こんにちは、ちゃむです。
「私が主人公(ヒロイン)だと思ってたのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
43話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 魔法はいつだって最高だから
デミアンの浮かべた笑顔は、直視できないほどに眩しかった。
ただの傍観者にすぎない私でさえそう思うのだから、当事者であるルチにとってはなおさらだろう。彼を見つめるルチの表情は、言葉を失うほどに切なげだった。
横ではハリソンが、今にも胃に穴が開きそうなほど緊張した面持ちで控えている。ルチとデミアンが大喧嘩でも始めるのではないかと、気が気でないらしい。
「エスピン」
意外にも、先に沈黙を破ったのはルチだった。
「え?」
不意を突かれて慌てて返事をすると、ルチが射すような視線を私に向けてくる。
「なあ、ひとつ聞きたいことがあるんだが」
その真剣な気迫に、私も思わず背筋を正して見つめ返した。彼は悔しそうに下唇を噛み、しばらく何かを思い詰めるように黙り込んだ後、意を決したようにゆっくりと口を開いた。
「どうして、あの人の時だけ『両手』で受け取ったんだ?」
「……」
あまりにも真剣な表情から飛び出したあまりにも子供っぽい不満に、私は一瞬、思考が停止した。
私が硬直していると、ルチの青い瞳が不満げに揺れる。『どうして私にはそうしてくれないんだ?』『同じ魔法道具なのに、どうしてあの男だけが特別なんだ?』そんな責め苦のような無言の訴えが、痛いほどに伝わってくる。
デミアンがあまりにも大人びて余裕たっぷりだから、ルチまで調子を狂わされて子供っぽくなってしまったのだろうか。今からでも遅くないからルチに向かって両手を広げてみようかとも思ったが、どう考えても、この第一ラウンドはデミアンの圧倒的な勝利だった。
「でも、これは水属性の魔法の指輪なんだよ? 魔法商店でも売られていない、すごく珍しい品なんだから」
デミアンから贈られた指輪を壊れ物のように胸に抱きしめながら、私は言い訳めいて答えた。
私へのプレゼントを自分で買いに行ってくれたのだから、ルチも知っているはずだ。彼と一緒に魔法商店に行ったとき、店頭で見せられたのは風属性と火属性の指輪だけだった。他にはないのかと尋ねた際、店員からは「現在流通しているのはその二種類だけです」ときっぱり言われたのだ。
つまり、デミアンがどうやって手に入れたのかは謎だが、この指輪は正真正銘、市場には出回っていない希少品ということになる。
贈り物の本当の価値を理解したルチの視線が、今度はデミアンへと向けられた。
「よくもまあ、そんな代物を手に入れたものだな」
「それくらいの力は、持ち合わせているつもりですから」
デミアンは自信に満ちた、完璧な笑みを崩さない。
これ以上二人の小競り合いを見るのは御免だと言わんばかりに、ルチが今度は私に鋭い視線を向けてくる。……この二人がいつもこんな調子では、私の将来の恋愛事情に深刻な影が落ちるのではないかと、今から心配になってしまう。
「ゴホン!」
そこで、父がわざとらしく大きな咳払いをして、一座の視線を集めた。どこかぎこちない、硬い表情で口を開く。
「デミアン殿。娘のためにわざわざ贈り物をご用意いただき、感謝いたします」
「いえ、お祝いの席ですから」
「ですが……まだ知り合って間もない相手に贈るには、少々高価がすぎる品なのではありませんか?」
父の遠回しな、しかし確実な牽制を受け、デミアンの営業用の笑みがすっと消えた。
「そこまで大層なものではありません。どうぞお気になさらないでください」
彼は遠慮がちに「大丈夫だ」と伝えたが、娘の教育に厳しい父がきっぱりと言い放つ。
「いくらケイド公爵家のご子息とはいえ、魔法道具は無視できないほど高価なものだ。……エスピン」
厳格な声で、最後に私の名が呼ばれた。
『返しなさい』という意味なのは、火を見るより明らかだった。
実際、私から見ても、ただの友人として受け取るにはあまりにも過分な品だった。一口に魔法道具と言っても、魔法灯のように日常生活を助ける必需品もあれば、今私が抱えている指輪のように攻撃・防御用で、なくても生活に困らないものもある。つまり、これは完全なる贅沢品だ。
しかも値段が高いだけでなく、現在は正規販売されていないため、入手経路すら限られている。二度しか会っていない相手から貢がれるには、あまりにも重い。
だが、一度もらった贈り物をその場で突き返すのも、それはそれで礼儀に反する気がする。
「でも……」
デミアンが「気にしなくていい」とでも言うように優しく微笑みかけてくれたので、私は父へ助けを求めるような視線を送った。
『お父様、私、本当にこれが欲しいんです!』
そんな魂の叫びを込めた眼差しは、普段なら父に一発で通じるのだが、今日ばかりは違った。父は表情を変えないまま、きっぱりと首を横に振る。
――諦めなさい。
その無言の鉄槌に、私は心の中で大切な水属性の指輪へ別れを告げた。
『ごめんね、可愛い指輪さん。このお姉さん、力不足であなたを迎え入れられそうにないわ。誰のもとへ行っても、そこで大切にされて幸せに過ごすのよ。いつか、またどこかで会おうね……』
私は心の中で血の涙を流しながら誓った。絶対に非常用のお金をコツコツ貯めて、今度こそ自分の力で買ってやる、と。
「……どうぞ」
名残惜しさを隠せないまま、おずおずとした手つきでデミアンに指輪を差し出した。
私の手の中の指輪と、あからさまに肩を落とした私の表情を交互に見たデミアンは、小さく息をつくと、今度は父に向き直った。
「伯爵様、ご心配されるほど高価な品ではありません。……いえ、市場価格が高価なのは確かですが、私はそのような金額を支払って手に入れたわけではないのです」
「それは、どういう意味かね?」
「エスピンなら、もう気づいていると思っていましたが」
デミアンは困ったように眉を下げて微笑んだ。
父は何の事だと言いたげに私を見たが、当の私は本当に見当がつかず、ただ目をぱちぱちとさせることしかできない。本当に理解していない私を見て、デミアンはついに苦笑しながら白状した。
「私は、材料費だけでこれを作れるんです」
……材料費だけ?
『あ、この人、魔法使いだったわ』
……えっ、まさか。
「ご自分で作られたんですか!?」
「ええ」
デミアンは、正解を出した生徒を見守る教師のような、優しい笑みを浮かべた。
すごい。思っていた以上に、とんでもない魔法使いだった。普段の物腰の柔らかさに、この男が原作でどれほど恐ろしい黒幕(天才)だったかを完全に忘れていた。さすが主人公に匹敵するスペックの持ち主だ。
待って、ということは。私が大好きな魔道具を、この人はいつでも、自作して私に供給できるということでは……?
やっぱり、デミアンに今すぐ逆プロポーズしようかな。まだ二回しか会っていないけれど、夫としてのポテンシャルは十二分に合格点を超えている。魅力に溢れすぎている。
「ご自分で作られた、だと……?」
「ご自分でお作りになるなんて、本当に魔法使いだったのですか?」
ルチと父が、ほぼ同時に同じセリフをハモらせた。
ハッと動きを止めて互いを見つめ合う二人の表情は、驚くほどによく似ていた。顔立ちは全く似ていないのに、細かな仕草や、小言を言う時のトーンまでそっくりなのだ。なぜか私よりも、あの二人のほうが血のつながった本物の親子のよう模写に見えてくる。
「ささやかなものですが、私には少しばかりその方面の才能がありますので」
デミアンは謙遜してそう言ったが、その余裕のある表情には確固たる自信があふれていた。特に、ルチへ向ける意味深な笑みは、明らかに「僕の勝ちですね」と挑発しているようにしか見えない。
「ですから、私からの贈り物を重すぎるものだとは思わないでいただければ幸いです。エスピンも、これほど気に入ってくれているようですし」
デミアンの言葉を聞いた父は私をちらりと盗み見て、瞬時にすべてを察したように深く納得の頷きを返した。
私の目は、言葉以上に雄弁に物語っていたはずだ。
『うん! これ、本当に世界で一番気に入った! もらってもいいですか? お願いしますお父様!』
あまりにも正直すぎる娘の必死な眼差しに、父は勝てないと悟ったように、盛大なため息をついた。
「贈り主がそこまで言ってくださるのであれば……今回はありがたく頂戴しよう。エスピン」
お父様の許しが出た!
「デミアン、ありがとうございます! 大切にします。本当に最高です!」
誰かに気が変わって取り上げられる前に、私は急いで指輪を胸元に回収し、両手で思いっきり親指を立ててみせた(グッジョブ!)。
背後からルチの、背中に穴が開きそうなほど鋭い視線が突き刺さるのを感じたが、この魔法の指輪に強力な防御魔法がついているからか、不思議とこれっぽっちも怖くはなかった。
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「ケイド公爵様が優れた魔法使いなのは存じていましたが、ご子息までこれほど腕の立つ魔法使いだったとは。本当にお見事です」
父は場の張り詰めた空気を和らげるように、デミアンを称賛した。だが、その言葉に世辞は一切含まれていない。魔法道具を自作できるということ自体が、超一流の魔法使いである動かぬ証拠なのだから。
「エスピンは昔から魔法や魔法の歌が大好きなんです。ついに魔法使いのお友達までできたのね」
それまで静かに様子を見守っていた母が、ようやく上品に微笑みながら口を開いた。
「エスピンは魔法がお好きなんですか?」
「ええ、それはもう。幼い頃から『魔法』という単語を聞けば、寝ていても飛び起きて見に行くと言って大騒ぎでしたから。使い道もないようなおもちゃの魔法道具も、本当に大好きで……」
いつの間にか、母の口調は娘のオタク気質を暴露する慈愛に満ちたものへと変わっていた。恥ずかしい過去を暴露された形だが、私は自分の趣味を少しも恥じたりはしない。
現代人が本物の魔法を珍しがって何が悪いの!
デミアンは楽しげに小さく笑いながら、私を見つめた。
「それで、あんなに熱心に私を招待してくださったのですね?」
本当の理由は、デミアンが我が家の“招待魔(母)”の連続被害者になりかけていたからだけど。
「それも理由の、ほんの一部です」
自分の恥ずかしい家庭の事情をわざわざ説明する必要もないし、彼に対する少しばかりの同情もあったので、私は素直に頷いて認めた。意外にも、デミアンは気を悪くした様子は微塵もなかった。
「私が魔法使いでよかったですね」
彼は目元を細め、さらに甘く優しい笑みを浮かべた。……その笑顔はあまりにも反則である。
「エスピンは、デミアン殿に魔法を見せてほしいとねだったりはしないのですか?」
母がふと思い出したように尋ねる。
「いいえ、そのようなことはまだありませんよ」
「それなら安心しました。うちの子が失礼なお願いをしていなかったようで」
母が心底ほっとした表情を見せたので、私は思わず頬を膨らませた。実際は、見せてほしいと頼むタイミングがなかっただけだ。次に会ったら絶対に実演してもらおうと画策していたのに。
「そこまで失礼というほどではないと思いますけど……」
「いいえ、だめです。あの子にはきちんと言い聞かせないといけません。好奇心だけで魔法使いに魔法を見せてほしいと頼むのは、大変失礼なことなのですから」
ああ、私に釘を刺すためにわざわざこの話を振ったのか。私の行動パターンは完全に家族に読まれている。
「そんなにお好きなら、今ここで魔法をお見せしましょうか?」
こちらの不満を察したように、デミアンが思いがけない助け舟を出してくれた。
「はい! ぜひ見たいです!」
私に断る理由なんて、天地がひっくり返っても存在しない。
「まあ、そこまでなさらなくても……」
「ご無理をなさる必要はありませんよ、デミアン殿」
お父様とお母様が慌てて制止にかかる。私は心の中で激しく抗議した。
(せっかく本人がファンサービスで見せてくれるって言ってるのに、どうして止めるのよ、お父様!)
「特に無理をするわけではありません。ただ、自分にできることをするだけですから。……ね?」
幸い、デミアンは気にした様子もなく、私にウィンクを投げかける。私は慌ててお父様とお母様を振り返り、『もう邪魔しないでください!』と強く目で訴えた。お二人があきれ果てているのは分かっていたけれど、どうしても本物の魔法が見たかったのだ。
そんな私の必死さを愛おしむように、デミアンは手のひらを上に向けて広げた。
「室内なので、あまり派手なものはお見せできませんが……」
デミアンの手のひらの上、何もない空間に、きらきらとした小さな水滴がぽつぽつと現れた。その水滴は瞬く間に集まり、私の顔ほどもある大きさの、完璧な球体をした水球へと姿を変える。
「わあ……!」
思わず上がりそうになった悲鳴を、両手で口を塞いで必死に飲み込んだ。現代科学の常識では考えられない光景に、胸が激しく高鳴る。
水球がふわりと弾けると、水は細いクリスタルのような流れとなって、重力を無視して宙を自由に泳ぎ始めた。
「おお……!」
突然目の前に広がった幻想的な水のショーに、とうとう感嘆の声が漏れる。私の子供のような反応を見たデミアンはくすりと笑い、指揮者のように軽く手を振った。すると、その指先の動きに追従するように、水流もまた生き物のように躍動し始める。
デミアンが流れるような動作で手を振るたび、私の視線も自然とその指先を追った。彼が私の食い入るような様子を見て楽しげに笑っているのは分かっていたけれど、一瞬たりとも見逃したくなくて夢中で目を動かした。こんなに間近で、本物の術者が紡ぐ魔法を見るのは初めてだった。
揺らめく水流はどこまでも美しく、本当に夢のような光景だった。
やがて水流は天井近くまで高く舞い上がり、まるで祝福の噴水のように弾けた。
「まあ!」
「きゃっ!」
水しぶきが雨のように降り注ぐのではないかと、お父様とお母様が思わず身をすくめて声を上げた。けれど、デミアンがパンッと小気味よく手を打つと同時に、すべての水滴は跡形もなく、空間へと溶けるように消え去った。
絨毯の一滴すら濡らしていない。完璧なマナの制御。まるで夢でも見ているかのような、幻想的な一瞬だった。
あまりの美しさに胸がどきどきと高鳴っていた。浮かれた気分で顔を下げると、デミアンと目が合う。
「本当に最高です!」
私は興奮のあまり、まるで一匹の水のイルカに魅せられた子供のように何度も手を叩き、そしてさっき心に決めたことを再確認した。
やっぱりデミアンと結婚しよう。(今すぐプロポーズの口上を練ったほうがいいかしら?)
「本当にかっこいいです、デミアン!」
私が手放しで次々と称賛を贈ると、デミアンはこれ以上ないほど自信に満ちた、輝かしい笑みを浮かべた。私の誕生日パーティーの雰囲気は、完全に彼の独壇場と化していた。
「はあ……かっこいい、ですって?」
しかし、横から聞こえてきたルチの低くねじれた声がなければ、私は興奮のあまり、彼の存在を忘れたままプロポーズを敢行していたかもしれない。
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ルチは言いたいことが山ほどあるという表情で、私をじろりと睨みつけていた。さっきから彼の苛立ちは隠そうともしていない。今日が私の誕生日だということなど、完全に忘れてしまったかのような棘のある態度だった。
普段なら「いいものはいい」とスルーする主義の私も、さすがにせっかくのハッピーバースデーを邪魔されて気分が悪くなってきた。
「ルチ」
私は笑顔を消し、声のトーンを落として呼びかけた。この場の空気がさらに険悪になるのは分かっていたけれど、今日のルチの態度はさすがに度を越えている。
「何だよ」
ルチも負けじと不機嫌そうにドスの利いた声で答えた。今まさに主役の誕生日パーティーを台無しにしようとしているというのに、本人は少しも悪びれていない。
「いったい何が不満なの?」
今日は私の誕生日。私が世界で一番幸せで、甘やかされるべき日。なのに、あなたのその態度のせいで雰囲気が台無しよ。ちゃんと理由を言いなさい、と私は警告するような視線を送った。
しかし、ルチは負けじと青い目に険しい光を込める。
「君が、あいつのことを『かっこいい』って言ったじゃないか」
(はあ? 呆れた。たったそれだけのこと?)
「たったそれだけのことで、そんなにへそを曲げてるの?」
「たったそれだけだと!? 『かっこいい』って言ったんだぞ、君は!」
ルチは感情を必死に押し殺すように奥歯を噛み締めた。そして、私とデミアンを交互に、呪わしげに見つめる。
(今日はどうしてこんなに子供っぽいのよ、この男は。私の方こそ顔から火が出そうなくらい恥ずかしいわ!)
……だが、だからといって、私の大好きな『魔法』を否定されるようなこの流れは見過ごせなかった。
「もちろん格好いいよ! だって魔法って、本来すごく格好いいものなんだから! 魔法は本当に、本当に最高なの!」
(こんなに素晴らしい奇跡を格好いいって言って何が悪いのよ!)
私は悔しさと腹立たしさを込めて叫んだ。興奮のあまり、肩で荒い息を吐いてしまう。
すると、私を睨みつけていたルチの表情が、ふいに奇妙なものへと変わった。
「いや、そういう意味じゃなくて……。……待て、そういうことなのか?」
そんな、激しい戸惑いと勘違いが入り混じったような、呆然とした顔。しばらく私とデミアンの顔を何度も往復するように見比べていたルチが、ぽつりと尋ねてきた。
「……男としてじゃなくて、魔法そのものが格好いいってことか?」
「当たり前でしょ! さっきのを見て、胸が高鳴らなかったの? あんなに幻想的なものを見て、何も感じない方がおかしいわ! そうよ、魔法は最高なの! いつだって新鮮で、いつだって私をワクワクさせてくれるんだから!」
私が拳を握りしめて力強く言い切ると、ルチの目がゆっくりと見開かれた。
やがて、彼は耐えきれないといった風にクツクツと吹き出して笑い、それからデミアンをちらりと見て、勝ち誇ったように口元を歪めて笑った。
「そうだな。確かに魔法はいつだって最高だ。悪かったよ、エスピン。お前の純粋な気持ちを誤解していた」
いつの間にかすっかり機嫌を直したらしいルチが、憑き物が落ちたような穏やかな声で言った。
(……何なの、この男?)
ルチのジェットコースターのようにコロコロ変わる感情についていけず、私は思いっきり眉をひそめたが、当の本人はすっかり満足げだ。
「そうだな。今回はお前の勝ちにしてやるよ、デミアン殿」
彼が何に対して勝ち負けを決めているのかはさっぱり分からなかったが、これ以上場が荒れないならそれでいい。
「うん。ごめん」
ルチは素直に私にも謝罪した。
まだ少しだけ釈然としない気持ちは残っていたけれど、私はルチから視線を外してデミアンを見た。……なぜか彼は、まるで一仕事終えた後のように、どっと疲れたような表情をして遠い目をしていた。
(……え? どうしたの?)
見れば、お父様は疲れ切ったように何度も首を横に振っており、お母様は頭が痛いと言いたげにこめかみを押さえてため息をついていた。ハリソンにいたっては、吹き出しそうな苦笑いを必死に噛み殺しているような、何とも言えない表情を浮かべている。
何はともあれ、その後は雰囲気が悪くなることはなかった。何かと文句をつけていたルチが、完全に大人しくなってくれたおかげだ。彼の心境にどんな変化があったのかは宇宙の謎だが、それ以上場を乱すような真似はしなかった。
おかげで私は、心置きなく誕生日パーティーの続きを楽しむことができた。
料理長が腕によりをかけて作ってくれた最高のごちそうを心ゆくまで味わい、最後は特製の誕生日ケーキをみんなで仲良く分け合って食べた。
そうして、他愛のない温かな会話を交わしていく。
ただ、宴が長引くにつれ、私がデミアンを『初対面のその場で誕生日パーティーに逆ナンさながらに招待した』という事実が、両親にばれてしまった。私の新しい友人の素性が気になった両親が、あれこれ質問するうちに、芋づる式に発覚してしまったのだ。
父からは本日一番の厳しい視線が突き刺さり、母は恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまった。ルチとハリソンからも「信じられない行動力だな」とでも言いたげな、呆れ果てた視線が飛んでくる。
私はそんな外野の反応を、「それが何か?」とばかりに、極上のケーキを口に運びながら優雅に受け流すのだった。
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デミアンの超一流の才能とエスピンの逆プロポーズ決意
デミアンが贈ってくれた希少な魔法の指輪が、実は彼の自作品(材料費のみ)であることが判明します。その驚異的な魔法使いとしての才能と、間近で披露された幻想的な水の魔法の美しさに魅了された主人公(エスピン)は、大好きな魔道具をいつでも作ってもらえるという下心も交えつつ、デミアンへの結婚(プロポーズ)を本気で決意します。
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ルチの嫉妬と勘違いによる機嫌の劇的変化
エスピンがデミアンにだけ両手でプレゼントを受け取ったり「かっこいい」と連呼したりしたため、ルチは終始嫉妬で不機嫌になりパーティの空気を壊しかけます。しかし、エスピンの「かっこいい」がデミアン個人ではなく「魔法そのもの」に向けられたオタク的探求心だと気づいた瞬間、ルチは自分が男として負けていないと都合よく解釈し、一転して上機嫌になりました。
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周囲の困惑と、最後に発覚した「やらかし」
エスピンのあまりの魔法オタクぶりと恋愛へのポンコツさに、両親やハリソン、そして当のデミアンさえも呆れと疲労を隠せません。その後パーティは無事に盛り上がりますが、会話の過程でエスピンがデミアンを「初対面のその場で誕生日パーティに招待(逆ナン)した」という破天荒な事実が両親にバレてしまい、厳しく見つめられながらも本人は優雅にケーキを食べ続けました。