こんにちは、ちゃむです。
「オオカミ屋敷の愛され花嫁」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

48話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 処罰③
『そんな恐ろしい呪いだったの?』
私はケンドリックにさっき見た夢の話をしようとして、思わず口をつぐんだ。
自分で考えても、少し荒唐無稽な話に思えたからだ。
夢の中の女性が痣を解いてくれたなんて話、誰が信じてくれるだろうか。
私は気まずそうに後頭部をかきながら、気まずく笑った。
「それが、私にもよくわからないんです。さっき寝て起きたら、突然解けてたんですよ。えっと、もしかして……」
「……」
「……その人、死んだんじゃないでしょうか……?」
「そうか、そういうこともあり得るな。とにかくありがとう、リンシー。私が調べてみよう。」
「それと、前に連れてきた子のことなんですけど。グレネです。」
「グレネ?ああ、エイデンの話に出ていた、あの子のことか。」
私はぱちんと手を打った。
「その子、私が見た“黒い記録”が見えているようなんです。通りで私をじっと見てきて、声をかけてきたんです。」
「その子がどうして?前が見えない子じゃなかったか。」
「はい、でもグレネが私にだけ見えるって言ったんです。私に黒い煙のようなものがまとわりついているのも見えたって。」
私はベティが話してくれたことを思い出しながら、再び口を開いた。
「それから、ベティが言ってました。目が見えなくても、サスム一族の血が混ざった“石の変種”なら、そういうことも可能だって。」
「そうか、それなら納得だ。」
ケンドリックが少し考えるような表情を浮かべながら言った。
「それで君があの子を邸宅に滞在させてくれと頼んだんだな。」
「はい、グレネにも痣(しるし)があるようだったので。それに、何かを知っているような感じもしました……グレネがその話をできるかはわかりませんが……」
私はグレネの背中に刻まれた斑点と、苦しそうだった少女の姿を思い出しながら、慎重に話した。
「そうだな、一度調べてみよう。それより今は少し休みなさい、リンシー。そして……いや、やめておこう。」
「えっ?」
「これはアルセン本人から直接聞くのがいいだろう。明日アルセンに会いに行け。」
ケンドリックは笑った。
「何か良いことがあったんですか?」
「いいことがあったよ。君のおかげでね。」
そう話すケンドリックの機嫌は明らかによさそうだった。
『アルセンの病気、治ったのかな?』
ケンドリックはそろそろ戻ろうと私を軽く抱き上げた。
「あ、あの、ひとりで歩けます!」
「送ってあげるよ。」
ケンドリックはもじもじする私を軽々と抱き上げて、私の部屋へ向かった。
私が持っていたランプも拾って手渡してくれた。
彼は私をベッドの上にやさしく下ろすと、私の額をなでた。
「おやすみ、リンシー。」
「はい、ケンドリック様も。」
私はドアを閉めて出ていくケンドリックを名残惜しそうに見送った。
そしてそのまま、ベッドの上の毛布をぎゅっと抱きしめた。
「お嬢様!」
ベティが受印化が解けた私の姿を見て、うれしそうに声をかけた。
私は眠そうな目をこすりながらベッドに腰かけ、ベティにあいさつした。
「うん、ベティ……おはよう。」
「お嬢様!私がどれほど心配したかご存じですか。お嬢様が驚いて飛び去ったって聞いて、本当に……」
そう話すベティの目には、涙がいっぱいに浮かんでいた。
私は戸惑って、ベティの腰をぎゅっと抱きしめた。
「ベティ、ベティ、泣いてるの?ごめんね……。」
「いえ、お嬢様が謝ることじゃありません。イベリン嬢が悪いんです。どうしてお嬢様が新一族だと知りながら驚かせるようなことをするんですか?」
ベティはすすり泣きながら続けた。
『私が新一族だから驚かされたのか……』
でもその言葉まで言ってしまうと、ベティがもっと怒りそうだったので、私は口をつぐんだ。
「お嬢様、本当にご無事でよかったです。ヘレン先生をお呼びしてきますね。目覚めないんじゃないかと、どれだけ心配したか……」
「うん、お願い。」
「それと、アルセン様もお呼びしても大丈夫でしょうか?お嬢様が目を覚ましたと聞いたら、きっとすぐにでも会いに来たくなると思います。」
「もちろん、アルセンも連れてきて。」
私がうなずくと、ベティが部屋を出ていった。
そして、そう時間が経たないうちに——
ガチャ!
ドアが勢いよく開き、乱れた姿のアルセンが入ってきた。
さっきまで眠っていたのか、アルセンの目は腫れていた。
「ア、アルセン……、うわっ!」
私は突然ベッドに飛び込んできたアルセンに、思わず叫び声をあげた。
「びっくりしたじゃない、バカ!」
「リンシー、お前……大丈夫? どこか痛いところはない?」
アルセンは眠たそうな目を目いっぱい開いて、私の様子をくまなく観察した。
私は心配そうなアルセンの淡い金色の髪に手をそっと置いた。
「うん、痛いところはないよ。心配してくれたの?」
「……心配、してないよ。いや、してないわけじゃなくて、ちょっと……」
アルセンは目を伏せながら、少し声を落として話した。
「ちょっとだけ。」
「うん、ありがとう。そうだ、アルセン。私に話があるって言ってたよね?」
私は昨夜ケンドリックから聞いた話を思い出して、口を開いた。
アレセンは私の言葉を聞くと、一瞬考えるように目をパチパチさせた。
「話すこと……? ああ。」
そしてようやく思い出したように、口をわずかに開いた。
「これを見て、リンシー。」
アレセンが手のひらを広げて見せた。
私はアレセンの小さな手のひらをじっと見つめた。
「よく見て。」
アレセンの言葉が終わるや否や、その小さな手のひらに天井の上で黒い光が浮かび上がり、ぼんやりと漂っていた。
私はその様子を見て目を丸く開いたまま尋ねた。
「これなに?あなた、能力が発現したの?」
「うん、君が危機に陥っていたとき。」
アルセンはもじもじしながら続けて言った。
「これ見て、こんなこともできるんだ。」
アルセンの言葉が終わるやいなや、ぼんやりしていた黒い光のかたまりが狼の形をとった。
私は思わず感嘆の声を上げた。
「うわあ、こんなこともできるの?」
狼の姿をした黒い影は、私のそばへとやってきて、私の頭に自分の頭を押し当てた。
「これを操作してるってこと?」
私は、自分にむずむずとまとわりつく影の狼の頭を撫でてみた。
がっしりというより小柄で、狼というより犬に近い。
影の狼は私が頭を撫でるたびに、尻尾をパタパタと振った。
「いや、こいつ、勝手に動いてるだけなんだけど。」
「……?」
私は撫でていた手を止め、視線を上げてアレセンを見つめた。
「ひとりで動いてるって?」
「うん、ただ……僕は呼び出しただけだよ。」
アルセンは顔を赤くしたままもじもじした。
私はアルセンを一度見て、それから私に頬をこすりつけている影の狼――アルセンの能力で作られたそれ――をもう一度まじまじと見つめた。
「そんなはずないよ……?能力がどうしてひとりで使えるの。それは……ありえないことだよ。」
アルセンの話によると、あの影の狼はアルセンの意志とは関係なく動いているのだという。
つまり、それはアルセンの能力で作られたあの影の狼に自我が芽生えたという意味でもあった。
『危険じゃないの?』
異能に芽が出るなんて。
ただでさえアレセンは身体が弱かったのに。
私はアレセンの手をぎゅっと握り、真剣な口調で言った。
「アレセン、異能はもう使わないで。」
「え?」
「見てごらん、こいつ。子どもなんだよ。」
私の言葉を聞いた影の狼が、しゅんと尻尾を垂らした。
ぴんと立っていた耳も、しょんぼりと垂れた。
その姿に少し心が揺らぎそうになったけれど……
「ダメ、早く。」
「わかった。」
アルセンはおとなしく影の狼をしまった。
アルセンが空中に手をかざして一度払うと、影の狼はさーっと崩れ、周囲の影に溶け込んだ。
「ケンドリック様はなんて言ってたの?」
「お父さんはまだ何も言ってない。」
アルセンは淡々と答えた。
「……そうなんだ……。」
私はきちんとしたアルセンの目をじっと見つめた。
ケンドリック様が何もおっしゃらなかったのなら、大丈夫なんだろうか?
でも、能力で作られたものに自我が芽生えて動くなんて話は、生まれて初めて聞いた。
どんな異能でも、そんなふうに使うことはできない。
そのとき。
「お嬢様、お目覚めになりましたか?」
ドアが開き、ヘロン先生が部屋に入ってきた。
「無事に目を覚まされてよかったです。どこかお痛みはありませんか?」
ヘロンは慣れた手つきで私の額に手を当てた。
私は毛布を握りしめた。
「はい、大丈夫です。」
「よかったです。驚かれたでしょうが……、座ってください。お身体の状態を少し確認しますね。」
ヘロンは私の体をくまなく丁寧に調べた。
私はおとなしくヘロンの手に身を任せていた。
「幸い、大きな異常はなさそうですし……能力も安定しましたね。よかったです。もう少し休んでください。坊ちゃん、お嬢様が休めるように……」
「出て行かない。」
「でも坊ちゃんがいらっしゃらないと、お嬢様が……」
「出て行かないってば。」
アルセンは険しい表情でヘロンの言葉を二度も遮った。
私が突然姿を消したことで、とても驚いたようだ。
私はアルセンの髪を撫でてあげた。
「うん、アルセンと一緒にいたい。あ、それから……ベティ!」
声を上げて呼ぶと、外にいたベティがドアを開けて部屋の中に入ってきた。
「お呼びでしたか?」
「私、グレネを会いたいの。」
昨日グレネは、私に意味深な言葉だけを残して、すっと立ち去った。
何かを掴んでさらに聞く余地もなく……。
もちろんケンドリック様にはグレネについてお話ししておいたから、調べてはくださるだろうけど。
『グレネに許可をもらって、もう一度体を確かめてみなきゃ……。』
グレネがケンドリック様には体を見せないかもしれないって坊ちゃんが言ってた。
もし断らなければ、気になる点を聞いてみたいし。
『でも禁制のせいで話せないかも……。ジェスチャーで答えられるか確認してみなきゃ。』
ベティを呼ぼうとすると、ベティがほほ笑みながら答えた。
「はい、すぐにお連れします、お嬢様。」
ベティはグレネを呼びに行くといって席を立った。
ヘロン先生が出て行ったあと、私はベッドの上でアルセンと一緒に横になったまま、ぐるりと首を回してアルセンを見た。
「能力が発現した瞬間のこと、もっと話して。」
「別に何も……、ただできたの。」
「ただできたって?」
アルセンがしばらく考えているようだったが、やがてぼそぼそと口を開いた。
「ただ……君を探していたら、突然発現したの。あとは自分でも分からない。」
アルセンは恥ずかしそうに、急に頬を赤らめた。
「え〜?なんで分からないの、アルセ〜ン。」
私はアルセンの背中にぴったりとくっついて、彼のお腹をくすぐった。
「分からないってば!急にできたんだよ……。」
「とにかく本当におめでとう、アルセン!さすがエクハルトの後継者だよ。私もがんばって君を完全に治してあげる!」
「……無理する必要はないってば。」
アルセンがもじもじした。
その時、黙って立っていたクロエがふっと笑って口を開いた。
「ケンドリック様にお願いして、小さなパーティーを開くのはいかがですか?坊ちゃんの異能発現記念に。」
「パーティー?」
「はい、ケーキも用意して、クッキーやマフィンもたっぷりある、そんなパーティーです。お嬢様、宴会ではあまり召し上がれなかったでしょう?」
「うん、そう。あまり食べられなかったんだよね……。」
パーティーだなんて、
私はなぜか浮き立つ気持ちのまま、アルセンの腕をぎゅっと握った。
「パーティー……、今回もまた知らない人がたくさん来るなら行かない。」
アルセンがきっぱりと言った。
クロイが笑いながら手を振った。
「小さく、邸宅の中でこぢんまりとパーティーをするんです。お嬢様と坊ちゃんのお二人だけで。もし招待したい方がいらっしゃれば、もちろんお招きしても構いません。ご希望であれば、私がケンドリック様にお伝えしておきますよ。」
私は期待感で目を輝かせた。
『こぢんまりしたパーティーだなんて。』
晩餐会のように美味しいデザートもあるだろう。
晩餐会では驚くほどたくさんのデザートがあったが、その中で私が食べたのは小さなクッキーひとつとオレンジジュースだけだった。
狼たちの顔色をうかがって……
「じゃあいいよ、パーティーしよう。」
アルセンがぽつりと言った。
「私もパーティーしたい。」
「では、私がケンドリック様にお願いしてみますね~。きっと許してくださると思いますよ。」
そのとき。
「お嬢様!」
ベティが驚いたような表情で慌てて部屋に飛び込んできた。
「ベティ……?どうしたの?」
私はベッドからぱっと起き上がり、ベティを見ながら尋ねた。
アルセンもまた何かあったのかというように、目を大きく見開いた。
「グレネがいなくなったそうです。」
ベティが呆れたように言った。
「……誰がいなくなったって?」
「朝見に行ったらいなかったそうです。服もすべて置いて行ったそうで……、この花一輪だけ置いてあったそうですよ。」
ベティが私に花一輪を差し出した。
『これは……。』
少し前、花壇でグレネに会ったとき、あの子が持っていた花だった。
私は戸惑いながらも、ベティが差し出したその花を受け取った。
「それと、もう一人が言ってたんですが……グレネが夜に来て、何か話しかけて行ったって。」
「何を話したの?」
「“病気にならないで、すぐまた会おう”って伝えてほしいと言ったそうです。あの子は眠る寸前だったから、グレネが消えるなんて思ってもみなかったみたいで……」
私は呆然とベティを見つめながら、ようやく口を開いた。
「グレネが消えるなんて……。私と夜にあんな話をして……あ。」
じゃあ、私と話をして、そのまま屋敷を出たの?
でもなぜ?
私の呪いが解けたから?
もしかして、グレネの禁制が私のせいで解けたから?
グレネが屋敷を離れた理由は、どうしても思い当たらなかった。
私の禁制が解けたから、むしろ喜んでくれると思っていたのに。
あ――。
私はようやく、昨日グレネが私の部屋のすぐ前にいたという事実を思い出した。
『じゃあ、もしかして……』
別れのあいさつをしに来ていたのかもしれない?
「ここに置きますね、お嬢さま〜。こうしておけば、お花を長く楽しめますよ。」
ベティは、グレネが置いていった花をきれいな花瓶に生けてくれた。
「うん、ありがとう。」
私は星がよく見える場所に置かれた透明な花瓶をじっと見つめた。
『なぜ花を置いていったのだろう?』
別れの挨拶をしようと?
しばらく考えてみたが、答えは出なかった。
私はもしかしてと思い、アルセンと一緒にグレネが滞在していた使用人たちの宿舎も訪ねてみたが、
「急にいなくなったんですよ。昨夜までは確かにいらっしゃったのに……。」
「そうなんだ……。教えてくれてありがとう!」
侍女たちはすでにグレネが使っていた部屋を片付けていた。
『ちゃんと別れのあいさつもできなかったのに。』
昨夜見たのが最後だとわかっていたら、「元気でね」とでも声をかけてあげればよかった。
私はツナが入ったサンドイッチを水にくぐらせながら考えた。
アルセンは私の隣で、サンドイッチに入っているキュウリを取り除いていた。
「そういえば、今日は邸宅にご主人様がいらっしゃらないんです。」
「え?」
「ケンドリック様がいらっしゃらないって?」
私とアルセンはサンドイッチを食べる手を止めて、クロエを見つめた。
「はい、用事があるとおっしゃって、しばらく邸宅を空けるそうです。坊ちゃん、キュウリを取り出さないでくださいね。」
ベティの言葉にアルセンがビクッと体を震わせた。
私はベティの話を聞きながら、サンドイッチをもう一口大きく頬張った。
『禁制について調べに行ったのだろうか?』
昨日先生がおっしゃったとき、「別に調査してみる」と言っていたので、たぶんその可能性が高かった。
「それじゃあ、いつ戻ってくるの?」
「たぶん明日あたりには戻ってくるんじゃないでしょうか?よくわかりませんけど。実はお嬢様が来られる前までは、主人が席を外すことがよくあったんです。引っ越しのことで出かけたりしてたんですが、最近はそうでもなくて……、またわかりませんね。」
「うん、そうなんだ……」
「そうだ、お嬢様。イライジャ令嬢が謝罪を伝えたくて手紙を送ったんだけど……それってどうしたらいいかな?」
ベティが私の顔色をうかがいながら口を開いた。
「イライジャ?イヴェリン、イライジャのことよね?」
そのとき、アルセンがどこか寂しそうにキュウリの端を床に捨てながら言った。
「そんなこと聞くなよ。謝罪なんて必要ない。二度と来るなって伝えてやれ。」
「アルセン。」
「なあ、バカかよ。あいつに謝ってほしいの?あいつのせいでどれだけお前が苦労したと思ってるんだ。」
アルセンがむすっとしたように続けた。
「坊ちゃん、キュウリを取り除かないでください。そしてお嬢様、もし謝罪を受けたくないなら、遠慮なくおっしゃってください。お嬢様の意思が最も大切ですから。」
私は唾をゴクリと飲み込んだ。
『謝罪……、受け入れるべきかな?』
けれどイベリンのことを思い出すと、あの子の凶暴な姿が頭を離れなかった。
牙をむいて私を脅した黒い狼だ。
私は体をぶるぶると震わせた。
「やっぱり受け取らない、謝罪はいいって伝えて。会いたくないから。」
するとベティがほほえんだ。
「はい、そうお伝えします。」
私は親切なベティのスプーンをぎゅっと握りしめた。
するとベティが笑いながら、私の手をしっかり握ってくれた。
「どうしたんですか?どこかお辛いところでもありますか?」
「ううん、そうじゃなくて……。」
ベティとアルセン、そしてケンドリックとエダンを含むエクハルト邸の使用人たちは、もう怖くなかった。
でも――
『狼に変身したら、ちょっと怖いかも……。』
まだエクハルト邸の使用人たちは、私の前で変身したことがない。
私が狼を怖がっていることを知って、配慮してくれているのだ。
けれど、
『じゃあ、ベティが狼に変身したら、私はベティを怖がるようになるのかな?』
たぶんそうなる可能性が高かった。
私は大きな狼を見るととても怖がる子だったからだ。
だけど。
『不思議と、ベティは怖いと感じない……』
私はベティの手をぎゅっと握って、彼女を見上げた。
「ねえ、ベティ。今度、変身した姿を見せてくれる?」
親しい間柄では、変身した姿を見せてほしいというのは無礼なお願いではなかった。
しかしベティが不快に思うかもしれないと思い、私はベティの顔色をうかがった。
「え、はい?変身ですか?お嬢様、狼が怖いじゃないですか。ちょうど昨日もそんなことがあったばかりで……。」
「うん、そう。だから……昨日イヴェリンが変身したのを見て、本当にびっくりしたの。」
「でも、そんな私に変身してほしいっておっしゃるんですか、お嬢様?」
「でもね、ベティが変身した姿は、なぜか怖くない気がして……。怖かったらすぐ戻してって言うから。そしたら変身を解けばいいんだし。だめかな?」
私は切なげなまなざしでベティを見上げた。
ベティはどうすればいいか迷っているように、しばらく悩んだ。
「それじゃ、もし怖かったらすぐに言ってくださいね……?」
「うん、うん、わかった!」
私は一生懸命うなずいた。
ベティは安堵のため息をついた。









