こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

81話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 夏祭り⑤
オーガストと別れた後、メロディはクロードの背中に背負われながら馬車で戻った。
それほどひどく傷ついたわけではなかったが、靴を失くしてしまったので仕方がなかった。
さらにクロードが妙に命令口調だったこともあり、「お嬢様」とも呼ばない様子から察するに、主人の権威を振りかざすのはもうやめたのかもしれない。
メロディは屋敷に戻るとすぐに侍女たちの手を借りて、手際よく体を洗った。
ブリクス商会が誇る「体に触れると気分が良くなる入浴用タオル」を使ったおかげだろうか。
軽い室内ドレスをふわりとまとって部屋を出ると、まるで魔法がかかったように楽しい気分になっていた。
「ここに座ってください。」
しかし、そのタオルの効果は一時的なものだった。
メロディは、整然と佇むクロードと向かい合うと、さっきまでの良い気分がすっかり消え去り、まるで、水を浴びせられたかのように全身がしぼんでしまった。
「……。」
メロディは、彼が勧めるままにソファに座った。
そっと彼の様子を伺いながら。
「ここに足を乗せてください。」
すぐに彼は低いスツールを持ってきて、彼女の前に置いた。
薬箱を手に取っているのを見ると、直接傷の手当をしようとしているようだ。
「私、大したことないですよ。」
「わかっています。でも、一応医者を呼んでおきました。」
彼はメロディの膝の上に布を置き、スツールの下へと膝を引き寄せた。
メロディは彼の手際をじっと見つめながら、何気なく布の端を触っていた。
『ちょっと変な感じ。』
メロディはスツールに座っているのに、名門公爵家の跡継ぎが冷たい床に膝をついているのは……ちょっと……。
「メロディ嬢。」
「……はい?」
「ここ、少し擦りむいていますね。痛くないですか?」
彼は白いコットンに消毒液を染み込ませながら尋ねた。
「そんなに痛くはなかったですよ。」
「……それって、大事な靴だったのに。」
失望したような言葉とともに、傷の上に薬をぬる手がわずかに震えた。
「そんなに傷つきながら水に飛び込まなくても、私があの子に新しい靴を買ってあげることもできたのに……。」
メロディの表情を確認した彼は、途中で言葉を止め、短くため息をついた。
「……その時、メロディ嬢は私のことなんて、少しも考えていなかったんでしょう?違いますか?」
もちろん、メロディは彼の言葉を否定できなかった。
靴が流されていくのを見たとき、クロードのことを思い出すこともなく、新しく買えばいいという選択肢も思い浮かばなかった。
「……そうでした。」
メロディはかすかな声でそっと答えた。
「早く取りに行かなきゃいけないって思っただけです。」
「一体どうして?」
彼が不満そうに問いかけると、メロディは一瞬沈黙した。
クロードはそれ以上追及せず、ただ傷の上に薬を塗った。
ひんやりとした感覚が過ぎると、メロディはしばらくして少し口を開いた。
そして、最近はほとんど思い出すことのなかった過去の時間の話を始めた。
「私の靴……もイサヤが持って行ったのでしょうか?」
その瞬間、彼の手が一瞬止まった。
何かに驚いたようにも見えた。
「わかりません。子供たちはどうしていつもそんな風に他の子をいじめるのでしょう。」
当時のメロディは孤独だった。
靴も片方失わなければならないと言いたかったのかもしれないが、自分でもわからなかった。
ただ、片方だけ残った靴を履いていたことだけは覚えている。
立ったままでいるのはとても苦痛だった。
「……イサヤの機嫌を少し取ってあげたかったんです。幼い私にとって彼はいつも大きな支えでしたから。」
もちろん今でもイサヤの存在は大切だが、その当時は今よりも絶対的なものだったように思える。
彼女のために戦ってくれる、ほぼ唯一の存在だったからだ。
「そう……なのですね。」
「でも、坊ちゃんの言うことも正しいです。今はもう環境も変わったのだから、新しい靴を買うという選択肢を考えることもできたはずなのに。」
「いいえ。」
彼はきっぱりと否定した。
少し前までどうしてそんなことを考えられなかったのかと、自分に呆れながらも。
「……私が間違っていました。」
彼はもう一度そう言うと、薬瓶を置いた。
治療はその時点で終わったようだ。
「坊ちゃん。」
メロディは彼の視線を伺いながら、慎重に口を開いた。
「私に同情してほしくて話したわけではありません。もちろん、坊ちゃんから見れば、私の幼少期は……。」
「同情だなんて、そんなことではありません。」
彼は同じ言葉を繰り返した。
「絶対に違います。」
「でも、突然私の味方をしてくれましたよね。どこか悲しそうな表情を浮かべながら。」
「それはただ……。」
彼は言葉を止め、彼女の足元にそっと視線を落とした。
「……それは。」
静かに話を続ける彼のため息が足の爪先にかかり、メロディはくすぐったい気持ちになった。
「少し、私が……ほっとして。」
彼は静かにため息をついた。
か細い足首の上に、彼の重みが少しだけ増した。
静寂の中、透明な窓ガラスに「トクッ」と小さな雨粒が当たる音が澄んだ響きとなって広がった。
メロディの視線は、自然と窓の外へ向かう。
青々としていた空は、少しずつ青白く染まっていった。
灰色の雲が驚くほどの速さで押し寄せてくるようだった。
それほど時間が経たないうちに、太陽はすっかり雲に隠れ、周囲は徐々に暗くなっていった。
そうして、すべてが鈍い緑色に変わったとき。
「……良かったのに。」
彼はふと、何かをつぶやいた。
しかし、突然強くなった雨音にかき消され、その言葉はメロディの耳には届かなかった。
彼女は「え?」と聞き返したが、彼はただ、乾いた笑い声とともに答えた。
「僕も、靴を探してあげられたら良かったのに。」
「でも、坊ちゃんが来るのを待っていたら、オーガストの靴がさらに流れてしまったかもしれません。」
彼はメロディの方へ顔を向けた。
相変わらず彼女の足元近くに顔を寄せたまま。
「僕が探しているのは、その靴じゃないんです。」
メロディがどれだけ鈍感だったとしても、彼が今言った「靴」の持ち主が誰なのか気付かないほどではなかった。
彼は幼い頃のメロディについて語っていたのだ。
「それは、それは…… 仕方がないじゃないですか。」
「分かっています。」
彼が少し体を脱力させると、メロディの脚に彼の唇がそっと触れた。
「僕がこうして会うことができたのは、何足かの靴を手にすることができた、そのおかげです。」
軽く触れるように滑る唇が、くすぐったかった。
でも、決して嫌な感じではない。
「もっと昔のメロディを知っていたら、もう少し……助けになれたかもしれないのに。」
その言葉には、わずかに後悔の念が混ざっていた。
彼は、おそらく出会うことのなかった幼い頃のメロディに、優しくしてあげたかったのだろう。
時折、過剰に優しくなってしまう人だから。
「……それでも昔は。」
彼女は少し夢を見ているような声で答えた。
「いろんな色の靴を持つようになってから、とても幸せでした。」
「うん、それなら、もっと買おう。」
さらりと返ってきたクロードの答えに、メロディは驚いて目を丸くした。
「え? 何ですって?!」
彼は静かに微笑みながら、手にしていたコップを持ち上げて言った。
「もっと買おう。靴を。」
「急に、なぜ? どうして?!」
「メロディ嬢が言ったじゃないですか。いくつかの靴を手に入れて幸せになったって。」
「それは比喩的な話でした。でも、だからこそ、以前より状況は良くなったんですよ……!」
「メロディ嬢の状況がどれほど良くなるかは分かりませんが、靴がそのきっかけになるなら、もっと買うべきですね。」









