こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は60話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
60話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 鉱山へ
数日後。
エスターは外出の準備を終えて、最後にペットボトルを取りまとめた。
「それを全部持って行くんですか?」
「うん。この前約束したんだ」
「水がないわけでもないのに、なんで水をこんなにたくさん・・・」
ドロシーが首をかしげるのも無理はない。
見た目には特別なことのない大きな水筒が5つ。
もちろん、ただの水ではなかった。
エスターがノアのために一般の聖水より聖力をはるかに多く込めて聖水にした水だった。
しかし、ある程度の聖力に敏感な人でなければ、表面だけを見て聖水だということを絶対に知ることはできない。
「水がないこともあるじゃないですか」
ビクターはドロシーに一言投げながら水差しを持った。
「馬車に移しておきます」
「うん、お願い」
これなら、ノアが自分に会わなくても意識を失わずに過ごすのに無理がないはずだ。
「どちらにお迎えしましょうか?」
「えっと・・・」
エスターは馬車に乗り込み、御者にメモを渡す。
ノアがくれたメモには、彼が住んでいる場所の位置が表示されていた。
エスターが座ったことを確認し、馬車のドアを閉めながらドロシーが尋ねる。
「この前のあの方に会うんですよね?」
「うん。約束したから」
来ない人を待つのがどれほと辛いか分かる。
最初にした約束は守れなかったが、代わりに今度は必ず守るつもりだった。
「ところで鉱山に行く道じゃないの?」
外を見ていたエスターが怪謗そうに首をかしげる。
通りすがりに見覚えがあった。
「そうです。このまままっすぐ行けば鉱山が出るはずなのに、お友逹がかなり人里離れたところに住んでいますね」
「そうだね」
鉱山はテルシアで人々が集まって暮らす市街地をかなり離れた外郭に位置している。
だからノアが住むという家の位置もやはり周辺に人は目を洗って探しても見つからないところだった。
(接近禁止令のためだろうか?)
エスターが一人で推測して気の毒に思う間も、馬車は熱心に走って目的地に到着した。
「気をつけてください」
いつもエスターを過剰保護するビクターの手を握って馬車から降りると、がらんとした野原が目に入る。
中央にぽつんと建っている一軒の家は聖域と変わらないように見えた。
「ここに住んでるの?」
エスターは目を細めて家の中をのぞき込んだ。
家がとても寂しそうで気に入らなかった。
折しもドアがぱっと開いた。
何事か外に出ていたノアがエスターを発見した。
ノアは一瞬、自分の目を疑って、更に本当にエスターであることを確認してそのまま走ってきた。
無表情だったノアの表情に笑顔が満ちたのは一瞬の出来事。
「エスター、私に会いに来たの?」
「うん。用事があって」
エスターはノアがあまりにもうれしくて恥ずかしくなり、そうでないふりをした。
「お嬢さん、これはどこに置きましょうか?」
ビクターが馬車に積んでおいた水筒を取り出して床に下ろしながら尋ねる。
「あれをあげようと思って立ち寄ったんだ」
ちょうどいいタイミングだった。
エスターはペットボトルを指差してにっこり笑う。
「そうだったんだ。ただ私に会いたくて来てもいいのに」
ノアは本気なのか冗談なのか分からない言葉でエスターを混乱させた。
慌てたエスターはノアの目を避けて視線をそらし、家から出てくるファーレンを発見した。
ファーレンは一気にエスターの一行のところに歩いてきて、うつむいた。
「お久しぶりです」
「あ、あの時の・・・そうですよね?こんにちは」
ファーレンに気づいたエスターは嬉しそうに挨拶をする。
聖域まで2度も送ってくれたので、顔を覚えていたのだ。
「はい、そのとおりです」
ファーレンは上官だが、彼に子供のようなノアを助けてくれたエスターに感謝の気持ちでいっぱいだった。
それでエスターに目の前で向き合うと、こみ上げてくる感情を持て余した。
「本当になんと感謝を・・・」
ファレンが口をつぐんで何か話そうとすると、ノアが急いでファレンの腕を引っ張って言った。
「ファレン、あれらを部屋に蓮んでくれ」
「・・・畏まりました」
ファレンはビクターのところに行き、袖で涙をぬぐった。
「今泣いたんじゃないの?」
「ううん、違うよ」
ファレンの涙を見たエスターがびっくりして聞いたが、ノアは断固として違うと言って話題を変える。
「ちょっとうちに入ってくる?」
「いや、近くに鉱山があるから、そこに寄ろうかと思ったんだ」
元々はノアに会ってすぐ帰ろうとしたが、どうせここまで来たのでダイヤを持って行くつもりだった。
ところが、ノアがエスターの話を聞くやいなやびっくりしながら手を叩いた。
「もしかしてあの裏山のこと?」
「うん。何で?」
「毎日つるはしの音が絶えないと思ったんだけど、鉱山があったんだね」
ノアは少し眉をひそめ、耳を指差した。
「うるさかった?」
「少しだけ」
ノアの迷いのない肯定にエスターはしばらく言葉が詰まった。
「うん・・・ごめん」
まるで待っていた人のようにノアがエスターの言葉をばくりと聞いた。
「すまないなら私も連れて行ってくれ」
「鉱山に?」
「うん、邪魔しないから」
よりによって鉱山の近くなので被害を受けているとも言われ、きれいに笑うノアを断ることができなかったりもする。
結局、エスターは計画にもなかった鉱山に、想像もできなかったノアを連れて行くことになった。
山の入口が遠くはないが、それでも馬車に乗って移動した。
馬車の中でノアは違うふりをして、ずっとエスターをちらちらと眺めていた。
知らんぷりをしようとしても気になって、エスターがついにため息をつく。
「いったいどうしたの?」
「ごめん。私が見つめすぎた」
「知ってる」
ノアはエスターの機嫌を伺いながら静かに話した。
「そのヘアスタイル。初めて見るけど、よく似合ってて綺麗だね」
エスターの髪はドロシーが一つに編んで腰まで垂らした後、リボンまできれいに結んでくれた。
「この言葉が言いたくてずっと見てたんだ」
「・・・ありがとう」
元々褒め言葉に慣れていないエスターだが、ノアの褒め言葉は妙にもっと恥ずかしかった。
(聞かなきゃよかった)
エスターは手をこそこそ動かしながら膝の方を向いた。
遅ればせながら後悔してももう遅いことだが。
ノアが鉱山に行きたい理由は?
単純にエスターと一緒にいたいからでしょうか?