こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

192話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- あの時、私たちが家族だったら⑥
まるで鏡写しのように同じ顔をした二人が互いを見つめ合った。
「お前……!」
「まさか。このタイミングで会うなんて。」
二人はお互いをじっと見据えた。
そのとき、ちょうどラトゥクの腕の中に抱かれていたナビアがむせた。
「ゴホッ!」
二人のラトゥクの視線が同時にナビアへと注がれた。
「どうした?痛む?何かあった?ていうか、またなんでコウモリみたいになってるんだ?」
ナビアは自分に向けられた茫然とした愛情をたたえた、いつもの優しいまなざしの父親を見てホッとした。
過去のラトゥクを相手にしていたときは、ずっと心が張りつめていたのだと感じた。
「どうやってここに来たの?」
ナビアが疑わしそうに尋ねると、ラルクは娘をしっかり抱きしめながら答えた。
「カオスの奴がそろそろ神界に行かなきゃならない。で、もしあの野郎がまたお前をいじめるかと思って見張りに来たんだ。」
ラルクはまるでそれでよかったと言わんばかりに、過去の自分を見つめて脅すように聞いた。
「お前、うちの娘にひどいことしてないよな?」
「……お前が何の権限で?」
「頭の血が乾く前に一言だけ言わせろ、ガキ野郎。お前、今まで長生きしたって思ってんだろ?とんでもない。これから生きる俺の千年は、お前が生きてきた年月の半分なんだよ。」
ナビアは自分でも気づかないうちに、ラルクの服の裾をぎゅっと握りしめていた。
ラトゥクは過去の自分自身にもとても無愛想だった。
「パパはなんでパパ自身にまでそんなに冷たいの?」
「アイツは俺じゃない。俺にそんな過去はない。」
こうやって無理を言うのがまったく同じなのに、どうして他人だと言えるんだ?
「下ろしてくれませんか。」
ラトゥクは娘の頼みに困った顔をしつつも、素直にナビアを下ろした。
ナビアは過去のラトゥクのもとへ歩み寄った。
「パパ、私はもう行かないといけないみたいです。」
「………」
過去のラトゥクは内心が読めない表情でしばらくナビアを見つめ、それからゆっくりとうなずいた。
「おい、そっち。」
彼は未来の自分に話しかけた。
「この子に保護魔法をもう一度かけてくれ。今の俺じゃそんな魔法、研究したこともなくて使えないからな。」
「こら、てめぇ。うちの娘を傷つける気だったんじゃないだろうな!」
「わたし、まったく傷ついてません。お父さんが何度も守ってくれたんです。」
ナビアの答えに、二人のラルクが同時に目を細めた。
未来から来たほうは「結局、あいつも認めたくはないけど俺が正しかったってことだな。ナビアの可愛さに骨抜きにされるのも無理はない」と思い、過去のほうは「チッ、そんなに態度に出てたか?」と考えていた。
「ナビア、こっちへおいで。お家に帰らないと。」
ナビアはなかなかこの場を離れられなかった。
この世界に残るラトゥクのことを思うと、心が痛んだ。
そんなナビアの気持ちを察したのか、過去のラトゥクが淡々と言った。
「未練を残さず、早く行け。」
この世界はもうすぐ完全に封鎖され、自分は新たな輪廻を進めることになるだろう。
それがナビアにどんな影響を及ぼすかわからなかった。
『とても危険だ。』
この場所も、そして自分自身もナビアには危険だった。
その時、未来のラルクが過去の自分に苛立ったように神経を尖らせた。
「どうせ最後なんだから、正直に言ってみろよ、ばか野郎。こんな機会はもう二度とないんだぜ。」
その言葉にカチンときたラルクが言った。
「俺が何を望んでると思ってる?」
正直に言えって?
このままナビアを送り出したくなかった。
まだ自分が本当に一人の子の“父親”だと感じてはいなかった。
ただ、ナビアがとても大切になっていた。
どうか彼女がいつも幸せでいてほしいと願うようになっていた。
自分の手でそうしてやりたいと思っていた。
「死にたいのか?」
「どうせ俺の娘なんだしさ……。俺だってこの子が不幸になるのは望んでない。だから、連れてってくれ。」
しかしこの世界ではナビアを幸せにしてあげることはできなかった。
今は別れが答えだった。
ナビアは涙で赤くなった顔でラトゥクをぎゅっと抱きしめた。
「お父さんと一緒にいられて幸せでした。本当に。」
「……」
ラトゥクは唇をぎゅっと結んだ。
正直になるのはなかなか難しいことだった。
でも今度こそ本当に最後だから。
「……私も。」
これまで生きてきた命の分だけまた輪廻してしまっても、それでいいと思えるほどに。
「行こう、ナビア。」
ラルクがいる空間が、目に見える混乱とともにぼやけていった。
いよいよ元の世界へ戻る時が来たのだった。
ナビアはずっと手を振り続けていた。
さようなら、お父さん。
混乱に呑み込まれる前に、かすかに返事が聞こえた。
「さようなら、ナビア。」
また会おうね。
視界は少しの間、暗くなったと感じたが、目を開けると自分が元の体に戻っていた。
場所はラルクの寝室だった。
「よく行ってきた?」
カオスはなにか面白そうに愉快な口調で声をかけてきた。
ラトゥクはせかせかと歩いてきてチェサレのシルクハットをぎゅっと押しつけた。
「こんなびっくりするものを無理やり押し付けておいてそんなこと言うか?」
「びっくりプレゼントだからさ。どう、気に入った?」
「……」
ラトゥクは正直、特に良かったとは言えなかった。
目の前で見た娘の痛ましい過去にはショックも受けた。
怒りと悲しみが入り混じった。
それでもこうして知ることができてよかったとも思った。
なぜなら、それはまさに今の彼らが向き合った現実だったから。
ナビアもまた、彼と同じ気持ちを抱いていた。
「素敵なプレゼントでした。」
―君にいいプレゼントをしたくて、ずいぶん悩んだんだよ。
ナビアは相変わらず何も言えずに、ただ沈んでいるラルクに近づき、にっこりと笑った。
「お父さんは、やっぱり昔も今もお父さんでした。いつも私を守って、愛してくれたじゃないですか。」
「……当然さ。僕の娘だから。」
ラルクは、過酷で孤独な日々を乗り越え、自分の手で立派に育った娘を見て、こみ上げる想いに胸が熱くなり、ナビアをぎゅっと抱きしめた。
「こうしてお父さんのところに来てくれてありがとう」
「私もそう思います。」
険しい運命を乗り越えて出会った二人は最初はぎこちなくて不器用だったが、今はさらに大切に感じられた。
カオスは一番大事にしている子供たちの心の荷を少しでも下ろしてあげたかのように、満足そうに笑った。
―結婚おめでとう、ナビア。
「ありがとうございます、カオス様。」
―ああ、まったく。ずいぶん長く神界を留守にしていたようだな。ニクスが早く戻れとうるさくてな。人間界の時間はまったく流れていないから、心配しなくていいぞ。
「さっさと消えて。」
神界では本当に騒ぎになっていたようで、カオスはきちんとした最後の挨拶もなく立ち去った。
ナビアは気が抜けたように深くため息をつきながらも、ふと自分がラルクを訪ねてきた目的を思い出した。
「そうだ、お父さん。結婚式の準備のことなんですけど……」
幾多の波乱を経て時は流れ、ナビアとクリードの結婚式当日。
クリードが直系の皇族であるため、結婚式は皇城の礼拝堂で執り行われた。
華やかで厳かな雰囲気の中、婚礼衣装に身を包んだ二人を見つめる来賓たちは、静かに感嘆の声を漏らした。
「どうしてこんなにお似合いなんでしょう?」
「二人の間に生まれる子がとても気になりますね。両親の美貌をそのまま受け継いだら、間違いなく王国一の美形でしょう?」
銀色の髪をきっちりとまとめて整え、頭にはダイヤモンドのティアラを載せたナビアは清楚で美しかった。
前髪をきちんと整えて反射するおでこときりっとしたまなざしのクリードも、いつもの冷たさは感じられず、とても幸せそうに見えた。
「お二人は夫婦の誓いを立て、生涯お互いを誠実に愛することを神に誓えますか?」
神官の言葉に、クリードは思わずラルクをちらっと見た。
神への誓いであると同時に、家族への決意でもあった。
ラルクは静かに笑った。
愛おしさと可愛さを見つめるまなざしに、揺るぎない愛情が込められていた。
胸が熱くなった。
そして二人の視線が交わった。
言葉を交わす必要もなかった。
このような賛辞なら何度でも言えるのだから。
「万歳です。」
二人が正式に夫婦になったことを宣言し、司式が終わった。
祝祭とはいえ、まるで沸き立つように集まった人々は皆、祝福の言葉を送った。
愛らしい夫婦の誕生に皆が喜びを分かち合っていた。
ナビアとクリードは互いの手をぎゅっと握り、笑顔を交わした。
やがて二人だけの世界に入り込んだように、ただじっと見つめ合い、周囲の視線を忘れていた。
『私、こんなに幸せでいいのかな?』
依然として、そんな疑問が一瞬よぎった。
でもそんな思いはすぐに消えて、感謝の気持ちが湧いてきた。
生きるということは本当に大変なことだった。
決して簡単には解けない宿題のようなものだった。でももう違う。
『やっと大人になった気がする。』
一度も経験したことのなかった年齢、二十歳。
今までの出来事はすべて初めての経験だったけれど、二十歳になることは特別だった。
年を重ねることは、この世で一番難しいことだったのだから。
「クリード、私いま幸せ。」
彼の微笑みが深くなった。
「うん。僕も。」
そして二人が唇を重ねると、歓声が響き渡った。
きちんと大人になれなかった私たちだったけれど、これからは一緒に大人になろう。
ナビアは目を開けて、涙でいっぱいの視線をクリードに向けながら言った。
この瞬間、言葉は多くいらなかった。
「愛してる。」
すると、まるで待っていたかのように返事が返ってきた。
「僕も愛してる。」
何の力もこもっていないただの一言なのに、世界がまるごとあたたかく、香り立つようだった。
お互いがお互いにとっての光だったから。
だからこそ、さらに完璧な、そんな9月だった。
<完結>







