肩をすくめた。

「それを『自意識過剰』というんだよ。我が名にかけて誓うが、お前の情報など集めようとしたことすら一度もない」

「くっ……白々しい嘘を! ではなぜあんな非常識な値を付けた!」

ブランツは歯ぎしりしながら吐き捨てた。

「覚えておくがいい! 南部の人間は、お前を侯爵などと絶対に認めん! あの日、お前が何をしたせいで自分以外の家族全員を死に追いやったのか……その真実が明らかになるまではな!」

イヴは眉ひとつ動かさず、静かに言い返した。

「ロドリック、十一億ルペンもする剣を大事に抱えて帰るんだな。せっかく手に入れたんだ、建国の功臣も出せず、まともな爵位すら持たない取り巻きを集めて、存分に自慢して回ったらどうだ?」

「くっ……!!」

ブランツは怒りで全身を震わせた。競売には勝ったはずなのに、屈辱感しか残らない。言い返したい言葉は山ほどあったが、これ以上言葉を交わしても自分が惨めになるだけだと分かっていた。人前で若き侯爵と言い争えば、恥をかくのは常に頭の血が上りやすい自分の方なのだ。

彼は捨て台詞を残して立ち去るしかなかった。

「今日の屈辱は、絶対に忘れん……!」

ラディスはその背中を冷ややかな目で見送った。

ブランツが息子のロベルトにしてきた仕打ちを知っているラディスにとって、彼に良い感情など微塵もあるはずがなかった。庶子として生まれたロベルトの才能を恐れ、一族から追放した男。まさに「小物」という言葉がふさわしかった。

(だが……私を死へ追い込んだ、あの罠……)

ラディスはブランツ・ロドリックという男の顔を、深く脳裏に刻みつけた。

歩き出そうとしてイヴを見ると、彼はブランツが去った暗がりをじっと見つめ、何かを必死に耐えているようだった。ラディスは小さく息をつくと、彼の腕をそっと掴んだ。

「侯爵様」

「……ああ」

「私たち、十一万ルペンの剣を受け取りに行きましょう」

「十一万ルペン」という言葉に、イヴは思わず吹き出した。重苦しい空気が一瞬で瓦解する。その笑顔を見て、ラディスもつられて微笑んだ。

「私のお小遣いで買ってもよかったのですが、侯爵様が買ってくださったのですよね?」

「もちろんだとも。まさか本当にお財布を持ってきたのかい?」

「はい、念のためにここに……」

「おっと、それは仕舞っておきなさい、お嬢さん」

軽口を交わすうちにイヴの機嫌も戻り、ラディスは胸をなでおろした。

受け取り場所が混雑していたため、イヴが手続きをしている間、ラディスは少し離れた人気の少ない場所で待つことにした。

そこは一般客の立ち入る場所ではなく、一目で裏社会の人間と分かる者たちが行き交っていた。彼らの装備についた紋章を見て、ラディスはピンとくる。

(あの紋章は五月傭兵団、あっちはモルモル傭兵団か。品物を売りに来たのかしら)

北部には大規模な正規傭兵団も多いが、南部の傭兵団は小規模なものがほとんどだ。主な仕事は護衛や警備、あるいは村の魔物退治程度。ラディスは傭兵をあまり好ましく思っていなかった。仕事の割に法外な報酬を要求する者が多かったからだ。

その時――

「……あれ?」

引っかかるものを感じたラディスは眉をひそめ、物陰で揉めている一団へ歩み寄った。

「ゴルス! ナイトマーケットはもう終わりだ! 出品したいなら次の開催が決まってから出直しな!」

競売人らしき男が首を振っている。ゴルスと呼ばれた男が食い下がった。

「次の競売はいつになりますか!?」

「何度言えば分かるんだ! 客が興味を持ちそうな品が集まってから開催するんだよ!」

競売人は顎髭を撫でながら、失せろと言わんばかりに手を振る。

「それにゴルス、お前が持ってくる品なんてどうせまた得体の知れないガラクタだろう? 最初の一、二回は珍しがられて売れたが、最近は流札続きだ。このままじゃ誰も見向きもしなくなるぞ」

「今回は違うんです!」

薄汚れた身なりのハゲ頭の傭兵ゴルスが素早く距離を詰め、小声で囁いた。

「本当に違うんです! 見れば分かります、これは本当に、本当に特別な品なんです!」

「はぁ……ならまず見せてみろ。話はそれからだ」

「ええと……それが、ここにはありません」

競売人は苛立ったようにゴルスを睨みつけた。

「どういう意味だ?」

「ここにはありません。俺たちの拠点に隠してあるんです」

「ゴルス、お前は私をからかっているのか? 見れば分かると言っておきながら現物は見せられないだと? 私がそんな話を信じるとでも思っているのか!」

「へへっ、ここまで持ってくるには危険すぎる代物なんです。ですから、まず前金をいただければ……」

「この野郎……!」

競売人はゴルスを突き飛ばし、怒鳴り散らした。

「失せろ! 品物も持ってこないくせに前金だと!? 縁起でもない、二度と顔を見せるな!」

追い払われたゴルスは「後悔するぞ!」と叫んだ。片目に眼帯をした小柄な男ルークが彼をなだめる。

「だから言ったろ、前金なんて無理だって」

「くそっ、ルーク! やっぱりあれを持ってくるべきだったんだ!」

「ゴルス、あれは危険すぎる! 少しでも扱いを誤れば、俺たちまで命がないぞ!」

その時だった。

「見つけた」

低い声とともに、誰かがゴルスの襟首を掴んだ。ゴルスとルークが弾かれたように振り返る。

そこに立っていたのは、可愛らしいドレスに華やかな帽子をかぶったラディスだった。彼女はゴルスを冷たく睨みつける。

「この悪党」

次の瞬間、ラディスの肩に誰かの手が置かれた。

「捕まえた」

振り返らなくても分かる。イヴの声だった。

「このお転婆なお嬢さん」

イヴはラディスの手を取り、ゴルスの首元から引きはがした。そして呆然とするゴルスに向き直る。

「失礼した。うちのお嬢様は、普段はこんな騒ぎを起こすような子ではないんだがね」

「なんだと!?」

威嚇しようとしたゴルスだったが、ルークが慌ててその口を塞いだ。

「へへっ、旦那様! ご迷惑をおかけしたのはこちらですんで!」

「おい、ルーク、何すんだ!」

「黙れ! しーっ!」

ルークはゴルスの耳元で必死に囁いた。

「あの指輪の紋章を見ろ! ルセル侯爵家の印章だ……!」

ゴルスが絶句した隙に、イヴは素早くラディスの手を引いてその場を離れた。

「ラディス!」

「……」

「いくら怖い顔をした男たちだからって、いきなり悪人扱いするのはひどいじゃないか」

「ひどくありません! あの人たちは……!」

言葉を飲み込んだラディスは、悔しそうに唇を噛んだ。

彼女はあの傭兵ゴルスを鮮明に覚えていた。自分に「傭兵」という存在への決定的な悪印象を植え付けた犯罪者――『王蛇傭兵団』のゴルス。

小規模な村を欺き、部族に襲わせた上で自作自演の討伐を行って報酬を貪っていた悪党だ。手口が発覚した後は指名手配犯となるのだが……それが公になるのは数年後のこと。現時点では、彼がすでにその悪事に手を染めているかは分からない。

言葉に詰まったラディスの肩を、イヴが宥めるようにぽんぽんと叩いた。そして手に持っていた包みを差し出す。

「ほら、これだよ」

丁寧に布で包まれた、十一万ルペンで落札した錆だらけの剣。

それを受け取った瞬間、ラディスの瞳に歓喜の色が戻った。

「わあ……!」

「重くないかい? かなりずっしりしているけれど」

「大丈夫です!」

ラディスは、緑色の結晶と錆に覆われた不恰好な剣を、宝物でも扱うように優しく撫でた。その愛おしそうな様子に、イヴは呆れ顔を浮かべる。

「屋敷に置くなら『ゴミではありません』と札でも貼っておきなさい。そうでないと使用人が捨ててしまうよ」

「ゴミだなんて、ひどいです!」

大事そうに怪しい剣を抱えるラディス。その横顔を見ながら、イヴは遠ざかっていくゴルスとルークの後ろ姿へ視線を向けた。

(……どうにも気味の悪い品だな)

傭兵たちが語っていた「危険すぎる代物」という言葉が、不気味な予感となって二人の頭上に低く垂れ込めていた。

 



 

今回の物語の要点を3つにまとめました。

  1. 伝説の名剣とラディスの選択

    イヴは10億ルペンを出して伝説の「炎の剣」を落札しようとしたが、ラディスはそれを辞退し、壇上の端にあった地味で錆びついた「11万ルペンの怪しい剣(緑色の塊)」を選んだ。

  2. 宿敵ロドリック家との対立

    ルセル侯爵家を敵視するブランツ・ロドリックが張り合って炎の剣を11億ルペンで落札したが、イヴにあっさりと競りを放棄されて体面を失い、ラディスもまた罠の仇であるブランツの顔を記憶に刻んだ。

  3. 因縁の犯罪者との再会と不穏な影

    受取場でラディスは前世で悪事を働いていた犯罪者(傭兵ゴルス)を目撃して掴みかかるが、イヴに制止される。ゴルスらが密談していた「危険すぎる隠し出品物」の存在という、新たな不穏な影が残された。

利用され長女はもう我慢しません【24話】ネタバレ こんにちは、ちゃむです。 「利用され長女はもう我慢しません」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...
【利用され長女はもう我慢しません】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「利用され長女はもう我慢しません」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...