乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する

乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【182話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。 ネタバ...

 




 

182話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 記憶喪失⑨

再び目を開けると、見えたのは鈍い灰色の空だった。

まるでベスタで見た冬の海の灰色の波を思わせる色合い。

寒い。

さっきまで真夏だったのに、この異空間は完全に冬のようだった。

『……それで、どうすればいいの?』

頭を上げると水に沈んでしまいそうで、そっと顎を傾けて、視線だけで周囲を見回した。

すると、いつの間にか彼女は湖の浅瀬に近づいた。

このまま体を起こして歩き出せばいいはずだ。

『足がちゃんと地面につくのかな?』

もともと深くない湖だったはずだが、ここはルウェインの言った通り「新しい空間」なので、感覚が掴めなかった。

彼女は慎重に、足を水面下に滑らせながら水深を確かめた。

幸い、それほど深くなく、すぐに足が底に届いた。

ダリアはそれを確認して、安心して体を起こした。

「きゃっ!」

だが、バランスを崩し、盛大に水へ倒れ込んでしまった。

彼女は歯を食いしばりながら、慌てて起き上がった。

『寒い、寒すぎる!』

間違いなく保温魔法の効果があるはずなのに、ここに来るまでは全然寒くなかったのに、なぜ今こんなに寒さを感じるのか?

ダリアは胸元にかかっているペンダントのロケットを開けてみた。

中に納められていた魔法の宝珠は、無惨にも砕け散っていた。

おそらく、空間魔法の影響を受けたせいだろう。

彼女は深く息を吐いた。

そして、濡れた髪を払いながらダリアは水を絞り、重くなったマントを引きずりながら水の外へと出た。

『セドリック様に会う前に、凍え死にそう……』

そう考えながら、無意識に髪をかき上げた。

すると、苛立った表情で湖の水面をかき分けるセドリックと目が合った。

『……』

ダリアを見た彼の瞳が、大きく見開かれる。

一方のダリアは、その瞬間に驚きのあまり固まってしまった。

灰色の世界の中で、セドリックはまばゆく輝いて見えた。

いつの間にか彼は少年ではなく、青年へと成長していた。

広い肩と鍛え上げられた身体が、今ようやく視界に入り込んできた。

しかし、金色の髪は相変わらず太陽の光のように輝き、深い青色の瞳は変わらない。

しっかりと閉じた唇も、昔と同じだった。

本当に美しい。

その言葉以外に、何を言えばいいのだろう。

彼の存在があるだけで、想像もしなかった多くの出来事が起こった。

そのおかげで、彼女は少しだけ立派になれた。

良い人間になれた。

ダリアをもっと偉大な人物にしてくれる人。

セドリックによって傷つくこともあった。

しかし、こうして彼と向かい合うと、どうしようもなく心が自然と彼に引き寄せられた。

一方で、妙に残念な気持ちもこみ上げてきた。

セドリックは、ダリアが彼を見て感じているこの感覚を、きっと理解することはできない。

ダリアは今、水に濡れてずぶ濡れのネズミのような姿なのだから。

『どうせなら、もう少し綺麗なときに会いたかったな。』

ダリアは気まずそうに立ち尽くした。

その姿を見たセドリックは、口を一文字に結んだ。

彼は素早く歩み寄り、迷うことなく彼女を腕の中へと引き寄せた。

自分の服が濡れることも気にせず、ただ黙って彼女を抱きしめた。

もう一方の手は、彼女の濡れた髪の上にそっと置かれ、そのまま彼の胸元へと導かれた。

瞬く間に、マントと服が乾き、身体が温まっていく。

彼は震える声でつぶやいた。

「寒い……こんなに寒いなんて……。」

「………。」

「どうやってここに来たんだ?」

ダリアは、彼の胸の中でそっとこぶしを握った。

セドリックは、彼女の小さな動きに気づいたのか、それともただ無意識だったのか、読み取れない表情で、ただじっと彼女を抱きしめ続けた。

今はもう、体がすっかり温まっていた。

彼は離れてもよさそうなものだが、セドリックはまだ彼女を抱きしめたままだった。

「ルウェインが新しい魔法を開発したんだ。以前、俺がアセラスとともに閉じ込められた異空間に似た魔法だ。彼の力だけでは無理だったから、俺が魔力を少し貸したんだ。でも、ちょっと手違いがあったのか、外からの接続が途切れてしまった。明日には開くはずだけど。」

彼は誰に問うでもなく、一方的に話しながら、ダリアの濡れた髪まで乾かしてくれた。

寒さに震えていた体が、少しずつ落ち着きを取り戻していった。

しかし、まだ冷え込みは厳しい。

「へくちっ。」

ダリアはくしゃみをした。

急に寒さが襲ってきたのだろうか?

このまま戻ったら風邪を引いてしまうかもしれない。

セドリックは不安そうな目で彼女を見つめた後、黙って自分のジャケットを脱ぎ、彼女の肩にそっと掛けた。

そしてその上からさらにマントを巻いた。

彼がジャケットを脱いだことで、セドリックはワイシャツ一枚になってしまった。

それでも彼はダリアを見下ろしながら、優しく尋ねた。

「寒いか?」

ダリアはそっと顎を引いた。

「私よりもセドリック様の方が寒いのでは……。」

「俺は魔法使いだ。そんな心配をする必要はない。」

この気のない返答からすると、まだ記憶は戻っていないようだ。

でも、それでも構わなかった。

二人ともすでに二重に着込んでいるため、それほど寒くはなかったのに、ダリアはなんとなく寒そうに見せかけて、さらにセドリックの胸に身を寄せた。

驚いた彼は、さらにしっかりと抱き寄せた。

「……そろそろ別の場所へ行こう。君が休める場所を見つけなきゃいけないし、この空間を解除できる装置があるかどうかも探してみるよ。」

しばらくして、セドリックはダリアから少し距離を取った。

ダリアは少しばかり名残惜しそうに視線を落とした。

この場所は太陽が沈むことはなく、どれだけ時間が経ったのか分からなかったが、空の色は相変わらず灰色のままだった。

「どこへ行きましょうか?」

「新しい空間とはいえ、もともとの皇宮の湖を基に作られた場所だ。この周囲には、使用人たちのための休憩所があるはずだ。まずはそちらへ行ってみよう。」

セドリックは静かに彼女を見つめた後、言った。

「抱きしめようか?」

ダリアは自分の耳を疑った。

「……え?」

あまりに唐突な言葉に後ずさると、セドリックの耳が少し赤くなった。

驚いたときに耳から赤くなるのは、以前と全く同じ癖だった。

「……寒いと体力を奪われるから。もしものために言っただけだ。道のりも長いし。休憩所はかなり高い崖の上にある。」

「そ、そこまでではないです。一人で歩けます!」

妙に気まずい雰囲気になった。

セドリックはそれ以上何も言わなかった。

ダリアは彼の目を見つめながら、そっと手を伸ばし、彼の手を握った。

「一緒に行きましょう。」

「……ああ。」

ダリアは先に歩き出し、セドリックの耳がさらに赤くなったのを見なかったふりをすることにした。

セドリックの言葉通り、使用人たちの隠れ家はかなり離れた高い場所にあった。

崖のような場所を登りながら、セドリックは慎重に空間を壊すための装置が内部にないか探していたが、結局見つからなかった。

その間、ダリアは一人で岩に躓き、強い風に押されて膝を擦りむいてしまった。

その結果、彼女はセドリックの背中におぶさって残りの道を登らなければならなかった。

崖と言ってもほぼ山のようで、所々に高い木が立ち並んでいた。

冬の風景らしく、ほとんどの葉は落ちていたが、奇妙なほどいくつかは残っていた。

雪が降らなかったのは幸運だった。

二人はその場所をぐるりと回りながら登っていった。

「お前、本当にドジだな。」

彼女を抱えたセドリックが、どこか楽しそうに言った。

「一人で怪我ばかりして。」

膝の傷はすでにセドリックが治療してくれたため、痛みはほとんどなかった。

今回ばかりは本当に反論する言葉がなかったので、ダリアは黙ったまま彼の背中にしがみついていた。

痛いと言われたが、彼は小さく笑った。

「ダリア・フェステロース。」

「はい。」

「昔、どうして僕は君を愛したんだろう?」

突然、息が詰まった。

ダリアは一瞬口を閉じて、それから言った。

「私がバカだからですか?」

「……それはどういう意味?いや、違う。ただ考えてるんだ。君のどんなところが一番好きだったのか。」

「………。」

「このまま記憶が戻らないかもしれないよ。」

今のセドリックは記憶を失う前よりも言葉が多かった。

彼はダリアを背負ったまま、一度も息を乱さずに崖を登りながら静かに言った。

「昔、君に言ったかどうかわからないけど、僕は実は他人の感情を読むことができるんだ。ただ、それだけの種類の能力だけど。」

「……。」

「でも、目を開けたらなぜか少し気持ちが楽になったんだ。もちろん、イライラする人間は相変わらずいるけど……。」

セドリックは言葉を濁した。

「それが君のおかげかもしれないって、ふと思った。」

「………。」

「僕が君をすごく好きだったから、僕の世界が少しだけ美しくなったのかもしれない。」

ダリアは何と言えばいいのかわからず、何も言わなかった。

代わりに彼の背中にそっと頬を寄せ、鼓動の音を聞いた。

自然と息が浅くなった。

「でも、ただ君が持っている……その特別な力のせいで、僕が君を好きになったんじゃないかって思ってしまって、それがすごく嫌だった。だから、また君に会えたらちゃんと謝りたかった。」

「………。」

「ごめん。」

考えてみれば、セドリックはダリアに怒ることができなかった。

元恋人が記憶を失った途端、すぐに別の人と関係を持つとなれば、誰でも誤解するだろう。

誤解から怒るのは仕方がないが、皇子なのに「二番目の恋人」だなんて、なかなかの言われようだった。

しかし、セドリックは代わりに謝罪した。

どんな状況でも彼はダリアに怒ることはない。

彼女だけはいつも特別だった。

「着いたよ。」

ダリアは強ばった体のまま顔を上げた。

そこには、森の中にぽつんと建てられた小さな木造の小屋があった。

小屋のそばには薪が積み上げられていた。

セドリックはついに膝を折り、ダリアをそっと降ろした。

そして彼女のマントを整え、雪が積もる肩に優しく掛け直し、目の前でそっと短くキスを落とした。

「寒いだろ?すぐに火を焚くから、中に入って。」

言いたいことはたくさんあったが、ダリアはまずこくりと頷いた。

小屋の中はさほど広くはなかった。

簡単な料理ができる調理台と壁際に作りつけられた暖炉、それに1.5人用の寝台と長いソファ、その他の家具がいくつか置かれているだけだった。

壁際の棚には簡単な食器類が収められていた。

セドリックが壁の暖炉に火をつけると、すぐに室内が暖まった。

ダリアはベッドに座ったまま、彼の後ろ姿を見つめた。

彼が振り返り、彼女を見たとき、彼女は自分が座っているベッドの隣を軽く叩いた。

セドリックは少しの間、迷うように視線を落としたが、やがて静かに彼女の隣に腰を下ろした。

ダリアは体を回し、正面から彼を見つめた。

「セドリック様。」

「うん。」

「話したいことがあります。」

セドリックは目を瞬かせ、彼女を見つめた。

「その……メルドンさんとは何の関係もありません。」

彼の表情は依然として曖昧だった。

赤い瞳が、何かの感情を押し隠すようにわずかに陰った。

低く抑えた声で、彼は短く答えた。

「……そうなのか?」

緊張で体が強張った。

ダリアは震えないように必死に努力しながら、こぶしを握りしめた。

そして、静かに言葉を続けた——。

「それは……誤解だったんです。当然、口裏を合わせたわけでもなくて。前にもそう言おうとしたんだけど、また誤解が生まれちゃって……。」

「……。」

「……ひとつだけ聞いてもいいですか?」

「聞いて。」

セドリックが短く答えた。

ダリアは一瞬ためらったが、それでも言葉を続けた。

「常識的に考えて、おかしいですよね。二番目の恋人だとか、そんな話……。それなのに、どうしてそんなことを言ったんですか?」

「……お前が。」

セドリックの声がさらに低くなった。

瞳の奥に潜む光が、ますます陰を帯びる。

まるで深い湖の底から響くように、その雰囲気は暗く沈んでいた。

何かまずいことを言ってしまったのだろうか?

ダリアは不安を覚えた。

セドリックの体がわずかに彼女へ傾く。

彼はそっと唇を開き、静かに呟いた。

「お前がそうしたいと言ったから……。」

「……。」

「お前が好きすぎて……どうしようもなかった。」

セドリックの大きな手がダリアの顔に触れた。

彼は彼女の頬をゆっくりとなぞった。

顔が近すぎる。

淡い光を帯びた瞳が、目の前にあった。

心臓が破裂しそうだった。

ダリアは無意識に目をぎゅっと閉じ、息を詰めた。

「ダリア。」

「……。」

「キスしたい。」

あまりにも唐突な告白だったのか、彼女は何も答えられなかった。

すると、セドリックは優しく、もう一度促した。

「させてくれる?うん?」

本来なら、彼にキスをするためにここへ来たのだ。

なのに、どうしてこんなにも戸惑ってしまうのだろう。

この一線を越えたら、もうすべてが後戻りできなくなるような気がして……。

ダリアは、閉じた片目をそっと開きかけたが、それ以上は開けず、ただ静かに目を閉じたまま、かすかに顎を引いた。

すると、セドリックがすぐに唇を重ねてきた。

彼の手はしっかりとダリアの後頭部を抱え、滑り落ちないようにしていた。

しかし、それ以上に力を抜くことはできなかった。

結局、ダリアはセドリックの手に頭を預けたまま、彼の腕の中でゆっくりとベッドへと倒れこんだ。

彼のもう片方の腕はダリアの髪のそばを滑るように添えられた。

『あ、これ……』

これは本当に危険だ……。

ダリアは思考を手放し、両腕で彼の首を引き寄せた。

口づけは深く、そしてとても長かった。

 



 

 

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