こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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81話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自身の過去④
短い階段を上り下りしながら、複雑な道を進むと、彼らの身長を遥かに超えるほど高い階段が目の前に現れた。
「ふう、ここが本当に小道なの? 階段がめっちゃ高い。」
「ここを越えたらすぐ広場です。でも、この場所に階段の標識がないので、こんなに険しいとは思いませんでした。これからは高さや階段についても法律で整備するべきですね。」
少年は真剣な顔つきで言った。
「そんなことを法律で決めるなんて、どうやるんだ。無理だよ。ただ進むしかない……。」
その瞬間、歩みを進めていたルイーゼの足が床のひび割れに引っかかった。
彼女の体が大きく揺れて地面に倒れ込んだ。
「わっ。」
「大丈夫ですか?」
少年がルイーゼに手を差し伸べる。
その手をじっと見つめていたルイーゼは、視線を上げ、自分を見つめる彼の真剣な眼差しを見つめ返した。
赤い瞳の動きが神秘的なほど美しかった。
彼女は彼の手の上に自分の手を重ね、その手をつかみながら立ち上がった。
「……温かくて柔らかい。」
ルイーゼは彼の手を握っていた自分の手を見つめ、静かにうなずいた。
「古い道だから、床の状態が良くないみたい。エスコートしてもらえる?」
「エスコート? どうやるのか分からないけど。」
ルイーゼが目をパチクリさせた。
少年が少し考え込んで口を開いた。
「うーん、それなら手をつなぐのはどう?」
「うん、いいね。」
ルイーゼは小さく頷いた。
彼の手をもう一度握ってみたいと思った。
温かい手がそっと彼女の手を包み込んだ。
少年がルイーゼと視線を合わせる
「行こうか。」
「うん。」
ルイーゼの頬が赤く染まり、明るく輝く炎のようだった。
少年は階段を上りながら、ルイーゼに言った。
「必ずまた会い、恩返しをします。見つけられるように証をお渡しします。」
「証?」
少年は、ルイーゼの手を握っていないもう一方の手で、マントの袖についたカフスボタンの一つを外し、ルイーゼに渡した。
金でできたそのカフスボタンには、ドラゴンの模様が刻まれていた。
「これを持っていてください。準備を整えて、必ずルー様を探しに戻ってきます。」
「分かった。わあ、こんなに綺麗なカフスボタン、初めて見た。」
ルイーゼは渡されたカフスボタンを見つめ、感動していた。
「気に入ってもらえて良かったです。」
二人は階段を上りながら、ささやかな会話を交わしていた。
ルイーゼは久しぶりにマクシオン以外の人と話をすることに興味を持っていた。
「ねえ、私こうやって外に出るのが初めてなの。世の中がこんなに素敵で面白い場所だなんて知らなかった。お祭りなんて本でしか見たことなかったから。」
「そうなんですか?」
「うん。私のお母さんはいつも皇帝を非難する話ばかりしてたけど、多分非難されるお母さんの考えよりも、ずっと素晴らしい人なんじゃないかと思う。」
「……どうしてそう思うんですか?」
「こんなに美しい世界を作った人が悪い人のはずないでしょ。さっきの変な人たちは例外だけどね。」
ルイーゼが笑った。
「次にまた外に遊びに出たときも、こんなふうに楽しくてきれいだといいな。いつになるかわからないけど、その時にはあんな悪いおじさんたちはいなくなっているといいね。」
彼女の言葉に黙っていた少年が、かすかな声で答えた。
「……そうなるようにします。」
「さっきはおじさんたちに無茶なことをしようとしていたけど、どうするつもりだったの?」
「行動が速いので大丈夫でした。」
「じゃあ、次からは絶対にくっついていてね。またひどい目にあったらダメだから。」
「はい。」
少年は少しの間考え込んだ後、言葉を続けた。
「……もし他の誰かが僕のような目に遭ったら、またその人を助けるつもりですか?」
「もちろん。」
「他人のために危険を冒すことは簡単なことではありません。自分を犠牲にすることで、ルさんが危険に晒される可能性もありますし、助けた相手が必ずしも恩を感じるわけではありません。」
「人を助けるのに理由が必要なの?私はただ、みんなが幸せでいてくれればいいなと思ってるだけ。だから……」
ルイーゼは振り向き、少年の顔を見た。
少年はさっきから彼女をじっと見つめていたが、その視線がついに彼女と交わった。
「私には危険じゃない。私は強いから。」
真剣に答える彼女の表情は真摯そのものだった。
少年の目が一瞬大きく開き、次の瞬間には自然な微笑みを浮かべた。
「そうですね。」
・
・
・
ついに階段の終わりにたどり着いた。
日が沈みかけているのか、夕焼けの空が広がっていた。
朱色と青色のスペクトルが描かれた空の上に、暖かな色の灯籠の一つがゆらゆらと浮かんでいた。
「あれは何?」
「灯籠だと思います。願い事を紙に書いて飛ばすと、その願いが叶うと言われています。」
「素敵ね。私もやりたいな。」
「もし願いがあるなら、話してみてください。口に出すだけでも叶うかもしれませんよ。」
「うーん、じゃあ……まずは、君にまた会えるといいな。」
ルイーゼが優しく微笑んだ。
「新しい友達ができるなんて久しぶりだわ。君みたいに綺麗な顔をした男の子には初めて会った!」
「それはきっと叶うでしょう。」
「それに、もっと広い世界を見てみたいの。死ぬ前に一度は首都に行くつもり。お母さんが言ってたみたいに、なんだかすごく恐ろしい怪物がいる場所らしいけど、それをこの目で確かめてみたいの。お母さんとお父さんには秘密だけど、いつか許してくれるって信じてる。」
「怪物だなんて、まったくのデタラメってわけではないですね。」
「君は首都に行ったことがある?」
「はい。」
「どんな場所なの?」
「つまらない場所です。」
「私が住んでるところよりはきっと面白いよ。たぶんきらきら輝いて、綺麗な場所なんだろうね。この世の中で一番!「光が溢れているに違いないわ。さっき出会った悪いおじさんたちみたいな人がいない平和な場所なんだろうって思うの。」
少年は微笑みで答えた。
背後では人々がカウントダウンを始めた。
二人は期待に満ちた顔で広場の方を見つめた。すると、数百、数千の風灯が一斉に空に舞い上がった。
「わあ、きれい!見て!」
ルイーゼが空を指さしながら少年に語りかけた瞬間、彼女の表情は喜びに満ちていた。
正面を見つめている少年の赤い瞳は、風灯の明かりに包まれて輝いていた。
黒い髪の毛を持つ彼はマントの帽子を後ろに引き下ろし、その赤い瞳が明かりを反射して一層際立って見えた。
その姿はまるで暗闇を切り裂くように、まばゆく浮かび上がっていた。
昇る太陽のように美しく輝いて、目を離すことができなかった。
なぜか、どんな暗い季節のペリルスにも光をもたらしてくれるような気がした。
「ねえ、エリオットの願い事って何?」
「では、私は帝国がル様の期待に応えられる場所になるよう願ってみます。」
「そう、ありがとう。」
明るく微笑むルイーゼの視線は下に向けられた。
彼らが立っている階段の下、道の終わりに中央広場があった。
その中心にはマクシオンとレンシアの姿が彼女の目に入ってきた。
「そろそろ行かなきゃいけないみたい。母さんと友人を見つけたから。また次に会おうね。」
「はい。お気をつけてお帰りください。」
「うん、エリオットも!元気でね!」
ルイーゼは彼の手を離して大きく振りながら挨拶し、広場の正面に向かって駆け出した。
彼に再び会うことができないのだと気づいたのは、レンシアとマクシオンと共に宿に到着した後だった。
ルイーゼは、いつまたこの場所に来られるのか分からない。
彼の消えない残像のような顔が、彼女の記憶の中に長く留まった。
少年からもらったブローチは、彼女の宝物箱の中に収められた。
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