残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【82話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

82話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • ごっこ遊び

イサベルは懐かしい顔と出会った。

「お姉さん!」

ラヘララを見つけたイサベルは、嬉しそうに駆け寄った。

「お姉さんじゃなくて叔母よ。」

「お姉さんの方が情があって好きです。」

「私との年の差を少しは考えなさい。」

答えるまで0.5秒もかからなかった。

「十五歳の差です。」

「まあ、計算が早いのね。」

「お姉さまと呼んではいけませんか?」

ラヘルラはイサベルの切実(?)なまなざしを振り払えず、ただため息をついてしまった。

「こほん、とにかく少しお話しできるかしら?」

「はい。」

ラヘルラはイサベルの部屋に入った。

『ずいぶん普通の少女の部屋だわ。』

宮廷で積極的に支援され、既存の政治パラダイムを変えるために宮廷が重点的に育てている「特級プレイヤー」の部屋にしては、とても素朴で可愛らしい。

白いレースのカーテンもそうだし、テーブルの上に並んだクマのぬいぐるみもそう。

そういうものを見ると、ただの普通の少女のように思えて、ラヘルラはなんだか不思議な気分になった。

そしてイサベルと他愛のない話を交わした後、本題に入った。

「ジルデル王国でもテイサベル移動関門システムを積極的に導入したいそうです。」

「本当ですか?」

「ええ。アルペアの影響力が大きくなっているのを感じているようです。」

「よかったですね!」

イサベルは心から嬉しそうに手を叩いた。

「そんなに嬉しいことなの?」

「ジルデル王国の労働者たちは月火水木金と働き詰めだと聞きました。テイサベル移動関門ができれば、その方々の労働強度も下がり、週末もできるはずです。そうなれば少しはもっと幸せになれますよね?」

「なるほど……!」

ナグネの外套を脱がせるのは冷たい風ではなく、温かい日差しだ。

ジルデル王国の根本とも言える労働──自分たちの力でじわじわと帝国の影響力を極大化していこうとしているように見えた。

これまで最強の武力だけを頼りにしてきたビロティアン帝国の統治が、新たなパラダイムに踏み込みつつあるということだ。

そこまで考えを巡らせたラヘルラは、思わず感嘆の息を漏らした。

「実に見事な計画……いや、発想ですね。」

しかしその時、声が響いた。

「ちょっと待て!」

ベッドの上に誰かがいた。

毛布を跳ねのけ、怪しげな人影が姿を現したのだ。

ラヘルラはもちろん、イサベルも仰天した。

「お、お前は……ミハエル皇子?」

「やあ、お兄様?」

とんでもない出来事だった。

あの兄さんは髪がぐしゃぐしゃに乱れたまま大きなあくびをしていた。

「一体なぜここにいるんですか?」

「それを言うならお前はなぜここにいるんだ?」

「ここは私の部屋ですから。」

「ここがお前の部屋なのか?」

ミハエルは周囲をきょろきょろ見回した後、真面目に首をかしげて微笑んだ。

「俺はなぜここにいるんだ?」

「……そうですね。兄さんがなぜここにいるんでしょう?」

ミハエルは「クヒヒ!」と大きく笑う。

「俺も知らん!」

私はミハエルが嘘をついているわけではないと確信していた。

ミハエルは元々そういうキャラクターだからだ。

ミハエルの頭の中には何の考えもない。

「ところで、そのおばさんは誰だ?」

「……」

私は思わずぎょっとした。

いやいや、たとえなんでも、七王の一人であるラヘルラ王の顔を知らないってどういうこと!?

しかも言葉がどうあれ、あの顔がどうして“おばさん”なのよ!

どう見てもお姉さん、いや、お姉さまだってば!

「お兄様!王に向かってなんて失礼なことを!」

「……え?」

「早く謝りなさい。」

ミハエルは少し眉をひそめた。

唇がへの字に突き出されたのは、どうにも納得がいかないという表情だ。

「おばさんにおばさんって言っただけなのに、なんでそれが失礼なんだ?」

「……」

「俺はミハエルと呼ばれても全然気分悪くないぞ!」

『ミハエルをミハエルと呼ぶ=おばさんをおばさんと呼ぶ。』

……と考えるのは間違っていなかった。

どこからどう説明すればいいのか全く見当がつかなかった。

『ランサー卿。一体いつ帰ってくるんですか?頭が痛いです。』

ランサー卿は出張に出て以来、まるで戻る気がないようだ。

幸い、ラヘルラ姉さんは特に不快そうではなかった。

「昔も今も変わらないな。」

「私をご存じなんですか?」

「5年前に会ったことがある。そのときも私を“おばさん”と呼んでいたな。」

「ひとつだけ聞いてもいい?」

「いいわよ。」

「“おばさん”って呼ばれると気分が悪いの?」

ラヘルラ姉さんは肩をすくめて苦笑した。

「親しみやすくていいじゃない。」

ミハエルが得意げな顔でこちらを見た。

『ほら見ろ?全然問題ないだろ!』とでも言いたげだった。

その自信満々の目に、私はまた返す言葉を失ってしまった。

ともあれ、ラヘルラ姉さんとの会話は特に支障なく続いた。

「……それで、私と一緒にジルデル王国へ行ってほしいの。皇后陛下の許可も下りたし、あなたが望むならいつでも出発できるわ。」

その言葉に、ミハエルが勢いよく手を挙げた。

「はい!」

誰も問題を出していないのに、ミハエルは答えを口にした。

「ミハエルも一緒に行く!」

「お前はなぜ?」

「ジルデル王国にカマン兄さんがいるじゃないですか。」

ああ、そういえば!

ジルデル王国の軍事力は非常に弱い方だった。

それでも貿易王国の要衝として十分に活動できたのは、ジルデル王国内にビロティアン帝国の騎士団が駐屯するベースキャンプが存在していたからだ。

かつてデイルサ市長が指揮していた「黒い鯨」の精鋭部隊が駐屯しており、そこに第三皇子カマンが派遣されていたのだ。

『うまくいけば会えるかもしれないね?』

選択式のとき以外、一度も会ったことのなかった、もう一人の血縁がそこにいるのだから。

ラヘルラ姉さんがにこりと笑った。

「お兄さんのこと、本当に慕ってるみたいね。」

「え?何のことですか?」

「だから、一緒に行きたいってことでしょ?」

「違いますけど?」

ミハエルの答えは真剣そのものだった。

「今なら、戦ったら僕が勝てる気がするんです。」

聞けば、最後に勝負したのは半年前だという。

いつ戦ったのかはともかく、今のミハエルは“兄を倒せる”という確信でいっぱいのようだった。

ミハエルはいつも活力にあふれていたが、今日は特に挑戦心に燃えていた。

最近見た姿の中で最も生気にあふれる姿だ。

「……自信満々ですね、お兄さん。」

「当たり前だ。俺は自信を失ったことがない。」

「お兄さん、カマン兄さんに勝ったことあるんですか?」

「今回は勝つつもりだ。ひひ!」

今回勝つつもりという言葉は、これまで一度も勝ったことがなかったという意味でもあった。

つまり、いつも自信満々に戦ったが、常に敗北してきたということだ。

「……何回負けたんですか?」

「さあ?三十数回?」

ミハエルが三十数回と言うのだから、実際は百回以上に違いない。

ミハエルはいつも都合の良いように記憶するから、自分の敗北の回数は少なく見積もって覚えているのだろう。

『百回も負けているのに、それでも揺るぎない自信を持てるなんて、不思議だな……。』

それでも、応援することにした。

「……お兄さんの自信は応援します。」

「俺だけを信じろ。」

何を信じろというのか分からなかったけれど、とりあえず信じると言ったら、ミハエルは気分が良さそうに「ハハハ!」と大声で笑った。

 



 

「姫様。私はいくつか急ぎの用事を片付けてから、後ほど合流いたします。」

ナロモルは処理しなければならない急務があるため、少し遅れて合流すると伝えてきた。

「荷物をあらかじめ用意しておきました。」

ユリはすでに立派な侍女の姿をしていた。

侍従長から厳しい訓練を自ら進んで受けたと言っていただけあって、その所作は侍従長とよく似た雰囲気を醸し出している。

実際、侍女の役割はユリを連れてくるための名目に過ぎなかったのに、ユリはその役割を完璧にこなしていた。

「ユリモールの支店のことでとても忙しいんじゃない?」

「何を言われても、私の第一の使命は皇女様をお守りすることです。支店のことは一時的に休業しました。」

そう言って、そっとナルモルの方を見やった。

「お金が第一の人にとっては、それが使命そのものなんです。」

「おまえ……!私だって皇女様のために……!」

ナロモルの体がビクリと震えた。

言い争いになりそうだったが、私の前だからか、ユーリと口論することはなかった。

『……仲は良いってことなんだろう?』

そう思うことにして、どちらかの味方をすることはしなかった。

ともあれ、私はユーリと共に出かけた。

アレナ宮の前にはすでに馬車が用意されていた。

私は御者のおじさんに尋ねた。

「狭すぎる道は通らないですよね?」

御者のおじさんは、少し強面でがっしりとした人だった。

「なぜそのようなことをお聞きになるのですか?」

「狭い道で、このように豪華な馬車に乗ってしまうと、一般の民に迷惑をかけてしまうかもしれませんから。」

「ご心配なく。ジルデル王国は比較的街路も広く、道も整備されています。」

「それは幸いです。」

「どこの家門のご令嬢かは存じませんが、品格がとても高いですね。」

──私が誰か分からないはずがない。

ここはアレナ宮殿であり、そこで育った幼い女皇族は私ひとりだけなのだから。

『誰の娘だから、こんなに品格が高いんだ!という意味ね?』

御者のおじさんは妙に感動していた。

『でも、なんだか様子がおかしい。』

全体的に、少し不自然な感じがあった。

私はその理由を知っていた。

『お父さんは、演技が本当に下手なんだから。』

──その御者のおじさんは、父だったのだ。

久しぶりにまた想像遊びを始めた私は、あの「みんな知っているようで、実は誰も知らない」世界観に上手く自分を溶け込ませることにした。

『八歳にもなってまだままごとが楽しいなんて?』

いつまでこんなごっこ遊びが面白いのか、自分でも分からない。

けれど、いつかはつまらなくなる日が来るのだから、今は思う存分楽しもう、そう思った。

ミハエル兄さんとラヘルラ姉さんは馬車の中に座った。

私はお父さん――いや、御者のおじさんの隣に座った。

移動門を一度通り、半日かけて走り、ジルデール王国の国境近くに到着した。

そこにはビアトン先生が待っていた。

「さあ、御者め、私に御者台を渡せ、御者よ。」

普段は御者をぞんざいに扱わないビアトン先生が、御者のおじさん(=父)に御者台を渡せとしつこくせがんでいた。

今日はなぜか勝者のような笑みを浮かべていた。

ビアトン先生もアッババースに忠誠を誓っているように見えた。

「おい、早く渡さないで何をしている?その席は私のものだ。今度は私の番だ、御者よ。お前は戻って御者の仕事をするんだ、御者!うははっ!」

「……」

御者のおじさんの体がわずかに震えているのが感じられた。

なぜか少し気味の悪い感覚が走ったが、それもすぐに消えた。

「早く行け、御者!今は私の時間だ!」

「御者さん!」

「……」

結局、御者のおじさんは手綱を渡して、ビアトン先生が私の隣に座った。

『どうしてこんなに複雑に行動するんだろう?』

どうして全員でぞろぞろ移動してきたのだろう。

別々に動いたほうが効率的なのに。

私はそれなりに合理的な理由を一つ思いついた。

『ジルデール王国では、このごっこ遊びを秘密裏にやりたいのだろう。』

皇帝の威厳というものがあるのだから。

だから「娘とごっこ遊びをしている」という事実を隠すために、役割遊びをしながら移動しているのだろう。

「姫様、馬車の中にお入りになって少しお休みください。あと二時間ほどで到着します。」

「眠くなんてありません。」

私は御者台に座り、外の風景を楽しんだ。

青々とした草原が遠く地平線まで広がっていた。

草と風が交わり、さらさらと心地よい音があたり一面を満たしていた。

空気はひんやりしていたが、ちょうどいい暖かさの陽射しが降り注いでいた。

顔を上げてみる。

柔らかな日差しに手を伸ばしてみると、目が細められた。

「幸せだ。」

前世では想像すらできなかった経験だった。

冬の初めに、こんな風に風を浴びながら旅を楽しめるなんて、本当に大きな祝福だ。

どれくらい時間が経っただろうか。

「到着しました。」

「……ん?」

気がつけば、私はいつの間にか眠っていたようだ。

私はビアトン先生の膝を枕にして横になっていた。

『いつ眠ってしまったんだろう?』

よくは分からなかったけれど、ビアトン先生が温かな魔力でまるで毛布のように包んでくれたのか、まったく寒くはなかった。

「ジルデール王国への入国手続きはとても簡単です。すぐに王城の中へ入りますよ。宿を先に手配してありますので、そこで一泊休んでから王城へ向かいます。」

ビアトン先生の案内のもと、私たちは高級ホテルに入った。

ところが、そのロビーで思いがけない顔と出会った。

「ほほほ、これはどなたでしょう?イサベル皇女様ではございませんか?」

それはロズイルド公爵の一人娘、レイナだった。

だが、レイナの態度や様子はどこかぎこちなく、不自然に見えた。

ミハエルはどこかへ姿を消していて、ラヘル姉さんは子供たちと一緒に遊んで──私の目には疲れているように見えたので──先に休ませてあげた。

ユリが気を使って不便に感じないよう、彼女を部屋へ送ったのだ。

だから私は自然とレイナと二人きりでバルコニーに立つことになった。

『うーん、なんだか様子が妙だな。どうしてだ?』

その疑問はすぐに解けた。

レイナの左手の薬指には、三つものダイヤモンドの指輪が光っていたのだ。

『あれを自慢したくて、ずっと手を掲げているんだろう?』

普通なら髪をかきあげるのに一秒か二秒もあれば十分だろうに──彼女の場合、前髪をかき分けて横に流すまでに、なんときっかり九秒もかかっていた。

『まったく、今も昔もわかりやすい人だね。』

私の視線が自分の手元に留まっているのに気づいたレイナが、ほほっと笑った。

「さすが皇女殿下の眼力はごまかせませんわね?」

「……え?」

「これはユルミエル家の秘伝によって鍛え上げられたダイヤモンドですのよ。ほほほ!」

「錬丹は炉火にかけて……」

「え?」

「いえ、なんでもありません。美しいですね。」

どうやら彼女は“錬丹”という言葉の意味を知らないらしかった。

ただ何かそれらしいことを言っただけだと考えるのが自然だろう。

「そうでしょう?ユルミエル家で作られたダイヤの指輪を手に入れるには、普通なら三年はかかるといいますわ。ですが、私は三ヶ月で受け取ったんですの!」

ユルミエル家という言葉を、ことさらに強調して口にしていた。

まあ、ユルミエル家は世間的に有名な名門だから、そういうこともあるだろう。

正直、私は特に感動しなかった。

宝石よりもトッポッキの方が好きだから。

「早く受け取られたんですね。おめでとうございます。」

「父上の手腕が素晴らしいおかげです。」

「……。」

まるで「うちのお父さんが一番なんだ!」とでも言いたげだった。

すると、思わず「いや、うちのお父さんの方がすごいんだぞ?」という言葉が喉まで出かかった。

なんだか妙に自尊心がくすぐられる……まあ、8歳の身体をしているせいかもしれない。

「もしダイヤモンドがご入用でしたら、ぜひおっしゃってください。わがロスイルド家はユルミエル家と長年堅固な関係を築いておりますので」

「本当に素晴らしいことですね。」

――退屈だった。

自分に興味のない分野の話を聞くのは、本当に苦痛だ。

ダイヤモンドの鉱物的特性だとか、炭素原子が正四面体の形で結合して非常に硬い性質を持つだとか、モース硬度が10だとか、そういう話ならよほど楽しめただろうに。

「さらに、このダイヤモンドはほのかな青みを帯びているんですの。ダイヤモンドが生成されるとき、青き風の女神ネラの加護が宿ったからだそうですわ。」

「……単に不純物が混じってそうなっただけでしょうに……」

レイナは得意げに笑った。

「不純物こそが、女神ネラの恵みを意味しているのですわ!」

「……特にロマンチックでもない名前ですね。」

「……。」

まあいい、好きなように解釈しろ。ただそれでいい。

私はレイナと会話するのに疲れてしまった。

もともとわかっていたことだが、よりはっきりした。

私とレイナは水と油だということが。

そのとき、不意に誰かが慌てて駆け寄ってきた。

「姫様!」

思っていたよりもずっと早く到着したナロモルだった。

 



 

 

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