悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【133話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

133話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 最悪の方向

公爵家の人々はそれぞれ役割を分担した。

公爵は爆発に関する噂の封じ込みに動き始めた。

幸いなことに、最近公爵家が密かに再建計画を進めているという話は皆が承知していたため魔法薬に関する事故として処理することもできた。

そのため、魔導士ボルドウィンが屋敷に派遣され、「再発防止のために調査を行っている」と報告がなされた。

ロニは普段どおり外交の任務を続けていた。

ロレッタのことが心配でたまらなかったが、表向きは何事もなかったように穏やかな笑みを浮かべて過ごした。

クロードはというと、かつてメロディが行っていた処方を思い出し、“安定剤”としての役割を持つオーガストを呼び寄せるため、サミュエルのもとを訪ねた。

幸いにも、サミュエルと皇帝との関係が改善していたおかげで、外部への同行許可をすぐに得ることができた。

もしそうでなければ、城の外に連れ出すことすら難しかったに違いない。

そして最後に、ジェレミアはロレッタの部屋に描かれた巨大な魔法陣の上に彼女を寝かせ、その体に溜まった魔力を徐々に吸い上げていった。

ロゼッタが目を覚ましたのは、その翌朝のことだった。

「……ジェレミアお兄様?」

彼女は目をしばたたかせながら、ゆっくりと体を起こした。

「わたし、夢を……見たの」

「よく思い出すんだ、ロゼッタ・ボルドウィン」

ジェレミアは冷ややかにそう言い、ロゼッタの目の前に立ったまま一歩も引かなかった。

「夢じゃなかったと思う」

「ああ」

彼はロゼッタの両頬をつかみ、青い瞳を近くから覗き込んだ。

その動作が“観察”や“実験”の一環であることは、ロゼッタにもすぐに分かったので、黙ってそのままにしていた。

「お前……一体」

ジェレミアが眉間に皺を寄せ、何かを探ろうとしたその瞬間、ロゼッタがぼんやりした表情のまま口を開いた――。

「お兄様、あの音……あの日とまったく同じだったの。馬車の中で聞いた、あの音よ。」

「そうだろうね。」

「クロードお兄様は?お兄様はあの日……」

「兄上は大丈夫だ。それより――口を少し開けてごらん。」

ロレッタが小さく口を開けると、ジェレミアはその中を丁寧に観察した。

「自然の力が薄い土地で何百年も過ごしても、これほど魔力に侵食されることはないはずだ。」

「……私も、お母さまのようになってしまうの?」

怯えの混じった問いに、ジェレミアは静かに微笑んで答えた。

「父上と兄上がきっと解決策を見つけてくれる。それを取りに行っているところだ。」

「解決策って……メロディが来るの?!」

期待のこもった声に、ジェレミアは少しだけ苦い笑みを浮かべて頷いた。

「ヒギンズがすべての問題を解決してくれるわけじゃない。」

「……なんだ、違うのね。」

彼女が失望して杖を放した瞬間、ジェレミアは爆発的にあふれ出した魔力の気配に思わず目を見開いた。

幸い、魔法陣が即座にそれを吸収したため、昨夜のような事態にはならなかった。

ロゼッタ自身も何か異変を感じ取ったのか、驚いて身体を強ばらせている。

「……い、今。また……そうなったの?そうでしょ?」

「ああ。」

重々しく返ってきた答えに、ロゼッタは怯えながら問いかけた。

「わたし……どうしてこんなことになっちゃったの?なにか悪いことをしたの?」

「フィシスに関してはいくつかの要因がある。それをすべて説明するのは……そうだな。」

ジェレミアは腕を組んだまま、しばし思案に沈んだ。

「私は“最小限の均衡”という説を支持している。」

「均衡……って?」

「魔法使いは自然の力を取り込み、自分の思うままに利用しているだろう?」

ロレッタが首をかしげる。

「ということは、自然の力に“利用される”側の人間も存在しなければならない、という理屈さ。」

「世界の均衡を保つために……ってこと?」

「その通り。だから個々の善悪や道徳とは無関係なんだ。」

ロレッタはそれを聞きながら、「私が悪いことをしたせいじゃないの?」という自分の問いに対する答えだと感じた。

ジェレミアが“君のせいじゃない”と言ってくれたことで、胸の奥が少し軽くなるのを感じた。

最近、悪い考えばかりが頭を占め、そのせいでこんなことになったのでは――と不安だったからだ。

「……なるほどね。」

ジェレミアはロレッタの髪をやさしく撫でながら、何度も静かに微笑んだ。

「どう見ても、噴き出す魔力の質感が妙に馴染み深いな。」

「し、質感……?」

「ああ。魔力は結局、本人そのものに他ならないからな。」

ジェレミアが杖を軽く弄ぶように回すのを見て、ロゼッタは胸の奥に小さな不安を抱きつつ、ひとつの質問を切り出した。

「……もしかして、お父さまがわたしの塔への立ち入りを禁じていたのって……」

「君の体質を自覚させたくなかったんだろう。理由は分からないが、自覚のないフィシスが魔法使いと一緒にいると、ろくなことが起こらないからな。」

驚いたロゼッタが目を大きく見開いてジェレミアを見つめると、彼の目が一瞬で細く鋭くなった。

「……おまえ、まさか。」

「ち、ちがう!」

ロゼッタは凍りついたように杖を握りしめた。

「違うって、何が違うって言うの?」

「だ、だから、それは……!」

ロレッタが慌てて身を起こした瞬間、服の裾のあいだから小さな砂糖瓶が転がり落ちた。

「わっ!」

驚いたロレッタが拾おうとしたが、ジェレミアのほうが一瞬早く手を伸ばした。

「これは……」

彼が瓶を持ち上げ、光にかざして観察する間に、ロレッタは彼の腕を掴んで叫んだ。

「それは砂糖よ!ただの砂糖!私が作ったの、何でもないの!」

「砂糖……?」

ジェレミアは首をかしげながら瓶の蓋を開け、中身を床にあけた。

すると、甘い香りがふわりと漂い、透明な粒のひとつがジェレミアの魔法陣の上に落ちて淡い緑の光を放った。

ロレッタのものではない、純粋な魔力の反応だった。

ジェレミアはハッと何かに気づいた。

「ヒギンス!」

その呼びかけに、すぐさま扉が開いた。

おそらく彼は扉の前で、万が一に備えて待機していたのだろう。

「はい、旦那様。」

「魔塔に連絡して、すぐだ。」

よくない予感がしたロゼッタは、凍りついた両手を合わせて祈り始めた。

「お兄様、お願い、それだけはダメ!」

「そうはいかない。今こうなってしまったのは全部――!」

「違う、それは絶対に違うの!」

悲鳴をあげるロゼッタを無視して、ジェレミアはヒギンスに命令を続けた。

「エヴァンを連れてこい。すぐにだ。」

「かしこまりました。」

「ダメよ、お兄様。エヴァンだけは絶対にダメ!」

ロゼッタは勢いよく立ち上がり、ヒギンスの後ろ姿を見つめながら、その場に倒れ込むように悲鳴を上げた。

彼女の体から溢れ出した魔力の奔流によって、ジェレミアの部屋全体が一瞬、激しく揺れた。

 



 

クロードはサムエル公爵に許可を得て、オーガストを公爵邸へ連れてきた。

オーガストは、爆発で廃墟と化した屋敷の跡地に立ち、魔法陣の上に力なく横たわる少女を見つけて、深く息を呑んだ。

「この子が……クロード兄さんの?」

オーガストが慎重に問いかけると、クロードはしばし黙り込み、静かにうなずいた。

「ロレッタ・ボルドウィン。――以前から話していた少女です。そして……」

クロードはオーガストと視線を合わせた。

「殿下が助けてくださらなければならない子なのです。」

「……それで、私はいったい何を……すれば?」

「特別な行動は必要ありません。殿下がそばにいるだけで、すべてが落ち着くと仰っていました。」

ロゼッタとオーガストが一緒にいれば、魔法陣や魔術師の助けがなくても、魔力の支配から抜け出すことができるだろう、と言われていた。

「ジェレミア、オーガストがロゼッタのそばにいる間、しばらくは魔法陣の影響を断ち切ることができると思うか?」

クロードの頼みに、ジェレミアは息を呑んで彼を振り返った。

「ロレッタの体に宿った力は、魔法陣でようやく暴走を抑えられる程度です。つい先ほども、その影響でジェレミア様の部屋が揺れたではありませんか。」

「兄上、以前、王宮の建物を爆破した少女のことを覚えておられますか?」

クロードの問いにジェレミアがうなずき、彼は静かに説明を続けた。

「その時も、私はこの魔法陣を使って少女の魔力を吸収し、安定させたのです。」

「だが今は状況が違う。オーガストがそばにいれば――」

「違います!わかっておられますか?今のロレッタを支配している力は、あの時の五倍――いいえ、それ以上です!」

ジェレミアは息を呑み、言葉を詰まらせた。

「私の持つ力の総量をはるかに超えています。このままでは、私ではその限界すら測れません。それほどのことなんです! その意味が分かりますか?」

「……もし失敗した場合、建物が崩れる程度では済まないということか?」

「ご理解いただけて幸いです。」

「だが、ジェレミア。私はロゼッタを本当に鎮められる人物が存在するかもしれないと思っている。」

ジェレミアは腕を組んだまま少し顎を引き、真剣な面持ちで言った。

「ええ、そうかもしれません。毒には必ず解毒剤があるという説を考えると、全くあり得ない話でもありません。」

彼の視線はオーガストに向けられた。

その少年が本当に「解毒剤」となり得るのか、疑うような表情で。

「兄上がその少年を選んだ理由はあるのですか?」

「私が選んだわけじゃない。」

クロードは肩をすくめた。

「それは――メロディ嬢の選択に委ねるしかありません。」

ジェレミアは視線をわずかに逸らしながら、静かに言葉を続けた。

「……彼女はこれまで、一度も誤った選択をしたことがありません。驚くほど正確に答えを導き出すのです。ロレッタのことも、きっと同じでしょう。」

少しの間考え込んだのち、ジェレミアは床に描かれた魔法陣のそばに両手をかざした。

「眠っている間に行うほうがいいでしょう。ロレッタの意識がない状態の方が、より安全ですから。」

クロードはオーガストのほうを見た。

少年は兄たちの会話の意味を完全には理解していなかったが、何か重大なことが起ころうとしていると悟ったらしく、かすかに震えていた。

「……オーガスト。」

クロードが呼びかけると、少年は青ざめた顔で小さくうなずいた。

「お、お願いしなくても……大丈夫です。」

彼は両手をぎゅっと握りしめたり開いたりを繰り返しながら、震える手を何とか抑え込んだ。

「ぼ、僕も一度くらいは誰かの……役に立ちたいって思ったんです。兄さんや、ミンディみたいに……」

ミンディの名前が出た瞬間、不安で揺れていた少年の瞳がぴたりと止まった。

「ミンディは困っている人を絶対に見捨てませんから。」

オーガストは魔法陣の中心にいるロゼッタへ、慎重に歩み寄り始めた。

「は、はじめまして、お嬢様。」

ぎこちなく挨拶したあと、少年はロゼッタの傍らにそっと腰を下ろした。

オーガストは力なく垂れていたロゼッタの手を優しく握りしめ、同時にジェレミアは魔法陣の力を解除した。

床を覆っていた翡翠色の光がすうっと消えていく。

部屋は静まり返った。

幸い、爆発や暴走は起きなかった。

ロレッタの様子に、確かな変化はまだ見られなかった。

ただ、それが彼女の異常なほどの回復力ゆえなのか、それともオーガストがそばにいるおかげなのか、判断することはできなかった。

ジェレミアはゆっくりと立ち上がり、慎重な足取りでロレッタのそばへと歩み寄った。

(……確認しなければならない。)

彼女の中で渦巻いていた不安定な力が本当に鎮まり、安定したのかどうか。

ジェレミアはそっと手を伸ばし、ロレッタの額にかかる髪を払いのけた。

その指先の下で、彼女のまつげがわずかに震えるのを感じた。

そして――

「……ジェレミア。」

普段の彼なら決して使わない、柔らかく、切実な声。

その瞬間、扉が勢いよく開き、エヴァンの必死の叫びが響いた。

「お嬢様っ!」

ジェレミアが振り返ったとき、部屋の壁一面を埋めていた本が一斉に棚から落ちた。

ロゼッタに向かって本が飛んできた。

ジェレミアは両腕を広げ、咄嗟にロゼッタとオーガストを抱き寄せた。

「危ない!」

しかし、飛んできた本は力を失ったように途中で止まり、床にトン、トンと音を立てて落ちた。

本が落ちた場所ごとに再び魔法陣が発動し、翡翠色の光を放っていた。

ジェレミアは再びエバンを振り返った。

エバンは息を荒げながらこちらを見ていた。

幸い、素早く魔法陣を展開できたようだ。

ジェレミアはひとまずロゼッタとオーガストを抱きしめていた腕を解いた。

「実験は失敗です、陛下。」

オーガストは目に見えて肩を落とし、落胆の色を浮かべた。

「役に立てなくて……すみません……。」

「これは陛下の落ち度ではありません。よく考えてみれば──」

ジェレミアは腕の中のロゼッタをそっと見つめた。

うっすらと目を開けた少女は、まだ夢と現実のあわいにいた。

「このような体質の者は、感情に強く影響を受けやすい傾向があります。」

ジェレミアは静かに言葉を続けた。

かつて公爵夫人が力を覚醒させたときも、彼女は深い不安と恐怖を抱いていたという。

それほどまでに繊細な力なら、感情と結びつくのも当然のことだ。

エヴァンの母もまた、同じような傾向を持っていた。

「もし……誰かが“存在するだけで”この力を抑えることができるとすれば――それは、きっと……」

その推測が終わるより早く、ロレッタの身体が小さく震え始めた。

ジェレミアがすぐに体を支え、背をさすると、ロレッタは胸の奥から押し出されるように苦しげな咳をした。

「……っ、コホッ! ハァ、ハァ……!」

息が止まりそうなほどの咳と荒い呼吸が続き、やがて彼女の唇から鮮やかな赤い血が滲んだ。

「お、お嬢様!」

エバンが慌てると、ジェレミアは彼に向かって鋭く叫んだ。

「魔法陣を維持しろ!」

揺らいでいた魔法陣の光が再び元に戻ったとき、ロゼッタはもう一度血を吐いた。

「……気が狂いそうだな。」

ジェレミアは自分の肩にもたれかかるロゼッタの背を撫でながら眉をひそめた。

状況はどんどん最悪の方向へと進んでいった。

 



 

 

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