こんにちは、ちゃむです。
「捨てたゴミは二度と拾いません」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

105話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 新年祭⑤
私が結婚できない理由はいくつかあるけれど、最大の理由はフィレンとの破談だ。
フィレンが悪くて婚約が破談になったとはいえ、長い間彼の婚約者だった私と結婚しようとする男性が果たしているだろうか。
まずいないはずだ。
それをダイアンにいちいち説明したくなくて、私は何も言わずに笑った。
ダイアンはすぐに空気を察して、あまり良くない話だと気づいたようで、肩をすくめた。
「いやー、帝国の男たちはみんな目が節穴ですね。こんなにいい人が分からないなんて。せめてメガネでもかけなきゃダメですよ。」
「もうやめて、ダイアン。」
ダイアンが私を好意的に見てくれているのは分かっている。
でも、やっぱりこういうのはちょっと恥ずかしい。
「どうして?間違ったこと言ってるわけじゃないのに。」
「ダイアン……」
ダイアンを止めようとしたとき、不吉な予感がして背後でざわめく気配がした。
まさか。
私は慌てて振り返った。
「……」
すると、無表情の顔でこちらに近づいてくるフィレンが見えた。
なんでこっちに来るの?
まさか私に話しかけようとしてる?
もしそうなら、どう対応すればいい?
無視しようかとも思ったけど、フィレンの身分が気になったし、話をするとまた変なことを言ってきそうで、それが分かっているからこそ話したくなかった。
フィレンと関わること自体が嫌だった。
プライドが傷ついても、もう逃げてしまおうか。
でも、それだとダイアンを置いて行くことになってしまう。
どうしようもなく立ち尽くしていたそのとき、ハインが私の元にやってきて言った。
「アステル令嬢、皇帝陛下がお呼びです。」
「陛下がですか?」
「はい。急ぎのご用件があるとのことで、ただちに2階の皇族専用休憩室にお越しくださいとのことです。」
パーティー会場に姿を現さず、私だけを呼ぶなんて。
デロント男爵が急に席を外したのもそのせいかもしれない。
何かあったのではないかと心配になった。
「早く行ってきてください。」
ダイアンが私の背中を軽く押した。
「ひとりにしてごめんなさい。」
「大丈夫です。その代わり、帰ってきたらまた私と遊んでくださいね。」
「もちろんです。すぐに片づけて戻りますから、少しだけ待っててください、ダイアン。」
ダイアンを長いあいだひとりにしておきたくはなかったし、すぐに解決できる問題であることを願いながら、私は急いでカリアンが待っている2階の皇族専用休憩室へ向かった。
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レイラが去ると、ダイアンは「こっちへ来て」と言うこともせず、立ち止まってレイラが消えた方向をじっと見つめていた。
『あの男がフィレン・ウィリオット公爵。』
帝国の剣として名高いウィリオット公爵家の当主。
帝国の総司令官であり、6年間続いた長い戦争を勝利に導いた戦争の英雄の一人。
それだけフィレンの剣術の実力は並外れており、敵はフィレンを「黄金の死神」と呼んでいた。
『それなのに、真の宝石を見抜けないなんて。』
フィレンとレイラの間にあった出来事を大まかに知っているダイアンは、鼻を鳴らした。
レイラが気に入るだけに、フィレンは気に入らなかった。
レイラがフィレンと婚約を解消して正解だったと思った。
あんな男と結婚するくらいなら、一生ひとりで生きるほうがマシだわ。
うん、そうよ、まったく。
ここがナートシャ王国だったら、フィレンがナートシャ王国の貴族だったら、公爵でも何でも文句なしにぶん殴ってやったのに、そうじゃないから助かった。
「本当に残念、悔しいわ。」
「アンデリナ様、恋愛中ですか?」
残念がって口をとがらせていたところに、いつの間にか戻ってきたベルンが彼女に声をかけた。
「どうしておひとりでいらっしゃるんですか? アステル男爵は?」
「レイラ様は皇帝陛下に呼ばれて、しばらく席を外されました。」
「皇帝陛下に呼ばれたんですか?」
ベルンは眉間にシワを寄せて、独り言のように「また何か陰謀を企んでるんじゃないの」と呟いた。
「今、何か言いましたか?」
「いえ、何も。」
いくらカリアンが怪しいと思っていても、異国の貴族として皇帝を悪く言うことはできず、ただやり過ごした。
「お一人で退屈だったでしょうね。」
「本当にそうです。あ、それと訂正しなければならないことがあるんです。」
「何ですか?」
「私は侯爵令嬢ではなく、女爵です。爵位を授かりました。」
その話を聞くや否や、ベルンは胸に手を当てて丁寧に謝った。
「失礼しました、アンドリナ女爵。」
ナートシャ王国では女性が爵位を持っていることはよくあるが、他の国ではそうではなかった。
そのため、ダイアンが外交官として外国に行くたびに、「女性が外交官なんて」といった
差別的な発言をよく耳にした。ただ令嬢ではなく女爵だと言うと、皆一様に驚いて「本当ですか」と尋ねられるのが常だった。
だが、ベルンは違う。
外交官だと紹介したときも、女爵だと紹介したときも驚くことはなかった。
そのためダイアンはベルンにすっかり好感を持った。
誰かが言っていた。
柿の木の下でじっと柿が落ちるのを待つのは愚か者のすることだと。
「実はレイラが来るまで一人で待っているのは退屈だったんです。」
だから私は自ら行動に出ようと思った。
ダイアンはにっこり笑ってベルンに言った。
「それまで私のお相手をしてくださいますか、ベルン・デロント卿?」









