こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は67話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
67話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 双子の誕生日会⑤
エスターは絵を見てきたドフィンに長い間しがみついていた。
ドフィンは自分がどれほど感動したかを伝えるためにエスターから離れることを知らなかった。
何とかして彼と一言でも交わそうとする人たちがちょろちょろと追いかけているのに、エスターのそばに必ずくっついている。
このままではパーティーがまともに進められないと思ってこっそりと席を離れたエスターだった。
「お父さんも本当に止められないんだって」
エスターは笑いながら首を横に振る。
それでも絵を好きになってくれて胸がいっぱいで嬉しかった。
ちょっと廊下で休んでいると、誰かが突然エスターの横に息を切らして走ってくる。
「ちょっと待って!」
さっきちらっと目が合ったと思った男の子だ。
「エスター、あなた。さっき見たらダンスがすごく上手だったよ」
彼はエスターの行く手を遮った。
「あ、ありがとうございます」
「そのワンピースもすごくよく似合うね」
「あ、はい」
今日のパーティー中、多くの貴族の子弟がエスターに話しかけた。
そんな人の一人だと思って大っぴらに言い合った。
ところが、休みたいという気になってもしつこく声をかけてきた。
「今展示会も見てきたが、君は本当に才能があるようだ」
ずっと知り合いのように話をするので、どうしてもおかしいと感じたエスターが体を回して向かい合った。
「私のことを知ってますか?」
「・・・私を知らないの?」
エスターが自分に気づかなかったという事実に大きく衝撃を受けたセバスチャンの顔がゆがんだ。
「私だよ!セバスチャン!」
エスターはセバスチャンという名前を聞いても、しばらく考えた。
それほどにセバスチャンは痩せていたのだ。
同一人物とは想像できないほどだった。
「え?セバスチャンさん?いつこんなに肉を・・・」
「運動を頑張ったんだ。君が太っている人が嫌いだからといって」
「私がですか?そんなことなかったのに」
エスターは首をかしげる。
そんなことを言ったこともないが、それがなぜ痩せた理由になるのかはなおさら知らなかった。
「「あなた」を思いながら一生懸命痩せた。もしよかったら私と踊ってくれないか?」
セバスチャンは恥ずかしそうに顔を赤らめながら尋ねる。
大いに期待している表情が隠れていなかった。
「それはちょっと・・・」
エスターはセバスチャンが差し出した手を眺めながら困った表情をした。
ダンスを踊るのは難しくなかった。
さっきのように単独でもなく、ホールには音楽に合わせて踊る人がいっぱいいる。
しかし、最初のダンスは必ず自分と踊ろうと言っていたノアが思い浮かんで躊躇ったのだ。
「すみません。今日無理したのか体の調子がいまいちで・・・」
「・・・そうなんだ。仕方ないね。では、次にでも必ず踊ろう」
「はい」
泣き顔になったセバスチャンは悲恋の主人公のように体を回して走っていく。
パーティー会場とは反対側だった。
「泣いているような気がしたけど。違うよね?」
それ違う時に涙がにじんでいるように見えたが、それだけの理由が何一つもなかった。
「ところで、セバスチャンさんとは本当にびっくりした」
エスターはたった2ヶ月間で、人があのように変わることができるという事実に不思議がってネックレスをいじる。
宴会ホールに再び入ろうとしたが、偶然外のバルコニーが目についた。
外はもう真っ暗になったが、かすかな月明かりがバルコニーを照らしていて、自然に目が向かう。
バルコニーに出たエスターは小さな手をもぞもぞさせながら手すりをつかんだ。
「涼しい」
背が低くて手すりがちょうどエスターの目の高さだった。
うんうんと音を立てながらつま先立ちをすると、庭がよく目に入った。
ここに庭があることを知らなかったエスターがきょろきょろしていたところ、横でカサカサという音が聞こえた。
「動物かな?」
猫でもいるかと思って目を細くして眺めていると、見慣れた人が突然現れる。
「こんにちは」
いつ、どのように入ってきたのか分からないノアがエスターに向かってにっこり笑って手を振った。
「ノア?」
エスターは驚いて手すりから身を引く。
ノアはこれまで見た中で最もきちんとした服装をしていた。
パーティーに参加するほどのスーツではなかったが、気を使ってきたことが分かる。
「そこで何してるの?いつからいたの?いや、なんでそこにいるの?」
エスターの声がだんだん大きくなった。
ノアは慌てて、静かにしてと指を口に当てる。
「シッ!誰かが出てきたら困るから」
そして、背後に隠していた左腕を前に突き出した。
手には大きな花束が握られている。
ノアはバルコニーに大股で歩いてきた。
顔がよく見えるほど近づくと、花束を上に伸ばした。
「これをあげに来たんだ」
「なんで?」
エスターの目が揺れ、黄色い花束とノアを同時に盛り込んだ。
「初めてのパーティー記念?」
ノアは意味がないと言って言葉を濁す花束を振った。
「長く持っていたら腕が痛い。肩が震えてるの見えるでしょ?」
その冗談にエスターも結局笑ってしまった。
花束を手渡されるやいなや、甘い香りが周辺に広がる。
「ずっと私を待ってたの?」
「うん。入って誰かに出くわすようなことをしてはいけないじゃないか」
「私が出てこなかったらどうしていたの?」
「出ることを前もって知っていたから」
ノアが意地悪そうに笑っていたずらな目つきをした。
「どうやって?」
「夢で見たよ」
「ちぇっ、何だよ」
エスターは退屈そうに首を横に振る。
ノアの言葉は当然冗談だと思った。
一緒に笑っていたノアの視線がエスターの顔から更に下に下がる。
「そのネックレスはどこで買ったの?すごくよく似合う。そんなに綺麗なネックレスは初めて見たよ」
ノアはネックレスをじっと見つめながら、感嘆と称賛を惜しまなかった。
自分が送っておいて、咳払いをするのがあきれて、エスターの目がピクピクと上がる。
「君が送ったものは全部知っているよ」
「知ってる?ふぅ、よかった。名前を書かなかったことをとれだけ後悔したと。君が他の人がくれたと思うかと思って」
ノアがにっこり笑って胸をなでおろすジェスチャーをした。
「あなた以外に誰が私にこんなものを送ってくれるだろうか」
「これからいっぱい送るよ。今日のあなたはとても綺麗だから」
突然入ってくるノアの褒め言葉に目が丸くなったエスターは、戸惑いながら口をもぐもぐさせて小さく言った。
「・・・ありがとう」
「私の気持ちとしては指輪にしたかったが、あなたがはめずに捨てるかと思ってネックレスにした。次は指輪だね」
ノアも鼻をさっと拭きながら覗線を横に向ける。
「パーティーはどうだった?面白かった?」
「思ったより良かったよ」
エスターはノアと会話を交わす間、なぜか月明かりがさらに濃くなったようだと感じ、周辺を見回した。
わずか数歩離れているが、騒々しいパーティー会場とは違って、静かなここはまるで全く違う世界に来ているような気分を与えてくれた。
その渦中に二人きりで月明かりを浴びながら立っているのがかなり雰囲気があるように見えて胸がドキドキする。
「か、体はどう?」
「なんともないよ」
微妙な感情は向かい合っていたノアにも伝わり、彼もエスターの目をいつものように見ることができなかった。
何か次の話を探している途中、ノアがバルコニーのドアが開くのを見てびっくりして木の後ろに隠れる。
ノアの瞬発力でばれなかったが、2人は別れの挨拶もできず別れなければならなかった。
バルコニーに出たのはデニスだった。
「エスター、ここで何してるの?」
デニスは首をかしげながら一人でいるエスターに近づく。
「ちょっと息苦しくてですね」
エスターはさっと振り向いて庭に背を向けた。
デニスの視線を自分に向けるためだ。
「そうだったんだ。いなくなったと思って、しばらく探したよ」
安心して微笑むデニスの視線がエスターの肩に触れた。
風が吹くたびにドレスのために半分以上オープンしているエスターの肩が軽く震えていた。
「風に当たるのはいいけど、風邪をひくよ」
デニスは無駄のない身振りで着ていたジャケットを脱いでエスターの肩にかぶせる。
体格の差のため、ジャケットはエスターの上半身をすっぽり隠しても、お尻まですっぽり覆うほど大きかった。
「寒くないのに」
エスターは恥ずかしそうにデニスの服を両手で引き寄せる。
「その花は何?誰がくれたの?」
「知らない人だから名前はよく・・・」
片付けられなかった花束を後ろに隠して、エスターが返事をごまかした。
そしてエスターは嘘がとても下手な方だ。
デニスの目つきは鋭く変わり、誰もいないバルコニーを見回す。
緑色の眼光が光って通り過ぎた場所にはノアが隠れている木もあったが、幸いにも気づかなかった。
「そう?とにかく入ろう。お父さんが探してる」
「はい」
エスターはもう少し後で行くと言うか躊躇い、すぐに分かったとうなずいた。
訳もなく疑われて庭に隠れているノアを捜し出すと困るのはノアだから。
バルコニーを出る直前、エスターは物足りなさがたっぷり込められた目でノアが隠れた木をちらっと見る。
宴会場に続くドアが閉まり、バルコニーはがらんとしていた。
誰もいないことを確認した後、ノアがゆっくりと横に歩いて出てきた。
木の影に隠れたノアは、エスターといる時とは違って寂しくて複雑に見えた。
エスターがそうだったようにノアもすでにいなくなった「苦のないエスター」の座をしばらく眺めていた。
明るい光が漏れるパーティー会場と陰に隠れた自分の境遇が対比され、気分が変だった。
「君に会ったらいつもそばにいてあげると誓ったのに」
今のノアはパーティー会場に入ることも、エスターのそばに堂々と立っていることもできなかった。
むしろ他の人たちがいつもエスターのそばを守っている。
お兄さんたち、お父さん、あるいは護衛と侍女たちであっても。
「それでもよかった。君がもう寂しくないように見えて:
エスターが一人ではないのは幸いだが、一方では心が痛かった。
一番近くにいてあげたかったが、そうできない環境に腹が立った。
「私も頑張らないと」
爪が手のひらに剌さるほど拳をぎゅっと握ったノアは独り言をつぶやきながら庭を離れる。
セバスチャンが少し不便ですね・・・。
ノアが公に姿を見せられないのは何か理由がある?