悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【119話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

119話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 新天地

メロディがベルホルドで腰を落ち着けるのは、簡単なことではなかった。

幸い、この地の人々は外部の人間に対して無条件で強い拒絶反応を示すわけではなかったため、暮らしていく分には問題なかったが、仕事を見つけるのはなかなか難しかった。

考えてみれば、身元もはっきりしない若い娘に、いきなり仕事を任せるというのはかなり勇気のいることだ。

そんな行き詰まった日々を過ごしていたある日、メロディは親しくなった女官の娘、ミンディの一時的な世話を任されることになった。

ミンディはロレッタと同年代の少女で、貴族出身のメロディの立ち振る舞いに憧れ、いつも彼女のあとを追いかけていた。

二人はすぐに親しくなり、やがてメロディはミンディに勉強を少しずつ教えるようになった。

教える内容は、数学・歴史・芸術と幅広い。

そして、月日が流れたある日――一人の男性がメロディを訪ねて屋敷を訪れた。

彼は「ワイリー・ニール」と名乗り、自分はベルホルドとその周辺を巡回する神殿の司祭だと説明した。

その後、彼は個人的にミンディに学問を教えているのが本当にメロディかを確かめに来たらしい。

「……もしかして、私、何かいけないことを……?」

メロディは慎重な口調で尋ねた。

彼女は神殿が村の子どもたちに教育活動を行っていることを知っていたため、その点で干渉してしまったのかと心配したのだ。

「いえいえ、そんなはずが。どうぞ、お茶を。」

ワイリーは穏やかな笑みを浮かべ、慌てて手を振った。

「ミンディが初めて勉強に興味を示したのが、とても不思議だったそうです。」

彼は最近、ミンディが他の子どもたちの勉強を手伝うほど変わったという話をしてくれた。

「ミンディから聞きました。あなたがこの地に腰を落ち着けたいと考えていると。もしよければ、神殿でお手伝いをしていただけないかと思いまして。」

彼は「手伝い」という言葉を使ったが、その内容からして実質的には「雇用」に近いものだった。

給金こそ少なかったが、食事と住まいが保証されるという点は非常に魅力的だった。

ただし、もともと公爵家と神殿との関係があまり良好ではなかったことが、少し気にかかった。

「もしよければ、司祭様にお会いになってみませんか?司祭様もあなたにとても関心を持っておられるようです。」

ワイリーの勧めに従い、メロディは静かに席を立った。

この申し出を逃すわけにはいかない――彼女にとって、それは新しい道を開く貴重な機会だった。

 



 

メロディが去ったあと、屋敷の中で静かに過ごしていたロレッタは、最近になって急に活動的になり始めた。

その顔には久しく見なかった生気が戻り、ロニは思わず肖像画家を呼びつけた。

「今のこの表情を、すぐに描かせなければ!」というのだ。

「そういえばお嬢さま、昨日、新しいドレスをご注文なさったとか?」

肖像画家はキャンバスを前にロレッタをスケッチしながら、穏やかに話しかけた。

「ええ、そうなの。急なことだったけど、あらかじめ仕立ててあったものがあったから助かったわ。ただ気分転換しているだけよ。それに、ブーツと乗馬服も新調したの。」

「後で、お嬢様が馬に乗っている姿も描いてみたいですね。」

「うん、いい考えね。こんなにおしとやかな姿を描いても、みんな私のことを嘘つきだなんて思わないでしょ?私、絶対に気後れなんてしないもの。」

ロレッタは高いソファの上で足をぶらぶらさせ、画家は小さくクスクスと笑った。

「私は、ただソファに座っているお嬢様の肖像を描いているわけではありません。もしそうなら、こうして会話しながらスケッチをする必要もありませんから。」

「じゃあ、何を描いてるの?」

「私が残したいのは、お嬢様特有の“気品”です。この絵を見る誰もが、今のお嬢様をはっきりと思い浮かべられるような……そんな絵にしたいんです。」

「気品を……描けるの?」

ロレッタは、長く座っているのが少しつらそうに身じろぎした。

「ええ、もちろん描けますとも。私たちは“どんなものでも”描けますから。」

“どんなものでも”という言葉に、ロレッタの心はふと遠くへ飛んだ。

メロディのあたたかさ、エヴァンの優しさ――そんな感情のようなものを絵にできたら。

「でも……あたたかさや優しさって、どう描けばいいの?どんな色で、どんな形なの?」

画家はしばし鉛筆を置き、代わりにそっと紅茶のカップを差し出した。

「お嬢さまも、描きたい“誰か”がいらっしゃるようですね。」

「……わからない。でも、少なくとも絵なら“見ることができる”。触れる気がして、いいの。」

「なるほど。――では、公爵様にもお伝えしておかねばなりませんね。」

「……えっ、え?な、なにを?!」

ロレッタが慌てて聞き返すと、画家は意味ありげに微笑みながら答えた。

「“インスピレーションの源が見つかりました”と、です。私が絵を描いている間、お嬢様ご自身も“その絵”を描いていらっしゃるのだと思います。温かさと優しさの絵を。」

 



 

結論から言えば、画家は嘘つきだった。

少なくともロレッタはそう思っていた。

どれだけ頑張っても、メロディを描いた肖像画には“温かさ”なんて欠片もなかったし、エヴァンを描いた肖像画にも“優しさ”のようなものは少しも感じられなかったのだ。

それでもロレッタは、一人で彼らを描く時間がとても好きだった。

メロディの瞳はどんなふうだったか、エヴァンの鼻はどんな形だったか……そんなことを思い返しながら、じっくりと考えに没頭するのがたまらなく心地よかったのだ。

『今度エヴァンが遊びに来たとき、絶対見せてあげよう!』

上手に描けたわけではなかったが、エヴァンはきっと喜んでくれるに違いないと、ロレッタは胸を弾ませた。

絵を描き終えたロレッタは、満足げに筆を置いた。

絵に注いだ時間の分だけ、相手のことを思っていたのだ。

手を丁寧に洗ったあと、彼女は珍しく自ら厨房へと向かった。

普段なら台所の仕事にはあまり関心を持たないロレッタだが、今日は事情が違った。

――エヴァンが、ここに来るのだから。

魔塔にいた頃、エヴァンはよく自分の作ったお菓子を分けてくれた。

今度はロレッタが、そのお返しをしたい。

せっかくなら、少し特別なものを。

できれば、自分の手で作って贈りたい――そう思ったのだ。

「そうよ、あるはずだわ。」

ロレッタは厨房のメイドに両手を合わせ、真剣な表情で頼み込んだ。

「ねえ、私にも作れるお菓子ってない?」

「……お嬢様が、ご自身でですか?」

メイドは目を丸くし、思わず聞き返した。

「うん……作ってみたいんだけど、いいかな?」

「もちろんですとも!」

侍女の一人がぱっと笑顔を見せ、ロレッタに小さな前掛けを手渡した。

いつも部屋で静かに過ごしていたお嬢様が、こんなふうに笑って歩み寄ってくるのは本当に久しぶりのことだった。

「たとえそうでなくても、大公閣下から“お嬢様がご機嫌になられることであれば、何でも構わない”と仰せつかっております。どんなお菓子を作ってみたいですか?」

ロレッタは魔塔に行くたびにエヴァンからもらっていたお菓子を思い出した。

ミルクとチョコクッキー、そして星型のキャンディ。

ミルクは買ってくればいいが、クッキーは少し難しそうだ。

『キャンディがいいかも。ガラス瓶に詰めれば、エヴァンに魔塔まで持っていってもらえるし、何より見た目がとても可愛いし!』

ロレッタは両手をそわそわと動かした。

「かわいい砂糖菓子を作って、ガラス瓶に入れられたらいいな。つらい時や疲れた時に、一粒ずつ取り出して食べられるように。」

「それはとてもいい考えですね。お砂糖を溶かして宝石のように作る簡単な方法を知っています。もしかして修道士たちにプレゼントされるのですか?」

「いや、違うの!」

「えっ……そうなんですか?」

「それがね。」

侍女が詳しい事情を尋ねると、ロレッタは少し困ったようだった。

『そんなふうに思われるなら、いっそおじいさまたちにあげるって言えばよかった。』

とはいえ、お菓子作りを手伝ってくれている侍女に「いらないよ」と冷たく言うこともできなかった。

『エバンにあげるって言ってしまったら、私が魔塔に忍び込んだことがバレてしまうかもしれないし……。』

悩んでいたロレッタの視線の先に、シアが通り過ぎた。

去っていくイサヤの向こうに、マルンの姿が見えた。

彼と視線が合うやいなや、マルンは口の形だけで「隊長!」と呼び、明るい笑顔で敬礼をしてきた。

それを見たロレッタは、まるで良い考えを思いついたかのように目を輝かせた。

「……そうだわ……あ、あの、マルンにあげるつもりだったの!」

しかし、嘘をつくのに慣れていないロレッタは、言葉を発した瞬間、顔が真っ赤に染まってしまった。

ところが、その様子を少し違う意味で受け取ったひとりの女性が、驚いた顔でロレッタを見返してきた。

まるで「信じられない」と言わんばかりの表情だった。

「マルンにあげるって……今、あそこにいるあの方のことをおっしゃってるんですよね?
カンナンコンの壺を大切そうに抱えて、敬礼している、あのイサヤ・マルンのことを……」

その女性が疑わしげな視線を向けるのを見て、ロレッタは目に力を込め、ぐっと歯を食いしばった。

「う、うん、そうだよ。」

ロレッタはイサヤに向かって、軽く会釈をしてみせた。

彼は嬉しそうに体を揺らしながら、両手をいっぱいに広げていた花束を高く掲げたあと、くるりと回って再びその花束を抱きしめた。

その微笑ましい様子に、息を呑んで見守っていた侍女が、恐る恐る確認するように再び問いかけた。

「……“あの方”のために、お嬢様が手作りで砂糖菓子をお作りになる、ということでございますか?」

「うん!」

侍女は両手で自分の顔を覆い、小さな声でつぶやいた。

「お嬢様は、もっと厳しく目が高いお方だと思っておりましたのに……。」

それもそのはず、ロレッタのまわりには立派な伯父たちが三人もいた。

しかも彼らはみな、ただひとりの末娘であるロレッタを溺愛しており、侍女からすればロレッタが心を寄せる相手などいるはずがないと思っていたのだった。

明らかに、普通の男ではないとずっと思ってきた。

いや、イサヤ・マルンは、どこかしら「普通の男」とは違うところが確かにあった。

だが――幼い少女の初恋相手にふさわしい、純真で優しげな人物かと問われれば、それは断じて違う。

「マルンがどうかしたって?すごく働き者じゃない!あそこ見て、今なんて、カンナンコンの花瓶を投げて割った後、三歩も下がった位置でその花瓶を受け止めたのよ!」

ロレッタはケラケラと笑いながら、窓の外を指差した。

その言葉に釣られて外を見てみると、イサヤは花瓶を抱えたまま、体をくねらせてポーズを取っていた。

ロレッタがそれを面白がっているのが、見ていてもよく分かった。

大切なお嬢様のためなら、どんなに滑稽な真似だっていとわない――そんな想像もできなくはない。

だが、彼女の心はどうしても納得しなかった。

……いや、どう見ても、あれは軽薄すぎるではないか!

「また花瓶を投げたんだ!今度は何個割るつもりかな?」

ガンガンと音を立てて転がった花瓶は、もう窓から見えないほど高くまで飛んでいった。

興奮したロレッタが窓辺に駆け寄るのとほぼ同時に、イサヤは素早く身をひねって両手を頭上に伸ばした。

花瓶を受け止めようとしたのだ。

だが、今回は彼の思いどおりにはいかなかった。

ぱしゅん!

空中で勢いよく土が舞い、花瓶は彼のつま先にぶつかって粉々に割れてしまった。

「……。」

イサヤは頭の上に土と花の茎を乗せたまま、ぱちぱちとまばたきをした。

「……ひっ!」

上官の花瓶をまた壊してしまったことに気づいた彼は、青ざめて凍りついた。

しかし、ロレッタが「きゃははっ」と鈴のように笑い声を上げるのを見て、彼もつられて笑ってしまった。

ロレッタは窓辺から身を乗り出し、勢いよく上半身を傾けて、弾むような声で叫んだ。

「ねぇ、マルンって本当に素敵じゃない!私が特別な砂糖を作ってあげたいって思うのも、当然でしょ!」

ロレッタは、ハナが「はい、そうですお嬢様!この世でいちばん美味しい砂糖が作れるよう、全力でお手伝いします!」と元気よく答えてくれるものと期待していた。

だが――背後からは何の反応も返ってこなかった。

まさか、砂糖作りを手伝いたくないとでも思っているのでは……と振り向いてみると――

「……あら、クロードお兄様?」

いつの間にか、ハナの隣にクロードが立っていた。

顔は青ざめ、どこか気まずそうな表情を浮かべている。

「ロ、ロレッタ。」

クロードはかすかに微笑みながら、ゆっくりと口を開いた。

「ん?」

「誰に何を作ってあげるって?最近ちょっと憂うつで耳の調子が悪くてね、君の可愛い声がよく聞こえなかったみたいだ……。」

「あは。」

ロレッタは軽く手を叩いて、にっこりと笑った。

少し前、侍女に同じ質問をされたときは、嘘をつくのが初めてで少しぎこちなかったが、今ではもう慣れたものだった。

どうせ作るなら、イサヤにあげる分も少し多めに作っておけばいいのだ。実際に渡したって構わないだろう。

「私はメルン卿に特別な砂糖菓子を作るの!だってメルン卿はとっても、とっても素敵な方なんだから!」

彼女の自信満々な言葉に、厨房の侍女がぴくりと眉をひそめた。

何かを恐れるような表情だったが、ロレッタにはなぜそこまで心配するのか分からなかった。

もちろん、その侍女が気にしていたのは――イサヤが仕えているメルン卿の首のことだった。

 



 

 

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