こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

50話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 転送ゲート②
パパが私に感動をくれて、そして私がラーちゃんを厳しく叱ってから、もう一か月が過ぎていた。
『本当に時間って早い。』
毎日が惜しいと感じた。
とにかく、私は手に握っていた転移ゲートの模型を見てパッと笑う。
「ついにできました!」
「そうか。本当にできたんだな。」
「テイソロンおじいちゃんも笑えるんですね?」
「何?」
「毎日、しかめっ面ばかりしてるから、笑えない病気かと思ってました。」
テイソロンおじいちゃんは再び顔をしかめた。
「世の中にそんな病気があるものか。」
「だからですよ。笑うっていいことですよ。ほら、またまたまたしかめっ面になろうとしてますよ。」
テイソロンはしかめっ面をしたものの、口元のかすかな震えは隠せなかった。
「それでも、生涯研究してきた交流伝達方式──実際のモデルを作った日じゃないですか。正直言って嬉しくなってもいいですよ。えへへ。」
「……」
テイスロン卿が理論だけで持っていたものを、実際のモデルに発展させた。
商用化の段階に進むにはまだ時間がかかるだろうが、とにかくこれを活用すれば、従来の移動ゲートの効率性をはるかに高めることができるはず。
「お母さんとお父さんに相談しないと。でもその前にビアトン先生に先にプレゼンの練習をしないといけませんね。」
私はビアトン卿の袖をつかんでしがみついた。
「急いでください。急いで見せてください。」
「お嬢様、いつこんなに力が強くなったんですか?」
私より背も高くて力も強いビアトン卿が、私にしがみつかれていた。
ビアトン卿は私を見て明るく笑っていたが、それだけでも私にとっては大きな励みになった。
私はテイソロン卿と共に作ったこの転移ゲート模型について説明した。
「……こうして、こうやって真実に近い形の転移ゲートを作ってみたんです。」
パチ!パチ!パチ!
ビアトン先生は何がどうであれ気に入ったらしく、すぐに拍手を送った。
「ブラボー!本当にブラボー!ですよ。」
「ええ、先生。もう少し厳しく評価してください。」
「これは厳しく評価した結果ですよ。この頑固で気難しいテイソロン卿を説得して、こんなものを作り出すなんて。さすが皇女様、素晴らしいですね。」
足を組んで座っていたテイソロンおじいちゃんも、また感心していた。
「なに? 聞こえたの?」
「えっ? 聞こえました? すみません、聞かせようとしたわけじゃないんです。」
テイスロンおじいさまはビアトン先生を一度睨もうとしたが、すぐに視線を逸らした。
ビアトン先生と向き合うと、自分だけが疲れることを経験から悟ったようだ。
「今日は良い日じゃないですか。お二人とも喧嘩しないでください。喧嘩したら今後はデザートあげませんよ。」
「……」
「喧嘩しませんよ、お嬢様。仲直りしましょう、親愛なるテイスロン卿!」
とにかく私はこのモデルを持ってテイスロンおじいさまと一緒に、母の執務室へと向かった。
ディルサ侍従長があらかじめ知らせてくれたおかげで、母の執務室には父も一緒にいた。
「お母様とお父様にこれをお見せできて嬉しいです。」
私はビアトン卿に説明したときと同じような方式で説明した。
「この小さな玉を人だと仮定しますね。こっちの転移ゲートからあっちの転移ゲートへ移動させるんです。そのとき使う魔力はこの小さな魔晶石で代用します。じゃじゃーん、こうやって玉があちらに転移しました。これをどうやってしたかというとですね……こうして……こうなったんです。」
剣術一筋の父は原理は理解できなかったようだが、母はある程度理解できたようだ。
母が言った。
「魔道の工学的な知識が足りなくて正確には理解できないけれど、結果論としてあなたが何をしようとしているかはわかったわ。つまり魔力の伝達方式を直流から交流に変えて、あなたが言う“インバーター”というシステムを活用して効率を最大化したってことね?」
「そうです!」
母が父を見つめた。
「実用化できるなら、すごい技術だと思います。陛下はどう思われますか?」
「皇后は皇后の仕事をなさい。私は皇帝の仕事をする。」
「わかりました。私は陛下だけを信じます。」
「私も皇后だけを信じています。」
当時の私は、父が何を言っているのかよく理解できなかった。
『皇帝の仕事?』
皇后の仕事と皇帝の仕事がどのように分かれているのか、正確にはよく分からなかった。
だいたいの印象では、母は財政や行政、そして外交に関する仕事を担当していた。
『でもそれって、全部お母様がやってるってことじゃないの?』
とはいえ、父もいつも忙しそうだったし、父の補佐官であるビアトン卿もかなり深刻そうだった。
母が言った。
「予算は支援してあげるから、一度実際の転移ゲートを実現してみて。」
「わかりました!既存の転移ゲートを利用して、エルベ山脈へ移動できるようにセッティングしてみます!」
「どのくらい時間がかかるかしら?」
「1か月くらいでできそうです。」
「そう、ママはうちの娘を信じているのよ。きっと上手くやれるはず。」
私に向けられたその信頼に、私は胸がいっぱいになった。
皇后としては予算やさまざまな手続きの支援をしてくれ、母としては揺るがない支えと確かな信頼を与えてくれた。
「でもあまりプレッシャーは感じないでね。最高の結果が出なくても大丈夫。ママにとっては、あなたのすべての過程が大切なんだから。」
母は、たとえ私がうまくできなくても、私に失望しないという確信をくれた。
うまくできたらそれでよし、できなければそれでもよし。
母の温かくて力強い眼差しは、私に自信を与えてくれた。
つまり、イサベルである母は、私という存在そのものを愛してくれているという確信だ。
前世では一度も経験したことのなかった満ち足りた感情が、私の中をいっぱいに満たした。
私は母をぎゅっと抱きしめた。
「お母さん?」
母も私を抱きしめ返してくれた。
母がいなかった私に、母ができた。
いや、もう7年も一緒にいるのに、それでも新たな感謝が湧いてきた。
「お母さんがいてくれて、本当に嬉しい。」
今日も、私には母がいた。
「私は本当に幸せな子です。」
永遠にこのまま暮らせたらいいな。
そんなふうに思えるほどだった。
・
・
・
そして、一ヶ月の時間が流れた。
実際の転移ゲートを完成させ、母と父の前に披露するその日。
私は自分の愚かさに気づいたと口にした。
私は驚いて言った。
「お父様、いえ、お父上ご自身が実演なさるんですか?」
今まで転移ゲートはあくまで理論上のものでしかなかった。
しかし、理論ではなく現実に迫ってくると、今まで見えなかったものが見え始めた。
『もし失敗したらどうしよう?』
転移ゲートへ向かって直接歩いていく父の姿が見えた。
父を見て、私はますますはっきりと感じた。
私は今、父のことが心配だった。
『私が作ったこのシステムのせいで、お父さんが大けがをしたら……』
あるいは次元の均衡に飲み込まれて、永遠に戻ってこられなくなったら。
そんな考えがよぎり、突然怖くなって体がぶるぶると震えた。
『まだこれは理論に過ぎない。人を対象に実験したことなんて一度もない。』
誰かが当然やるべきことだった。
でも、それが自分の父でなければいいのに――そんな利己的で恥ずかしい思いが頭をもたげてきた。
だが、父の表情はあくまで落ち着いていた。
「そんなに怖いのか?」
「そ、それは……」
「怖がることはない。こんなもの、なんでもないさ。」
お父さんは無表情のまま歩みを進め、転移ゲートの上に立った。
お父さんは平然としていたが、私はただただ怖かった。
『怖い……。』
頭では「安全なはず」と思っていても、それとは別に心は落ち着かなかった。
ひどい考えだけど、できることならお父さんじゃなくて他の人が代わりに行ってくれたらよかったのに、と思ってしまった。
『まったく、イサベル。誰かが実際に試さなきゃって、どうして思いつかなかったの?』
私はただ「転移ゲートを完成させた」という事実に夢中になって、肝心なことを見落としていた。
これは明らかなミス。
実務経験のないまま理論ばかり勉強してきた自分の限界に、胸が痛んだ。
『いっそ私が行こう。』
もし失敗したとしても、私は試作部隊員なのだから、それが一番ふさわしい。
いっそ私が実験に応じるのが正しいのではないかと思った。
「お父さん、私が……」
私が行くと言おうとしたその時、移動ゲートの上に上がっていた父が「ふうっ」と一息ついた。
そして再び降りてきて、私の前に立った。
片膝をついて私と目の高さを合わせてくれた。
「私はただ、父親としての務めを果たそうとしているだけだ。」
父の大きな手が私の頭に置かれた。
その手に魔法でも込められているかのように、私の心のざわめきが静まっていった。
「お前が自分を信じられなくても、私はお前を信じている。」
ふと見れば、父は母と同じ顔をしていた。
陽気な母とは違う雰囲気だったが、その心は同じだ。
私はそれをはっきりと感じることができた。
「…ああ、そういうことか。」
父は何かを思い浮かべたように言葉を変えた。
「俺じゃない誰かを行かせたら、ものすごく面倒になるな。」
志願者から募らなければならない。
実験に強制がないことを証明し、万が一の場合の損害に対して確実な補償を定め、契約書を書いて…などなど。
とにかく、手間がかかる。
「これが一番簡単で効率的な方法だ。お前は論理的な子だから、俺の言いたいことはわかるだろう?」
「でも……」
「それに、この国で俺より強いやつがいるか?」
その言葉はつまり、もし何か悪いことが起こったとき、父以上にうまく対応できる人はいないという意味だった。
「大きな力と権力には、より大きな責任と義務が伴うのが当然なのだから、お前は気にする必要はない。」








