大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【159話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

159話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 公開裁判②

壇下に並ぶ大公家の一行は、壇上の無残な光景をそれぞれの表情で見つめていた。

その中でもジュディの表情は、まるで飛び切り面白い見世物でも見物しているかのように満面の笑みを浮かべており、ひときわ目立っていた。

「ねえエスター、どうしてみんな石じゃなくて卵を投げてるか分かるかい?」

「どうして?」

「普通は石なんだけどさ、ラビエンヌはまだ未成年の罪人だから、法律で卵を投げることになってるんだよ。」

「えー、石の雨を浴びて血塗れになるところが見たかったのに。ちょっと残念だなあ。」

デニスの解説を聞いたジュディは、つまらなさそうに口を尖らせた。

「どれほどの大罪人でも、子供の命は守らなきゃいけないからね。石が当たったら大怪我をするけれど、卵なら洗えば済む。……まあ、私も少しばかり残念だけど。」

その時、周囲の喧騒に混じって商人の威勢の良い声が響いてきた。

「生卵はいかがですかー! 今朝採れたてで殻が薄く、とっても割れやすい生卵だよー!」

「冷たいジュースもありますよ! レモンをぎゅっと搾った爽やかなジュースはいかがですかー!」

公開裁判のような大行事には、群衆の熱気と欲望を目当てにした行商人たちが集まるのが常だった。ジュディは耳をぴんと立てると、興味津々といった様子でドフィンの袖を引いた。

「お父様、僕たちも卵を買いましょうよ!」

「ジュースも買いましょう。甘いお菓子ばかり食べていたら喉が乾きそうです。」

デニスがエスターを気遣うように視線を送ると、ドフィンは満足そうに頷いた。

「よし。これで買ってきなさい。」

ドフィンから金貨を受け取ったジュディは、弾むような足取りで商人の元へ駆け寄った。

「ジュースを四本と、卵を……十個ください!」

「あ、申し訳ありませんお兄さん、金貨のお釣りを用意できなくて……。」

「お釣りはいらないよ。じゃあ、全部もらう!」

金貨一枚と引き換えに籠いっぱいのジュースと卵を手に入れたジュディは、ほくほく顔で戻ってくると、みんなに一本ずつ冷えたジュースを手渡した。

「エスター、これ美味しいよ。」

ちょうど喉が乾いていたエスターは、レモンジュースをコクリと飲み、キュッと目を細めて微笑んだ。

「エスター、僕のも飲んでいいよ。」

「美味しかったら、何本でも買ってあげるからね。」

デニスとドフィンが甲斐甲斐しくエスターの機嫌を取っている隙に、ジュディはニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべ、籠から生卵を一つ手に取った。そして、ためらうことなく壇上のラビエンヌへ向けて投げつけた。

「当たれーっ!」

しかし、慣れない投げ方のせいで、卵は虚しくも手前で失速し、地面でべしゃりと割れてしまった。

「あれ? どうして届かないんだろう。」

「腕の振りが小さすぎるんだよ。もっと肩から振りかぶって角度をつけないと、あんな高い壇上までは飛ばないさ。」

デニスの的確な助言を聞いたジュディは、額にしわを寄せて腕をまっすぐ伸ばすと、両手の指で小さな四角を作り、照準を合わせるように片目を閉じた。

「次は絶対に命中させてやる……。」

「ジュディ、ほどほどにしておけよ。」

真剣な目つきで標的を狙うジュディに、ドフィンは呆れたように声をかけたが、本気で止める気配は微塵もなかった。

公開裁判において罪人へ卵や石を投げつけるのは一種の「儀式」のようなものであったため、周囲がどれほど騒がしくなろうとも、裁判は滞りなく進行していった。

「ラビエンヌ・ド・ブラウンス。汝の罪はそれだけにとどまらない。毒薬を用いて皇太子殿下を暗殺しようとした件について、罪を認めるか?」

「いいえ! そのような恐ろしいこと、私は一切しておりません!」

まさかこの件まで公の場で追及されるとは思っていなかったラビエンヌは、自分の無実を証明できる絶好の機会だとばかりに、必死で頭を振った。

「証人を召喚する。」

裁判官の一言に、ラビエンヌの身体が強張った。思わず爪を噛みながら、狂ったように思考を巡らせる。

(証人? 毒薬を買ったのは私じゃないし、売人の顔だって知らないはず。父の配下を使ったのだから、その者が私を裏切るはずがないわ。一体、誰だというの……!?)

直後、重い足音とともに壇上へ上がってきた人物の顔を見た瞬間、ラビエンヌは心臓が飛び跳ねるほどの衝撃を受けた。

「私は、かつてラビエンヌ様に最も近くでお仕えしていた聖騎士です。」

輝く金髪を揺らし、まっすぐな瞳で歩み出てきたのは、カリドだった。

「証人、証言を。」

「昨年、私は聖女であったラビエンヌ様の命を受け、デイモン皇子殿下へ一通の薬瓶をお届けいたしました。」

「どのような薬だったのか?」

「無色透明の液体でした。『決して封を開けるな』と固く禁じられておりましたが、違和感を覚えたため、秘かに数滴だけを別容器に採取し、保管しておりました。」

カリドは懐から小さな薬瓶と、専門機関による鑑定書を取り出し、恭しく裁判官へと提出した。

「内容をご確認いただければ明解です。」

鑑定書には、その液体が入手極めて困難な劇薬であること、そして購入者の記録が明確に記されていた。その毒薬を購入した人物の身元は、間違いなく『ブラウンス公爵家の執事』であった。

「間違いなさそうだな。」

書類を改めた裁判官が、重々しく頷く。

絶体絶命の危機に瀕したラビエンヌは、激しい歯ぎしりを立てながらカリドに向かって金切り声を上げた。

「カリド! あなた、私を裏切るの!? どうしてこんなことができるのよ! あなたは私の聖騎士だったでしょう!? 騎士としての誇りはないの!?」

「……あります。騎士としての誇りがあるからこそ、私は今、ここに立っているのです。」

カリドは、かつての神聖な面影を完全に失い、醜く乱れるラビエンヌを複雑な眼差しで見つめ、深くため息をついた。

「こんなことをして、あなたが無事でいられると思っているの!? あなただって共犯者になるのよ!」

「構いません。たとえ知らずに手を貸したのだとしても、大罪に関わった以上、相応の報いを受ける覚悟です。」

「ハッ! 私がいなければ、お前のような下格の者が若くして聖騎士になれたとでも思っているの!? 身の程を知りなさい!」

ラビエンヌは全身を怒りで震わせ、唾を飛ばして罵倒した。しかし、カリドの瞳に宿る冷ややかな落胆は、強まるばかりだった。

「……あなたの聖騎士になってから、私は自分の選択を後悔しない日はありませんでした。もし時間を巻き戻せるのなら、私は絶対にあの宣誓を断るでしょう。」

「お前なんて……お前なんかが……っ!」

怒りのあまり狂乱するラビエンヌの声を遮るように、それまで静観していた皇帝がゆっくりと立ち上がった。

「皆、聞くが良い。幸いにもその毒が使用されることはなく、我が皇太子に異常はない。」

国家の根幹に関わる皇太子の健康に問題がないことを皇帝自らが示せば、群衆からは安堵の歓声が巻き起こった。しかし、皇帝の声はなおも冷たく響く。

「だが、未遂に終わったとはいえ、帝国の皇太子を毒殺しようとした企みは国家謀叛であり、極刑に値する重罪である。」

「き、極刑……!? そんなのひどすぎます!!」

あまりの恐怖に、ラビエンヌは拳を強く握りしめた。食い込んだ爪が皮膚を突き破り、じわりと血が滲む。自分の犯した罪の重さをなおも理解できず、パニックに陥るラビエンヌに対し、上座に座るノアは氷のように冷ややかな視線を向けていた。

ラビエンヌはそのノアを睨みつけながら、なりふり構わず叫んだ。

「その毒薬はデイモン皇子が私に頼んできたものなんです! 彼をここに連れてきて尋問してください! 私はただ頼まれただけで……っ!」

罪を少しでも擦り付けようとデイモンの名を叫ぶラビエンヌ。確かに、最初に毒を要求したのはデイモンだった。しかし、皇室の醜聞をこれ以上公に広げるつもりのない皇帝は、彼女の悲鳴をすんなりと聞き流し、そのまま問いを切り替えた。

「ハドソン。汝はこの暗殺計画を知っていたのか?」

「いいえ! そのような恐ろしい計画、私は一切関知しておりません! すべては娘が独断で犯した暴挙でございます!」

ブラウンス家の名で購入された以上、関与がないはずはない。しかし皇帝とハドソンの間には、デイモンの名を隠蔽し、家門の完全なる断絶だけは免れさせるという無言の取引が成立していた。

「すべては娘の愚かな行いです。どうか、ふさわしい罰をお与えください。」

「お父様……! ひどい……ひどいわ! あの毒を用意してくれたのはお父様じゃない! 私を見捨てるつもりなの!?」

ハドソンの冷酷な裏切りに、ラビエンヌは地を踏み鳴らして叫んだ。

「お前がしでかした愚行に、これ以上一族を巻き込むな。恥を知れ。」

ハドソンの返答は、氷よりも冷たかった。

「は……あはは……。」

唯一の頼みの綱であった実の父親にさえ切り捨てられたラビエンヌは、乾いた笑いを漏らしたが、直後に激しい眩暈に襲われてその場にふらついた。

「よし。判決については、しばしの協議の後に言い渡す。」

最終的な量刑を決定するため、裁判はいったん休廷となった。その間も、ラビエンヌとハドソンは広場を埋め尽くす見物人たちの残酷な好奇の視線に晒され続けた。

広場の混乱と興奮は、留まるどころか勢いを増していった。

「皇太子殿下まで毒殺しようとしたなんて、どこまで腐りきった女なんだ……! あんな悪魔を聖女だと崇めていたなんて!」

「騙されていたんだ! 俺たちは全員、あいつに担がれていたんだ!」

ラビエンヌの化けの皮が完全に剥がれ落ちると、人々は彼女を「史上最悪の悪女」と呼び、口々に罵声を浴びせた。

「くたばれ、悪女!」

「本物の聖女様を返せ!」

興奮した群衆から、再び怒涛のような卵の嵐が壇上へと投げつけられた。

ジュディはこの瞬間を待っていたとばかりに、両手に卵を構えた。

「よし……こうやるんだな!」

デニスの助言通り、肩から大きく振りかぶって放たれた一投は、美しい放物線を描いて飛んでいくと――三投目にして見事に命中した。

ジュディの投げた卵はラビエンヌの後頭部で『べちゃり』と派手な音を立てて割れた。

「やった! 当たったぞ!」

本当に命中するとは思っていなかったジュディは、デニスとエスターにハイタッチを求めるように手を広げ、少年のように大喜びした。

ラビエンヌの後頭部からは、ドロリとした生の黄身が髪を伝って滴り落ちている。

「最高だな! 実に胸がすくよ!」

ジュディは一切の容赦なく、エスターに向かって満足げに親指を立てた。

「本当なら石を投げるべきなんだけどね。」

エスターを誘拐しようとし、殺そうとまでした罪を思えば、石でもぬるいくらいだとデニスは低く呟いた。

頭に直接卵をぶつけられたラビエンヌは、怒りと屈辱で歯を剥き出しにしながら振り返った。髪もドレスも黄色い生卵でベタベタに汚れ、かつて「帝国の光」と称えられた美しい面影はどこにもない。

「投げないで! 痛いじゃない! 気持ち悪いわ、やめてよ!!」

強がりを叫びながらも、その瞳には明確な恐怖が張り付いていた。四方八方から飛んでくる物地に怯え、頭を抱えて縮こまる姿は、惨めそのものだった。

腕の隙間から、ラビエンヌは最前列に立つエスターの姿を捉えた。

「お前……っ!!」

血走った目でエスターを睨みつけるラビエンヌ。

壇上と壇下。

二人の距離は離れていたが、お互いの表情をはっきりと識別するには十分だった。

今の二人は、あらゆる意味で完全に入れ替わっていた。

生まれながらに人々の愛と祝福を一身に受け、持たざるエスターをゴミのように見下してきたラビエンヌ。

何一つ持たず、泥の中で踏みにじられ、死を繰り返してきたエスター。

二人の立場は鮮やかに逆転し、そのコントラストは残酷なまでに明確だった。

(全部お前のせいよ……殺してやる……絶対に殺してやる……!)

ラビエンヌはエスターを死意を込めて睨みつけながら、ぶつぶつと呪いの言葉を唱えた。充血した白目の中で、瞳だけが血のように赤く浮かび上がっている。

切れた唇の隙間から漏れ出る不気味な声は、不思議と離れた場所にいるエスターの耳へ、はっきりと届くかのようだった。

「何をぶつぶつ言っているの?」

エスターはラビエンヌの口動きを模するように、静かに唇を動かしてみせた。

毒気に満ちたラビエンヌの殺意に対しても、エスターは微塵も動じることなく、手に持ったレモンジュースを優雅に一口飲んだ。

「その余裕……本気で……っ!!」

自分よりはるかに格下だと見下していた存在から、完璧に哀れみと冷笑を含んだ視線を向けられ、ラビエンヌの顔は怒りと屈辱で沸騰した。

『悔しいでしょう?』

エスターはラビエンヌの歪んだ顔を見ただけで、その胸中を手に取るように理解できた。

狂いそうなほどの屈辱と絶望。

それはかつての人生で、いつもエスターがラビエンヌを見上げながら、泥の中で抱いていた感情そのものだったからだ。

エスターは、かつての宿敵が無残に崩れ去り、絶望の深淵へと落ちていくその姿を、一瞬たりとも見逃すまいと、その瞳にしっかりと焼き付けるのだった。

 



 

要点を3つにまとめました

  • ジュディたちの生卵投げと和やかな観戦

    未成年の罪人には石ではなく卵を投げるルールを知ったジュディは、ドフィンに買ってもらった生卵を構え、デニスの助言で見事にラビエンヌの後頭部へ命中させて大喜びします。

  • 聖騎士カリドの裏切りと皇太子暗殺未遂の暴露

    かつての側近・カリドが証人として登壇し、毒薬の提出と決定的な証言を行ったことで、ラビエンヌの皇太子暗殺未遂罪(極刑に相当)が明白になります。

  • 父親の完全な切り捨てとエスターとの立場逆転

    ハドソンからもすべての罪を擦り付けられて絶望するラビエンヌ。見下していたエスターから冷ややかに見下ろされ、屈辱と怒りで狂乱しながら崩れ落ちていきます。

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