残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【55話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

55話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • カッコいい皇女様③

イサベルは久しぶりにカリンと一緒に夕食をとることになった。

カリンが一口スープをすくって飲んだ後、スプーンを置く。

イサベルはカリンの様子をこっそり伺った。

「どうしたの?味がしない?」

「皇女様。皇女様が報道について理解が非常に高いことは知っております。ひとつお尋ねしたいことがあります。魔法使いたちは剣術帝国に対して『すべてを独占しようとしている』というフレームをかぶせています。ある者たちは、彼らを心底恐れています。なぜ魔法連邦は剣術帝国にこのようなフレームを仕掛けるのでしょうか?」

イサベルもスプーンを置いた。

やっぱり、カリンとの夕食はやはり快適ではなかった。

「大衆を一番簡単に動揺させられるのは、恐怖と憎しみ……ですか?」

答えたイサベルは少し驚いた。

この方法。

つまり、恐怖と憎しみによって帝国民を分裂させ、混乱に陥らせる方法は、最終的にカリンが南州アロンを相手にするときによく使っていたやり方でもあった。

イサベルはカリンの本心を正確に掴めず、なんとなく不安になった。

カリンが話を続けた。

「たかが移動ゲートのシステムひとつを改善しただけなのに、こんなにも騒ぎになるとは。これから皇女様が歩む道はとても狭く険しいものになるでしょう。」

「……そうでしょうか?」

「もしかしたら、皆が皇女様を指さして非難するかもしれません。」

カリンはそれを望んではいなかった。

イサベルが歩む道がいつも美しくあってほしい——それがカリンの願いだ。

「人は利害関係によって信じるものを選びます。あるいは、自分が信じたいことを選んで信じるのです。殿下のご意志とは関係なく、傷つく日が来るかもしれません。いいえ、きっとそういう日が来ます。たくさん。」

「………」

イサベルは確信した。

『やっぱりカリンは、ぬかりがないわね!』

ここで簡単に「そうですね、怖いです」と反応してしまえば、それは弱点を見せる行為に他ならなかった。

カリンは小さな弱点を突いて揺さぶる力を持っていた。

それは決して最終黒幕ではないから。

「最終黒幕は『ナルビダルの刻印』に深い関心を抱いている。したがって、何としてでも弱点を作り、イサベルを揺さぶるだろう。」

……という文言は、かなり主観的であった。

『私が本当に何もないことは、明らかよ。こういう時こそ、堂々として決断力ある態度を見せなきゃ。』

そこでにっこり微笑んで、毅然とした口調で言った。

「私が進もうとしている道が、狭くて険しい道になるとおっしゃいましたか?」

「そのとおりです。」

「でも、その道は長くはないですよね?」

そう言って右手首を差し出した。

ナルビダルの刻印。

その鱗が、次々と剥がれ落ちていた。

イサベルは7歳になり、7年分の喪が彼女の背後に積み重なっていた。

イサベルはまだ幼かったが、すでに人生の3分の1を生きていた。

「だから私は大丈夫です。狭くて険しい道でも、私は歩くと決めたんです。もうすぐ終わりますから。」

「……また。」

カリンは唇をそっと噛んだ。

イサベルのその落ち着いた決意が、カリンを悲しくさせた。

辛くても大丈夫だなんて。

それが短いから大丈夫だなんて。

カリンはその無謀な返事に胸が張り裂けそうだった。

少し腹が立った。

ブルル—— テーブルの上の食器が軽く揺れた。

イサベルは唾をじっと飲み込んだ。

『怒ってる。弱点を掴めなくて怒ってるのか?』

実のところイサベルも、カリンが単なる“最終黒幕”ではないと考えていたが、今のカリンが怒っている理由を正確に推測することはできなかった。

今のカリンが怒る理由はなかったのだ。

『わからない。理由なんてどうでもいいじゃない?』

ともかく重要なのは、“最終黒幕”が怒ったという事実。

最終黒幕であるカリンが言った。

「どうしてそこまで考えられるのですか?」

「数日前、エルベ山脈の兵士たちに会ったのです。」

ルカイン兵長とエルベ山脈の兵士たちとの出会いの話をしてくれた。

「皆さんが私に『ありがとう』と言ってくれました。私がしたことなんて大したことじゃないと思うのに、希望を与えてくれてありがとうって。私が与えたのはほんの小さな関心だったのに、その小さな関心が世界を変えるって言ってくれました。だから私は嬉しかったんです。」

「……」

「誰かにとって私の関心が希望になるなんて。その言葉が本当に嬉しかったです。」

誰かの関心が、誰かにとっては希望だった。

それは前世のイサベルも心から感じたことであり、今ではその経験を他人と分かち合えるようになった。

「本当に素晴らしいことだと思います。」

カリンには弱い姿を見せてはいけなかった。

イサベルは揺らぐことなく、しっかりとした態度でカリンを見つめてにっこりと笑った。

カリンは依然として唇をしっかり閉じたままイサベルを見つめていたが、やがて何かを決心したように口を開いた。

「ぜひとも確認しておきたいことがあります。」

彼女の表情は無表情ながらも真剣で冷徹だった。

まるで“最終黒幕”の表情そのもののような。

そのためイサベルは少し緊張したまま、カリンの言葉を聞いた。

「テイサベル移動ゲートの駆動原理に関する質問です。」

カリンはテイサベル移動ゲートの駆動原理について、詳細に質問を投げ始めた。

これは本来、学者の間ではタブーとされていた行為。

相手の技術を密かに奪おうとする行為とみなされていたからだ。

『でも、私は知る必要がある。』

ビロティアンには、ミロテルの魔法連邦と魔塔について自分より詳しい者はいない。

イサベルのために、イサベルの技術が本当に光を放つためには、ミロテル魔法連邦出身の彼女自身が直接行動する必要があると考えた。

それならばテイソロン、イサベルの技術についてしっかり把握する必要があった。

「インバター技術について、もっと詳しくお聞かせください。」

カリンとイサベルはすでに何度も「インバター」技術について会話し、情報を共有していた。

大まかな内容は把握していたが、もう少し具体的で正確な理論が必要だった。

それでこそ学会に出席して、イサベルの理論が正しいことを証明できるのだから。

イサベルが口を開いた。

「その……つまり、インバターはマナの圧力と周波数を変えることが目的なんです。」

「つまり、マナを誘導する魔力誘導伝導体を回転速度から定義する必要があるのではありませんか?」

イサベルはぎくりと驚いた。

あまりにも基礎的な内容なのでうっかりしていたが、実は見逃してはいけない重要な部分でもあった。

『そうよ。落ち着いて。』

「誘導電動機の回転速度を N、極数を P、周波数を F、スリップを s と定義します。」

イサベルはノートに書き始めた。

カリンが見るに、その手はとても小さく繊細だった。

しかし、内容まで繊細とは限らなかった。

N=120×fP×(1−s)[rpm]N = \frac{120 \times f}{P} \times (1 – s) [rpm]

イサベルが話を続けた。

誘導電動機の極数は固定されており——つまり、周波数を変化させて、インバータを通して意図した回転速度を得ることができるんです。」

「意図した回転速度を得ることができる……。」

カリンは目を大きく見開き、イサベルの言葉をすべて頭の中に刻み込んだ。

見ている間ずっと感じていた。

これは決して幼い子供が思いつけることではない。

カリンは驚きをぐっと飲み込み、再び尋ねた。

「インバータを用いた速度制御を数式で表すと、どうなりますか?」

イサベルはペンを取り出し、紙に数式を書き始めた。

NS=120fp[min−1]N_S = \frac{120f}{p} \quad [\text{min}^{-1}]

会話はしばらく続いた。

テイサベル移動ゲートに適用された理論は、これまで存在しなかったか、あるいは存在していたとしても、既得権を持つ勢力によって徹底的に無視されてきたものだった。

「よくわかりました。かなり体系的に整理されていたのですね。」

「わ、わたし……うまくできてましたか?」

イサベルは慎重にカリンの表情をうかがう。

ところがカリンは、イサベルが思いもよらなかった言葉を口にし始めた。

カリンはスプーンをいじりながら言った。

「もちろんです。」

「えへへ、褒められちゃった。」

「……」

カリンは、にこにこと笑うイサベルをじっと見つめた。

たったひと言の称賛にあれほど嬉しそうなイサベルを、カリンは必ず守ってあげたいと思った。

カリンにとって、あの微笑みは何よりも大切だった。

「私は、その笑顔を守ろうと思っています。」

「……え?」

「い、いえ、なんでもありません。」

「さっき、はっきりと……」

「何も言っていません。」

カリンの顔が赤くなった。

彼女は魔力を操作して、顔に集まった血液を全身に均等に分散させた。

顔が赤くなったのを気づかれないようにするため、冷静の魔法を使ったのだ。

あわてて顔色を元に戻したカリンは、真剣な表情でこう言った。

「もう一度、ミロテル魔法連邦に行ってこなければならないと思います。」

「またですか?」

イサベルはカリンをミロテル魔法連邦に送るのがあまり気が進まなかった。

いつ、どこで、どうやって最終黒幕に目をつけられるかわからないからだ。

最も警備が厳重な皇宮に一緒にいるのが、最も安全な選択肢だった。

「どうしてですか?」

「私がいなくなったら寂しいですか?」

「寂しいです。そばにいてくれたら嬉しいんです。」

「どうしてですか?」

イサベルはカリンの前では絶対に嘘をつかない。

中途半端な嘘をついたら、すぐに見抜かれる確率が高かったからだ。

「先生がそばにいてくれないと、安心できない気がするんです。」

「……私は、そんなに信頼できる人間ではありませんよ。」

カリンの耳たぶがまた赤くなる。

「とにかく、私もテイサベル移動ゲートに関連した理論が認められるように最善を尽くします。」

イサベルが作ったテイサベル移動ゲートと、それに関連する理論を正式に登録し、その有効性を証明しようとした。

だからイサベルと深い対話を交わしていたのだった。

それは、すなわち魔法使いたちとの戦いを意味することでもあった。

『もしかしたら私は裏切り者として見なされるかもしれない。』

テイサロンもまた、同じような立場だった。

かつては期待された人材だったが、既得権のために危険な罪を被ってエルベ山脈から追放されたのだったか。

『いや、裏切り者とみなされるだろう。ミロテル魔法連邦から追放されるだろう。』

それは当然の成り行きだ。

既得権益者たちは、自分たちが独占している権利を手放そうとはしない。

平凡な人々に魔導文明の恩恵が渡ることに反対しているのだ。

それは「希少であるからこそ価値がある」と考える選民思想によるものだった。

『きっと買収や圧力も入ってくる。あるいは皇女様の技術を盗んで、ミロテル魔法連邦にとって有利にするかもしれない。』

カリンの目に怒りが宿る。

『絶対にそんな結末は見たくない。』

彼女は本来、闘い・支配に特化した人物として設定されていた。

小説の中でのカリンは、南方のアロンや剣術帝国ビロティアンを相手に戦争を繰り広げていたが、今のカリンはミロテル魔法連邦の魔法使いたちと戦うことを決意していた。

最終黒幕としての本能的な戦意が呼び覚まされ始めた。

彼女の左唇の端がピクピクと動いた。

離れたところでその姿を見たイサベルは、思わずビクッと驚いた。

『えっ?このタイミングでどうして?』

物語の終盤、カリンが誰かとの戦いを考えたり、私情の決断を下そうとする時、カリンの左唇がピクピクと動くという設定。

そして、それだけではなかった。

「彼女が覚醒したとき、周囲の人々は自然とそれを察知した。空気が変わった。彼女の雰囲気が変わり、彼女は以前とは違う人になっていた。」

小説の内容が現実になっているようだった。

明らかにカリンであるのに、まるで別人のようだった。

ただ見ているだけでも、はっきりと違いを感じ取れるほど、何かが大きく変わっていた。

イサベルの後ろで「おぉぉっ…」という小さな感嘆の声が上がった。

『なぜ今になって最終黒幕が形成されてるの?』

背筋がぞくっとした。

 



 

 

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