悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す

悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す【67話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

67話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 歓迎できない相手

ユリアに関する噂は良いものではなかった。

それでも人々は、聞かなかったふりをするどころか――むしろ噂を否定しながらユネットを利用していた。

その様子を耳にしたプリムローズ公爵は、怒りを露わにした。

「ただの噂だとでもいうのか……この私が、いや、それ以上にあの子が、プリムローズ公爵家が笑いものだと?」

「残念ながら、その通りでございます、公爵様」

「家門を没落させた張本人が売っているものだと知りながら、それでも買うのか?一部ではなく、皆がだと?」

執事は感情を交えない声で報告を続ける。

それを聞くにつれ、プリムローズ公爵の顔は次第に赤く染まっていった。

混乱するほどに、誰もが知るような噂が広まり、ユリアがプリムローズ公爵家から追い出されたと公表された。

誰もが注目する状況。

プリムローズという名札を外したユリアが、うまくいかなければ面目が立つはずだった。

それなのに、あれほどユリアの悪評をばらまいたにもかかわらず、まったく通じないとは……。

「公爵様。ユネットの化粧品は、他の何にも代えがたいそうです」

その報告を聞いたプリムローズ公爵は、込み上げる怒りのままに、目の前の皿を投げつけた。

ガシャーン!

料理ごと飛んだ皿は大きな音を立てて砕け散った。

厨房にいた使用人たちは、互いに顔色をうかがい合った。

「貴族どもだけでなく、平民にまで……」

「ユネットが及ぼす影響力は、実に大きいです」

「それが執事であるあなたの言うことか!その影響力がプリムローズ公爵家より上だとでも?」

確かに、公爵自身もユネットの名は知っていた。

そして、どれほど莫大な利益を上げているのか、その影響力も……。

「くそ……」

プリムローズ公爵家に逆らえばどうなるのか。

没落した者の末路がどれほど悲惨か、これでもかと見せつけてきたはずだった。

それなのに……ユリアは家を出たにもかかわらず、何事もなかったかのように、むしろ順調に勢いを伸ばしているのではないか?

『とりわけ、私が与えたあのネックレスなど不要だと言って、すぐに売り払ったと聞く。これを放置しておけば、公爵家の体面は地に落ちるぞ』

いっそ最初から、素行の悪い娘をかばっている、あるいは様子を見ている――そういう形にしておくべきだったのではないか、と考え始めていた。

……そうするべきだったのかもしれない。

根拠もなく噂を広めれば、むしろ自分たちのほうが恥をかくことになるのだから。

「はぁ……」

ユネットの影響力が、まさかここまでとは。

世界がひっくり返るようなことでも起きない限り、どんな権力にも屈しない――そんな勢いだった。

公爵家の圧力にさえ、まったく揺らがない。

もはや皇室や神殿が動かない限り、止められないだろう。

「正直に申し上げますと、リリカ様が偽化粧品の件で訴訟を起こされて以降、化粧品の成分に関する議論が広まり……」

「つまり、それでユネットの安全性がより証明されたということか?そんな報告を今、私に聞かせるつもりか!」

プリムローズ公爵の怒声にも、執事はただ静かに頭を下げるだけだった。

そうだ。執事に当たり散らしても意味がないことくらい、彼自身が一番わかっていた。

だが、それでも……こんな状況になるとは、まったく想像もしていなかった。

(落ち着け。落ち着くんだ。ユネットはただ公爵家の権力に屈しないだけじゃない……もともと皇室とも関係を築いている――)

その事実を思い出した瞬間、背筋にぞくりとした寒気が走った。

(まさか……これも最初から計算していたのか?こうなることを見越して動いていたと?)

……いや、違う。

(単に“美容品”ではなく、生活必需品としての地位を確立した基礎化粧品だったから、ここまで広がっただけだ)

プリムローズ公爵家を継いだ彼にとって、この家門こそがすべてだった。

――「私にとって、あなたを父と呼ぶのは今日が最後です」

だがユリアは、それすら必要ないと言わんばかりに、冷ややかに立ち去った。

その背中が、何度も何度も脳裏に焼きついて離れない。

混乱していたのは、プリムローズ公爵だけではなかった。

報告を共に聞いていたジキセンも怒りを露わにしていたが――この状況に最も衝撃を受けていたのは、やはりリリカだった。

二人と同じ席で食事をしていたリリカは、執事の言葉に何一つ返せなかった。

食事が喉を通らず、胸の奥が詰まるように締めつけられる。

それでも「苦しい」と口に出すことはできなかった。

“聖女”と呼ばれる自分が、そんな弱音を吐くわけにはいかないのだから。

治せない姿を見せるわけにはいかない――それが“聖女”としての矜持だったからだ。

だが、リリカが持っているのは癒やしの祝福ではなかった。

ましてや神聖力でもない。

それはただ――他人に病を移す力に過ぎなかった。

(ユリア……あの子がユネットの代表だって?それなのに、何の打撃も受けていない?私は……私は“聖女”なのに……?)

知らせを聞いた瞬間、押し寄せてきた負の感情を抑えきれなかった。

衝撃で体は痛み、弱りきった身体は精神までも蝕んでいく。

(ユネットは……私に偽物の化粧品を掴ませて、没落へと追い込んだ場所じゃない……)

“ミュージカル”は順調に進んでいると聞く。

リリカの人生を見て、ユリアに対する見方を変え始めた者も――一人や二人ではなかった。

……それでも評価は、むしろ上がっていた。

自分の妹に、自分で作った化粧品を渡さず、偽物を流通させたと訴えた――その相手こそが、ユネットの代表だったのだから。

(“聖女”である私があんな目に遭ったのに、それでもあの化粧品を使うっていうの……?)

ただプリムローズ公爵家を追い出された、その事実だけで、自分の勝ちだと思っていた。

ユリアを嘲笑いたい気持ちを抑え、イバフネ教に連絡したのも、その延長だった。

――「よくやりました。あの不出来な姉と継母が追い出されたことは、聖女様にとっても良いことです」

神官長もまた、リリカの立場が高まることを喜んでいた。

だからこそ――すべてが順調に進んでいると、そう信じていたのに。

ジャコブを手に入れたリリカは、今この瞬間を楽しんでいた。

公爵家で窮屈に過ごしていた頃も悪くはなかったが、今とは比べものにならない。

あの頃は「可愛らしい令嬢」「愛らしい令嬢」程度の評価だったが――今は違う。

向けられる視線には、明らかに“敬意”と“崇拝”が混じっていた。

それなのに。

ほんの数か月前までは、愚かで扱いやすい存在だと思っていたユリアに、ここまで足を引っ張られるとは。

(公爵家を出ていった今こそ、あの子を完全に潰しておくべきね)

そう思いはしたが、自分で手を下すつもりはなかった。

以前、自ら動いて訴訟沙汰になったことを思い出すと、今でも歯噛みしたくなる。

――だが今は聖女。使える“手”はいくらでもあるのだから、無理をする必要はなかった。

(こうなった以上……噂なんかに頼らず、直接手を打つべきね)

ちょうど思い当たることが一つあった。

(そういえば……狩猟大会のとき、使えそうな駒がいたわね)

リリカの誕生日の宴で、ユリアはとても良い贈り物をしていた。

(ベイラ伯爵家の令息に連絡を取る)

自分の誕生日のとき、ユリアが自分に仕掛けた“あの一手”を、そのままそっくり返してやるつもりだった。

つまり――男を利用して打撃を与える。

そう決めたリリカは、すぐに立ち上がり、切実さを装った文面で手紙を書き始めた。

[ユリアお姉様は、家門を追われてから大変苦労しているようです。どうかどなたかがそばにいて、正しい道へ導いてあげられればと思うのです。]

ユリアを説得してプリムローズ公爵のもとへ戻らせることができれば、ビエイラ令息を“協力者”として考えてもいい――そう持ちかける内容だった。

(ユネットの代表?それならマルセル・ビエイラという駒は、ユリアにより強く食いつかせる餌になるはず。悪くないわ)

あの女が、よりにもよって皇太子の隣に立つなど――あり得ない話だった。

ユリアは以前のように、そこまで好意も抱いていない男に執着する程度でちょうどいい。

ビエイラ令息とユリアの関係が強まれば、彼女と皇太子に向けられていた視線も、再び自分へと戻ってくる。

(我ながら、いい一手ね)

 



 

「プリムローズ公爵家とイバフネ教が結託して噂を流した――そういう話だったけれど、ユネットはまったく揺らがなかった……」

思った以上に、あの二つはすぐに手を結んだ。

もし私がプリムローズ公爵の言う通り、ただの“貴族の娘”でしかなかったなら――危なかったはずだ。

“聖女を追い詰める悪女”として。

あのまま事態が悪化していれば、前世のように家族の手にかかって死ぬ結末を迎えていたかもしれない。

あるいは今回は、命を落とさずとも、母まで巻き添えにして破滅していた可能性すらある。

(揺らがないと思っていた。ユネットは代わりがきかないし、人々の生活に深く根付いているから)

予想はしていたが、それでも――公爵家ほどの権力を敵に回しても揺るがないと確認できたのは、大きな安心だった。

前世とは違う。

――私が、そう変えたのだから。

「今回は違う。お母様を守って、私も生き延びるの」

自分がしてもいないことで疑われ、誤解される――それなのに人々がそれを信じない。

こんなにも心が軽くなるなんて、思ってもみなかった。

この喜びを誰かと分かち合いたい。

けれど、「お母様を守れたから嬉しい」なんて言葉は、かえってお母様を悲しませてしまいそうで、口にできなかった。

(お母様以外で、私が本音を話せる相手は……)

――すぐに首を振った。

(……あの人とは別。今日は誰にも会わないほうがいい)

つい先ほど、私は皇太子殿下に「今日は会うのが難しい」と連絡したばかりだった。

仕方がなかった。

約束は守りたかったけれど、今の状況ではどうしても無理だったのだ。

時間が足りなかった。

(こうして私が揺らがずにいられたのは、エノク皇太子のおかげなのに……)

約束を破ることになってしまったけれど、それでも今日という日を、誰よりも待っていたのは他でもない私だった。

(今日は、私の誕生日だから)

エノク皇太子には誕生日を伝えていなかった。

それでも、誕生日に「会いたい」と思える相手がいること自体が、すでに贈り物のようなものだった。

けれど――今はそれどころではない。

医薬事業の立ち上げが目前に迫り、やるべきことが山積みだった。

錬金術師ギルドへ赴き、状況を整理しなければならない。

ギルド長にはある程度話してあるとはいえ、当事者である自分が直接行くのとは重みが違う。

(誕生日なんて……お母様以外、誰も祝わないものだし)

(祝ってくれる人もいないのに……意味なんて持たせなくていい)

エノク皇太子が、私の誕生日だと知って会おうとしたはずもない。

私はそのことを頭から振り払い、仕事に意識を向けた。

(ユリア・プリムローズ……狩猟大会のとき、解毒薬があればと何度も思った。もう二度と同じことを繰り返さないためにも)

もちろん、急げばいいというものではない。

薬はすでに形にはなっているが、十分な検証期間が必要だ。

それでも、これまで惜しまず投じてきた資金のおかげで、成果を出すまでの速度は確実に上がっている。

(皆を失望させたくないから、私はここまで必死でやってきたんだろう)

「……そろそろ、会社の名前も決めないと」

どうやら今日のうちに、錬金術ギルドに少し顔を出しておいた方がよさそうだった。

ギルド長は母の名を冠しており、さらに公爵夫人が公爵家を出たという噂まで広まっている今、混乱しているはずだから。

そうして錬金術ギルドへ向かうことを決め、邸宅を出た、そのとき――

「ユリア令嬢」

ここで会うはずのない男の声に、思わず足を止めた。

「……ビエイラ卿」

彼は暗い表情で、私の前に立ちはだかっていた。

一年にたった一日しかない、私の誕生日。

誰かに会いたいと思っていたはずなのに、目の前に現れたのは、まったく歓迎できない相手だった。

 



 

 

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