乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【１４７話】ネタバレ

ヒーカンとアドリーシャは、ぼんやりとダリアを見る。

しばらくして、アドリーシャはソファーに座り、ダリアの背中を軽くたたきながら言った。

「ダリア、最近ストレスがひどかったですよね？」

ダリアは恐ろしい表情でアドリシアをにらみつける。

彼女はぎこちなく手を取り直した。

「本当に真剣に、言ってるんですよ」

ダリアは静かに言った。

彼女があんな表情で話す話はいつも本物だ。

2人は姿勢を直して彼女の話を聞き始める。

ダリアはゆっくりとすべての話を始めた。

彼女がどこから来たのか、どのように前世を覚えているのか。

この世界はダリアが実は前世で体験したことのある世界だということ。

その世界でヒーカンは悪役で、アドリーシャはヒロインだったということ。

そのため、ダリアは今回の世界を違うように見直したかったという。

そして成功したということ。

ルウェインの話はしなかった。

彼を配慮した行動だ。

彼がどんな意図で彼女を呼んだとしても、それはダリアの話ではなかったから。

ルウェインは言った。

『ダリアさん、あなたがアセラスを救うことができなければ、今回の神聖カテロが失敗した瞬間、彼は必ず死んだり暴走したりします。それが私が観測したパターンです。もしその時彼を殺せなければ、彼が暴走した時に彼を防げるのはセドリック皇子殿下だけです。残りの全員が彼によって生きるでしょうが、その見返りに彼は死ぬでしょう』

『・・・』

『あなたにとって皇子殿下は大切なのでしょう。だから話すのを躊躇いました』

ダリアはなぜルウェインがあれほどアセラスの救いに執着したのかを知った。

それは実はダリア自身のせいだった。

彼にとって大切なのは彼女しか残っていなくて。

『あなたがたとえ失敗したとしても、その前に殺せばいいです。あまり心配しないでください。いつも方法はあるから』

ルウェインはそう言った。

ダリアは彼の言葉が生半可な慰めであることを知った。

しかし、誰かが死ぬというのはいつも心を不快にさせる話だ。

結局、ルウェインの言葉は簡単だった。

ダリアがアセラスを救援できなければ、セドリックが死ぬか、アセラスが死ぬということだ。

ダリアはルウェインに腹を立て、彼を非難したかった。

なんで自分にだけこんな荷物を押し付けるんだよ。

なんでこんなに自分を苦しめるんだよ。

しかし・・・。

その幾多の歳月をさまよった彼を思うと、どうしてもそうすることはできなかった。

（私がアセラスを許すことができるだろうか？）

しかし、いくら考えてもダリアはアセラスを許すことができそうになかった。

最後に彼を見たとき、ダリアは彼にまた拉致されそうになった。

渾身の演技力を発揮してその状況を避けたが、まだあの日のことを考えると心臓がドキドキする。

そして、メアリー・ブルーポート公爵の暴走がそのためだということを知った後は、同情の余地さえ消えた。

ダリアは彼が恐ろしく怖かった。

また腹が立った。

否定的な感情があまりにも大きくて、それ以外の感情は感じることさえできなかった。

いくら時間が経っても同じような気がする

（もしかしたら、まだ解決されていないことが多すぎてそうかもしれない）

そこで彼女は自分が触れられる感情から整理することにした。

その始まりは本当に大切な人たちにすべての真実を打ち明けること。

ルウェインに言った通り、ダリアも真実を告白する時間が来てしまったのだ。

しかし、簡単には心の決心がつかなかった。

彼女は多くの時間をベッドに横になって悩みながら過ごした。

しかし、結局は言った。

彼女の話が全部終わった後、二人はしばらく何も言わなかった。

ダリアは2人を交互に見る。

心の中に隠していたことを全て打ち明けてから、ようやくすっきりしたが、もしかしたら2人は裏切られたと感じるかもしれないと思った。

原作で自分たちの未来を明らかに知っていながら知らないふりをして、初めて見るふりをして彼らを騙したから。

しかし、そのような覚悟もなしに始めた話ではない。

彼女は2人の反応を見たが、どちらも読み取れそうな表情も反応もなかった。

ダリアはもう少し催促するように繰り返し言った。

「・・・それでそうなったんです。怒りたければ怒ってもいいです」

「そうなんだ」

ヒーカンは無表情で答えた。

怒っているようには見えなかったが、何を考えているのか分からないのは同じだ。

しばらくして、彼は言った。

「これまでお疲れ様」

ダリアが思っていたよりずっと平穏な反応。

彼女はヒーカンの手を注意深く握った。

彼は避けるところか手を伸ばして彼女の頭をなでた。

「怒ってないですか？」

「私があなたに何の理由で怒ると思う？私のせいで一番大変だったのが君だったはずなのに」

ヒーカンは目を閉じてゆっくりと息を吐いた。

そして言った。

「おかしいと思った。私にとって、あなたはとてもプレゼントみたいだったから」

「・・・」

「ところで、本当にどこかから届いたプレゼントだったんだね。よかったと思う。君がいるから」

ヒーカンはしばらく言葉を整理した後、再びゆっくりと言葉を続けた。

「あなたが私たちを騒したとは思わない。あなたはいつもあなたなりに最善を尽くしているから、それがあなたの最善だったんだろう。そして君は逃げずに私を何度も捕まえてくれて助けてくれた。すべてを言わなかったとしても、その心が嘘だとは思わない」

ダリアは唇をかみしめた。

伝わってくる暖かい心に涙が滲んだ。

「ずっと私のそばにいてくれてありがとう、ダリア」

ヒーカンがそう言った。

彼は話を終えてアドリーシャに目配せする。

言いたいことがあれば言えというように。

ダリアは心の準備をした。

（アドリーシャは裏切りを感じるかもしれない）

原作のヒロインだから、自分にそんなによくしてくれて接近したのかと問い詰めないかな？

それに、ばれたくなかった過去まで、最初から全部知っていたということを知っていれば。

（アドリーシャが泣きながら言うと、本当に心が痛いと思うんだけど）

しかし、アドリーシャは怒る代わりに彼女に言った。

「ダリア、これまでどれくらい大変でしたか？」

温かい声。

ダリアは慌てて何も言えなかった。

アドリーシャは笑いながらダリアの手を握る。

「考えてみれば、ダリアは最初からずっと私を守ってくれようとしていたようです。それを今になって分かるなんてバカみたいでしょう？ありがとう。本当に」

「・・・いいえ。ごめんね」

「でも、一つだけお聞きしたいです」

アドリーシャは茶目っ気たっぷりの声で言った。

「前世で、ダリアがこの世界で一番好きなのはやっばり私でしたよね？」

その言葉がダリアの目に涙を溜めた。

ダリアはすすり泣きながら首を縦に振った。

静かに、お互いがお互いを受け入れる時間が過ぎた。

ダリアは今更ここに集まった人々が「本当の家族」のように感じられた。

「だから、本題はこれじゃないだろう？」

ヒーカンはしばらくして言った。

彼はまたいつもの彼に完全に戻ってきて、ため息をつきながら額をつく。

「これを言い出したのは、またやるべきことがあるからじゃないか？また私の心をどのように痛めようとしているのか言ってみて」

ダリアはにっこりと微笑む。

ヒーカンはもう彼女のことをよく知っている。

「私はこの世界を前世で一度見たことがあります。その時の記憶を思い出してみると、今回アセラスが条約更新のために来るのが最後の事件になるんです。これさえうまく終われば、みんな幸せになれます」

「・・・」

「うまく終わるように、私を助けてください」

アドリーシャとヒカンはお互いに向き合った。

そして同時にダリアを見る。

「そんなことは聞かなくてもいいよ」

「私たちはいつもダリアの味方だから」

何よりも十分な答えだった。

ダリアは彼らを抱きしめる。

数日後、フレデリック帝国と神聖帝国の国境線を通過する1台の馬車があった。

馬車のドアには神聖帝国の文様が施されている。

馬車の中には二人が．乗っていたが、一人はアセラス、もう一人は灰色の髪の平凡な印象の青年だった。

その他にも秘密裏に国境線を通過する数台の馬車がある。

「うわぁ、ここがまさにフレデリック帝国ですね。もちろん首都までは3日以上行かなければならないですが・・・」

青年は馬車のカーテンを歩き、外を見渡し、軽薄な口調で話した。

アセラスは額に触れた手を離し、視線をそらして横を見た。

しかし、彼はすぐに興味を失い、再び目を閉じる。

「なるほど」

「いったいここにとんな魅力があって、私たちの信徒が2人も神を裏切ったのか」

「・・・」

「せっかく信じて任せた人もね、やらせたことは一つしかできないし。やっばり、早く裏切り者もここも全部崩したいです」

はつらつとした言い方と違って、青年の瞳は狂気に光っていた。

アセラスは静かに言った。

「そのためにここに来たのです」

「はい。早く行って皆殺しにしてください」

青年が明るい笑みを浮かべる。

アセラスは笑わなかった。

彼は青年が厄介だと思った。

自分を補佐する者として彼を選んだ時、彼はまるで世の中をすべて持った表情をした。

しかし、アセラスが彼を選んだ理由は、ひたすらその髪色が誰かを思い出させるためだ。

何か間違っている。

いつから、どこから間違っているかは分からないが、とにかくすべてが間違っている。

しかし、彼女さえ手に入れれば、すべてが良くなるだろう。

（まず、セドリックを殺して・・・）

彼はその考えだけを繰り返す。

（彼を殺して・・・）

「そして・・・」

不思議なことに、それ以外は何も重要ではないという気がした。

元々はこの帝国の超越者を全部暴走させる計画だったのに。

（ああ、そうか。そうするために来たんだ）

アセラスは、はっと気がついた。

フレデリック帝国は何も知らない。

神聖力を水薬に乗せるがあれば、他のところにも混ぜることができる。

いくらでも、いくらでも彼らを没落させる方法はたくさんあった。

ダリア・ペステローズの能力にも限界はあるだろう。

みんなが暴走すると、身体条件が微弱な彼女は耐えられない。

（だから・・・。それをあげたんだ）

もちろん、その前に彼女を引き抜くだろうけど。

ダービー・ガトラン条約は破棄されるだろう。

今回の交渉は血まみれに終わるだろう。

アセラスはそこに一人で残って自分をぼんやりと見ているダリアを想像した。

その姿のために今まで走ってきたのに、心はただ虚しいだけ。

同情でもなく罪悪感でもなく、ただ陰鬱な気持ちだけが彼を蚕食した。

それでもセドリックを殺してダリアを手に入れれば、すべてが終わる。

彼はセドリックが目を閉じて眠るように死んだ姿を想像した。

不思議なことに、その想像は実際に何度も見たように生き生きとしていた。