大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【158話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

158話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 公開裁判

物語の泥沼のような愛憎、崩れ去る栄華、そして群衆の熱気と冷徹な裁きの対比が際立つよう、文章の繋がりを滑らかに整理して清書いたしました。

中央神殿の奥深く、地下牢獄。

最も奥に位置する独房から、すがるような悲痛な声が響いていた。

「エスピトス様……どうか、どうか私をお救いください……。」

壁の小さな四角い窓から、淡い月明かりが差し込んでいる。

ラビエンヌはそのわずかな光に向かって必死に両手を組み、祈りを捧げていた。

「ご存じのとおり、私は生涯のすべてをあなた様に捧げてまいりました。残りの命も、すべて差し上げます。ですから……どうか私をお見捨てにならないでください。エスターより、私の方がずっと上手くやってみせます。私に、もう一度だけチャンスを……!」

今の彼女には、かつて誰もが『美しい』と称賛した面影など、どこにも残っていなかった。髪はぼさぼさに乱れ、何日もまともな食事を取っていないせいで顔色は土気色に沈み、頬は痛々しく痩せこけている。

祈りを終え、血のように赤い瞳をゆっくりと開いた彼女は、傍らに残された冷たい硬い床を、憎悪を込めて睨みつけた。

(見ていなさい……。ここから出られたら、私をこんな目に遭わせた奴らを一人残らず許さない。特にエスター、お前を真っ先に殺してやる……!)

激しい復讐心だけが、今の彼女のなけなしの生命維持装置だった。『聖女』の座に返り咲けるという執念だけは、決して捨てていなかったのだ。

「お水を替えますね。」

そこへ、牢の世話を担当する侍女が冷ややかな手つきで入ってきた。彼女はラビエンヌと目を合わせないよう配慮しながらも、足早に仕事を片付けようとする。立ち去ろうとするその背中に、ラビエンヌが慌てて声をかけた。

「待ちなさい! そこのあなた!」

「……何でしょうか。」

「お父様はどうなったの!? 外で何が起きているのか、知っていることを話しなさい!」

「……申し訳ありません。何も話してはならないと厳しく命じられております。」

どうにか穏やかに聞き出そうとしていたラビエンヌの表情が一変し、激しい怒りに歪んだ。

「私が誰だか分からないの!? とうとうあなたのような下っ端まで、私を見下すようになったというの!?」

「ち、違います! そんなつもりでは……!」

「閉じ込められているとはいえ、あなた一人始末することくらい造作もないのよ! 答えなさい、ただで済むと思わないことね!」

ヒステリックに叫び、詰め寄るラビエンヌの恐怖に、侍女は唇を噛み締めながら小さな声で零した。

「……ブラウンス公爵様は、皇宮に監禁されていると伺いました。領地と財産は、すでに皇室によって没収されたそうです。」

「何ですって……!? そんなはずないわ! まだ数日しか経っていないのよ!? お父様が監禁されたですって……冗談でしょう!?」

聖女を無断で連れ去った罪は重いとはいえ、四大公爵家の当主を投獄し、領地まで全没収するなどあり得ないことだった。予想だにしなかった絶望的な報せに、ラビエンヌはその場に崩れ落ちた。

「だから……私を助けに来られなかったのね……。」

握りしめていた鉄格子の冷たさが、じわじわと彼女の指先から体温を奪っていく。侍女はその隙を見逃さず、逃げるように牢を後にした。

「……嫌ぁあぁぁっっ!!」

静まり返った地下牢に、耐え切れなくなったラビエンヌの狂乱の悲鳴が響き渡った。

廊下を警備していた二人の騎士が、慌てて飛び込んでくる。

「どうされましたか!?」

「私をここから出して! 出してくれたら、一生あなたたちの恩を忘れないわ! お願い、助けて!」

先ほどまで取り乱していたことなど嘘のように、ラビエンヌは必死に哀れみを誘う笑みを浮かべ、瞳に涙を滲ませた。だが、騎士たちの反応は冷ややかだった。

「それはできません。私どもは指示に従っているだけです。」

「誤解なの! 私はただ捕まっただけで……もう疲れ切ってしまったの……!」

「お引き下がりください。」

どれほど懇願しても取り合ってもらえないと分かると、ラビエンヌの忍耐はあっという間に限界を迎えた。彼女は再び狂ったように怒鳴り散らし、騎士たちへ罵詈雑言を浴びせかけた。

「ここから出してよ! 外に行かなきゃいけないの! お父様に会わせなさい!!」

手のひらを返したように暴れ回る彼女に、騎士たちはただ呆然と呆れ果てるばかりだった。

「……公開裁判の日程が決まりました。嫌でも、まもなくここを出ることになります。もう少しお待ちください。」

「公……開裁判……? 私を……あの見せ物小屋のような広場に立たせるつもりなの……!?」

がくがくと震えていたラビエンヌの声が、ピタリと止まった。騎士たちは答えず、ただ冷ややかに一礼した。

「失礼します。これ以上騒がれるのでしたら、懲罰を科さざるを得ません。」

「私が誰だと思ってそんな口を聞くの!? あなたたち、名前は何というの! 返しなさい!!」

金切り声を上げるラビエンヌを置き去りにし、騎士たちは厳重に鍵をかけて牢をあとにした。

廊下に出た二人は、深くため息をつく。

「はあ……あれほど慈悲深いと評判だった聖女様だなんて、とても信じられないな。」

「ああ。ずっと尊敬していたんだが……噂は本当だったんだな。」

「しっ、軽々しく口にするな。裁判が始まれば、すべてが明白になるさ。」

かつて憧れの存在だった聖女の崩壊した姿に、二人は舌打ちをしながら足早に去っていった。

一方、つい先日まで『ブラウンス公爵』と呼ばれていたハドソンもまた、皇宮の地下深くにある牢獄に囚われていた。場所こそ違えど、怒りと焦燥に狂い乱れる様子は娘のラビエンヌと何ら変わりなかった。

「まさか、キャサリンが大公妃の妹だったとは……!」

ハドソンにとって、皇宮で突きつけられたその事実はあまりにも致命的な衝撃だった。キャサリンがそれほどの後ろ建てを持つ女だと知っていれば、あんな扱いなどするはずがなかったのだ。

「どこで間違えた……? キャサリンを完全に消し去れなかったことか? 運悪く子供を孕ませてしまったことか……!? いや、あの女と出会ったこと自体が間違いだったんだ!」

ハドソンは床を何度も殴りつけ、己をこの地獄から引き上げてくれる協力者がいないか死に物狂いで考えを巡らせた。しかし、神殿との関係すら破綻した今、四大公爵家を揺るがす大罪人に手を差し伸べる愚者など存在するはずもない。

「くそっ……!」

連絡を取る術すらなかった。鉄格子の外には、常に冷徹な皇宮騎士たちが目を光らせているのだから。

その時、交代の時間なのか、廊下から足音が近づいてきた。ハドソンはすがりつくように大声を上げた。

「おい! ちょっと来い!」

最初は無視していた騎士だったが、ハドソンが鉄格子を激しく叩き続けると、不快そうに眉をひそめて歩み寄ってきた。

「何の用だ。」

「我が家門はどうなった!? 妻と息子は……領地はどうなっている!」

「ご家族は領地で拘束され、処分を待っていると聞き及んでおります。」

「拘束だと……!?」

「はい。閣下の領地および全財産は、すでに皇室の手によって没収されました。」

騎士の淡々とした冷酷な宣告に、ハドソンはガクリと膝をついた。

「……終わった。何もかも、おしまいだ……。」

公爵家からの除名程度で済むと高をくくっていたハドソンは、代々受け継いできた領地も財産もすべてを失ったという現実の前に、完全な絶望へと突き落とされたのだった。

二週間後――。

時間は酷なほどあっけなく過ぎ去り、ついにラビエンヌとハドソンの公開裁判の日がやってきた。

ブラウンス公爵家の衝撃的な落日と裏の悪行は、いまや帝国中で最大の関心事となっていた。

裁判が執り行われる首都の中央広場は、足の踏み場もないほどの群衆で埋め尽くされていた。まるで祭りのような熱気だったが、一族の没落を見物せんとする野次馬の数は、帝国史上過去最高を記録していた。

「一体全体、何が起きているのやら。今年は伝染病が流行るわ、公爵家の公開裁判はあるわ……。」

「本当にあのブラウンス家が潰れるのかね?」

「まさか。いくらなんでも四大公爵家の一角だぞ?」

「いや、領地も全没収されたらしい。四大公爵家は『三大公爵家』に再編されるって噂だ。」

「公爵はともかく、あの可憐な聖女様はどうなってしまうんだ……?」

不穏な噂話に花を咲かせていた見物人たちが、ふと背後から漂う普通ではない気配に気づき、ハッと息を飲んで口をつぐんだ。

群衆が示し合わせたかのように左右へと割れ、一本の美しい道が出来上がっていく。

「不思議だな。どいてくれなんて一言も言っていないのに、どうして勝手に道を空けるんだ?」

デニスが不思議そうに周囲を見回すと、隣を歩くエスターがくすりと小さく笑った。

「お兄様たちとお父様が、目立ちすぎているからですよ。」

「目立つって……できるだけ質素で地味な服装を選んだのに?」

「わざわざ身分を伏せる格好をしたのにかい?」

「はい。ものすごく目立っています。」

どれほど平民の服を装おうと、彼らが纏う桁違いの美貌と威厳あふれる覇気は隠せるものではなかった。すれ違う誰もが息を呑み、ひそひそと囁き合っている。

「でもお陰で、一番前まで楽に来られましたね。」

エスターが満足そうに微笑むと、遮るもののない特等席から巨大な演壇がよく見えた。

やがて裁判官たちが厳かに登壇し、席に着く。

今回の公開裁判には特別に、皇帝その人が参観人として姿を現した。帝国民たちの地鳴りのような熱狂的歓声を浴びながら、皇帝は壇上の一番奥に用意された上座へと腰を下ろした。

「ノアも来ていますね。」

皇帝の後ろに凛と立つノアの姿を見つけ、エスターの顔がぱっと華やいだ。

「何を見て笑っているんだ?」

「ほら、あそこに……」

ドフィンに「ノアがいます」と言いかけたエスターだったが、ドフィンの目が怪しく光ったのを見て、慌てて言葉を呑み込んだ。

「……ただ、なんだか嬉しくて。」

「それもそうだな。ようやくラビエンヌが正当な裁きを受ける日なのだから。これほど胸のすく日もない。」

ジュディがすかさずフォローを入れてくれたお陰で、なんとか追及を免れることができた。

ブオオオーーン……!

その時、裁判の開始を告げる重厚なラッパの音が広場全体に響き渡った。

「あれが特別に作られた開廷のラッパか。本で読んだだけだったが、実に荘厳だな。」

初めて目にする公開裁判に、デニスが目を輝かせる。

同時に車輪の音が響き、漆黒の馬車二台が壇上の脇へと停車した。厳重な警衛のもと、扉が開かれ、罪人たちが引きずり出される。

「ほら、ラビエンヌですよ。」

顔は薄布で覆われていたが、その佇まいで一目で分かった。少し身を硬くしたエスターが唾を呑み込むと、デニスがそっと手を差し出してきた。

「エスター、はい。」

「えっ?」

反射的に手のひらを差し出すと、そこへポイッと香ばしいお菓子が放り込まれた。トウモロコシを揚げたお菓子だ。

「この前食べてみたら、見物しながらつまむのにちょうど良くてね。厨房に頼んで持ってきたんだ。」

サクッ……。

お菓子を一口かじると、エスターの目が三日月のように細められた。香ばしい風味のあとに、濃厚なキャラメルの甘さが口いっぱいに広がる。

「美味しいかい?」

「すごく美味しいです!」

髪をポニーテールに結んだエスターが嬉しそうに笑うと、その場の空気がパッと華やいだ。

「もっとお上がり。」

デニスがエスターの手の中にたっぷりとお菓子を注ぎ足していると、壇上を見つめていたドフィンが不意に手を伸ばし、その中から数個をひょいとつまみ上げた。

「……お父様? お菓子はお嫌いだったのでは……?」

「集中しなさい。二度目のラッパが鳴った。始めるぞ。」

ドフィンの予想外の行動にデニスは目を丸くしたが、当のドフィンは何食わぬ顔でサクサクとお菓子を噛み砕きながら、鋭い眼光で壇上を睨み据えていた。

壇上に引っ張り出されたラビエンヌとハドソンは、乱暴に顔の布を剥ぎ取られた。

眩しい日差しに目を細めたラビエンヌは、すぐ隣に立ち尽くす実父の姿を捉えた。

「お父様……!」

捕らえられて以来、誰とも会えない孤独に耐えてきたのだ。ようやく巡り会えた唯一の味方に、ラビエンヌは救いを求めるように声を張り上げた。

「お父様!」

しかし、ハドソンの反応はあまりにも冷酷だった。

娘の声に肩を震わせたハドソンは、ラビエンヌを底冷えするような鋭い目で一睨みすると、舌打ちをして吐き捨てるように顔を背け、さっさと階段を上っていってしまったのだ。

「……どうして……?」

何かが狂っている。激しい嫌悪と不吉な予感に、ラビエンヌの顔が蒼白に曇った。

「壇上へ。」

「……ええ。」

ラビエンヌは先に上っていくハドソンの背中を追いかけるように、重い足取りで階段を上った。その途中、ふと眼下に広がる広場を見渡した彼女は、恐怖で息を詰まらせた。

広場を埋め尽くす何千、何万という群衆の視線――そのすべてが、ドス黒い敵意と憎悪に満ち満ちて自分へ注がれていたからだ。

(逃げたい……っ!)

かつて自分に向けられていたのは、惜しみない賛美と熱狂的な崇拝だけだった。これほどまでに激しい悪意を向けられたことなど一度もない。恐怖で足がすくみ、全身の毛穴が収縮する。

だが、逃げ場などどこにもなかった。

「これより、公開裁判を開始する。」

二人が中央に立たされると、裁判官の厳格な声が響き渡った。

「本日の被告、ハドソン・ド・ブラウンス、およびラビエンヌ・ド・ブラウンス。」

裁判官は判決文を広げ、犯した罪状を一つひとつ冷徹に読み上げていく。

「ハドソン・ド・ブラウンス。汝は資質のない実娘を偽の聖女へと仕立て上げ、帝国に未曾有の混乱をもたらした。伝染病の蔓延を放置して甚大な被害を生み出し、さらには本物の聖女の誘拐を企て、大公妃の実妹を殺害せしめた。……これらの罪状を認めるか?」

「……認めません。」

ハドソンはきっぱりと、一切の罪を否認した。

「証人を立てよ。」

裁判官の合図とともに、神殿の神官数名、ルシファー、そして暗殺ギルドのアルバートが姿を現した。ハドソンはその中にルシファーの姿を見つけるなり、苦々しく顔を歪めた。

(ルシファーの奴……! 偶然潜り込ませたのではなく、ドフィンがハナから私を陥れるために送り込んだ刺客だったのか……!)

己の愚かさとドフィンの用意周到さに、ハドソンは血が出るほど強く歯を喰いしばった。

証人たちが一人ずつ前へ進み出で、裏付けとなる証言を淡々と述べていく。拡声の魔導具を通したその言葉は、広場中の人々へ容赦なく突き刺さった。

すでに皇室から「ラビエンヌは偽聖女である」と発表されていたものの、名門ブラウンス家の威光を信じて半信半疑だった者も多かった。しかし、紛れもない動かぬ証拠と証言の数々に、群衆の誰もが絶望的な真実を確信した。

静まり返っていた広場から、地鳴りのような怒りのどよめきが沸き起こる。

「ハドソン・ド・ブラウンス。いま一度問う、罪を認めるか?」

「……大公妃の妹の件は事実無根です! そして聖女に関するすべての暴挙は、娘が私の名を騙り、独断で行ったことに過ぎません! 私は何も知らなかったのです!」

追い詰められたハドソンは、生贄に捧げるようにすべての責任を実の娘であるラビエンヌへと擦り付けた。

「お前……!?」

突然の裏切りに、ラビエンヌは悲鳴のような声を上げた。

「私はそんなことしていません! 私を聖女に推薦したのはお父様ですし、誘拐なんて指示していません!」

「黙れ! まだ認めるつもりがないのか!? お前の浅はかな虚栄心のせいで、我がブラウンス家の由緒ある歴史は完全に途絶えたのだぞ!!」

ハドソンは怒号を飛ばし、鬼のような形相でラビエンヌを指さした。

「でも……それは全部お父様が指導したことで……っ!」

悔しさと恐怖で、ラビエンヌの瞳からボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちる。必死の思いでハドソンを見つめ返すと、ハドソンは冷酷な眼光で「お前が罪を被れ」と無言の圧力をかけてきた。

すでに一族は囚われ、家門は潰れた。

ここで二人が共倒れになるより、片方が生き残って罪を最小限に抑えれば、いつかブラウンス家を再興できるかもしれない――そう暗に突きつけているのだ。

「……っ、はい……。私が……やりました……。どうしても聖女になりたくて、愚かな真似をしてしまいました……。申し訳、ありません……。」

父の意図を察したラビエンヌは、絶望に涙を流しながらすべての罪をかぶる道を選んだ。哀れな被害者を演じ、民衆の同情を買おうと必死に泣きじゃくる。

「本物の聖女を誘拐しようとした罪も認めるか?」

「はい……っ。ですが、誘拐などではなく、ただ……ただ少しお話をしたくて、お連れしようとしただけなのです……!」

「話をするために、暗殺ギルドの刺客を雇ったと?」

「それは……っ! 聖女様とは以前から面識がありましたが、どうしても会っていただけなくて……! 裁判官様、私は神殿で誰よりも強い神聖力を持っていたのです! 当時は……!」

支離滅裂な言い訳を並べ立てるラビエンヌに、裁判官の冷ややかな声が容赦なく浴びせられる。

「本当の聖女が見つからなかったから、私が……私が聖女になるしかなかったのです! 突然その座を奪われるのが怖くて……っ! どうか、私の恐怖をお汲み取りください……!」

どれほど可哀想なヒロインを演じようとも、もはや手遅れだった。罪を認めた瞬間、広場を覆っていた空気は完全な殺意へと変貌した。

「やっぱり偽物だったんじゃないか! この悪女め!」

「伝染病で人がどれだけ死んだと思っているんだ! 全部お前のせいか!」

「名門ブラウンス家が、こんなおぞましい詐欺を行っていたなんて……!」

「歴代の聖女たちも全員偽物だったんじゃないのか!?」

怒りが頂点に達した群衆が、手持ちの生卵や腐った野菜を壇上に向かって投げつけ始めた。

「裁判長! 皆さんを止めてください! 危険ですっ!!」

暴徒と化した人々の迫力に、ラビエンヌは腰を抜かして悲鳴を上げた。

「お前のせいで! うちの息子は一度もまともな治療を受けられずに死んだんだぞ!! この悪魔!!」

背の高い男が憎悪を込めて投げつけた生卵が、鋭い軌道を描いて飛んでくる。

ぐしゃっ!

「きゃっ……!?」

ラビエンヌの肩に生卵が命中し、黄身と白身がドロリと美しいドレスを汚しながら流れ落ちた。

生臭い感触に顔をしかめ、ラビエンヌは辱めと恥ずかしさで震え上がった。

「いったい誰が……誰がこんな酷いことを……っ!」

唇を罠罠と震わせ、犯人を睨み返そうと群衆を見下ろしたラビエンヌだったが、すぐに絶句した。

投石のように物を投げつけようとしている者は一人や二人ではなかった。視界を埋め尽くす全員が、狂気に近い憎悪の瞳で自分を殺そうと睨みつけているのだ。

「やめて……お願いだからやめてください! 落ち着いて……っ!」

ラビエンヌは悲痛な悲鳴を上げながら、ドロドロの体に身をすくませ、後ずさりすることしかできなかった。

 



 

要点を3つにまとめました

  • 牢獄での惨めな悪あがきと絶望

    衰弱しながらも復讐に執着するラビエンヌと、取り乱すハドソンのもとに、全財産・領地の没収という家門崩壊の知らせが届き、二人は深刻な絶望に叩き落とされます。

  • 公開裁判への高まりとエスターたちの余裕

    史上最大の関心を集める首都広場での公開裁判に、身分を隠したエスターやドフィンたち、そして皇帝とノアも臨席。緊迫した空気のなか、エスターたちはデニスが持参したお菓子をつまみながら見守ります。

  • 責任の擦り付け合いと群衆からの苛烈な報い

    証人たちの決定的な証言によって罪が暴かれると、ハドソンはすべての罪を娘になすりつけます。諦めて罪を認めたラビエンヌに対し、怒りに狂った群衆から生卵が投げつけられ、かつての聖女は惨めな辱めを受けることとなりました。

 

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