継母だけど娘が可愛すぎる【１３２話】ネタバレ

それでギドオンを解任したの？

本当に呆れてしまう。

どうすれば私が不倫をすると思ったんだろう？

思わず不快感が声に滲み出てしまった。

セイブリアンが慌てて口を開く。

「あなたを疑ったのではありません。誓ってそうではありませんでした！ただ私が昔言った言葉が恥ずかしくて・・・」

慌てて言い訳を付け加える姿があまりにも焦っているので、私の怒りも少し和らぐ。

彼がここまで狼狽える姿は初めて見る。

「ギドオンを解任させたのは、そんな不敬な者をあなたのそばに置きたくなかったからです。彼があなたに色目を投げるのを想像するだけでも・・・」

猟犬が唸るようにセイブリアンの目つきが荒くなった。

先ほどギドオンは私に自作曲を聞かせてくれた事実を知れば、解任ではなく死刑にする勢いだ。

本当に、この人も情が深い。

自分の家族をこんなにも気遣う人だとは思ってもいなかった。

セイブリアンに対して感謝の気持ちが沸き起こる。

怒りは収まったが、私は拗ねたふりをした。

「少し気分が悪いです。以前、私が絶対に恋人は作らないと言ったじゃないですか。私を信じていないみたいなので悲しいです」

「そ、そんなことは！」

ふんと音を立てて首を傾げる。

すると、セイブリアンが綿菓子を落とした子供のように困惑しているのが見えた。

ふふ、こんなこと考えてはいけないのだけど、彼がどうしていいのか分からない様子が面白い。

私はもっと拗ねたふりをした。

「酷いです、殿下。私傷ついたんですよ！責任を取ってください！」

「すみません、アビゲール。私が悪かったです。こんなことを言ってはいけなかったのに、どう責任を負えばいいでしょうか？」

セイブリアンがさらに慌てている。

行き場を失った手が空中を彷徨っていた。

面白いけれど、これ以上すれば泣きそうな勢いだ。

ここらで許してあげようかな。

私は表情をほぐして柔らかな口調で話した。

「まあ、許してあげましょう」

「本当にありがとうございます、アビゲール」

セイブリアンが目立って安堵する。

ああ、本当に可愛い・・・。

彼を宥めるように口を開いた。

「前にも言ったように、恋人を作るつもりはありません。最初からギドオンが気に入らなかったので、安心してください」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「もういいですか？それじゃあ、ギドオンの解任を取り消してください」

「取り消すのですか？」

セイブリアンが秘かに反抗期を見せた。

「言ったじゃないですか、彼のことを少しも気にしていないって」

「それでも、あんな男をあなたのそばに置きたくありません」

いつの間にか厳粛になった声だ。

本当に頑固なんだから。

私はもう少し強硬に出ることにした。

「殿下、本当は私のことを信じていないのですよね？それでギドオンを解任させようとするんですよね？」

「いいえ、そうではありません。アビゲール、私はあなたを信じています」

「責任を負ってくれるのですよね？それなら解任を取り消してください」

「それは・・・」

「やっぱり私を信じられないんですね。酷い・・・」

そう言ってセイブリアンから体を背けようとした時、彼が慌てて私の肩を掴んだ。

「分かりました！解任は取り消します！アビゲール、私が悪かったです！」

ふふん、結局私の勝利ね。

それとなく振り返ると、セイブリアンの顔には焦燥感が充満していた。

「分かりました。大目に見てあげます」

そう伝えると、彼は小さくため息をつく。

安堵の気配は可愛くて、もう少しからかいたくなるが我慢した。

それにしてもギドオンがそんな男だったなんて。

私と付き合いたくて宮殿に入ってきたなら、むしろ良かったのに。

いいや、幸じゃないかな。

そう考えて、私はチラッとセイブリアンを見る。

この人の胸壁を崩したくなかった。

さっきギドオンが他の芸術家たちも招待したいと言ったが、その姿を見ればセイブリアンはどんな反応を見せるのだろうか？

気になるが我慢することに。

私をじっと見つめているセイブリアンが可愛くて笑ってしまう。

すると、セイブリアンも微かに微笑んだ。