こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

97話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- side カーロン
暁の狼傭兵団の突撃隊長カーロンは、一週間ぶりに以前よりも痩せこけた顔でベイリーに到着した。
出発直前に、元恋人が他の男と一緒にいるのを目撃したのだ。
その後、一度も振り返らず一週間ひたすら走り続けたおかげで、彼は医療班が提示した時間よりずっと早く到着することができた。
そのせいで、今にも倒れそうな状態だったが。
「宿屋は…… どれどれ、ここにあるな。」
彼は疲れ切った体を引きずり、宿屋へ入った。
宿屋の主人が困惑した表情でカーロンに近づいた。
「申し訳ないが、しばらくの間、お客様を受け入れていないんだ。宿泊する部屋はないが、食事だけなら構わない。」
「え?主人、客がこんなに多いの?」
「銀光の馬騎士団が団体で泊まることになっている。すぐ隣にある宿へ行ってみるといい。」
「ふむ、仕方ないな。」
カーロンは深くため息をつき、疲れ切った顔で再び宿の扉の方へ向かった。
彼が扉の前に立ったとき——ドアノブに手をかけることなく、ゆっくりと扉が開いた。
「……あ。」
扉を開けて入ってきたのは、銀色の髪に紫色の瞳を持つ女性だった。
傭兵団ではよく見かけるズボンとシャツの装いだったが、腰には髪の色に似た銀色の剣を携えていた。
「申し訳ありません。通らせてください。」
「ああ。」
カーロンは呆然としながら、自分の前を通り過ぎる女性を見つめた。
「銀光の馬騎士団にあんな美女がいたか?いや、それよりも、あそこに女性がいたのか?」
彼は理解できないというように顎をさすった。
「確かに見覚えのある感じだ。目に馴染みのある体つきに、見たことのある顔立ち。このカーロンが一度見た女性を忘れるはずがない。」
女性は素早く2階へと向かった。
足取りを急いでいる様子を見ると、彼女もまた、カーロンの存在に気づいているようだった。
彼の肖像画はニュースに頻繁に取り上げられていたので、相手が彼を知っているのはそれほど不思議なことではなかった。
だが、彼自身は一体どこであの女性を見たのだろうか。
……待て、ニュース?
「ああ、ルイーゼ・ディ・クロエット!」
考え込んでいたカーロンは、突然目を見開いて叫んだ。
ルイーゼ・ディ・クロエットは、レイアード・ディ・クロエットと結婚した後、ニュースにたびたび登場した人物だった。
特に彼の本格的な亡命が始まってからは、忘れかけたころに何度も名前が取り上げられていた。
最近では、リンデマン大公との恋仲の噂が立ち、度々話題に上っていたが、いつからか肖像画すら出なくなり、単なる噂話として忘れ去られていた顔だ。
今の名前はルイーゼ・ディ・セレベニアだった。
「何だ、剣士だったのか?女剣士とは珍しい職業だな。」
カーロンは振り返った。
「印象がまるで別人のように変わっていて気づかなかった。でも、顔を除けば、あの雰囲気もどこか見覚えがある。いや、冷静ながらも鋭く洗練された動きもそうだし、特に腰に差していた剣の色が、鈍い鉄色ではなく、光沢のある銀色だった。」
鞘までもが白に近い銀色の剣は、極めて珍しかった。
女性に関して観察力の鋭い彼は、顎に手を当てながら再び旅館の扉を開け、外に出るために体を回した。
彼の頭の中に、女剣士に関する記憶が素早く駆け巡る。
あの女性と同じ体格で、彼を圧倒していたしなやかで素早い動き、正確な剣の運び。
さらに、完璧に馴染んだゆるやかな練習着の装いまで。
そして、あの銀色の剣。
ドアノブを握るカーロンの体がぴたりと止まった。
彼が手にすることのできなかった、勝者だけに与えられる『レンシアの剣』。
授与式の時に遠くから眺めた程度なら気づかなかったかもしれないが、あの剣を手に入れたい一心で剣術大会に参加した彼にとって、見間違えるはずがなかった。
「……レンシアの剣。」
彼は驚愕の目で再び振り返った。
2階へ向かうルイーゼの姿は見えなかったが、1階の食堂にいたある団員が、カーロンの様子をじっと見つめていた。
「まさか、あの人がベニーだったのか?」
彼の顔は驚愕に染まった。
ガタッ。
同時に、彼の言葉を横で聞いていたロビンが、驚きに満ちた顔で飲んでいたジュースをこぼした。
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食事を片付けたロビンは、すぐさまマクシオンのもとへ向かった。
「ルイーゼ嬢が剣術大会の優勝者ベニーだというのは本当ですか?」
「そうだ。」
部屋で剣を磨いていたマクシオンは、落ち着いた表情で答えた。
「そうなると、事態はずっと複雑になりそうだな。」
ロビンは両手で自分の頭を抱えた。
「皇帝がこの事実を知れば、戦略的な駆け引きを利用してルイーゼ嬢を自分の側に引き込もうとするでしょう。」
「エドワード様のおっしゃる通りなら、皇帝はまだルイーゼがベニーであることを知らない状態だから、当面は心配する必要はない。」
「でも、もし知られてしまったら?ルイーゼ嬢はすでに私たちのことをあまりにも多く知っています。もし皇帝が駆け引きを仕掛けてルイーゼ嬢を味方につけることになれば、私たちの損害は計り知れません。作戦を失敗するどころか、始まる前に全員処刑される可能性すらあるんですよ!」
「……もしそんなことが起これば、最悪の場合そうなる可能性もあるな。」
「命がかかった問題なのに、なぜそんなに悠長に構えているのですか?」
「今のところ問題はないし、ルイーゼは戦略的に皇帝側につくような性格ではない。」
「それでも万が一ということはないのですか?」
「ある日突然考えが変わってルイーゼが皇帝側についたとしても、私たちの情報を漏らすような人ではない。」
「副団長、それでもルイーゼ嬢と親しいからといって、感情だけで決める問題ではありません。人に対する主観的な評価を根拠にするのではなく、客観的な対策を考えなければならないのです。」
「その件についてはエドワード様と相談するようにしよう。」
「はい、必ず。」
「ところで、その事実をどうやって知ったのだ?騎士団内でその事実を知っているのは、私とエドワード様だけなのに。」
「カーロンという人物をご存知ですか?ある傭兵団の突撃隊長だったとか。その男がこの村に来ていました。さっき微妙な時間帯に、旅館の1階で食事をしていた時、その男が話しているのを聞きました。」
「おかしいな。カーロンは夜狼隊傭兵団の所属だったはずだ。その傭兵団は主に首都圏で活動していると聞いていたが。」
「傭兵だから治療も受けに来たのでしょう。近くの村にも寄れるし、別の治療所へ行く前に、疲れを癒すために少し休憩することもあるでしょう。それに、さっき見たところ、長距離を走り続けたのか、かなり消耗しているようでした。」
「なるほど。」
「とにかく、必ず陛下と相談しなければなりません!」
「もちろんそうするよ。そして、ロビン。」
「はい。」
「この事実は秘密にしておけ。騎士団の中で知っている者はごく少数だ。事態がこうなった以上、ヘンドリックとエイヴンくらいは知ることになるだろうが、それ以外の団員にはまだ明かすつもりはない。」
「承知しました。はぁ、それでは私は少し休ませていただきます。もうすぐ日が沈むので、また忙しくなるでしょうし。」
「お疲れ様。」
ロビンは力のない足取りで部屋を出た。
マクシオンの視線が窓の外へ向かう。
「ルイーゼが私たちを裏切るはずがない。」
それに、もし万が一、彼女があちら側に戻り、皇帝の味方についたとしても、マクシオンはエドワードのそばを守り続ける。
「エドワードはルイーゼを傷つけることができないだろうし、ルイーゼは一時的に道を誤ったとしても、結局は彼らのもとへ戻るだろう。」






