こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

5話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑤
結局、暗殺者は現れなかった。
状況を見る限り、私の選択は悪くないようだ。
「原作を捻じ曲げることに成功した。」
あの原作を尊重する法則というものだろうか。
一応、そのような法則は存在しないように思える。
「ん?」
ふと、私はめまいを感じた。
意識を失う直前に毎回感じるめまいだ。
これが続くと、必ず看護師の先生方が慌ただしく動き回り、しばらくしてようやく目を開けられるのだ。
「怖い。」
しばらく忘れていた恐怖が私を襲った。
原作を尊重する法則だろうか?
原作を覆したからには、私に罰が降りかかるのだろうか?
「いやだ。」
こうして意識を失ったら、また病室に戻ることになるのだろうか。
目が覚めたら元の場所に戻る気がした。
お母さんも、お父さんも、誰もいない、薬品の匂いだけが漂う病院に戻るのではないかと。
原作通りに戻るのではないかと。
「嫌だ!」
みじめな思いをしたくなかった。
もう一度、あんなに苦しむのは嫌だった。
「お願いです。ちゃんと言うことを聞きますから。」
誰かがそう言った。
前世で罪を犯してこうして生まれ変わったのだと言うのか。
「もう罪は犯しません。21歳まででいいから生かしてください。本当に、本当に善良に生きますから。」
あそこに戻るのは嫌だった。
私は誰かに切実に願った。
「ここにいる人たちを私が守ります。私利私欲を求めたりしません。ただ21年だけ一生懸命生きます。とても大切な贈り物を残して去ります。それまででいいです。どうか、どうか生きさせてください。」
この夢のような時間が壊れてしまうのではないかと思った。
だから無理にでも意識をつなぎとめようとした。
「だめ……!」
私は意識を失った。
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そして、再び目を開けたとき、何かが違うと感じた。
見慣れない感覚。
いや、一度も感じたことのないぬくもりを覚えた。
温かい。
私は誰かに抱きしめられていた。
驚いたことに、お父さんが私を優しく抱きかかえていた。
抱きしめられている。
誰かが私を抱きしめてくれる人がいるということ、それが嬉しかった。
この人が私の「お父さん」だということ。
他の人にとっては当たり前かもしれないこの事実が、私にとっては奇跡のようだった。
前世では一度も感じたことのなかった父の腕の中は広くて暖かかった。
病院では決して経験することのなかった包容力。
「ふえええん!」
私の意識とは無関係に涙があふれ出た。
私はお父さんのシャツの前をぎゅっと掴んだ。
絶対に手放さないというように。
「ふえええん! えっこや(これは私のもの)!」
そう言いながらも突然、喉の奥が詰まるような気持ちになった。
『我慢しなくちゃ。』
ビルティアン皇帝は、もともと血も涙もない鉄血の皇帝。
どんなに赤ちゃんの体を持っていたとしても、泣き叫ぶ子供は周囲の目を引くものだ。
もう手放したくない。
私は必死に涙をこらえようとしたが、すでにあふれ出た涙は止まる気配がなかった。
お父さんは呆れたように苦笑いを浮かべながら言った。
「泣き虫な子だな。」
なんとなく母親に会いたくなった。
赤ちゃんがあんなにも母親を探すのは、本能なのかもしれない。
選択式が終わったのか、この場にはお父さんとビアトン卿だけが残っていた。
「とてもお疲れのようですので、私が抱き上げます。」
「そうしてくれ。」
ビアトン卿が私を抱き上げる。
その時、私は泣き止むことができた。
「私が抱くと、泣き止むんですね。」
そっと私を抱き上げると、ビアトン卿は微笑んだ。
「私の腕の方が安心できるようです、陛下。」
「君の腕が筋肉で包まれているからだろう。」
慎重に私を抱いたビアトン卿は、柔らかな手つきで私の背中を軽く叩いてくれた。
その慎重で優しい手つきに、私は心がほっこりし、体がリラックスした。
「ええ。筋肉で包まれた腕の効果ですね。」
私はいつの間にかビアトン卿の胸に頭を預けていた。
育児の達人であるビアトン卿の腕は、本当に心地よかった。
「赤ちゃん皇女様のためであれば、筋肉がどれほど疲れても構わない気がしますね。」
「……」
「私がしっかり抱いて部屋までお連れします。」
ビアトン卿は私を抱いたまま、慎重に足を進めた。
まるで雲の上に浮かんでいるような感覚だった。
ビアトン卿は私を抱きながら廊下を歩いていた。
彼がとても小さく呟いた。
「陛下のお顔に表情が出たようです。嬉しいですね。」
眩しいほどの褒める笑みが目に飛び込んできた。
彼は愛情に満ちた眼差しで私を見つめていた。
「それにしても、皇女様がこれほどまでに可愛らしいのに表情がないというのは、人間ではなく風船みたいなものですよね。」
私も思わず笑いがこぼれてしまった。
「ビアトン卿、好き。」
どうして好きにならない理由があるだろう。
こんなに優しくて繊細な人の設定が、かつては暗殺者であり剣士だったなんて信じられない。
これが作者様のミスではないのは明らかだった。
「本当ですか?」
「うん。」
ビアトン卿はどうしていいかわからない様子で、自分の頬を私の頬にそっと押し当てた。
屈強な成人男性の頬だったが、一点の粗さもなく、まるで滑らかな粉のような柔らかさだった。
ビアトン卿は私をベビーベッドに優しく寝かせた。
彼は私の耳に軽くキスをした。
ぷにぷにしたゼリーが耳に触れたような感覚だった。
『ビロティアン式の敬礼剣礼で挨拶して戻ろうか?』
剣に光る栄光。
「オルゴンは可愛さと輝く愛。」
誰かがこう言えばおかしいものだが、ビアトン卿が言うと非常に自然だった。
やはり言葉の完成は顔立ちにある。
『う……眠い。』
眠気を抑えることはできなかった。
ビアトン卿と挨拶を交わすことなく、眠りに落ちてしまった。
私は眠り、目を覚ましては食べ、食べてまた眠りという生活を繰り返した。
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数か月が過ぎた。
その間に、私の言語能力はぐんぐん成長した。
「お母さま! 抱っこして(抱っこして)。」
私の「抱っこして」という言葉に母は世界を手に入れたかのような笑顔を浮かべた。
「どうしてこんなに言葉が上手なの? この子はもしかして天才なのかしら? 皇宮の学者たちの間でも、これほど言語の発達が早い子どもは初めてだと言われたわ。」
「言語の発達だけではありません。感情を表現する方法がとても豊かで、しかも成熟しています。こんなに可愛いのに、大人びた雰囲気があるなんて本当に驚きです。」
ルルカは本当に情熱的に私を称賛してくれた。
そして称賛は赤ちゃんを踊らせる力があるようだ。
デンシルデンシル。
お尻がリズムよく動いた。
「それだけでなく、生まれながらの魔法の才能も素晴らしいです。聞いた話では、生まれつき魔法の才能がある子どもはミロテル魔法学院でも0.1%にも満たないそうです。」
「そう?」
「はい! 皇女さまは間違いなく天才です。」
母と乳母はいつも愛情たっぷりの眼差しで私を見つめていた。
私はその関心が嫌ではなかった。
いや、正直に言おう。
嫌ではないどころか、その関心が本当に本当に嬉しかった。
『私ってこんなに注目されるのが好きな人間だったんだ。』
そして、待ちに待った今日がやってきた。
待望の今日。
私はこの日のために毎日時間を見つけては練習していた。
「見て見て!」
私は胸とお腹を突き出しながらヨラヨラとバランスを取る姿勢を披露した。
ついにこの技を披露する時が来たのだ。
『腕に力を入れる!』
上体が徐々に持ち上がった。
母とルルカの目が大きく見開かれた。
「お、お母様! 今、皇女様が……!」
「あれはまるで腕立て伏せをしているみたいですね。」
私は腕の力だけで上体を持ち上げた。
しかし、これで体力テストは終わらなかった。
その状態で左腕を持ち上げた。
右腕だけでおよそ6kgの体重を支えたのだ。
『わあ、20歳でもできなかったことを、2歳でやってしまった。』
10歳の皇子たちが剣で筋肉を鍛えていることを考えれば、そこまで驚くことでもないのかもしれない。
そう考えると、そう特別なことではないのかもしれない。
そして、
ドサッ! と倒れ込んだ。
「痛っ!」
鼻から倒れ込んで痛かったが、最後の自尊心だけは守り抜いた。
「お母様! 皇女様が片腕で腕立て伏せをしたみたいです!」
正直に言うと、それは腕立て伏せではなく、ただ倒れただけだった。
しかし乳母の目にはそれが非常に大げさに映ったようだった。
「どうしてもビロティアン皇家の血を受け継いでいるからでしょうか? やはり皇女様は天才に間違いありません。」
ルルカは本気のようだった。
「まるで偉大な芸術家のパフォーマンスのようです。芸術にも深い造詣があることを見ると、本当にお母様に似ていますね。」
えっ、パフォーマンスアート?
全く予想外の褒め言葉だった。
「パフォーマンスアートだなんて……」
『……悪くないね?』
驚いたことに、その褒め言葉がやけに心に響いて嬉しくなった。
『赤ちゃんの体なんだから仕方ないよ。』
赤ちゃんの体は母や乳母の賞賛にとても弱いのだから。
実際、気分は良かった。
ただ、一つだけ厄介なことがある。
『お尻が少しじっとしてくれるといいんだけど。』
ぴょんぴょん。
お尻がまた動いた。
抑えられない感情が溢れたり、気分がとても良くなると、この体はぴょんぴょんダンスを踊る。
感情を隠したくても、お尻がどうしても反応してしまうのだ。
『まあ、まだ赤ちゃんだしね。』
お尻がぴょんぴょんと踊るささやかなことは、もう気にしないことにした。
少しの恥ずかしささえ我慢すれば済む問題だからだ。
『褒められる分にはいいじゃない。』
前世では一度も聞いたことがない母の褒め言葉を、どうしても聞きたかった。
『嬉しい。』
自信がむくむくと湧き上がる。
注目されたい欲求が爆発してしまった。
「もう一発!」
母と乳母が私に集中した。
いつも通り、この注目は恥ずかしく感じることはなかった。
「この技はこの腕だよ。」
今度は左腕を使ってみた。
そしてまた「ドシン!」と倒れ込んでしまった。
母と乳母は拍手をして楽しそうにしていた。
その笑顔と微笑みは本当に素敵だった。
おかげで私も幸せな気分になれた。
しかしその時、部屋の扉が開き、声が聞こえてきた。
「セレナ。お前は何をそんなに楽しんでいるのだ?」
その瞬間、部屋の空気が凍りついた。
鋭く刺さるような声だった。
『お父さん?』
選択式以来、久しぶりに聞くお父さんの声だ。









