こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

66話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 危険極まりない環境②
「先生は……」
「はい?」
「先生は、外目の巨人と戦えますか?」
「もちろん戦えます。」
「勝てますか?」
「当然です。私は陛下のような怪物ではありません。ですが、負けはしないでしょう。」
イサベルはそっと唇を噛みしめた。
「それなら……人々を助けてください。」
「……」
ビアトンはしばらく黙り込み、イサベルを見つめていた。
少しの時間が流れた後、ビアトンが口を開いた。
「私は、皇女様がこう言うだろうとは思っていました。でも、そう言わないでいてくれることを願ってもいました。」
ビアトンは皇女のそばにいたいと思っていた。
暴動が起きれば、何が起こるか分からない。
暴動が激しくなれば、普通は暴徒が現れる。
そんな暴徒の中では、イサベルのような子どもがいつも被害を受ける。
それが、ビアトンが数多くの災害を経験して学んだことだった。
「でも、自分にできることをしなければ、皇女様には嫌われますよね?」
「私は皇族です。大きな権力を持っている者だからこそ、重い責任を背負うのが当然でしょう。」
イサベルはビアトンの手を握る。
「実はとても怖いんです。お父様とビアトン様が傷つくのではないかと、とても怖いんです。」
ビアトンの手は温かくて大きかった。
イサベルはその手をぎゅっと握りしめた。
「でも、怖くても不安でも、やらなきゃいけないことがあるって教わりました。」
「………」
「ビアトン様は強いでしょう。強い人にしかできないことをやってください。」
―私は自分のことは自分で守れます。
その言葉は口にしなかった。
ビアトンは片膝をついてイサベルと目を合わせた。
自分の手をしっかりと握っている、小さな子どものようなその手に、そっと口づけをした。
「お受けいたします、皇女様。」
ビアトンは北ではなく南へ向かった。
外城守備隊と力を合わせて、南側の外壁にいる巨人を処理する方がより効果的だと判断したからだ。
ビアトンが離れていくのを確認したイサベルは、慌てて北門へと走り出した。
「案内人をつけてください。」
「皇女様!」
ラヘルはイサベルが何を言っているのか理解できなかった。
イサベルは自分を北へ送ってほしいと頼んだ。
「私も未熟とはいえ魔法使いです。そして、皇族です。大きな権限を持つ者だからこそ、大きな責任も負うべき人間ですから。」
そこで、まずビアトンを先に行かせた。
ビアトンがそばにいたなら、皇族としての務めを果たすことはできなかっただろう。
「こういう時に隠れて守られるばかりを望むなんて、とてもとても恥ずかしいことです。」
「はあ……」
ラヘルラは深いため息をついた。
イサベルの言っていることはすべて正しかったが、すぐに納得できるものではなかった。
だからといって反論できるものでもなかった。
「……許可する。」
結局ラヘルラは案内役をつけてくれた。
幸いにも北側に向かうテイサベル転移ゲートが活性化されていたため、すぐに北へと移動できた。
――ドン!
巨大な爆発音が鳴り響いた。
幸いにも通りには人影一つなかった。
皆、地下避難所に避難した状態。
「ぼ、僕はもう戻ってもいいですか?」
「ええ、そうしてください。あ、それから城壁の上に上がる階段がどこか教えてもらえますか?」
「そ、そっちです。」
案内してくれた少年は怖がりながら再び転移ゲートに身を潜めた。
イサベルは唇をきゅっと噛みしめた。
「もう、私一人だ。」
「いいえ、一人ではありません。」
「き、記者さん?」
『耳打ち』のベテラン記者ユルリが後ろからついてきた。
「こ、ここは危険なのに、どうして来られたんですか?」
「私の知っている人が、私が忘れていた多くのことを改めて思い出させてくれたんです。だから私は来なければなりませんでした。真実を世界に知らせるためには、少しの危険は恐れてはいけません。」
ドン!ドン!
怒った外眼魔が巨人のように城壁を打っていた。
音を聞くだけで、今にも城壁が崩れそうだ。
イサベルは城壁の方を一度見てから、拳を固く握った。
『頑張ろう。』
ユルリはイサベルの姿を映像記録席にすべて収めた。
そっと歩みを進めようとしたそのとき、ブンッという音が聞こえた。
振り返ると、キムボルッコが積極的に意思表示をしていた。
【イサベル一人ではダメ】
【絶対にダメ】
[いつも一緒だよ。]
キムボルコルがイサベルの後をついてきた。
「キムボルコル!どうしてここにいるの?」
ここがどれだけ危険な場所だと思ってるの!
そう言おうとしたが、キムボルコルがドタドタッ!と駆け寄ってきて、イサベルの足元に顔を擦りつけた。
[勇猛なるキムボルコル、出撃!]
イサベルはキムボルコルを叱ろうとしたが口を閉じた。
『これがきっとビアトン卿の気持ちなのね。』
ビアトンにこっそり付けられてここに来たのだろう。
後で文句を言われるのは覚悟しておこう。
キムボルコルはキムボルコル特有の鳴き声をあげながら、イサベルの隣に座った。
ブンブン─!
キムボルッコと一緒にいると、妙に安心できる何かがあって、少しは気が楽になる気がした。
「ロベナ大公を閉じ込めた件は、あとでちゃんと叱るからね。わかった?」
イサベルは階段を上って城壁の上に登っていった。
『階段、めっちゃ高いな。』
北側の城壁が一番堅くて高いという。
その言葉は本当だった。
冗談抜きで、少し登山する気分だった。
ドン! ドン!
その間にも、大きな衝撃波と振動で何度もバランスを失い、倒れそうになった。
この城壁のすぐ向こうに外眼魔の巨人がいると思うと、手足が震えた。
「すごく怖い。」
それでも勇気を出した。
もうすぐ最後の階段だった。
最後の階段を上がって城壁の上に立ったとき、彼女はハッとして言った。
階段の踊り場。
そこにいたのは、他でもないビアトン卿だった。
「殿下なら、きっとこうすると思っていました。」
ビアトン卿は穏やかな表情で微笑んでいた。
いつも通り爽やかな笑顔ではあったが、どこかしら寂しそうにも見えた。
「でも、本当は来ないでいてほしいとも思っていました。」
「……ビアトン卿は南に行かれたんじゃないんですか?」
「私を南に送って、自分は北へ行きたかったんですね。そうでしょう?」
核心を突かれて、私は言葉を失ってしまった。
「これが私が皇女様を愛し、そして心配する理由でもあるんです」
ドン!
大きな衝撃音とともに、城全体が揺れた。
その衝撃で体のバランスを崩し、後ろに倒れそうになった。
ビアトン卿が素早く駆け寄って、私の腰をしっかり抱えて支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。まさかこんなに揺れがひどいなんて思いませんでした。」
いったいこの外壁の向こうには、どんな怪物がいるというのか。
1級魔物というのは、一体どれほど恐ろしい存在なのだろう。
この強大な震動を前に、私はひよっこ同然に怯えていた。
「殿下、足がガタガタ震えてますけど?」
「こ、怖いです……。」
「ただ王宮にいらっしゃれば、ずっと安全だったはずなのに。」
「それじゃ意味ないじゃないですか。」
ビアトン卿はニッコリと笑った。
優しい手つきで私をしっかりと立たせてから、私の頭を撫でてくれた。
「命ひとつくらい、少しくらい無駄になってもいいんですよ。」
「……。」
「それでも、無駄にしないよりは、無駄にしてでも動く方がいいですから。」
ビアトン卿は愛情と心配の入り混じった目で、私を見つめた。
外では怪物の咆哮が響き、城がぐらぐらと揺れていたが、少なくともこの瞬間だけは恐怖を忘れることができた。
ビアトン卿の温かい声が聞こえた。
「こうなると、皇女様を愛さずにはいられません。」
ああ、ちょっと。
今この状況に合ってるのかはわからないけど……。
ちょっとときめいた。
私、優しい人が好きみたい。
その時、城壁の上に何かがひょいと飛び上がった。
「キャッ!」
私は全身が震えた。
ものすごく大きな赤い目と目が合った。
その目はまるで太陽のように大きく、そして赤かった。
1級魔物の目玉は、私が想像していたよりもすごく恐ろしかった。
「よいしょ。」
ビアトン卿が私を抱きかかえて避けてくれた。
まるで空を飛ぶような感覚だった。
ドカーン!
私がいた場所が吹き飛んだ。
「たまにああやって跳ねて周囲をかき回すことがあるんです。」
「ねえ、ここって城壁の上だよね?めちゃくちゃ高い場所じゃない。」
「あれは巨人でしょ。身長がものすごく高いんだよ。」
ビアトン卿は私をそっと下ろして、小さく言った。
「このままだと、城壁がこれ以上もたないかもしれません。私は下に降りて、魔法と剣で外の巨人と戦ってきます。」
「私に頼みたいことがあるんですよね?」
「気づいてました?」
「はい。ここは数百年前、巨人の植民地だったそうです。」
そしてここは、他の場所よりも平均気温がずっと高いところです。
ボランティアの人たちが暑さで苦しんでいたのもそのせいでした。
ただでさえ暑い場所ですから。
「巨人たちは温かい場所がとても好きな温熱系魔物で、反対に冷たい性質にはとても弱いとされています。私は冷たい性質の魔法を多く学び、使ってきたので、お役に立てるかもしれません。」
「……巨人についてはいつ発表されたのですか?」
「血が冷えると動きが鈍くなると聞いています。本当はそのために私一人で来たんです。」
ビアトン卿は少し驚き、また少しは本当に死にそうな表情で私を見つめた。
「もっと時間があれば、きっとぎゅっと抱きしめていたでしょうね。」
「無事に帰ってきたら、必ず抱きしめてください。」
ビアトン卿は明るく笑った。
「その命令、必ず果たしましょう。」








